ー霧夜sideー
「そうか、やはり『ウルトラマンベリアル』の生存を立証できる証拠は簡単に見つからないか?」
《ああ。こっちでも犯罪宇宙人や、一般宇宙人達からもそれなりに情報を集めているが、どれも要領を得ない情報ばかりだ》
「そうか、すまないなスバル。仕事中にわざわざ連絡してくれて」
《構わないさ。ベリアルの行方は以前からAIBでも捜索中だからな。それよりも、今気になるのは・・・・》
「ああ。“あの学園”だな?」
《最近、“あの学園のオーナー”が、犯罪宇宙人と秘密裏にコンタクトを取っている情報があるからな。もしかしたら、最近の怪獣騒動にも、“良からぬ輩”が動いているかもしれない。こっちも情報をもう少し集めてみる。ゼロによろしくな。それと理巧にもな》
「ああ」
理巧達が忍務で外に出て直ぐ、『AIB』で仕事をしている理巧の育ての親の1人であるスバルから、『ウルトラマンベリアルの捜索』の進捗具合の連絡を終えた霧夜は、あまり良い成果が出ていない事に少し肩を竦める。
≪やっぱり、ベリアルの行方は、そう簡単には見つからないか・・・・≫
霧夜と一体化しているゼロも、少し落胆したような声色をしていた。
「ゼロ、本当にベリアルは生きているのか? 『クライシス・インパクト』で滅んだって可能性は?」
≪そう簡単に滅びるようなヤツなら、親父達『光の国のウルトラマン』や、俺達『ウルティメイトフォースゼロ』がとっくに倒しているぜ≫
「・・・・それもそうだな」
≪それに・・・・≫
「それに?」
ゼロの言葉を聞き返す霧夜に、ゼロは確信を込めて声を発する。
≪感じるんだ・・・・ヤツの、ベリアルの気配をな・・・・。ヤツはこの宇宙の何処かにいる。ジッと息を秘めて、何かを企てている・・・・!≫
ゼロの脳裏には、ベリアルが高笑いしている姿が、鮮明に浮かんでいた。
ー理巧sideー
そしてその頃、理巧を加えた半蔵学院の忍び学生達は、浅草の商店街へと赴いた。
「ハァ~ァ、『VIPを極秘裏に護衛』とか、『大使館に侵入して、機密情報の入手』とかだと思ったのに・・・・」
「そう言う“国家的忍務”は、学院を卒業し、立派な忍びになれた諸先輩方の仕事ですわ」
「だからって『不良退治』はねぇだろう!」
葛城はつまらない忍務に愚痴り、斑鳩が注意するが、それでも愚痴る。
「でも逆に難しいよね? 一般相手にあくまでも忍びとして人知れず退治しなきゃならないし・・・・」
「だからこそ修行なのです」
「あぁ~はいはい・・・・」
飛鳥達の会話を聞き流しながら、理巧と雲雀と柳生(後ダークゾーンに隠れているペガ)は、コッソリと話をしていた
『(そう言えば理巧、今朝は何で基地に行こうとしたの? 雲雀と柳生の着替え騒動で聞きそびれちゃったけど)』
「(・・・・・・・・これ)」
理巧はスマホの映像を、自分の両隣にいる雲雀と柳生にも見えるように見せる。ペガは流石に往来で姿を見せるわけにはいかないから見えないが。
「(あっ、それ『スカルゴモラ』だね?)」
「(理巧がジードとして最初に戦った敵か。俺も見たことがある。しかし、コイツがどうかしたのか?)」
理巧は次に画面を操作すると、『ジード・プリミティブ』と『ジード・ソリッドバーニング』の映像を見せた。
「(ジードの写真を見せて、どうしたんだ?)」
「(似てると思わないかな? 『スカルゴモラ』と『ジード』が・・・・?)」
「(えっ・・・・?)」
『(どこが??)』
「(っ!?)」
雲雀とペガが首を傾げるが、柳生は理巧の言いたい事を察したのか、わずかに目を見開いて、小さく声を発する。
「(『プリミティブ』と、俺と雲雀の『リトルスター』が融合した、(俺と雲雀の絆の結晶である)『ソリッドバーニング』は、“2つのウルトラマンを融合させた姿”。そして、『スカルゴモラ』も、“2体の怪獣が融合した怪獣”・・・・!!)」
