ー鷹丸sideー
夜勤明けの鷹丸は、眠たげの瞼を擦って、最後の事後処理を終えると、同僚の『ゼナ』に話しかけた。
「『ゼナ』さん。こっちは終わりましたよ。そっちはどうですか?」
「とっくに終わっている」
『ゼナ』と呼ばれた青年は『瀬名 日出樹』。
「うぉっ!」
ゼナの顔を見て鷹丸は少し驚きの声を上げた。
ゼナはそれまでの無表情の渋い顔から、デスマスクのような顔になったからだ。
『6年も共に仕事をしているのだからいい加減慣れろ』
「すみませんつい・・・・。でも眠たげの瞼にはゼナさんの素顔は良い気付けになりますよ」
『そうか』
『瀬名 日出樹』は地球人ではない。『シャドー星人』と呼ばれる宇宙人であり、人間に擬態して地球で危険な兵器や植物、さらに宇宙生物を密売したり、地球人を補食・実験・捕獲しようとする悪行宇宙人達を取り締まる『Aliens Investigation Bureau』。直訳すると『異星人捜査局』で通称『AIB』の上級エージェント。鷹丸達も所属しており、鷹丸の先輩であり、鷹丸とはコンビを組んで捜査している。
鷹丸の女房トリオである、ハルカ・ナリカ・スバルとも同僚であるが、この三人は主に武装した悪行宇宙人達との戦闘ならびに確保を担当している。
ゼナは人間に擬態している時も無表情の渋い顔をしており、口も一切動かしておらず、会話はインカム型の装置を使う事で会話しており、基地内では本来のデスマスクのような顔になる。
『今も宇宙の全域から、あのべリアルに似たウルトラマンに関する問い合わせが殺到している』
「・・・・・・・・ウルトラマン、ジードって呼称されていますね。やっぱり他の宇宙人達も気になるんですね?」
ウルトラマンジードの名前が出た時、鷹丸の顔に曇りが出た事をゼナは見逃さなかったが、追及せずに続ける。
『何しろこの宇宙は、“ウルトラマンキングと融合した宇宙”だからな・・・・。ウルトラマンゼロもこの宇宙に来ている。『宇宙警備隊』もウルトラマンジードなるウルトラマンの存在にいずれ気付くだろうな。今は霧夜と一緒に、ウルトラマンジードの捜査もしてくれている』
まさかそのジードの正体が、鷹丸達が我が子同然に育てている少年だとは、鷹丸達もゼナも、まだ霧夜とゼロから知らされていない。
「・・・・ん?」
ふと鷹丸の胸ポケットに仕舞ったスマホから着信の振動を感じた鷹丸が画面を見ると、『理巧』と表示されていた。
鷹丸はその場を離れると、『AIB』の表向きに偽装している保険会社、『スマイル生命保険』のテナントビルの屋上に到着して、電話に出た。
「もしもし理巧?」
《鷹丸さん・・・・》
「最近忙しくて、お前の近況報告はハルカ達から聞いていたから、声を聞くのも久しぶりだよ。それでどうした?」
ー理巧sideー
理巧は朝早く起きると、雲雀と柳生に今日は遅れて登校する事をメールで伝え終えると、“ある場所”へ向かう途中、鷹丸に連絡した。昨夜に起きた斑鳩と斑鳩の兄・村雨のいさかいが頭から離れなかったからだ。
理巧にとって、“家族”とは心の拠り所、とても暖かく、とても優しく、そして掛け替えの無い絆だと思っている。しかし、あの兄妹の繋がりを思うと、胸にモヤモヤとした感覚に襲われた。
理巧はこの気持ちを打ち明けたくて、鷹丸に連絡したのだ。理巧は昨夜の事を鷹丸に打ち明けた。斑鳩とその兄の名前は伏せておいた。
《そうか・・・・。それは結構難しいな》
「・・・・鷹丸さん。僕は、“家族”って血の繋がりが無くても、お互いを思いあっていれば家族になれると思っています。でも・・・・」
あの兄妹を見ると、家族の繋がりは、やはり血の繋がりが重要だと思ってしまう。
理巧にとっての家族は、鷹丸達戦部家の人達だ。
もし血の繋がりが重要なら、理巧は自身の中に宿る『B<べリアル>の遺伝子』が、ウルトラマンべリアルの遺伝子から逃れられない事を知らされる事になる。
理巧の内面の不安が伝わったのか、鷹丸は優しく声を響かせる。
《なぁ理巧。確かに“家族の形”にはその家庭でそれぞれの形がある。でも一つだけ確かな事があるぞ》
「・・・・それは、何ですか?」
《俺達戦部家の、俺とハルカとナリカとスバルの子供は、理巧、お前だ》
「・・・・・・・・」
それを聞いた瞬間、理巧のモヤモヤは消えていった。
