修行の前に、掃除だぜ!
ー理巧sideー
青い海。青い空。白い雲。サンサンと輝く太陽。
現在。理巧達半蔵学院の忍教室一同は、半蔵学院のクルーザーで、海を渡っていた。
「・・・・・・・・いや何で?」
クルーザーに乗り、赤いアロハシャツにショートパンツを着用した理巧が思わず呟く。
すぐ隣のテーブルでは、ソファーに座った飛鳥と葛城のペアと、柳生と雲雀のペアがババ抜きで柳生・雲雀ペアが負け、二人は葛城からデコピンを受けて痛みで悶えていた。
「理巧く~~~ん!」
「・・・・・・・・」
涙目の雲雀が理巧に泣きつき、理巧は雲雀と柳生の頭をヨシヨシと撫でる。
「酷いよ葛姉~~!」
「フッ。雲雀。勝負は非情なんだよ」
「貴様のせいで・・・・! こんなものが、あるから・・・・!!」
柳生が負けた腹いせに、トランプのババを捨てた。
「ああ! 負け続きだからって卑怯だぞ!!」
「面白い。肉弾戦なら負けはしない・・・・!」
「貴女達、静かにしなさい。」
後方でビーチパラソルを開き、ビーチチェアに横になり、麦わら帽子にサングラスを着用して読書をし、見るからにクルージングを満喫しまくっている斑鳩が諫めた。
ちなみに本の名は、『コズモクロニクル 伏井出ケイ』。
「満喫してますね、斑鳩姉さん」
「ごめんなさ~い・・・・」
斑鳩の兄・村雨との一件があってから、理巧の『教育係兼お姉ちゃん役』となった斑鳩。あと便乗して『お姉ちゃん役』になった葛城を、理巧は『斑鳩姉さん』と『カツ姐<ねぇ>さん』と呼ぶようになった。
飛鳥はソファーから立ち上がり、身体をグィ~っと伸ばす。
「でも潮の香りって良いよねぇ!」
「それじゃぁ、アタイは若い娘の匂いを嗅ごうかねぇ! クンクンクンクン!!」
「ちょ、ちょっと葛姉ぇ! セクハラは止めてよ!」
「良いよ良いよ! とても良い香りだよぉ。これならご飯は3杯は行けるねぇ~!」
「だったら雲雀も嗅ぐぅ! クンクンクンクン!」
雲雀が飛鳥の後ろから、葛城はちゃっかり飛鳥の胸に顔を挟めるように抱きついて匂いを嗅いでいた。
「貴女達! 静かにしなさいって言ってるでしょう!!」
「あっ見えた」
「えっ!?/////」
遂に起き上がって怒鳴る斑鳩だが、理巧が言った一言で、思わず胸元を隠す。
が、理巧と飛鳥達は船の行き先の方に目を向けていた。斑鳩も一同に合流して、船の行き先を見ると。
結構大きな島が見えていた。
「あそこが・・・・」
「ああ。臨海修行先の忍島だ」
『うわっ!』
「霧夜おじさん。ペガの『ダークゾーン』に隠れてたの?」
「中々隠密に使えるな、ペガくん」
『えへへへ~』
驚く飛鳥達の後ろに、青色のアロハシャツを着たサングラスを掛けた霧夜先生と、いつものパーカーではなく、緑色のアロハシャツを着用し、ペガッサ星人のペガにも合ったサングラスを掛けたペガが現れた。
「つまり、あの島でこれから皆で合宿修行なんですね?」
「そう言う事だ。海に囲まれた列島。修行にはもってこいだろう?」
そう。今回、半蔵学院の忍教室の忍達は、この忍島で、臨海修行を行うのだ。
「まぁ、アタイは皆の水着姿や、理巧の魅力的なお尻を拝めるから良いけどなぁ!!」
葛城はショートパンツに包まれた理巧のお尻を恍惚とした表情で頬ずる。
「カツ姐さん、やめてくれる?」
「やめん!」
理巧が半眼になってツッコムが、葛城が止めようとしなかった。逃げようと動こうとした瞬間、波によって船体がグワンっ、と揺れた。
「おっ・・・・!」
ボニュゥゥンッ!
