ニンジャスレイヤー第一部RTA ネオサイタマの夜明けルート≪参考記録≫   作:暴力・砂場・エネルギー無視

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作中において、マルノウチ抗争はA.D.2034年末とします。どうもスズメバチの黄色とかでは違うっぽいし……。


#4 ニンジャスレイヤー・ネヴァー・ラーフス ②

 ……12月24日。

 ネオサイタマにおいて二番目の高さを誇るビル、マルノウチ・スゴイタカイビルにおいて、大規模爆発事件が発生する。

 この事件は、キョートを中心に活動するニンジャ組織『ザイバツ』による、スゴイタカイビルにて暗黒メガコーポ重役らと商談を行っていた『ソウカイヤ』の首魁、ラオモト・カンの暗殺をもくろんだものであったが、この計画は、ソウカイ・シックスゲイツの活躍によって失敗に終わった。

 一方で、ソウカイヤはこの事件から二大ニンジャ組織の影を消し去るために、末端のニンジャ始末屋に対して、口封じとしての生存者の掃討を命じた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆発によってアビ・インフェルノめいた廃墟と化した、マルノウチ・スゴイタカイビル中層部。そこを歩く三つの影があった。

 彼らの名は、オフェンダー、スキャッター、ノーティアー。いずれもソウカイヤのニンジャであり、生存者抹殺の命を受けて、この場所にいた。

 

 「こうも生き残りが少ないとフラストレーションが溜まっちまう」サルめいた風貌のニンジャ、オフェンダーがぼやく。「抗争の時点で、ダークニンジャ=サンが粗方殺したからな」と、スキャッター。

 「それでよ、スキャッター=サンの新型ヘルメットには当然生体レーダーが入ってるんだろ?どうなんだ?エッ?」

 「……フム。微弱ながら、生体反応があるな。北北西に、凡そ200mほど進んだところか……」

 

 そのような会話を、ノーティアーは上の空で聞いていた。脳裏に浮かぶは、フユコとその家族の事ばかりである。どうか生き延びていてくれ、とモリエは祈っていた。どうか、何らかの手違いでマルノウチ・スゴイタカイビルになど来てはおらず、彼らは家でひっそりとクリスマスを祝っているだろう。そうに違いない。何度も、彼女は自分に言い聞かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……!見ぃーつけた!」中層階のセルフテンプラ・レストラン「ダイコクチョ」跡地。ほとんど直線移動に近い形で、オフェンダーは生存者に近づいた。「お前が最後だとよ!起きろ!」乱雑に襟首を掴み、持ち上げる。「これからお前の顔の皮を剥ぐんだ、いいだろう?」ナムサン!彼の腰には、生存者から奪い取ったそれらが吊り下げられている!「……生死の瀬戸際だぞ?喚け!」

 

 「待て、オフェンダー=サン!そいつに手を出すな!」駆け付けたスキャッターが、その凶行を止めさせる。「ア?何でだよ……」あからさまに困惑しながら、オフェンダーは生存者を地面に投げ下ろす。

 

 「上から連絡が入っているからだ……そいつらはノーティアー=サンに殺させろ、ということだそうだ」

 オフェンダーは、訝し気にノーティアーを見た。やや遅れてやってきた彼女の手にはIRC端末が握られている。

 

 『聞いているか、ノーティアー=サン?』そこから漏れ出る声はゲイトキーパーのものである。『さて……他にもいたはずだが?もう死んでしまったか?』その声に応じるように、スキャッターは更に二人の生存者を発見していた。男、女、子供……。ナムアミダブツ、ノーティアーは彼らを知っている!

 

 「これは……一体……」

 『ラオモト=サンが考案した余興であり……君が真のソウカイニンジャになるための試練でもある。あえて、ダークニンジャ=サンは彼らを殺さなかった……私が命じたからだ。そして、ラオモト=サンは一つ条件を出している。「三人のうち、二人だけを殺せ」……と。そうだな、生き残った一人は君のオモチャにでもするがいい』

 「ナンデ……」

 『その方が、残忍ではないかね?』

 

 ゆっくりと、ノーティアーは彼らを見た。間違えようもない。彼らを、モリエは知っている。フジキド・ケンジ。フジキド・トチノキ。……フジキド・フユコ。

 

 ニンジャアドレナリンがドクドクと流れ、彼女のニューロンを刺激し、思考回路をフル回転させる。彼女は無意識に目を閉じていた。

 

 傷は深いが、しかし今すぐにでも病院に連れて行けば、助かるかもしれない。しかしそれはソウカイヤを裏切ることとなる。裏切ったら?無数の追手が来る。私はソウカイ・シックスゲイツの手練れに勝てるか?不可能だ。

 ならば従うべきだ。そうだ。ソウカイヤのニンジャとして、どれ程の恩恵にあずかったか。カラテ・トレーニングにしてもそうだ、ソウカイヤにいればオーガニック・スシでさえも食べられる。まして、今モータルを二人殺すだけでラオモト=サンからも認められるようなニンジャになれるのだ。ソウカイヤにおいて重要なのは、彼に気に入られることである。これは願ってもないビッグチャンスなのではないか?

 

 だが、そのためにフユコ=サンの家族を殺すのか?己の幸せのために、彼女とその家族を踏みつけにしていいのだろうか?ニンジャだからといって、そのような無分別な行いが許されるのだろうか?誰に?ブッダに?自分はいい。だが生き残ったフジキド家の人はどうなってしまうのだ?フユコか、ケンジか、トチノキか……。自分に、彼らの人生を捻じ曲げる権利があるのか?だが……もしもフユコを自分のものにできたなら。彼女の憎悪までも独り占め出来たなら?モリエの心に薄暗い影が差し、しかしそれを振り払う。そんなことは許されない。私はニンジャである以前にヒトなのだ……。無辜のヒトを傷つけるなど、しかし、ソウカイヤを裏切ることも……。

 

 (わからない!わからない!私はどうすればいい!?教えてくれ、ザンキョウ=サン!)