「(そう、『ジード』と『スカルゴモラ』には、共通点がある。そしておそらく、“『スカルゴモラ』は誰かが変身していた”)」
「ええっ!!?」
「「「っ!!?」」」
「あぁゴメン、何でもないの! 何でも!!」
突然大声を上げた雲雀に、前方を歩く飛鳥、斑鳩、葛城驚いて振り向くが、雲雀は慌てて笑みを浮かべながら両手を振った。
「「「???」」」
三人は再び目線を前に戻し、雲雀が理巧にコッソリと話を進める。
「(『スカルゴモラ』が誰かが変身しているって、どういう事っ!?)」
「(多分、僕がジードに変身する際、『ジードライザー』で2つのウルトラカプセルを読み込んで変身するように、その『誰か』も、『ジードライザーのようなアイテム』を使って、『ゴモラ』と『レッドキング』を融合させて変身したんじゃないか。そう思って、レムに『スカルゴモラ』が現れる際、もしくは倒された後、どこかで不審な行動をとっていた人物がいないか、当時の監視カメラの記録映像にアクセスしてもらおうと思ったんだけどね)」
「(なるほどな。しかし、理巧。ウルトラマンには興味ないとか言っていたくせに、真面目に捜査するなど、どう言った心境の変化が起きたんだ?)」
柳生が聞くと、理巧はやれやれと肩を竦める。
「(怪獣騒動が長く続くと、現在実家周辺の復興作業が進まなくて実家に帰れないし、バイトも中々決まらないからだよ。さっさとこんな怪獣騒動を終わらせて、穏やかな日々に戻りたいからね)」
「(あぁ、そうか・・・・)」
ここ数日の付き合いで、理巧の性格をある程度理解している雲雀と柳生は苦笑いを浮かべていた。
「あなた達、さっきから何をこそこそと話しているのですか?」
そしてとうとう委員長の斑鳩が目を鋭くしてこちらを睨んできた。
「あぁ! その、ね! 不良さん達って、何処にいるかなぁって!」
雲雀がそう言うと、斑鳩は手を顎に添えて考える。
「ただ闇雲に歩いても時間が過ぎるだけですね。手分けしてターゲットを探しましょう。ただ、暁月さん」
「はい?」
「貴方は今回が初忍務です。雲雀さんか柳生さんと一緒に行動をしてください」
「・・・・はい」
理巧は明らかにやる気無いんですと言わんばかりに返事をするが、雲雀が何かを思い付いたような顔を浮かべた。
「そうだ! 理巧くん、飛鳥ちゃんと一緒に行ったら良いんじゃないかな?!」
「えっ!? 雲雀ちゃん!?/////」
雲雀の提案に、飛鳥が顔を赤くする。雲雀は飛鳥の耳元に近づき、耳打ちする。
「(飛鳥ちゃん、理巧くんと少しでも距離を縮めて、理巧くんに思い出して貰おうよ)」
「(え、ええぇっ!!?/////)」
「ね! 理巧くんも良いよね?」
「(雲雀ちゃんは柳生さんと一緒になるだろうから効率的に考えても、飛鳥さんと一緒に行くのが良いかな? 斑鳩さんと葛城さんは三年生だから単独行動でも大丈夫だろうし)・・・・・・・・ああ。良いけど」
「お待ちください。そんな勝手にーーー」
「良いじゃねぇかよ斑鳩。ド素人の本人がOK出してるんだしよ」
「しかしですね」
「それに、恋路を邪魔するヤツは馬に蹴られるぜ?」
斑鳩は渋面を作るが、ヤレヤレと肩を竦める。
「分かりました。飛鳥さん、暁月さんがサボらないように、ちゃんと見張ってくださいね」
「は、はい!「グラシっ」・・・・えっ?」
わずかに緊張を孕みながらも返事をする飛鳥の肩を、前髪で眼帯で隠れていない目を隠した柳生がグラシっと掴んだ。
「・・・・・・・・・・・・」
「や、柳生ちゃん??」
「飛鳥。雲雀がお膳立てしたのだから上手くやれよ」
「う、うん!」
「それと・・・・」
「えっ?」
顔を上げた柳生の目には、光が宿っていなかった。
「“抜け駆け”は、許さんからな・・・・?」
「は、はいっ!」
思わず柳生に敬礼する飛鳥。雲雀は飛鳥ちゃん頑張れと言わんばかりに見つめ、葛城ニヤケ、斑鳩は呆れたような目線を送る。
