ー理巧sideー
朝起きた理巧は、寮の部屋でストレッチをし。
五本指で逆立ちして片腕立て伏せを左右で200回ずつ。
室内用鉄棒で逆さ腹筋300回。
瞑想10分。
このところ怪獣の解析作業やらでサボり気味になっていた早朝鍛練を終えて、シャワーを浴びると半蔵学院の制服を着て、まだ朝の7時15分なので、転送エレベーターで基地に赴いた。
「ペガ、レム、おはよう」
『おはよう理巧!』
『おはようございます。理巧』
「レム。いつものを頼む」
『了解しました』
学校以外での1日の大半を基地で過ごしている理巧は、レムに、これまでの歴代のウルトラ戦士達が戦ってきた怪獣達のデータを閲覧する。
中央テーブルに付いた理巧の目の前に、小さなモニターが空中ディスプレイで表示された。
これまでウルトラマンジードとした戦ってきた『スカルゴモラ』、『ダークロプスゼロ』、『レッドキング』などの怪獣が現れても対応出きるようにする為だ。
その中で、理巧は特に目を走らせているのは勿論。“自分の父親かもしれないウルトラマンベリアル”に関わりのある異星人だ。
「(・・・・ベリアルと関係のある異星人は、『ダークネスファイブ』と呼ばれる五人の異星人。
『アーマードメフィラス』とも呼ばれている『メフィラス星人・魔導のスライ』。
『ヒッポリト星人・地獄のジャタール』。
『テンペラー星人・極悪のヴィラニアス』。
『グローザ星系人・氷結のグロッケン』。
『デスレ星雲人・炎上のデスローグ』か。これまでの怪獣騒動に、もしもベリアルが絡んでいるとしたら、この五人がそのうち現れる可能性があるかも知れないな・・・・)」
思考する理巧は眺めながら、朝食を準備するペガ。
主にご飯とインスタント味噌汁。冷凍食品のオカズを置いて、理巧とペガ用に割りばしも用意した。
『理巧。ご飯が出来たよ』
「ああ」
閲覧を終えて、ペガと朝食を取った理巧は、食器を片付けると、ちょうど転送エレベーターでやって来た雲雀と柳生と一緒に地上に上がり、ペガを影に隠して学院を向かった。
◇
時刻は昼頃。
地下道場で修行を終えた一同が忍び教室に赴くと、教室に寿司屋のカウンター席が置かれていた。
「これは?」
「カウンターだよな?」
「お寿司屋さん?」
「だな・・・・?」
「なんで教室に?」
「っ! まさか?!」
「フフフフフフフフフフ。来たな・・・・!」
突然カウンター席から含み笑いが響き、理巧と斑鳩と葛城と柳生と雲雀はカウンター席から離れるが、飛鳥は席に近づく。
「この声!」
「ヌフ、ヌフフフハハハ!」
カウンター席から、長い白髪を後ろに結わえ、ご立派な髭を生やした和装の老人が、にこやかな笑みを浮かべて現れた。
「どちら様?」
「じっちゃん!!」
『じっちゃんっ!?』
飛鳥が喜びの声を上げると、じっちゃんと呼んだ老人に抱きついた。
「じっちゃん!!」
「こ、これ飛鳥。この間会ったばかりだろうが」
「飛鳥さん・・・・そのお方は、もしや・・・・!」
嬉しそうに祖父に抱きつく飛鳥に、斑鳩がおそるおそると訊ねるが、飛鳥の祖父が一礼する。
「孫が世話になっておる」
「半蔵様っ!!?」
「伝説の忍びの・・・・!?」
「え~!」
「・・・・・・・・」
斑鳩が膝を付いて頭を垂れ、葛城が驚いた顔で指差し、雲雀と柳生も驚いた様子であった。
「ん。おおっ! 君が暁月理巧くんかっ!?」
「ん?」
半蔵は興味なしの態度でいた理巧を見つけると、一瞬で理巧に近づき、両肩を掴んで、理巧の顔をジッと見つめた。
「っ!」
「うんうん。中々に立派な顔つきをしておる。一度君に会っておきたかったのじゃよ!」
にこやかに理巧の肩を叩く半蔵に、理巧は訝しそうに見つめ、飛鳥達は驚いたように見る。
「あ、飛鳥さん。暁月さんは半蔵様とお会いしたことがあるのですか?」
「えっ? ううん。理巧くんとじっちゃんは今日初めて会ったと思うけど。じっちゃん、理巧くんと会った事があるの?」
「ん。いや、“今日初めて会ったんじゃよ”。じゃが儂は以前から暁月理巧くんを知っておったんでな」
「えっ?」
「・・・・・・・・」
飛鳥は祖父の言葉に首を傾げ、理巧は静かに目をスッと細め、いつでも臨戦態勢を取れるようにした。