 しかし、電子音声は冷静に答えた。

 (((目を開いて、目の前の景色を見てごらん)))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モリエは、眼を開いた。そして見た。

 ケンジとトチノキの胸に、スリケンが突き刺さっているのを。二人の身体から、血が流れ出る……致命傷だ。

 「私が殺した」モリエは、己の掌を見た。己のメンポに触れた。「わたしが」

 (((君は正しい事をしたのだ。そして私は、過去50敗を喫した巨大リセットポイントを乗り越えた)))声は語る。

 

 (((このマルノウチ・スゴイタカイビル地下に封印されている古のニンジャ……ナラク・ニンジャ。彼あるいは彼らをほぼ完璧に制御できるようになるのは、そこの三人以外にはいない。今の時点ではね。だから、何としてでも彼らには死んでもらう必要があった……ニ010101010101ヤーの復讐の原動力として、物語を進めるための薪として。だから、今回のラオモト=サンの余興はまさしく渡りに船。ラオモト=サンはほとんどブッダ……。

 

 さて、正史においてはフジキド・ケンジがニ010101010101ヤーとなりましたが、これはフユコでも構いません。彼らは、確定的にドラゴン・ゲンドーソーによってインストラクションを受ける流れのうちにあるからです。だがトチノキは駄目だ……十八歳になるまで、肉体の完全なニンジャ化が完遂されないためにナラクが休眠状態に入ってしまう。これはいけない。

 

 他のモータルがニ010101010101ヤーとなった場合には、このインストラクションを受けられるかどうかというところで運ゲーが入る。確率は凡そ10%。こんなんでリセットなんて最悪の展開としか言いようがないんですね……ギンイチがニ010101010101ヤーとなるルートも味がありますが、しかしこれはRTAだからね。しょうがないね。

 

 さて、モリエちゃんが逡巡とはお構いなしにスリケンを投げていた理由について、お話しします。

 初めにお話しした通り、このゲームには『シンクロ度』という概念が存在しています……これは、どれだけキャラクターが私の命令に従うか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を示すパラメーターとなっています。予想外の強敵との戦い、その中で私と共に戦ったことが、この数値を押し上げました……。

 

 そして、ここからの展開において、私は何万回と試走を繰り返して学習を重ね、最適な動きを見出しました。反射的に動けるまでに……。だから、彼女はRTAとして、チャートに沿った、最適化された動きを取ります。()()()()()()()()()()。別に私とてそれをただ眺めるなんてことはしません。試走に基づいた土壇場での完璧なるチャート変更をお届けする使命がありますからね。できればこのまま眺めてるのが一番いいんですけど。

 

 そういう訳で、最適解として、ノーティアーはトチノキを、ケンジを無意識的に殺しました。ナムアミダブツ。ブッダよ、まだ寝ておられるのですな。タイムをセンコとしてやらねばなりませんよ。気張りましょう、モリエちゃん!

 まあ本人がどう思っていようがチャート通りに彼女は動くんですがね。

 ……さあ、ノーティアー=サン。物語の運び手(デリヴァラー)、私だけの救世主(デリヴァラー)。RTAの完走まで、私を運ぶのだ)))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『よくやった。では、そのモータルを回収したのち、撤収したまえ』ゲイトキーパーからの通信が切れた。

 「おう良かったなあ、生き残れてよォ。お前は今日からあの女ニンジャの奴隷だぜぇ」ヒヒヒ、とオフェンダーは笑い、乱雑にフユコの手を掴んで立ち上がらせた。そして、彼は、フユコが何事かを呟いているのに気づいた。

 「……殺す……」

 「殺されたいか!まあそうはならねえ、お前は生きて辱められるんだ、イイだろう?」

 「……殺す……べし……」

 「そんなに殺されてぇのか!?じゃあしょうがねえなぁ、俺が殺してやるよ!顔の皮を剥いでなあ!」

 「ニンジャ、殺すべし!」

 「……え?」

 

 そのコンマ五秒後、オフェンダーは己の身に何が起きたのかに気づいた。女の腕が、彼の心臓を貫通していたのだ。

 「アバッ、アババッ、アババババーッ!?!?」

 「イィヤーッ!」更なるチョップによって、オフェンダーの首は跳ね飛ばされた。「サヨナラ!」宙に舞った首がそれだけを言い終えると、地上の胴体は爆発四散した。「オフェンダー=サン!」スキャッターが叫ぶ。

 

 返り血と己の血で染まったフジキド・フユコは、血の涙を流していた。絶え間なく流れ落ちるそれは、他の血と混ざりあって体に巻き付き、変形し、ニンジャ装束を形成する。

 ほとんど黒に近い赤色で構成されたその装束に、ブレーサーとマフラーが装着される。顔に張り付いた血から形成されたメンポには、狂気じみた形の『忍』『殺』の文字が刻まれていた。

 その赤黒のニンジャは、二人のソウカイニンジャを前にして、オジギをした。その眼光には、絶望と憎悪で彩られた復讐心がはっきりと映っていた……!

 

 

 

 

 

「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 【ニンジャスレイヤー・ネヴァー・ラーフス】その② おわり。その③に続く。

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