閃乱ジード   作:BREAKERZ

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苦手な物

霧夜先生がいつものごとく煙玉を炸裂させて忍び教室に登場する。

 

≪なぁ霧夜、毎度のように煙玉を使うって意味あるのか?≫

 

「(何を言うかゼロ。こういう煙玉を使って登場するのが、古き良き忍びの伝統なのだ)」

 

≪そうかぁ~??≫

 

ゼロの呆れた声を聞き流して、霧夜先生は煙が晴れて教室を見渡すとーーーー。

 

「ん?」

 

≪あん?≫

 

霧夜先生とゼロは思わず間の抜けた声を発した。

それも仕方ない。なぜなら、教室の一角では。

水着姿の葛城が頭に大きなタンコブを作って血を流し。

血が付着した番傘と拳を拭き取る水着姿の柳生と雲雀。

呆れて目を半眼にしながら葛城を見下ろす制服姿の飛鳥と斑鳩。

頬をポリポリと人差し指で掻く理巧。

 

「何が起こった?」

 

『あっ! 霧夜先生』

 

呟いた霧夜先生の声に反応して、生徒達が霧夜先生の方を向いた。

 

「葛城。お前何をしたんだ?」

 

「よくぞ聞いてくれたな先生!」

 

今さっき血を流して倒れていたとは思えない俊敏さで起き上がった葛城は、気取った態度で説明する。頭に出来たタンコブのせいでギャグにしか見えないが。

 

「アタイは今日。新たな境地に至ったのさ!」

 

「新たな境地?」

 

≪なんだそりゃ?≫

 

霧夜先生が聞き返すと、葛城は大仰な仕草で答える。頭のタンコブでギャグに見える。

 

「アタイは今まで、女の子のおっぱいを揉んできた。それはアタイのライフスタイルだった・・・・!」

 

≪珍妙なライフスタイルだな・・・・≫

 

「しかし! アタイは今まさにっ! 新たな境地の扉が開いたのだ!!」

 

聞く人によっては最低な事を言いそうになるが、霧夜先生はとりあえず聞いてあげる。

 

「女の子にはおっぱいがある。しかし男のおっぱいなんてアタイは何の興味を抱かなかった。しかし! アタイは気づいたんだ、そう気づいたんだよっ!」

 

「・・・・・・・・何をだ?」

 

≪嫌な予感しかしねぇ・・・・≫

 

嫌な予感がするが、一応聞いてやろうとする霧夜先生とゼロ先生。

 

「男、それも若い男の子には・・・・・・・・お尻があるって事をっ!!!」

 

背中に落雷が落ちたかのような、波による激しい水飛沫舞う海岸に立ったような迫力で、とんでもなくふざけたことを宣言する葛城。

 

「葛姐ぇ・・・・」

 

「ついに女子だけでなく男子にまで・・・・」

 

「理巧、葛城には気をつけておけよ」

 

「葛姐ぇって、本当にセクハラ大好きだから」

 

「・・・・良くわからんけど、了解」

 

性格エロ親父の葛城が新たなセクハラの幅が広くなり、飛鳥と斑鳩はハァ、とため息を吐き、柳生と雲雀は理巧に葛城に警戒するように言って、理巧も了承した。

 

「アタイはちょっとした興味で、暁月のお尻を触ってみた! その時衝撃が起こった! 今までの女の子のおっぱいとは違った新たな新感覚!! 暁月理巧! アタイはお前のお尻に惚れたぜーーーー!!」

 

すかさず理巧の背後に回ると、お尻部分に手をワキワキさせながら伸ばすがーーーー。

 

ゴツンッ!×4

 

「フゴッ!?」

 

しかし、そうはさせまいと柳生と雲雀だけでなく、今度は飛鳥と斑鳩が葛城の頭に鉄拳を下ろした。

 

「葛姐ぇ、流石にダメだよ」

 

「理巧が大人しいからって調子に乗るなこの悪代官」

 

「むぅ~!」

 

「葛城さん。最近は女性が男性にわいせつ行為を行うのは犯罪となっているのですよ」

 

