初めての忍びの任務
ー???sideー
まるで時代劇に出てくるような部屋で、紫色の長髪を後頭部とアップし、黒いタイトスカートにスラリとした美脚を黒いストッキングで包み、白いワイシャツの胸元を開けて豊満な胸元を晒した、20代半ばの赤い縁眼鏡を掛けた美しい女性が、お面と鎧を着て右目に刀の傷痕が残っているのが特徴的な高圧的な雰囲気を出す男性に向けて口を開く。
「道元様・・・・『超秘伝忍法書』の略奪を始めるのですか?」
道元と呼ばれる男に、女性は声には出してはいないが、その心中は静かに怒りが湧いていた。
「“『超秘伝忍法書』を略奪”するのは重要なる忍務だ。それに何の問題があるのかね?」
道元と呼ばれた男はニヤリと笑みを浮かべながら呟いた。
「こちらには“超秘伝忍法書の選ばれし者”が出ていません・・・・それは善忍である向こうもまた同じです!それなのに何故・・・・!?」
「別に超秘伝忍法書を略奪するのは、早くたって良いじゃないか?どうせやる事は同じだ・・・・それにオーナーである私の言うことが聞けないのか? 鈴音よ?」
「・・・・っ!!」
鈴音と呼ばれた女性は沸き上がる怒りをなんとか静める。そんな鈴音に、道元は話し続ける。
「それに、もうすでに“彼女達”には命令を下している」
「!?!?」
道元の言葉に鈴音は驚愕する。もうそんなに早く“生徒達”と道元が動いていたことに、鈴音は驚く。
「も、もし・・・・“あの超秘伝忍法書が合わされば”・・・・とんでもないことになるんですよ!?」
「安心しろ鈴音、そのために私が『管理』をするのではないか・・・・」
道元は勝ち誇った笑みを浮かべて、手に持っていた“2つのカプセル”を見せてそう言った。
そして鈴音はこの時に確信した。道元という外道な男が何をやらかすのかを。
「畏まりました・・・・失礼します(俗物が・・・・!)」
鈴音は内心で毒づいて、一礼してその場を去った。
「フゥ~、少し反抗心があるな、あの雌は」
道元は懐からスマホを取り出して、“ある人物”に連絡した。
「もしもし? 道元です。ええ。こちらも素晴らしい贈り物に感謝していますよ。こちらでも大いに役立てますからね。『伏井出ケイ先生』・・・・!」
道元は手元に握る、“黄色地に黒い縞模様をつけた怪獣が描かれた『怪獣カプセル』”と、“カミキリ虫のような黒い怪獣が描かれた『怪獣カプセル』”を見つめて、ほくそ笑んでいた
ー理巧sideー
「はい、こっちもまあ、それなりに学校生活してますよ。そんな事よりも、鷹丸さん達も変わりないんですね?」
《まぁね。こっちもようやく寮生活が慣れてきたところよ》
平日の朝方。寮の部屋でテレビのニュースをBGMに、身支度していた理巧は、携帯電話が鳴り響いているのに気づき、画面に『ナリカさん』と表示されているのを見ると、間髪入れずに電話に出て、育て親のナリカから近況報告を聞いていた。
「家には、まだ帰れないんですか?」
《ええ、まだ復興作業が終わってなくてね。ここ最近の怪獣騒動で色々なところに作業員が行ってて、私達のところでの作業も滞っているのよ》
「そうですか、ナリカさん達の仕事はどうですか?」
《大丈夫よ。怪獣騒動での損害保険の交渉とかでちょっと忙しいけど、その分給料の割り当ても良い感じだしね。あっ、そろそろ行かなくちゃ、それじゃね理巧。今度ウワサの雲雀ちゃんと柳生ちゃんを紹介しなさいよ~?》
「その件に関しては、また今度という事で・・・・」
携帯の通話を切った理巧は時計を見ると、まだ7時25分。寮から学校までゆっくり歩いても10分足らずで着くから少し早かったようだ。
『理巧。ナリカさんから電話?』
理巧の影のダークゾーンからペガがひょっこりと顔を出した。
「うん。丁度夜勤が終わったところだったから、電話したみたいだね・・・・」
ニュースではここ数週間あまりで頻繁に起こっている怪獣騒動の話題で持ちきりであり、怪獣と戦う巨人の名称を、『ウルトラマンジード』であると公表された。
