「ーーーーパルシェン、からをやぶる。」
このわざに一体どれほどのトレーナーが身を構えたことだろう。
紫がかった、凹凸の激しい鋼鉄の如き殻がパージされる。フォルムが丸みを帯び、殻は薄くなる。
ーーーーそれを見届けたあと、不意にその姿が消える。
「なっ!?どこへ消えた!?」 「シャーバ!?」
相手のトレーナーもアーボックもパルシェンの姿を見失い驚愕の表情を浮かべる。本来パルシェンは速いポケモンではないのだから当然の反応だろう。
「つららばり」
そう言葉を発するのと同時に、アーボックの背を鋭い氷柱が突き立てる。
「後ろか!!アーボック体制を整えろ!!そしてつかさずどくばりこうげきだ!!」
アーボックが後ろに振り向き、どくばりを放とうとする。が、もう遅かった。
「アーボック!?」
振り向いた彼らの視界には既に氷柱の弾幕が拡がっていたのだ。次々と着弾するそれに、アーボックはなすすべもなく吹き飛ばされる。
「とどめ、つららおとし。」
起き上がったアーボックの頭上には今までのものより、一際大きな氷柱があった。それが視界を塞ぐように落ちてくる。
「アーボックッ!!!!」
舞い上がった砂埃が晴れ、爆心地の様子が段々と見え始める。そこには、目を回したアーボックの姿があった。
「アーボック戦闘不能! パルシェンの勝ち! よって勝者、シンジュ選手!!」
審判が、あたち達の勝利を告げる。
「シェン!!」
駆け寄ってくるパルシェン、いやあたちの嫁ポケを受け止める。
「…………よくやったね、パルシェン。ありがとう。」
愛しい愛しい嫁ポケに全力の感謝を伝える。少し顔を赤らめながらも、当然だと返事をするパルシェンの姿が、また愛おしかった。
騒ぐ会場の喧騒の中、それでも仲良く触れ合うあたち達の姿は、それはそれは良いコンビに見えることだろう。
「セキエイリーグ準決勝はこれにて閉幕です!さあ、いよいよ明日は決勝戦!この勝敗が決まった暁には新たなチャンピオンが生まれるのです!!」
リポーターが声を荒げて観客が沸く。万来の喝采の中、あたちは明日へと想いを馳せる。
そうだ、明日の決勝に勝つことが出来れば、あたち達が、チャンピオンなのだ。それを実感すると思わず手の平に力が篭る。
「……明日もがんばろうね。」
「シェン!」
少し悪い目つきと、歯の見えるニヒルな笑顔がカッコイイ。やっぱりあたちはこの嫁ポケが大好きなのだった。
さて、明日は決勝の舞台なのだが、その前に話さないといけないことが一杯ある。
例えば、あたちのこと。例えば、嫁ポケことパルシェンのこと。例えば、あたち達の出会いのこと。
それらをゆっくり話してからでも、決勝戦は遅くはないとは思うのだ。
これは、あたちと嫁のパルシェンが仲良く旅をしながら、他のポケモンや人と関わりながらいつかチャンピオンになる、多分そんな風な物語なのだと思う。