「・・・・・・・・」
しかし理巧は、そんな女子達のかしましい様子に目もくれず、高い建物を睨むように見上げーーー。
「ーーーーーー!!」
その視線の先に殺気を飛ばすと、他の建物にも振り返り、殺気を飛ばす。
「理巧くん、どうかしたの?」
「・・・・いえ、別に」
飛鳥がキョロキョロと辺りを睨んでいる理巧の様子に首を傾げるが、理巧は何でもないと言わんばかりの態度で歩を進め、飛鳥も慌てて後を追った。
ー???sideー
「ハァァッ・・・・! 見つかったかと思ったわ・・・・!」
理巧が睨んだ建物の屋上にいた少女は、理巧がこちらを睨み、殺気を飛ばした瞬間に咄嗟に隠れたが、理巧から放たれた殺気に全身が畏縮し、心臓はバクバクと脈打っていた。
「一体なんなの、あの男子生徒は・・・・?!」
少女はトランシーバーで仲間に連絡を入れる。
「こちら“ーー”。気を付けて、半蔵学院の方に得体の知れない男子生徒がいるわよ・・・・!」
《ーーーーーーーーーーーー》
「そう、半蔵学院の男子制服を着た、綺麗な赤い髪と赤い瞳をした可愛い顔をした男子生徒よ。わたしの気配を察して、殺気を飛ばしてきたのよ・・・・!」
《ーーーーーー》
「ええっ!? ーーーちゃんも、あの男子生徒に睨まれたの!?」
少女は自分の他に飛鳥達を監視していた“仲間”に連絡を入れるが、どうやら“仲間”の方も、理巧から殺気を飛ばされたようである事を知った。
「まさか、あの男子生徒は、わたし達の存在に気づいているのかしら?」
《ーーーーーー》
「そうね、なるべくならお近づきなりたく無いわね。正直負ける気はしないけど、できる限り相手をしたくないわね」
少女は、いや、少女の仲間も、自分達を睨んだ理巧と目が合った瞬間、全身が震えた。
恐怖か、それとも畏怖か分からないが、理巧に危険性を感じ、少女達は理巧との交戦を避けるべきと話し合う。
「(でも、あぁ・・・・! 何かしら? この、全身が痺れて、ゾクゾクするような甘美な感覚・・・・!)」
が、その少女は理巧が放った殺気から感じた、痺れるような感覚に、弱冠呼吸が弾み、頬を少し紅潮させ、太腿を擦り合わせ身をよじっていた。
《ーーーーーー》
そんな中、少女達の仲間が、トランシーバー越しに声を発してきた。
「ええっ!? ーーーちゃん、貴女あの男子生徒に会ったことがあるの!?」
《ーーーーーー、ーーーーーー》
「フムフム。了解したわ。伝説の忍び、『半蔵』の孫は任せるわね。では、わたしは・・・・」
《ーーーーーー》
斑鳩達を狙おうかと少女が提案しようとしたが、仲間が、“新たな指令”を言うと、少女の顔が驚愕する。
「何ですってっ!? 『あの男子生徒を捕獲しろ』って、そんな命令誰がっ!?」
《ーーーーーー》
「・・・・分かったわ。上からの命令では仕方無いわね。だ・け・ど、正直、あの坊やの捕獲、かなり難関だと思うわよ?」
《ーーーーーー》
「了解したわ。ーーちゃんとわたしで、“死なない程度に痛めつけて”捕まえるわね。手足の何本かは折っても、文句はないわよね?」
少女がそう言うと、連絡を寄越した相手も、承諾した声を出した。
「ウフフ、実は結構、好みのタイプなのよね~、あの坊や♥」
少女の眼差しの先には、理巧の後ろ姿があった。
「そ・れ・に♪ こんな面白そうなモノも支給されたしね~」
少女の手に、『蟹のような、カブトガニのような怪獣の絵が描かれたカプセル』を取り出して、弄ぶように手のひらで転がした。
ー理巧sideー
理巧と飛鳥は、浅草寺の境内を歩いているが、不良らしき学生はいなかった。
「あ、あの、理巧、くん・・・・」
「流石に、寺にはいないですね?」
「う、うんそうだね!」
理巧はやる気は無いようだが、一応探しており、飛鳥も何とか理巧との距離を縮めようとするが、男性経験がお世辞にも豊富ではない(むしろ皆無な)ので、困っていた。