飛鳥が苦笑し、柳生が片目を鋭く光らせ、雲雀が頬をプゥっと膨らませ、斑鳩が手を払いながら苦言を言った。

 

「くっ、アタイはまだ終わらんぞ・・・・! 暁月のお尻はアタイが必ず・・・・!」

 

「・・・・理巧、少し葛城から離れていろ」

 

「??・・・・はい。それでおじ、霧夜先生。今日の授業は終わったんじゃないんですか?」

 

理巧は状況が良く分からないが、とりあえず葛城から離れ、霧夜先生に話しかける。

 

「うむ。実はみんなに言っておく事があってな。今後もしばらくの間、外部の者との接触は厳禁とする」

 

「外部の・・・・?」

 

「傀儡の件か?」

 

『っ!』

 

飛鳥は首を傾げたが、柳生の一言で飛鳥と雲雀と斑鳩と葛城も、はっ、となる。

 

「そういう事だ」

 

霧夜先生が答えると、さっきまで倒れていた葛城が、タンコブを引っ込めて立ち上がる。

 

「ふん! あんなヤツら何人掛かってきても、アタイが返り討ちにしてやるよっ!」

 

「駄目だ!」

 

「っ!」

 

「これは“命令だ”。葛城」

 

「・・・・はぁ~い♪」

 

勇ましい葛城を一喝すると、霧夜先生は静かに目を細めて告げて、葛城も軽快に了承する。

 

「理巧。お前もどうやら狙われているようだから、あまり一人で行動をすることを控えるように」

 

「・・・・・・・・火の粉が降りかかってきたら払いますけどね」

 

「これも“命令”だぞ」

 

「最低限、守る努力はします」

 

目を鋭くする霧夜先生の視線に、理巧も目を鋭くして見据える。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

二人の視線がぶつかり合い、重い空気が教室を覆い、飛鳥達とペガも沈黙する。

 

「・・・・柳生、雲雀」

 

「は、はい!」

 

「・・・・」

 

突然霧夜先生に呼ばれ、慌てて返事をする雲雀と静かに顔を向ける柳生。

 

「理巧から目を離すなよ」

 

「はい!」

 

「了解した」

 

「ではこれにて、解散!」

 

二人が了承するのを確認した霧夜先生は、再び煙玉を使って教室から消えた。

 

 

 

ー霧夜sideー

 

教室を出た霧夜先生に、ゼロが声を発する。

 

≪あの暁月理巧ってヤツ・・・・≫

 

「(どうしたゼロ?)」

 

≪さっきお前と睨み合った時の暁月理巧の目に、ヤツの面影を見た・・・・べリアルのな≫

 

「(・・・・・・・・)」

 

≪霧夜。暁月理巧はどんなヤツなんだ? もう少し詳しく教えてくれ≫

 

「(自分に降りかかる火の粉に対しての冷徹さと、自分の大切な人達に危害を加える者達に対しては、誰よりも冷酷に、そして残酷になれる一面を持っている。まさに忍にむいた性質なヤツだよ・・・・)」

 

≪大切な人達を傷つける者に対する冷酷さと冷徹さか。だがそれは、一つ間違えば危険な一面になりかねない性質だな・・・・≫

 

「(ああ。飛鳥達と共にすごして、少しでも“他者に対する思いやり”を学んで欲しいがな・・・・)」

 

 

 

 

ー理巧sideー

 

理巧は雲雀と柳生に挟まれながら、飛鳥達が理巧を男子寮へ送ろうと帰路についていた。

 

「なんでぇ霧夜先生! あんな人形なんかにびびちゃってさ!」

 

葛城は霧夜先生の命令に、まったく納得しておらず文句を言っていた。

 

「なぁ飛鳥?!」

 

「アハハハ、その時私いなかったから・・・・」

 

「あっそうか・・・・」

 

苦笑いを浮かべる飛鳥。

 

「(外部の者・・・・あの『焔』と『春花』って子達か? 彼女達の様子だと、近い内にまた現れるかもしれないな)」

 

【私と焔ちゃんの目的は、貴方を捕獲することだから、敵って事になるわね】

 

理巧は、春花の言っていた言葉から、彼女達の標的は自分だと思考していた。

 