「あん!?」
葛城に下半身を押さえられ、船体が揺れてバランスを崩した理巧は、前のめりに倒れて、斑鳩の93センチGカップバストに頭から突っ込んでしまい、その豊満な柔らかさと弾力に挟まってしまった。
「り、理巧くん! な、何をしてるんですか!? わ、わたくしも、お姉ちゃんとして、甘えたいなら前もって言ってくれれば甘えさせるのも吝かでは・・・・/////」
「ひや、ひかるふぁふぇひゃんまえふぁにひっへんれふか<いや、斑鳩姉さんまで何言ってんですか>?」
斑鳩のバストに挟まれて、くぐもった声で理巧がツッコム。斑鳩はソッと理巧の頭を抱いて、豊満な胸に押し付けた。
「ああ! 斑鳩さんズルい! 雲雀も!」
「・・・・ではオレも////」
フニュン。ムニュン。
「ひふぁりひゃん<雲雀ちゃん>? やふぅふぁん<柳生さん>?」
「あっ! で、出遅れた・・・・!」
雲雀と柳生が理巧を左右から挟むように抱きつき、雲雀は80センチCカップバストを、柳生は85センチDセンチバストを理巧の腕に押し付けたり挟んだりした。
飛鳥は出遅れたので1人頭を抱えて、下半身は葛城が、前面は斑鳩が、左右は柳生と雲雀に挟まれた理巧の最後に残った背後から、自分の90センチFカップバストを押し付けた。
「ふぁすふぁふぁん<飛鳥さん>・・・・?」
「こ、ここしか無かったから・・・・!//////」
「おぉ! 飛鳥も大胆になったなぁ! さてさて理巧くん? 一体誰のおっぱいが最高なのかなぁ??」
「ひや、ふぉのまへにふぁいほうひて<いや、その前に解放して>・・・・」
そろそろ息苦しくなってきたのか、理巧は斑鳩の腕を優しくタップしていた。
◇
『・・・・・・・・・・・・』
漸く合宿する宿舎にたどり着いた一同の目の前には、屋根に雑草が生え、見るからに不気味なお化け屋敷のような雰囲気の古い建物が建っていた。
「ここが合宿所・・・・ですか?」
「ああ。文化財にも匹敵する年代物だぞ」
「ただボロいだけでしょ?」
「って言うか、年季入りすぎてるって言うか・・・・」
「古式ゆかしい、と表現すれば・・・・」
「そ、そそう! それそれ!!」
「そうですよね、忍の修行なんですから・・・・」
「言い方変えても、不気味でボロいって事でしょう?」
霧夜先生と姉役二人に理巧は半眼でツッコム。
「お化け屋敷みたい・・・・」
「「「っ!?」」」
「うんうん」
『やっぱりそう見えるよね・・・・?』
雲雀の一言に、飛鳥・斑鳩・葛城は肩をビクッとさせ、理巧とペガはウンウンと頷いた。
「言うな雲雀。皆ソコまでは、と遠慮してるんだ」
「そうなの?」
「ここは江戸時代から、名のある忍が修行を積んできた、忍者屋敷なんだぞ。ここで修行する事を誇りに思わないでどうする?」
≪や、そんな由緒ある屋敷なら、掃除くらいはしておけよ≫
霧夜先生と一体化しているウルトラマンゼロも、やんわりとツッコミをいれた。
「すみませんでした先生。想像と違っていたので、つい・・・・」
「お化け屋敷か」
「言わないの」
「言うな」
雲雀の一言に理巧と柳生がツッコミ、飛鳥達も半眼で雲雀は見た。
『幽霊とかでるかな? ねぇ、ゼロは幽霊とか見たことあるの?)
