閃乱ジード   作:BREAKERZ

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秘立蛇女子学園
異変だぜ、雲雀ちゃん


ー理巧sideー

 

「雲雀ちゃん? いや来てないけど?」

 

その日の夜の秘密基地。最近では飛鳥のぬいぐるみや、斑鳩の参考書が並んだ棚やら、葛城のトレーニング器具などが置かれ、最初の頃に比べてかなり物が増えたその場所。

いつも通り、怪獣やら異星人について調べていた理巧(&鼻提灯を出して熟睡しているペガと、理巧と一緒に調べ物をしていたレム)の元に、寝間着姿で髪をおろした柳生が訪ねてきた。

今日の保修行で素っ気ない態度で先に帰った事を謝罪しようと雲雀の部屋に行ったが、雲雀の姿がなく。理巧の所に来たのではないかと思ったからだ。

 

「そう、か・・・・」

 

「どうしたの?」

 

「いや、少し気になってな・・・・」

 

「・・・・柳生さん」

 

「ん?」

 

「霧夜おじさんに、雲雀ちゃんを甘やかすなって言われた事、気にしてるの?」

 

「・・・・まぁ、少しな」

 

普段ならクールに流す柳生だが、理巧の前では少し素直になる。

 

「ま、あんまり1人で抱え込まなくて良いと思うよ。時には、飛鳥さん達にも頼るのも良いかも知れないよ」

 

「・・・・・・・・」

 

「確かに雲雀ちゃんはちょっと臆病だけど、その臆病さが武器になることもあるよ」

 

「臆病が武器?」

 

理巧の言葉に、柳生は首を傾げる。

 

「うん。臆病って事は言い方を変えれば慎重で用心深いって事だよ。忍って職種上、警戒心が強くなければ務まらないと思う。雲雀ちゃんのソレは半蔵学院の中では最も重要な役目を果たしているし、僕を含め他の皆は結構慎重さってのが抜けてるからね」

 

喧嘩上等の葛城。

堅物な斑鳩。

能天気な飛鳥。

雲雀の事以外割りとドライな柳生。

基本的に忍の事に関しては我関せずな理巧。

この面子の中で慎重さと用心深さを持っているのは、以外にも雲雀だった。

 

「雲雀ちゃんも、切っ掛けさえあれば化けるタイプだよ。要は、雲雀ちゃんが自分に足りない部分を自分で引き出せば良いと思う」

 

「“雲雀に足りない部分”?」

 

「うん、それはーーーー」

 

理巧が続きを言おうとしたその瞬間ーーーー。

 

『警告、半蔵学院に侵入者有り。半蔵学院に侵入者有り。半蔵学院に侵入者有り・・・・』

 

「「っ!!」」

 

『な、何々っ!?』

 

レムからの警告で飛び起きたペガを余所に、理巧はすぐにスマホで霧夜先生に連絡をした。

 

「おじさん、何があったの?」

 

《ああ。侵入者が現れたようだが、別段荒らされた形跡が「ボフンッ!!」っ! 痺れ玉?! しまっぐぅ!》

 

「おじさん・・・・? 柳生さん」

 

「(コクン)『忍転身』!」

 

突然何が破裂したような音が響き、霧夜先生が倒れたような音が聞こえた理巧はスマホを切って、柳生に目を向けると、柳生も頷いてすぐに転身し、理巧は柳生とペガを連れて『転送エレベーター』で霧夜のいる地点へと向かうと、霧夜先生が倒れており、壁に作られていた保管庫のような箇所から、“何かが盗まれた痕跡があった”。

 

 

 

 

翌日の早朝。

基地で目を覚ました霧夜先生は、半蔵学院の忍達を忍教室に集めた。

 

「『超秘伝忍法書』が!」

 

「奪われたっ!?」

 

「先の奇襲以来、警備は強化している。校舎に侵入し、さらに保管庫を開く事ができるのは、俺を含め、ここにいる者だけだ」

 

「私達がそんな事するはずが有りませんっ!」

 

「分かっている。だが奪われたのは事実だ」

 

「じ、じゃ、一体誰が・・・・!」

 