「雲雀ちゃんが匿名でジードの名前を教えたんだよな・・・・」
『うん。いつまでも謎の巨人扱いじゃカッコ悪いって言ってたよ?』
「・・・・ペガ、少し気になる事があるから、秘密基地に行くよ」
『うん!』
「レム、基地に行くからエレベーターを頼む」
《はい》
寮の部屋に秘密基地への転送エレベーターが現れ、エレベーターに乗り込んだ理巧とペガは、そのまま基地へと向かった。
基地に到着した理巧はエレベーターを降りると、基地の指令室にはーーー。
「り、理巧くん・・・・!/////」
「な、なな・・・・!/////」
「雲雀ちゃん、柳生さん・・・・?」
雲雀と柳生が指令室で着替えていたのか、手に半蔵学院の制服を持って下着姿だった。ちなみに雲雀はピンク、柳生は白だった。
「・・・・・・・・・・・・」
「「~~~~!!////////」」
『あちゃ~』
「レム。雲雀ちゃんと柳生さんが着替えているなら、それを先に報告してくれ・・・・」
『聞かれなかったので答えませんでした』
「そうか、じゃこれからはきちんと教えてくれよ」
『了解しました』
「さてと・・・・」
理巧は、いつの間にか武器の番傘を持った柳生に向かって正座した。
「さ、やっちゃってくれ」
「良い心がけだな、理巧ッ!!!」
ドガンッッ!!!
柳生の番傘が、理巧の頭に振り下ろされ、凄まじい音が響いた。
ーナリカsideー
「まったく、あの子は・・・・さてと」
ギギギ・・・・! バチバチ・・・・!
携帯電話を懐にしまった、赤い忍び装束姿のナリカは、足元で“スクラップにしたロボット兵器”に突き刺した自身の武器である大型手裏剣を引っこ抜くと、理巧と連絡する前に制圧した“犯罪者宇宙人達”を見据える。
「さぁ。観念しなさいよ? アンタ達は地球外兵器を持ち込み、製造・密売した容疑が掛かっているわ。即時地球から退去処分になるわよ」
『キュルルルル・・・・!』
捕縛用の拘束具で捕縛されたセミのような頭部をした宇宙人、『セミ人間』が言い訳を並べる。
「言い訳は宇宙警察か、宇宙裁判所にでもしなさい、よっと!」
『ギュアッ!?』
『ギュルッ!?』
『ギュギュッ!?』
ナリカが後ろに向かって大型手裏剣を投げると、手裏剣を大きく弧を描きながら、ナリカの後ろの物陰から銃を構えていたセミ人間を蹴散らした。
「フッ!」
ナリカは蹴散らしたセミ人間達に拘束具を投げると、セミ人間達は全員捕縛された。
「まったく、か弱い女性に後ろから奇襲だなんて、セコい奴らね~。こちとら夜勤で少し眠いって言うのに・・・・」
たった一人で数十体のロボット兵器を全滅させ、武装した犯罪者宇宙人を制圧した、自称か弱い女性のナリカは、ふぁ~、と小さく欠伸をすると、犯罪者宇宙人を連行する為に来た増援部隊に指示を飛ばし、後を任せ、同じ職場の(一応)女性職員が運転する車の後部座席に座り、“仕事場”に報告の為に戻ろうとした。
眠たい目を擦るナリカは携帯が震えたのに気づき、取り出して着信を見ると、『ハルカさん』と表示されていた。出ると今日はスバルと日勤のハルカが出た。
「おはようハルカさん、こっちは終わったよ。鷹丸から連絡は来た?」
《はい。鷹丸様もゼナさんと一緒に『宇宙植物ルグス』の不法栽培をしていた人達を摘発したようですよ》
「まったく。こうも夜勤続きだと気が滅入っちゃうね」
《そうですね。ここのところの怪獣騒動が頻繁していますし・・・・》
怪獣騒動と出たところで、ナリカは前の運転手に気づかれないようにコッソリと話す。
「ハルカさん、あのウルトラマン、確かジードって言ったよね? アイツの事、どう思う?」
《・・・・・・・・鷹丸様もスバルも、もしかしたらと思っています。あのウルトラマンの戦い方、あの子に良く似ています》
「(・・・・ウルトラマンジード、戦い方や僅かな癖、戦闘モーション、あの子と良く似ているのよね、理巧と・・・・)」