「霧夜先生のご様子、わたくし達が襲われた件に関して、何かご存知のような、そんな気がするのですが・・・・」

 

「何か?」

 

「何の事だよ斑鳩?」

 

「それは分かりませんが・・・・」

 

前を歩く斑鳩達の会話を聞きながら、雲雀がコッソリと理巧に話しかける。

 

「理巧くん、あの時レッドキングさんが現れたのも、関係しているのかな?」

 

「多分ね・・・・(雲雀ちゃんと柳生さんには、まだ話さない方が良いな)」

 

理巧は自分が襲われたのも、その襲撃者達がレッドキングを召喚した事を、雲雀達にも話していない。悪戯に不安にさせないように理巧なりの配慮である。

そしてふと、柳生が歩みを止める。

 

「関係ない。オレ達は忍だ。“与えられた命令”を、確実にこなすだけだ」

 

「でもまたあんなヤツらが出てきたら、雲雀怖いな~」

 

「安心しろ。雲雀はオレと理巧が守る。な、理巧?」

 

「・・・・そうだね」

 

「えへへ~」

 

雲雀に対して、ニッコリと笑顔を見せる柳生。理巧も雲雀の頭を撫で、雲雀も気持ち良さそうに笑顔を浮かべた。

 

「・・・・・・・・」

 

そんな仲睦まじい三人を見て、飛鳥がなんとも言えない複雑な表情を浮かべていた。

 

「んじゃ飛鳥の胸はアタイが守るっ!!」

 

それに気づいて元気付けようと思ったのか、単にセクハラをしたくなったのか、葛城が飛鳥の後ろに回り、飛鳥の豊満な胸を揉みしだく。

 

「きゃっ!」

 

飛鳥が葛城の手を払い除けようと身動ぎして体勢を崩し、街路樹にぶつかった。

 

スポッ。

 

その拍子で、街路樹の葉に止まっていたカエルがなんと、街路樹にぶつかった時にワイシャツが開け、飛鳥の90センチFカップの谷間に、スポッと入ってしまった。

 

「うぅっ! きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!」

 

飛鳥の悲鳴が夕焼けの商店街に響いた。

 

「カエルーーーーッ!!! カエルが私の胸にッ!!! 助けてーーーーッ!!」

 

錯乱した飛鳥は理巧の足にすがった。

 

「・・・・・・・・はぁ」

 

理巧はため息を吐くと、一瞬で飛鳥の胸の谷間にちょこんと出ていたカエルの足を摘まんで、カエルを引っこ抜いた。

 

「うわっ早業!」

 

「流石だな」

 

「ちゃっかり飛鳥の胸をお触りしてないかぁ?」

 

「もししていたら?」

 

「セクハラの罰として、アタイが暁月の尻を滅茶苦茶にっ!」

 

「葛城さん。本当に新たなセクハラに目覚めたんですね・・・・」

 

外野の言葉を聞き流しながら、理巧は摘まんだカエルを見て、目を回している飛鳥を見下ろす。

 

「雨蛙か」

 

「蛙くらいで動揺して、飛鳥さん忍としての自覚が足りませんよ」

 

「ううぅぅ、私、昔から蛙が駄目なんですよ。特に、太ももとか水かきが何とも言えなくて・・・・!」

 

「微妙に具体的だな」

 

情けない顔となって泣き言を言う飛鳥に、柳生も肩をすくませた。

 

「・・・・・・・・・・・・んん?」

 

「どうしたの理巧くん?」

 

雨蛙を人差し指に乗せた理巧が、眉を寄せた。

 

「ん~。何か思い出せそうだ、蛙を見ていると何か・・・・」

 

「えっ! それって、飛鳥ちゃんとの思い出じゃないかなっ!?」

 

「えぇっ!?」

 

理巧が何かを思い出しそうになり、それが飛鳥との思い出ではないかと雲雀が言うと、飛鳥が反応し、他の三人も理巧に視線を送り、ダークゾーンに隠れたペガも理巧の影に隠れながら聞き耳を立てていた。

 

「・・・・・・・・何か浮かびそうーーーー」

 