「・・・・・・・・」

 

雲雀が不安そうに声を発し、柳生はソッと目を反らした。柳生の挙動に一瞬目を向けた理巧は、霧夜先生に、いや、ウルトラマンゼロに話しかける。

 

「ゼロ。君は何も見てないのか?」

 

「(デュォォンッ!)情けねぇ話だが、俺も痺れ玉で意識を無くしちまってな。まったく、本調子じゃねぇからって情けねぇ・・・・! (デュォォンッ!)とにかく! 『本部』に連絡せねばならん。今日は全員、自室で待機するように!」

 

霧夜先生がそう言うと、その場は解散となり、理巧は男子寮の自室ではなく、秘密基地に戻っていた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

すでに理巧は、いや、おそらく柳生も目星は付いていた。しかし柳生の性格上、『侵入者』の事は話さないだろう。そして理巧も、『侵入者』について不審な感覚があった。

 

「・・・・レム。彼女は?」

 

『自室に待機しています・・・・いえ、彼女の自室に闖入者有り。『ーーーーー』です』

 

「やっぱりな・・・・。ペガ」

 

『? 何?』

 

「これからちょっと“危ない策”を教える。君にもやって貰わないといけない事があるけど、やってくれるかい?」

 

『・・・・うん! ちょっと恐いけど、ペガも半蔵学院の一員だもん! やってみるよ!』

 

「・・・・ありがとう。レム、君はどうだい?」

 

『私はマスターである理巧の意向に従います』

 

「良し。それじゃ・・・・」

 

理巧はペガとレムに指示を伝えると、二人(?)は了解を示し、次にメモ用紙を持ってきてペンを走らせ、中央台座の上にメモ用紙と『ある物』を置き、ペガに色々と荷物を持たせて自分の影に隠し、転送エレベーターで雲雀の追跡を始めた。

 

 

ー柳生sideー

 

柳生は『忍転身』して街の屋根を駆け巡っていた。

霧夜先生の話から部屋に待機して、数時間が経ち、飛鳥から雲雀が姿を消したと聞き雲雀の部屋に赴くと、置き手紙があり、

蛇女の春花に操られ、『超秘伝忍法書』を盗んだのは雲雀である事。

以前の奇襲で春花から受け取った耳飾りから『念波発信器』(傀儡使いが使う遠隔操作の術の受信機)が発見された。

雲雀は自責から、命に変えても忍法書を取り戻すと書かれ、柳生はいてもたっても居られず雲雀を探した。

そんな柳生の前に、飛鳥が立ち塞がった。

 

「どこに行くつもりなの!?」

 

「雲雀を探しに行く・・・・!」

 

「どこに行ったかも分からないのに?」

 

「分からなくても、絶対に探し出す・・・・!」

 

「そんな! 無茶だよ柳生ちゃん!」

 

「邪魔を、するな!」

 

「・・・・・・・・」

 

番傘を構えた柳生に、飛鳥が構えた。

 

 

ー斑鳩sideー

 

斑鳩と葛城は合流するが、ふと斑鳩が、“雲雀ちゃん他にもいない人間”を思い出した。

 

「っ! そういえば、理巧くんとペガさんは?」

 

「ん? あ! そういえばアイツらに連絡してなかったな」

 

思い出した斑鳩は、胸元から通信インカムを出して耳に付け、理巧に連絡する。

 

「理巧くん。聞こえますか? 理巧くん?・・・・出ませんね」

 

「なにやってんだ理巧の奴・・・・!」

 

「待ってください。理巧くんは無気力に見えてかなりの曲者なところがあります。その理巧くんが、この状況を見越していないと思えないのですが・・・・」

 

「?? どういう事だ?」

 

「とりあえず、先ずは柳生さんを見つけましょう。そしたらすぐに、基地に向かいます」

 

 

ー飛鳥sideー

 

「どけっ!!」

 

柳生が番傘を突き出して突っ込むが、飛鳥はヒラリと番傘を回避して、柳生の後ろに回り込み、柳生を羽交い締めした。

 