「(デュォォン!) あるぜ。宇宙には死んだ怪獣や異星人達の魂が眠る『怪獣墓場』って所があってな。ソコから怨念を纏って怪獣や異星人達がワラワラと現れて自分達を倒したウルトラマンに恨み言を・・・・!」
『うわぁ・・・・!』
サングラスを外した霧夜先生の瞳が金色になり、ゼロにチェンジしてペガに低い不気味な声でそう言うと、ペガは脅えて、理巧の背後の影に隠れた。
「・・・・なんか、霧夜先生の顔と声が若々しくなると、スッゴい違和感がある」
『ウンウン』
前回の戦いから、ウルトラマンゼロが霧夜先生と一体化している事を知らされた半蔵学院の忍達は、未だに霧夜先生とゼロのキャラのギャップに戸惑っていた。
「(デュォォン!) ゼロ交代だ。・・・・それでは早速修行開始だ!」
「今からですか!?」
「早すぎるよ先生! 折角の海なんだし、先ずは水着に着替えて・・・・」
「早速セクハラ?」
「もちろん!!・・・・っておい!」
理巧の呟いた一言に、思わず肯定した葛城だが、すぐにビシッとツッコンだ。
「そうはいかん。何故なら最初の修行は・・・・」
「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」
どんな修行内容か緊張する生徒達に、霧夜先生はニヤリと口角を上げて宣言する。
「ここの掃除だ!!!」
「・・・・・・・・・・・・そんなに溜めて言うこと?」
◇
それから半蔵学院生徒による掃除が始まった。
理巧とペガは屋根の雑草採り。理巧は兎も角、ペガは危険と思われるが、『ダークゾーン』を使うことで、ペガが屋根から落ちる心配はないのだ。
飛鳥と葛城と雲雀は廊下や天井の柱や縁側を雑巾掛け。
斑鳩と柳生は部屋の埃の払いや汚れの拭き取り。
斑鳩は埃の払っていると、大量の埃が落ちて、被ってしまった。
「ケホ、ケホ。確かに、先ずは掃除をしないと、マトモに暮らせそうにないですね」
「ここを全部掃除となると、夕方までかかりそう」
しかし葛城は、明らかにヤル気ゼロでサボっていた。
「あぁ~あ。折角海に来たんだから、先ずは海だよなぁ」
「ん? 何だろう?? あっ!」
と、ソコで天井の柱を雑巾で拭いていた雲雀は、“柱に彫られた奇妙な文字”を見つけた。が、手を滑らせ雑巾を落としてしまい、掃除は葛城の頭に被った。
「うわっ! ち、違うんだ先生! べ、別にサボっていた訳じゃ・・・・!」
「ごめんなさ~い!」
慌てて立ち上がった葛城だが、頭上から聞こえる雲雀の声に気づく。
「お、脅かすな! 霧夜先生かと思ったじゃねぇか!!」
「あ! 霧夜先生は?」
「釣りに行くとか言って先ほど、柳生さんと」
「えぇっ!? アタイ達に掃除させといて、それに何で柳生まで・・・・?」
斑鳩も指を立てて口を開く。
「今晩のオカズの確保だとか」
「「え?」」
「あ、それと理巧くんとペガさんも、先ほど屋根の雑草を採り終えて、今は山で山菜やキノコ狩りに行きましたよ」
「自給自足かよ・・・・。つか、山に行った二人は大丈夫かよ? 遭難してるって事は?」
「大丈夫でしょう。先ほどレムに連絡を取りましたら、ここでも通信や転送エレベーターが通る事ができますから、遭難したら連絡が入る筈ですわ」
《問題ありません》
斑鳩は胸の谷間から、先日レムに貰った通信インカム(白のカラー)を取り出すと、インカムからレムの声が響いた。ちなみに飛鳥と葛城も貰っており、飛鳥は緑色のカラーで、葛城は水色のカラーになっていた。
ーゼロsideー