《その兄妹が本当に、もう完全に歩み寄る事ができないなら諦めるしかないかもだけど、まだ歩み寄る事ができるなら、その手助けくらいはしてやれよ。その人もお前と同じように、“受け入れられた温もりを知る人”ならさ》
「はい・・・・」
そう言って、それから少しの雑談を終えた理巧は通話を切って、“ある少女”に会いに行った。
◇
理巧がついた場所は裏路地の先にある、家を無くした人達、貧しい故に路地で暮らす人達が集う街、所謂貧民街であった。
平和な日本にもこういった街は存在し、そこに住む人達は細々と生きていた。中にはガラの悪い人間達もいるが、その街の一角で貧民街に住む人達が長蛇の列を作っており、その先にはーーーー。
「はいどうぞ。まだまだありますからね」
先日斑鳩を襲撃した『悪忍の少女』だった。彼女は斑鳩に向けていた敵意がまったく無く、ただ優しい笑みで貧民街の人達にお弁当を渡していた。
「・・・・・・・・・・・・」
「っっ!」
少女は理巧の姿を視界に捉えると、身体を強ばらせるが、理巧は何も言わずにその場から少し離れた場所に腰かけ、少女は訝しそうに理巧を見据えるが、列に並んでいた人達に声をかけられ、お弁当配りに戻った。
それから30分が経過し、お弁当配布を終えた少女は理巧の目の前に立った。
「こんな所に標的の殿方が来るだなんて、投降にでも来たんですの?」
「聞きたい事があるんで・・・・」
「っ!」
少女は理巧を睨むが、理巧は懐から取り出した“水晶体の破片”を見せると、少し驚いたのか目を僅かに見開いた。
「どこでそれを?」
「貴女の仲間の焔って女の子が投げた“水晶体”が怪獣になり、それをウルトラマンが倒した場所の近くに落ちていたんでね」
「・・・・・・・・」
「とぼけても無駄ですよ。貴女の身体から僅かに春花って女の子と同じ薬品の匂いがしているんで」
「そう、薬品の匂いですの。春花さんにも少し言っておかないといけませんわね。それで聞きたい事とはなんですの?」
「貴女達はこれをどこで手に入れたのか、この“水晶体”に嵌め込んだ『怪獣のカプセル』はどこで入手したのか、聞いておきたいと思って来たんですが、その気は失せました」
「あら? それは何故?」
少女は理巧の言った言葉が意外だったのか問うと、理巧は少女の後ろからやって来る子供達に目を向ける。
「こんな所で戦ったら、あの子達も巻き込んでしまうですからね」
「っ・・・・」
少女も自分に近づいてくる子供達に気づいた。
「詠お姉ちゃん、遊ぼう!」
「遊ぼ遊ぼ!」
「・・・・ええ、後で遊びましょう。少し待っていてくださいましね」
苦笑しながら子供達を遠ざけた少女に、理巧は口を開く。
「“詠”って名前なんですね?」
「ええ。それで、このまま帰らせるとお思いですの?」
詠と言う名の少女は、胸元、推定95センチのHカップバストの谷間から、『水晶体』と『怪獣カプセル』を取り出そうとする。
「ここでそれを使えば、この街の人達も巻き込みますよ?」
「っ!」
言われて詠は水晶体こと、『コピークリスタル』を取り出す手を止めた。
「貴女は言いましたよね? 【低価格で庶民の味方のモヤシまで値上がりするなんて、どういう事ですの】って、僕なりにその原因を調べてみました」
「・・・・それは?」
「最近の怪獣騒動ですよ」
「っ!」
詠は理巧の言った言葉に息を呑む。
「このところ起きる怪獣騒動によって、住む家やマンション、ビルやらアスファルトやらインフラやらの破壊され、その復興の為に経済がガタガタになりそうになり、そのしわ寄せで物価高になり、モヤシや他の食べ物が値上がりしたんですよ」
「・・・・・・・・」
顔を俯かせた詠を見て、理巧はその場を離れようとする。
「モヤシ、僕も食べてみましたよ。炒め物、和え物、味噌汁、ラーメンのトッピングにも使えるし、色々と料理に使える食材ですね。それに美味しいですし」
「・・・・そう、ですか」
「貴女達の依頼主が何で僕を狙うのは分かりませんが、怪獣をやたらと出せば、この貧民街の人達にも危害が及ぶ事も、少しは考えてください」
そう言って去り行く理巧の背中を、詠は静かに見つめていた。
ー斑鳩sideー
兄・村雨との事で心乱れ、荒れていた斑鳩が葛城と揉めそうになったが、飛鳥が半蔵特性の太巻きを出して場を納めた。そしてちょうど理巧もやって来て、皆でオヤツとしたが、斑鳩は皆から離れ、自嘲気味に呟いた。