「(後ろを取られた・・・・!?)」

 

「落ち着いて柳生ちゃん!」

 

「っ!! 離せ・・・・!! オレの事は放っておいてくれっ!!」

 

「柳生ちゃん!!」

 

「柳生さん!」

 

「こっちに居たのか!」

 

「・・・・・・・・」

 

斑鳩と葛城も現れ、柳生は逃げられないと覚ったのか、大人しくなり、飛鳥も羽交い締めを解いた。

 

「・・・・オレの責任だ」

 

「えっ?」

 

「昨夜、雲雀が部屋にいなかったのをオレは知っていた・・・・」

 

「っ! なんだって!!」

 

葛城が驚き、飛鳥と斑鳩も驚いた。

 

「侵入者の話を聞いたとき、その事を、思い出した。でも、雲雀を疑うなんて、オレには出来なかった・・・・!」

 

自分がちゃんと雲雀を見ていたら、この事を皆が話していたら、こんな事態にならずにすんだかも知れない無いと、柳生は顔を俯かせる。

 

「それは当然でしょう? もし同じ立場だったら、わたくしだって・・・・」

 

「ああ、雲雀が操られるだなんて、誰も気付かなかったしな・・・・」

 

「それだけじゃない・・・・! オレがずっと雲雀の側にいたら、こんな事にはならなかった・・・・! オレの、せいで、雲雀は・・・・っ!!」

 

涙ぐむ柳生の肩に飛鳥が手を置いた。

 

「違うよ、柳生ちゃん」

 

「っ・・・・」

 

「柳生ちゃんのせいなんかじゃ、絶対にない」

 

飛鳥の視線を追うと、斑鳩と葛城も口を開く。

 

「悪いのはお前じゃねえ。雲雀を操ってこんな事をした、蛇女の奴らだ」

 

「もし責任が有るんだとしたら、わたくし達全員にあります。柳生さん、忘れてませんか?」

 

「???」

 

「わたくし達は・・・・『仲間』なんですよ」

 

「『仲間』・・・・」

 

「そうだよ! 雲雀ちゃんが心配なのは皆同じ! 柳生ちゃんだけじゃないんだよ!」

 

「・・・・・・・・!」

 

柳生は目を潤ませた。

 

「それに、雲雀さんの居場所なら、もしかしたら分かるかもしれません」

 

「何・・・・?」

 

「気づかねえか? アタイらの中で“一番の曲者小僧の姿”がないってよ」

 

「っ!」

 

「りっくん!」

 

「ええ。先程レムと連絡が付きました。基地に来て欲しいそうですよ」

 

斑鳩がそう言った瞬間、転送エレベーターがやって来て、四人はエレベーターに乗って基地に向かった。

 

 

 

 

「りっくーーーん! ペガくーーーん!」

 

「おーい! どこだーーー!」

 

「理巧・・・・! ペガ・・・・!」

 

基地に来た一同は姿が無い理巧達を探して基地内部を探したが、斑鳩は中央台座に置かれた物が目に入り、それを手にとった。

 

「これは、置き手紙でしょうか・・・・?」

 

斑鳩は置き手紙を開いて見ると、理巧の字で書かれた文章に目を走らせる。

 

「シミュレーションルームにはいなかったよ!」

 

「菜園ルームにもいなかった・・・・!」

 

「おい! バスルームにもいなかったぜ!」

 

「なるほど・・・・」

 

三人が中央ルームに戻ってくると、ちょうど置き手紙を読み終えた斑鳩が声を発した。

 

「斑鳩さん?」

 

「皆さん。理巧くんの置き手紙です」

 

「「「っ!」」」

 

三人が斑鳩に視線を向けると、斑鳩は置き手紙に書かれていた“策”を読み上げた。それを読み上げると、三人の顔に光明が見えたような笑みが浮かんだ。

 

「飛鳥さん」

 

「っ、はい!」

 

「理巧くんの“策”を成功させるためには、貴女が要になります。時間もおそらく少ないでしょうが、やれますか?」

 

「勿論です! 理巧くんと雲雀ちゃんを助ける為にも、やってみせます!!」

 