その頃、霧夜先生は完全な釣り人スタイルで浜釣りをしていたがまったく釣れず、逆に柳生は海女のように海を潜り、水中に関わらず、番傘を駆使して着々と魚を取っていた。
≪釣れねぇな・・・・≫
「(不味いな。このままでは教師の沽券に関わる・・・・! ゼロ! 念力とかで魚を取れんのかっ!?)」
≪いや、ズルをするなよ教師・・・・≫
「先生」
「っ、な、なんだ柳生?」
突如海面から顔を出した柳生に話しかけられ、霧夜先生はズルをしようとしていたのを悟られたかと、肩をビクッとさせたが、柳生は鋭い視線を霧夜先生に向けていた。
「・・・・少し、ウルトラマンゼロと話をさせてくれ」
「ん? ゼロと? 何でだ?」
「理巧の、ウルトラマンジードの事でだ」
「っ!・・・・分かった。ゼロ、頼む」
「(デュォォン!) 俺に話があるのか?」
ゼロにチェンジした霧夜先生に柳生は鋭い視線で睨むと口を開く。
「お前は、理巧をどうするつもりだ?」
「まだ見定め中って所だ。アイツが『ベリアルの息子』ってだけで、すぐにどうこうしようなんて思わねぇよ」
「だが、お前以外のウルトラマン達が、理巧の存在を知ったらどうなる?」
「・・・・・・・・おそらく、危険性の高いジードを抹殺しようと考える奴らもいるだろうな。それほどまでに、ベリアルを危険視する奴らは大勢いるからな」
『反逆者 ウルトラマンベリアル』。ゼロがまだウルトラマンレオの元で修行していた時、牢獄を脱走して『光の国』を危うく壊滅寸前にまで追い詰めた大罪人。
その大罪人の遺伝子上の息子であるウルトラマンジードを、快く思わない、いやむしろ、排除すべき危険因子と決めつけるウルトラマンも現れるだろう。
「・・・・そうか、一応言っておくぞウルトラマンゼロ。オレも、雲雀も飛鳥も斑鳩も葛城もペガも、理巧を信じている。お前が理巧と敵対するときは、オレもお前と一戦交えるつもりだからな」
そう言って、柳生は再び海の中に潜っていった。
「・・・・モテモテだな。アイツは」
≪そうだな・・・・≫
ゼロと霧夜先生は、フッと笑みを浮かべていた。
ー理巧sideー
『理巧~! このキノコはどうかな?』
ペガが木の下に生えていたキノコを理巧に見せると、理巧はそのキノコを受け取って咀嚼して、ゴクリと呑み込んだ。
「・・・・・・・・これは毒キノコだね。常人なら少し食べたら身体が痺れてあの世行きだよ」
『そっか。でも理巧大丈夫なの? さっきからペガが見つけた毒キノコや、山菜と間違えた毒草とかも食べているけど?』
「問題無いよ。いや寧ろ、最近『毒に対する身体作り
』を怠っていたから、ちょうど良いよ」
理巧は山菜とキノコ狩りに乗じて、ちゃっかり危険な修行をしていた。
ー飛鳥sideー
飛鳥と斑鳩と葛城は、厨房に来ていた。江戸時代風の古式ゆかしい厨房だった。
「もしかして夕食は・・・・」
「現地調達って事か?」
「これも修行の内だとか・・・・。大丈夫です。お米とお味噌とお塩は、ちゃんと有るようですし」
「と言うか、それしか無いのかっ!?」
ー雲雀sideー
そして雲雀は、柱に彫られていた文字を読んでいた。
「『目指せスーパー忍者!』・・・・。何だろうこれ?」
ー注意ー
理巧の修行は極めて危険です。
理巧は幼い頃(戦部家に迎えられる前)に壮絶な訓練を受けていたので、『毒キノコ』や『毒草』や『毒薬』や『毒虫』や『動物の毒』に対して、『抗体』やら『免疫』が出来ているので問題ありませんが、普通の人では間違いなく、確実にお陀仏ですから真似しないように。
間違いが起こっても、当方は一切合切の責任は負いません、自己責任です。