「天然の明るさで皆をまとめてしまう。クラスのリーダーに本当にふさわしいのは、飛鳥さんみたいなタイプかも知れない・・・・」
「あれは自分の事に精一杯なだけじゃ」
「半蔵様? いらしてたんですか?」
そんな斑鳩に、半蔵が話しかけた。
「まったく我が孫ながら、まだまだ未熟で困るわい。あのじゃじゃ馬らを統率できるのは、やはり斑鳩だけじゃよ」
「そんな・・・・。わたくしなどは、心が乱れてばかりで」
「儂はもう帰らねばならんが、飛鳥の事を頼むぞい。今の飛鳥とって、お前さん達が“家族”のようなモンじゃからのぉ」
「“家族”・・・・?」
笑い合う飛鳥達(理巧は相変わらず無表情だが)を見て、半蔵は続ける。
「互いに遠慮なく笑い。見も心も預け助け合う。これまさに・・・・」
「確かに、この忍クラスそのものが、“家族”なのかもしれませんね。このわたくしにとっても」
「ならば、恐れる事は何もないわい。そしてそれを、あの少年にも知ってほしい所じゃ」
「あの少年、暁月さんですか?」
半蔵は理巧を見据える。
「うむ。あの少年はのぅ、生まれた時から過酷な運命を背負ってしまったのじゃ。それこそ儂や飛鳥達にも想像できない程にな・・・・」
「それは、一体?」
「それを知りたければ、あの少年とも向き合って見ると良い」
「・・・・・・・・・・・・」
斑鳩は飛鳥と理巧を見据えると、フッと笑みを浮かべ、立ち上がった。
ー飛鳥sideー
それから斑鳩は飛鳥、そしてなぜか理巧を連れて、『秘伝忍法』の訓練を初め、最初はカエルに触れるのも駄目だったが、カエルが危ない目に合いそうになり、思わずカエル助けた飛鳥はカエルを恐れず触れていた。
そしてーーーー。
「・・・・・・・」
竹林に二刀を構えて瞑目していた飛鳥の身体から、緑色のチャクラが溢れ、背後にカエルの幻影が現れ、飛鳥の二刀に緑色のチャクラが纏った。
「参ります!」
飛鳥はカッと目を開いて、竹林を駆ける。
「『秘伝忍法 二刀繚斬』!!」
緑色の斬撃が、竹林の竹を縦横と斬り捨てた!
「で、できた!!」
「すげぇ!!」
「うわぁ~!」
「中々だな」
「出来ましたね、飛鳥さん!」
「やったか」
「お見事」
斑鳩達が賞賛し、理巧と霧夜先生も小さく賞賛した。
「じっちゃん! 私出来たよーーーー!」
「ウム。よぉやった!!」
飛鳥にVサインをする半蔵。理巧は隣にいる斑鳩に聞いた。
「どうやって彼女はカエルを克服したんですか?」
「飛鳥さんは、本来誰にでもお優しい方です。怖いと自分で強く思い込んでしまっているために、心に“壁”を作っていただけなんです。ですから、自分の意思で触れる事が出来てしまえば、その“壁”などあっという間に」
「心に、“壁”か・・・・」
「暁月さん」
「ん?」
「貴方にも“壁”があることは分かっています。ですが、その“壁”から少し出て見てください。ここにいるのは、皆貴方の“家族”のような人達ですから」
「“家族”・・・・」
理巧は飛鳥達を見据える。理巧にとって“家族”は戦部家の人達だけ、しかし、この忍クラスの皆といる空気を、少なからず心地よいと感じている自分がいる事に気づいた。
しかしーーーー。
「っ!!」
理巧は視線を鋭くして、自分達に近づく人間を睨んだ。
「暁月さん?・・・・っ!」
斑鳩も視線を追うと、驚愕した。ソコにはーーーー。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
兄・村雨がユラリと自分達に近づいていた。
「え? だれ?」
「何だアイツ?」
「「???」」
「「・・・・・・・・」」
飛鳥達は首を傾げるが、半蔵と霧夜先生は目を鋭くした。斑鳩が、飛鳥達を庇うように前に出る。
「お兄様・・・・」
「えっ? お兄様って・・・・」
「斑鳩の兄ちゃん?!」
驚く飛鳥達から離れて、斑鳩は兄と向き合う。
「お兄様。わたくしは・・・・」
「俺は・・・・」
「お兄様?」
兄・村雨の様子がおかしい事に、斑鳩は気づく。
「俺は・・・・見返すんだ・・・・! 俺の努力を、諦めろと言ったヤツらを・・・・! この力でっ!!!!」
村雨は懐から、『水晶の人形』と『カプセル』を取り出すと、『人形』に『カプセル』を装填させた。
ーーーー!!