「おっと、いきなり済まんかったな」
半蔵はカウンター席に行き、腕の袖を捲し上げ、おひつに入ったご飯を出してしゃもじでほぐし、理巧達もカウンター席に付いた。
「な~に、みんなに昼飯をご馳走しようと思ってな」
「やったぁ! お寿司だ! お寿司だ!」
「わざわざお店まで作ったの?」
「お前らを驚かそうと思ってな。」
「さすが『伝説の忍』と称される半蔵様。お見事です!」
「じゃが一人でここまでやるのは、ちと骨が折れたわ。ハハハハ!」
斑鳩が尊敬の眼差しを向け、半蔵は笑みを浮かべた。
「でも、ご実家の方は?」
「じっちゃんは隠居みたいなもので、お店はお父さんとお母さんがやっているんです」
「・・・・そうですか、ご両親が」
両親と言う単語に、斑鳩の顔に影が差した。
「斑鳩さん?」
「あっ、いえ、良いですね、家族って・・・・」
「はい! 私もそう思います!」
にこやかに笑う飛鳥に、半蔵は太巻きを出した。
「へいお待ち! 『伝説の特製太巻き』だぞ!」
『うわーーーー!』
「・・・・・・・・」
女性陣は歓喜を上げて太巻きを頬張るが、理巧は黙々と太巻きを頬張る。なぜか、理巧の方の太巻きは少し多めに置かれていた。
「じっちゃん。理巧くんの太巻きだけ多くない?」
「いやなに、男子ならこれくらいは食べられるじゃろう。暁月理巧くん、遠慮せずに食べなさい」
「はぁ・・・・」
理巧は了承するが、全員の目を盗んで、こっそりとペガに手渡していた。
『ムグムグ・・・・あっ、美味しい♪』
「(宇宙人も認める味なのか・・・・)」
『ダークゾーン』に隠れているペガもご満悦にしていた。
ー飛鳥sideー
「太巻きを食す乙女は善いの~、心が洗われるようじゃ(それに、異星の人にも美味しそうに食して貰えるとは嬉しいの~)」
カウンター席から離れて座る半蔵は、チラッと理巧の足元にも視線を送ると、自分と向かい合うように座り、太巻きを頬張る飛鳥に話しかける。
「ところで飛鳥。召喚が上手くいかんと?」
飛鳥が気まずそうに頷く。
「うん・・・・。ゴメンね、じっちゃん」
「ん?」
「このままだと私、じっちゃんの名前に傷を付けちゃうんじゃか、って・・・・」
「そんな事どうでもええ。しかし、やはりそうなってしまったか・・・・」
「え?」
難しい顔になった半蔵に飛鳥が首を傾げる。
「召喚獣は“家系に影響する”事もあってのぉ・・・・」
「“家系”?」
「特に我が家のように、代々忍を営んできた者ほど、その傾向が強いのじゃよ・・・・」
「・・・・・・・・」
カウンター席に座ったままの理巧は、飛鳥と半蔵の会話に耳を傾けていた。
「じゃぁ、じっちゃんは何を召喚していたの?」
「忍としては、古式ゆかしい物じゃが・・・・」
「古式ゆかしい? 家の家系って何を召喚してたのっ!?」
「それはの・・・・」
身を乗り出した飛鳥に、半蔵は神妙な顔で声を発する。
「・・・・『ガマガエル』じゃっ!!!!」
「が、ガマガエルーーーーっっっ!!!? ふ、太ももが・・・・! み、水掛けが・・・・!!」
「(なんとまぁ・・・)」
飛鳥が顔を青ざめて震え、聞き耳を立てていた理巧は半眼になって肩をすくめ、半蔵が気まずそうに呟く。
「幼い内から飛鳥に馴染ませておけば良かったのかもしれん。まさかカエルが苦手な娘に育ってしまうとは思わなんだ・・・・」
「わ、私、最初からカエルが苦手だった訳じゃないよ・・・・ただ・・・・」
「ん? ただ、なんじゃ?」
「(チラッ)・・・・・・・・」
「ん?」
「っ・・・・/////////」
口ごもる飛鳥は、チラリと理巧に視線を向け、理巧も飛鳥の視線に気づいて視線を返すと、飛鳥は顔を赤くして視線を外した。
「(おぉ~、おぉ~、飛鳥のヤツめ、修行ばかりじゃったが、中々青春しておるようじゃのぉ~。しかし、暁月理巧くんには恋敵<ライバル>は多いぞ~)」
半蔵は孫娘の恋愛を見抜いて、ホクホクとした笑みを浮かべたが、すぐに顔を引き締めた。
「何はともあれ、これも忍の試練じゃ!」
「(ガクッ)はあぁ、飛鳥、頑張ります・・・・」
「うんうん。ん? そう言えば霧夜は・・・・」
ボワンッ!