「あっ!!////////////」

 

理巧が記憶を探ろうとしていると、突然飛鳥が顔を真っ赤に染めた。

 

「り、理巧くん! 無理に思い出さなくて良いからっ! さぁ帰ろう! 帰ろう!!」

 

飛鳥が理巧の背中に回ると背中を押し、その場を離れようとした。

 

「どうしたんですか? やっと思い出せそうなのに?」

 

「良いからっ! 思い出さなくてっ!!/////////」

 

顔を真っ赤に染めた飛鳥の勢いに押され、理巧はそれ以上何も言えず、他のみんなも飛鳥の剣幕に黙ってしまった。

 

「(うあ~! もしかして、りっくんってば、『あの事』を思い出しちゃったの~~!)」

 

飛鳥は、何を思い出したのか、必死に真っ赤になった顔を隠しながら理巧の背中を押した。

 

 

 

ー飛鳥sideー

 

そしてその夜。それぞれの部屋で就寝している女子達。

斑鳩は布団を敷いて、枕元に女性誌を置かれていたが、キッチリとした姿勢で眠り。

葛城が牛柄の寝間着を着て、トレーニング器具を置いた部屋でハンモックの上で高いびきをしながら眠り。

柳生は水槽が置かれ、烏賊のぬいぐるみを枕元に置き、烏賊柄の布団で眠り。

雲雀はピンクのウササンパジャマを着て、天蓋付きのベッドと周りに沢山のぬいぐるみに囲まれてスヤスヤと眠っていた。

それぞれが眠りについているが、飛鳥だけはまだ起きていた。

ネコサンパジャマを着て、ベッドに横になりながら、動物図鑑を開いて、『秘伝忍法の召喚獣』を考えていた。

 

「来てくれる、か・・・・。斑鳩さんはそう言うけど、やっぱ、具体的な動物の、イメージ、って、無い、か・・・・」

 

そして飛鳥の頭も微睡み、眠りについた。

 

 

ー斑鳩sideー

 

その翌日。

斑鳩は訓練用のジャージを着て、早朝の鍛練に勤しみ、自然公園で木刀を振るっていると抜刀の構えを取る。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

瞑目して集中している斑鳩は気付かなかった。

自分の胸元に“小さな光”が輝いていた事に。

 

「ハァッ!!」

 

ズバンッ!!

 

「なっ・・・・!!」

 

斑鳩は抜刀するように木刀を振り抜くと驚愕した。

振り抜いた瞬間、斬撃が飛び出し、街路樹を一本切り裂いてしまった。

 

「・・・・・・・・」

 

斑鳩は驚愕し、周りに誰もいないのを確認すると、いそいそとその場を立ち去った。

 

 

 

ー葛城sideー

 

「ふぁああああ~~・・・・」

 

葛城はハンモックを下りると、まだ寝惚けている頭を起こそうと洗面所に向かおうとした時ーーーー。

 

ガンッ!

 

「んごっ!?」

 

葛城は唐突な衝撃に目を覚まして足元を見やると、部屋に置いたトレーニング器具の足に、自分の足の小指がぶっかっていた。

それを自覚した時、足に強烈な痛みが走る。

 

「ーーーーーーーーッ!!!!!!」

 

あまりの激痛に、声にならない悲鳴を上げ、目を、グッと瞑ってしまった葛城は気付かなかった。

自分の胸元に『小さな光』が輝いていた。

 

「~~~~~~!!!」

 

葛城は小指の痛みを手で抑えようと、小指を包んだ瞬間、ポォッと、自分の手のひらが光り、小指を包むと、小指の激痛が綺麗に無くなった。

 

「ん?」

 

葛城も不思議に思って手を退けると、小指は赤くなっておらず、痛みもまったく無くなり、首を傾げていた。

 

 

 

ー伏井出sideー

 

「・・・・・・・・2つの『リトルスター』が覚醒したか。では、次のステージへと進めよう」

 

高層マンションの最上階の部屋で、伏井出ケイは『リトルスター』の覚醒を感じ、口角を上げた。




次回、飛鳥のおじいちゃん登場!
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