機械音のような音が響くと、『人形』は飴細工のようにグネグネと動くと、村雨の身体を飲み込み、その形を巨大にして、その姿を露にした!
赤の身体に金のプロテクターを纏い、右手にはナイフ、左手には鉤爪、目は緑色、どことなくウルトラマンのような姿をしたソイツはーーーー。
『異次元超人エースキラー』。
『ーーーー!!!』
エースキラーは雄叫びを上げるように身体を震わせた。
ー詠sideー
村雨が『コピークリスタル』に取り込まれると同時に、その修行場を見下ろせる山の中から、詠が状況を見ていた。
「ここなら街から離れて居ますし、被害は出ないでしょう」
理巧の言った言葉は分かる。しかし、忍は命令をこなすのみと考えた詠は、『怪獣カプセル』を起動させて、『コピークリスタル』に嵌め込んだ。
ピギィィィィィィィィッ!!
『コピークリスタル』が光ると、詠は力一杯『コピークリスタル』を投げ飛ばした。
ー???sideー
「・・・・・・・・・・・・」
ゼットォォォォォォォォンン!!
そしてこの状況をドローンで見ていた人物も、『怪獣カプセル』を嵌め込んだ『コピークリスタル』を、転送させた。
ー理巧sideー
「お、お兄様・・・・!」
あまりの事態に愕然となる斑鳩は、『エースキラー』となってしまった兄に、ヨロヨロと近づこうとしたがーーーー。
『お前を・・・・お前を倒せば・・・・! 俺は!!』
エースキラーから村雨の声が響くと、エースキラーは左手の鉤爪を振り上げて、斑鳩に向けて振り下ろす!
「斑鳩さん!!」
「やべぇ!!」
飛鳥と葛城、雲雀と柳生が斑鳩に駆けつけようとしたが、それよりも早く動いていた少年が飛び出す。
「ジイィーーーーーーーーーーード!!」
すでにカプセルをスキャンさせていた理巧の身体が光に包まれると、飛鳥達の目の前で、理巧の身体が変貌した!
ー斑鳩sideー
「っっ!・・・・・・・・??」
斑鳩はエースキラーの腕を眼前に迫り、思わず目を瞑るが、いつまでも衝撃が来ないことを訝しんで目を開くと、目映い光が自分を包んでおり、見上げるとソコにはーーーー。
「う、ウルトラマン、ジード!!?」
『シュゥワッ!!』
ウルトラマンジードは、斑鳩を守るようにエースキラーの腕を防ぐ。
『ハァアッ!!』
『ーーーー!!』
力を込めてエースキラーを押し飛ばしたジードは、斑鳩が無事なのを確認すると、エースキラーを見据えて構えた。
「な、なぜ、ウルトラマンジードが・・・・」
「り、りっくんが・・・・」
「飛鳥さん?」
いつの間にか自分の後ろに来ていた飛鳥と葛城が、唖然となりながらジードを見上げ、雲雀と柳生はあちゃーと言わんばかりに手で頭を抑え、半蔵と霧夜先生は苦笑していた。
「飛鳥さん、一体どうしたんですか? 暁月さんは?」
斑鳩の問いに、飛鳥と葛城はジードを指差した。
「り、りっくんが、りっくんが、“ウルトラマンジードになった”!!」
「・・・・・・・・・・・・え?」
ドゴオォオオオオオオオオオオオンンンッ!!!
「っっ!!?」
思わず口を半開きになった斑鳩だが、突然の地響きに周辺を見上げるとーーーー。
『ピギィィィィィィィィィッ!!』
『ゼットォォォォォォンンッ!!』
なんと今度は、ジードを取り囲むように、“5角形の腹部をした鳥のような怪獣”と、“カミキリ虫のような怪獣”が現れた。
「(デュォンン) まさかあれは! 『ベムスター』に『ゼットン』かっ!?」
ゼロにチェンジした霧夜先生は、驚きの声をあげる。そこに現れた怪獣は。
『宇宙大怪獣ベムスター』と、『宇宙恐竜ゼットン』だったからだ。
次回、『知性』と『慈愛』のフュージョンライズが登場!