育ての親達は、ウルトラマンジードが我が子同然に育てた少年に似ている事に首を捻っていた。
ー理巧sideー
理巧と柳生と雲雀とペガは、転送エレベーターから降りると、忍び教室に向かい、到着するとまだ飛鳥達が来ていないので、とりあえずトランプでババ抜きをしていた。
「二人とも、わざわざ基地に来て着替えなくても良いんじゃない?」
「ゴメンね。柳生ちゃんのぬいぐるみさん達を指令室に置いていたらちょうど良いと思って着替えてたの」
『ヘェ~、柳生ってぬいぐるみを集めているんだ?』
「まぁな、主に海洋類のぬいぐるみ、特にイカのぬいぐるみを集めている。部屋に入りきらなくなってきたから、指令室に置いても良いかと思ってな。理巧、どうだろう?」
理巧が雲雀から、雲雀がペガから、ペガが柳生から、柳生が理巧から札を取り合いながら駄弁っていた。
「まぁ良いんじゃないかな。雲雀ちゃんの本棚と漫画とライトノベルやゲームも置いているし、今さらぬいぐるみくらい構わないよ」
「助かる。しかし、まさかあんなSF映画みたいな秘密基地と転送エレベーターを持っていたとはな。しかも、宇宙人まで・・・・」
柳生が自分の持つ札を取ろうとするペガを見つめた。
『ん? えへへへ、理巧とはもうかれこれ理巧が中学二年の頃から一緒にいるからね』
「ペガくんはなんで地球に来たの?」
『うん。ペガは故郷のペガッサ星で家族と暮らしていたんだけど。両親から、【宇宙を旅して、大人の男になっていつか戻ってこい】と言われてね、それがきっかけで旅をするようになり地球に漂着したんだ。でも、漂着時にカプセルが壊れちゃってね、住まいも無くて、お腹も減って困っていたところを、理巧に助けて貰って、それ以来は、理巧の育ての親の人達にも内緒で、一緒に暮らすようになったんだ』
「ではあの造花の内職は何だ?」
「あの造花はね、いつかペガッサ星に帰ったとき、お母さんにプレゼントしようと作っているんだ」
「・・・・ペガくんは、帰りたいって思う?」
たった一人で故郷の星を離れて、果てしない宇宙の旅をし、別の星で生活するようになって数年。故郷が恋しくならないのかと、雲雀が聞いてきた。
『う~ん、ちょっと寂しいって気持ちにはなるけど、でも大丈夫! いつか絶対帰れるって信じているから!』
「そっか・・・・」
「ふっ・・・・」
「・・・・・・・・」
ペガの言葉に雲雀と柳生は笑みを浮かべ、理巧も小さく薄く笑っていた。
『はい! あがりっ!』
「「「ん?!」」」
話しているうちに、ペガが持っていた持ち札は全て置かれ、ペガが1番最初にあがっていた。
「あ! ペガくんが1番なの!?」
「くっ! お喋りが過ぎたか・・・・!」
「おめでとうペガ」
『えへへ~』
雲雀と柳生が驚き、理巧がペガの勝利を称賛し、ペガはふんぞり返った。
「っ! ペガ隠れて、他の人達が来た」
「「っ!?」」
『わ、わわわ!』
ペガが慌ててダークゾーンに隠れ、雲雀と柳生と理巧があたかも三人でババ抜きしていたかのように姿勢を調整し終えると、忍び教室の壁が回転し、飛鳥と斑鳩と葛城が入室してきた。
「あ、飛鳥ちゃん! 葛姉! 斑鳩さん! おはよう!」
「おはよう」
「おはようございます・・・・」
「おはようございます。雲雀さん、柳生さん・・・・暁月くん」
「おはよう雲雀に柳生! あと暁月もな。シシシ~、二人とも今日も良い感触だぞぉ~♪」
「ちょっ! 葛姉!」
「朝っぱらからセクハラか・・・・!」
斑鳩は雲雀と柳生に挨拶するが、あまり授業態度が良くない理巧には、厳しい目だが、一応返答した。
葛城は挨拶してすぐ後ろから雲雀と柳生の主張の激しいバストを鷲掴みして揉みしだき、雲雀と柳生は必死に逃れようと足掻いていた。
「お、おはよう、りっ、理巧、くん・・・・」
「あぁ、おはようございます」
トランプを片付ける理巧に挨拶するが、飛鳥はいつものような元気が無かった。