「どわっ!!」
断言する半蔵に、飛鳥は項垂れながら頷くと、ボワンッ!と、煙が舞い、霧夜先生が現れ、半蔵に一礼した。
「ご無沙汰しております。半蔵様」
「ぶへっ! ぶへっ! 変わらんなお前も・・・・(ゼロのヤツも面倒なヤツと同居したのぅ)」
◇
そして、飛鳥のカエル嫌いを克服しようと、全員で校外に出て、カエル探しをした。
「中々見つからないなぁ」
「もう少し、池の方を探してみましょう」
「カエルさ~ん?」
「あの、私の事だし、皆に迷惑かける訳には・・・・」
遠慮しようとする飛鳥に、スルメイカを頬張る柳生が振り向く。
「召喚する一番の近道は、それに馴染む事だ。こんな風にな」
「ひえっ!! く、口で、カエルをっ!! 私、一生召喚できなくても良いです、私の敗けです・・・・」
「何と戦っている? あくまで例え話だ」
「そうですよ。飛鳥さんがカエルと親しめるよう、こうしてカエル探しをしてるんじゃないですか。頑張りましょう」
「あ・・・・斑鳩さん。・・・・そうですよね、皆さんのお気持ちの為にも飛鳥、頑張ります・・・・」
無理して笑う飛鳥。
「あれ? そう言えば理巧くんは?」
「こっちですよ」
「あっ、理巧くんンンッ!!!??」
飛鳥が理巧は何処かと見回すと、背後から声が聞こえ振り向くとそこには、肩、両腕、両手にカエルを乗せ、頭の上にガマガエルを乗せた理巧だった。
「見つけましたよ」
「うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっ!!!!!!!!!」
理巧の姿を見て、飛鳥が仰天したように悲鳴を上げたのであった。
ー半蔵sideー
「ホッホッホッホッ。暁月くんもやるのぉ~」
飛鳥達の様子を少し離れた池の橋で様子を眺める半蔵と霧夜先生。
「召喚するべきものが苦手な生き物だったとは、どうして、何度やっても上手くいかない訳ですな?」
「うむ」
「ところで半蔵様。なぜ此方へ?」
「うむ。暁月理巧くんの人となりを直接見たかったのもあるが・・・・霧夜よ」
「はい?」
「この歳まで生きるとな。色々な物が“視えて”しまうんじゃ」
「はあ??」
「霧夜よ。お主の中にいる“若者”と、少し話をさせてくれんかの?」
「っっ!!・・・・分かりました」
半蔵の言った言葉の意味に勘づき、霧夜先生は息を呑んで少し沈黙するが、了承すると目を閉じる。
「っ・・・・」
すぐに開いたその瞳は、金色になっていた。霧夜先生と同化している、ウルトラマンゼロと交代したのだ。
「・・・・久しいの。ウルトラマンゼロよ」
「ああ、久しぶりだな半蔵の爺さん。『クライシス・インパクト』以来だな?」
「うむ。人々からあの事件の記憶と記録は、AIBによって、ある程度抹消できたが、完全に消せなかった記憶や記録がまだ残っていたからのぉ」
「あの時、俺達ウルトラマンはこの星を守る事が出来なかった・・・・」
ゼロは目を伏せる、まるで慚愧するかのように。
「お主達だけに責は無い。まさかベリアルがあのような凶行を行うなど、誰も予想できなんだ。それよりも、今はあの少年じゃ」
半蔵の目線の先には、カエルを捕獲用のケースに入れる理巧がいた。
「爺さん。アンタから見て、アイツはどう思う?」
「・・・・儂は、あの少年に邪な気配を感じん。だからこそ、“見定める”つもりじゃ」
「“見定める”、か・・・・」
「うむ。あの少年が厄災となるか、希望となるか、儂は直に確かめてみたいのじゃ」
半蔵の理巧を見るその目は、まるで“すべてを見透かすような雰囲気”があった。
ー???sideー
「・・・・・・・・」
ある建物の一室で、豪奢な机と豪奢な椅子に座り、半蔵学院の忍達の様子を伺っていた人物の背後から、長い耳をした異形の人物が現れる。
『なるほど、あれが『伝説の忍』カ?』
「・・・・・・・・」
ほくそ笑みを浮かべたその人物は、手に持った『怪獣カプセル』を起動させた。
ピギィィィィィっ!!
机に置かれた『コピークリスタル』に『怪獣カプセル』を装填させると、異形の人物が『コピークリスタル』に手を翳すと、『コピークリスタル』はその場から、まるで転送されたように消えた。
『さて、これでどうなるのカ、楽しみにしようじゃなイカ?』
「ーーーーーーーー」
異形の人物がそう言うと、座っていた人物は足を組んで、笑いを堪えるように身体を震わせた。
次回。ウルトラ怪獣の人気者登場。