がっこうぐらしRTA 町の掃除屋さん√   作:秋涼

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誤字報告、校閲ありがとうございます。




私ができることを

『サバイバル部監修 ゾンビサバイバルガイド』

 

彼の家に夕食を作りに行ったときに見つけた本だ。

表紙にゾンビの絵と青いつなぎを着た金髪の笑顔なマスコットがサムズアップしてる変な絵だった。

彼がスーパーにいっている間に部屋をあさったときに机の上に置いてあったものだ。

ちなみにエッチな本はクローゼットの中に隠してあった。

この前まではなかったので最近持って帰ってきたのだろうか、サバイバル部って書いてあるしサバイバル部は彼が大学で参加してるサークル名だったはず。

なぜサークルなのに部と名乗ってるのが不思議だけれど、考えてもしょうがないのでページをめくる。

 

最終目標は生き残ること、ただ生き残ることだけであり、英雄になろうとはしてはいけない。

 

最初のページに書いてあった言葉を見てページをめくると

 

写真付きで彼やそのサークル仲間だと思われる人たちがゾンビへの対処法や近接戦闘になった際の捌き方、頑丈なバリケードの作り方やシチュエーション別の素材の選び方等、様々なことが書いてあった。

 

なにより彼が写真で楽しそうにしてるのに笑みがこぼれる。

写真の中の彼は笑ってはないが楽しんでいるのが写真でもわかる。

 

ゾンビなんて本当にいるわけではないのに発生した時のことを想定して本気でマニュアルを作っているのだろう。

この前も宇宙人が攻めてきたらという題目で活動していると聞き、彼に大学生にもなってこんなくだらないことやって恥ずかしくないの?と聞いたら

全力でくだらないことを真面目にやるのが最高に楽しいと今までであまり見たことがない、最高に楽しくてたまらないという表情でいってるのを見てから、くだらないと彼に言うことをやめた。

 

思えば、小学校のころも秘密基地を作るのだと私を連れ出しては山や橋の下に秘密基地とやらを作って遊んでいた。その秘密基地もやたら凝ったものを作ろうとしていた。完成してしばらくたったらホームレスに占領されていたけど……

 

彼の感性は小学校の頃から変わってないのかもしれない。

それとも男というものは皆こういうものが好きなのだろうか。

 

しばらくサバイバルガイドを眺めていたが、彼がるーちゃんとスーパーから帰ってくる音がしたので階段を降りてレジ袋を彼から受け取り、夕食を作りに台所にはいる。

 

台所で料理しながら、彼がるーちゃんの面倒をみて遊んでいる音や声を聴くのが、私の細やかな幸せだった。

 

 

 

「りーさん、聞いてたか?しっかりしろよ」

 

胡桃の声で我に返る。今朝は懐かしい夢を見ていて。それを思い返していたら結構ぼーっとしていたらしい。しっかりしなくては。

 

「ごめんなさい、すこしぼーっとしてたみたい」

 

「ここは安全だから大丈夫だけど、気をつけろよ。……しかしここのところ大活躍だな。バリケードとか階段に設置した返しとかあれだけしっかりしてたらある程度はなんとかなるだろうし」

 

「えぇ、この机を固定して、あとは防火扉を降ろして2重にすれば2階に『かれら』が来ることはないと思うわ」

 

 私の言葉に笑顔を浮かべ、強めにバリケードを揺すりビクともしないのを確認してサムズアップする胡桃、初日に親しい先輩を自分で介錯をして落ち込んでいたので、心配だったが今のところは問題はないみたい。

2階の安全が確保できたら1階も割れる窓などを塞いで完全に要塞化したいところだが、まだ『かれら』の行動パターンを完全に調べきれていない為、ある程度分かったら胡桃と一緒に実施しようと思う。

 

「それにしてもりーさん、よくバリケードの組み立て方や補強の仕方知ってるな」

 

「彼がくれた本にね、書いてあったのよ」

 

食事の際にゾンビサバイバルガイドの話になり、気に入ったならあげるといわれそのまま貰った。内容にはあまり興味はなかったが、写真と一緒に眺めていたら自然と内容を覚えてしまっていたのだ。彼との話題以外に使い道がない知識がこんなところで役に立つとは思わなかった。できれば一生使いたくない知識だったけど……

 

「あぁ、例の入り口にえげつねぇ罠置いた人か。いや助かったけど、初めて見た時まじで吐きそうになった。近くまで来たんだからりーさんに顔を見せにくればいいのにな」

 

「私に構ってられないほど、きっとやることがあるのよ。罠とか校舎の掃除とか私のことは気にかけてくれてるっぽいし、今はそれでいいわ」

 

 

「そうかー、案外他のところでも同じようなことしているのかもな」

 

「そうね……そろそろ戻りましょうか、皆お腹空かしてるころだし、夕食をなにか作るわ。今日は野菜も使って麺もあったからラーメンでも作ろうかしら」

 

「よっしゃ!はやく帰って飯にしようぜ!」

 

ラーメン、ラーメンと歌いながら歩く胡桃と一緒に生徒会室へ歩く。

 

めぐねぇや他の皆には話していないが、るーちゃんが心配になる。あの日は彼がるーちゃんを迎えにいくと遠くの場所に出張中の母がメールで送ってきていたので無事なはずだ。

 

自分や皆で作った本には英雄になろうとはしてはいけない。と書いてあったのに学校でやったことは、この状況だと英雄に近い行動だ。

 

元々運動神経がいいのに加えて、大学でサバイバル部というサークルでゾンビサバイバルや災害発生など様々なシュチュエーションを想定して全力で活動、訓練する変なサークルに入ったせいで下手なアスリートより身体能力が高いと思う。よほどのことがない限り大丈夫だと思うが、やっぱり無事な姿を見ない限り、心配なのだ。

 

「りーさん、どうかしたか?」

 

「なんでもないわ」

 

難しい顔をしていた私に気付いた胡桃に返事を返し、私は生徒会室へと歩く。

 

 

彼がまたここに寄った時に完璧に拠点として仕上げたら、彼は褒めてくれるだろうか、初日は不安やストレスで取り乱してしまったが、私は私が今できることを一つずつやっていこうと思う。

 

彼とるーちゃんが無事でありますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アニメやゲームで、わけがわからない部活やサークルってよくあるよね。

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