理由は単純、『初恋の人』である理巧が自分の事を思い出す素振りがなく、クラスメートで後輩の雲雀と柳生と仲睦まじく一緒にいる光景に気落ちしていたからだ。
「なんだなんだ飛鳥~? 元気が無いぞ~?」
「あひゃぁっ! ちょっと葛姉っ!」
気落ちしている飛鳥を元気づけようとしてか、ただ単純にセクハラしたかったから分からないが、葛城が飛鳥の90センチのGカップバストを揉みしだいた。
斑鳩は葛城のセクハラに呆れ、葛城から解放された雲雀と柳生は犠牲となった飛鳥に内心謝意を述べながら、理巧の近くに移動した。
「(ねえ、理巧くん。飛鳥ちゃんの事を思い出せた?)」
「(なにやら段々と飛鳥の元気が無くなっていってるぞ?)」
雲雀と柳生は日に日に元気を無くす飛鳥を心配そうに見つめながら、理巧にコッソリと話しかけた。
「(・・・・・・・・・・・・)」
理巧は飛鳥と出会った事があると言われている小学生時代の記憶を思い出そうとするが、過去を思い出そうとすると、『凄惨な中学生時代の記憶』が浮き上がった来た。
「ぅっ!」
「理巧くん?」
「どうした?」
突然理巧の無表情な顔に苦悶の色が出てきた事に雲雀と柳生は心配そうに聞く。
「い、いや大丈夫だ、そう大丈夫だよ・・・・」
二人に手を上げて制する理巧は少し呼吸を落ち着かせようと深呼吸するが、突如教室の中心からブォワアンッ! と、煙が巻き上がり、煙が晴れると担当教師の霧夜先生が立っていた。
「皆、おはよう」
『おはようございます!』
「さて、授業を始めるぞ。と言いたいが、連絡事項がある。」
霧夜先生が、そう言うと飛鳥達は何事かと首を傾げ、理巧は興味無さげに小さく欠伸を洩らす。
「今日の午後の授業は、全員で学院外で忍務を遂行してもらう」
「学院外?」
飛鳥が首を傾げると、葛城が声を弾ませる。
「おぉー! 遂に来たぜっ! ここんとこ怪獣騒動で学院外での任務が無くなって、地下の道場で飛んだり跳ねたり座禅したり、地味~な修行ばっかりだったからな! で先生! その忍務って!?」
「『商店街で不良退治』だ」
「はぁ~~!?」
霧夜先生がそう言うと、葛城が目に見えてやる気を無くした。
「商店街に不良学生がたむろして手を焼いているらしい」
「不良退治?」
「不良さん怖い・・・・」
「安心しろ、雲雀は俺が守ってやる」
飛鳥が忍務内容に首を傾げ、雲雀が怖そうに声を上げるが、柳生が優しく声をかけた。
「うん! あっ、霧夜先生! 勿論理巧くんも行くんですよね!?」
「忍び学生である以上、理巧も勿論参加する事になっている、サボろうとするなよ理巧?」
「は~い・・・・・・・・チッ」
理巧が小さく舌打ちしたのを斑鳩だけが気づいてスッと理巧を睨むが、理巧は勿論無視した。
* * *
それから時間が経ち皆で学院外に出ようと準備をする中、雲雀と柳生がコッソリと寄って話始めた。
「(ねえ柳生ちゃん。この忍務で理巧くんを飛鳥ちゃんや斑鳩さんや葛姉と仲良くさせられないかな?)」
「(それは少し難しいな。斑鳩は授業態度が良くない理巧に良い感情を持っていないし、葛城は男にあんまり興味無いし、飛鳥に至ってはどう距離を縮めれば良いか惑っている感じだ)」
「(でもこのままじゃ、皆理巧くんの事を誤解しているみたいでイヤだよ・・・・)」
理巧が本当は優しくて誠実な人だと言う事を知らずに、少々険悪な雰囲気のクラスメート達の状態に泣きそうな声で言う。
「(・・・・俺としては、理巧を俺と雲雀で独占できるから今のままで良いと思うが・・・・)」
「(柳生ちゃん、今なんて言ったの?)」
「(んんっ! い、いやなんでもない・・・・)」
ボソッと呟いた柳生に雲雀は首を傾げるが柳生は誤魔化すように咳払いした。
「(とりあえず、この忍務で少しは皆との距離が縮められるように俺達でなんとかしてみるか?)」
「(うん!)」
柳生の言葉に、雲雀は嬉しそうに頷いた。