「あれ?」
「え?」
「ん?」
突然声をかけられ、飛鳥と理巧が振り返ると、丈の短い黒いセーラー服を着た、長い黒髪をポニーテールに結わえた、肌は日焼けした少女がいた。
「あ! 水上バスにいた!」
「怪獣が出たときの・・・・」
「また会ったね」
その少女は、理巧が初めて『スカルゴモラ』と遭遇し、避難した際に出会った少女だった。
飛鳥は、理巧が半蔵学院に編入した日に水上バスで出会った少女であり、理巧も怪獣から避難する時に会った少女である事をお互いに説明し、少女がなぜここにいるのかを聞いた。
「修学旅行で来ててね。最近頻発している怪獣騒動で交通がガタガタで帰るのが延期になっちまってな。友達と気分転換で町を歩いていたら、その友達とはぐれちまって、土地勘無いし、うちの学校携帯禁止でね」
「ふ~~ん・・・・」
「どの辺ではぐれたんですか?」
ボーイッシュな口調で喋る少女に、理巧は興味無く返事をし、飛鳥が聞く。
「えーと、何とか通りとか・・・・」
それから少女に付き合い、少し歩いて車が走る大通りに出た。
「う~ん、此処だったかな?」
「浅草って、通りが多いから、それだけだと難しいな・・・・。他に行きそうな所とか?」
「それより良いのか? 私なんかに付き合って、せっかく学校をサボってデートしてたんだろう?」
「~~~~~!!//////」
少女の言った言葉に飛鳥は顔を理巧の髪の毛に負けないほどに赤くした。
「デートしては訳じゃないですよ。一応立派な課外授業なんで」
「へぇ~、そう言えば、この辺りの学校だったんだね?」
「あ、う、うん! そ、そうなの! 近所のお寺を調べるって言う。でも、すぐ終わっちゃって・・・・」
「それで他のみんなと別れて暇してたんです」
忍びの任務で来ていた事を話す訳にはいかないので、それっぽい話で誤魔化す理巧と、デートを否定されて弱冠落ち込む飛鳥。
「そう、なら良いけどね」
その少女は薄く笑みを浮かべ、『ドクロのような頭部をした怪獣が描かれたカプセル』を隠したスカートのポケットをポンポンと叩いた。
ー雲雀sideー
その頃、雲雀と柳生は狭い裏通りを歩いていた。
「しかし雲雀、良いのか? 理巧と飛鳥の関係を進展させるような事をして?」
雲雀が理巧に恋心を抱いているのは、柳生も分かっているので(理巧以外だったら抹殺していたが)、雲雀を心配する。
「良いの。理巧くんと飛鳥ちゃんが仲良しになってくれたら、雲雀は嬉しいから! もちろん斑鳩さんと葛姉とも仲良くしてくれるともっと嬉しいの!」
「そうか・・・・。だがそれは、“競争相手”が増える事にもなるぞ?」
「あっそうか! う~~ん、みんなでずっと仲良く一緒にいられる方法って無いかなぁ?」
「(雲雀や理巧とずっと一緒か・・・・・・・いかん、鼻血が・・・・!)」
雲雀が頭を悩ませ、柳生は何を考えたのか鼻血を二筋垂らし、急いでハンカチで拭うとーーー。
「待ちなよ」
突如声をかけられ、二人が前方を見ると、太った身体にゴツい顔つきと木刀を持った、女子の不良が立ち塞がった。
「うぅっ!」
「・・・・」
雲雀は怯えて柳生の背に隠れるが、周りはいつの間にかイカつい格好と顔つきをした不良達に囲まれていた。
「この制服、コイツら半蔵学院ですぜ」
「ふ~ん、あのやたらとデカい学校ね」
手下の不良の言葉に、おそらくボスであろう女子の不良が柳生達を見下ろす。
「それがどうした?」
「幾らか貸してくれねぇかな?」
先ほどまで鼻血を垂らしていた姿とうって変わった柳生は、鋭く不良達を睨む。
「なるほど、お前らか。雲雀、みんなを集めろ」
「う、うん!」
雲雀は、胸の谷間から竹筒を取り出すと、クラッカーのように竹筒の紐を引っ張ると、竹筒の先から中身が飛び出し、空に大きく『集』の一文字が描かれた。