「その意気です。最後に理巧くんから飛鳥さんに、こう綴られていますよ」

 

「えっ?」

 

首を傾げる飛鳥に、斑鳩は最後の文面を読み上げた。

 

「【無理をさせるけど、よろしく頼むよ。『あーちゃん』】、ですって」

 

「・・・・『あーちゃん』、それって、りっくんが私の事、子供の頃に呼んでいた・・・・!」

 

「理巧の奴、思い出したのか・・・・?」

 

「こりゃ、是が非でも成功させなきゃな!」

 

「うん!!」

 

気合いが入った飛鳥の様子を見て、斑鳩が三人に向かってこう言った。

 

「今までわたくし達が奇襲を掛けられてきましたが、今度は、わたくし達が奇襲を仕掛けてやりましょう!!」

 

斑鳩の言葉に、一同は力強く頷いた。

 

 

 

ー雲雀sideー

 

半蔵学院を離れた雲雀は、春花に与えられたメモに従って電車を乗り継ぎ、都会から離れ山の中の鬱蒼とした森を歩いていた。

 

「・・・・この先のはず・・・・!」

 

森を抜けると不器用な空が広がり、崖の上から下を見下ろすと、まるで戦国時代の城塞都市が広がっていた。

 

「ここが、『秘立蛇女子学園』・・・・! うわっ!!」

 

すると、雲雀の足に縄が巻き付き、引っ張られて倒れる。

 

「何者だっ!?」

 

おそらく蛇女の下忍だろう二人の女子がそこにいた。

 

「あ、あの、私は!」

 

「くせ者め!」

 

「さては善忍のスパイかっ!?」

 

「ち、違うよ! 『春花』さんに会わせて!」

 

「なにっ!?」

 

「『春花様』ぐぁっ!」

 

雲雀を捕まえた忍の少女の1人が、突如声を上げると気を失ったように倒れた。

 

「っ!? お、おいどうし「悪いけど、大人しくしてくれないかな?」 なっ!?」

 

もう1人の女子の背後に少年が現れ、雲雀の捕らえた縄を奪い、女子の喉元に鋭く削った鉛筆の先を突き立てた。

 

「えっ・・・・ウソ・・・・」

 

「静かにしてくれる。鋭く削った鉛筆は喉を貫く事もできるよ。こんな事で死にたくないでしょう?」

 

「(・・・・コクコク・・・・!)」

 

雲雀に聞こえないように少女の耳元で静かに囁きながら、鉛筆の鋭い先を肌にチクッと触れさせる理巧の声は、酷く冷酷で、冷血で、冷徹に響き、少女は抜けそうに腰と震える足を抑え、失禁しそうになるのを必死に堪えた。

 

「や、雲雀ちゃん」

 

「理巧、くん・・・・!」

 

雲雀の方に向けたいつものやる気が抜けた貌の暁月理巧の登場に、雲雀は目に涙を溜めて、戸惑いと嬉しさが混じったように呟いた。

 

 

 

ー春花sideー

 

豊満な肢体にシャワー浴びていた春花に、伝声管が降りてきた。

 

《は、春花様・・・・!》

 

「どうしたの?」

 

《その、学園の伺う怪しい娘と男を見つけまして・・・・》

 

「娘に男?」

 

《は、はい。その二人が、春花様に会わせろと・・・・》

 

「そう。お部屋に連れてきてちょうだい」

 

《し、しかし! 規則では侵入者を見つけたら先ず学園に報告を!》

 

「・・・・私が連れてきて、って言ってるのよ」

 

《っ! し、失礼しました! すぐに連れていきます!!》

 

シャワーを止めた春花の声を静かにして呟くと、連絡をしてきた女子が慌てて伝声管を引っ込めた。

 

「ウフ。思ってたより早かったわね。それに、貴方も来てくれていのね。暁月理巧様♥️」

 

理巧の顔を、燃えるように美しい緋色の瞳の中に宿る冷徹な光、その瞳で自分を見下ろす理巧の顔を思い出すと、春花の身体が火照りだし身体を少し捩らせた。

 

 

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