ー飛鳥sideー
「おい。蛇女子の方が騒がしくなってきたぞ」
「どうやら理巧が動いたようだな?」
「では、確認しますよ」
完全に夜の世界となった蛇女子学園を望遠鏡で覗いていた柳生と葛城が、何やら慌ただしく動きまくる蛇女の忍達を見据えながら言うと、斑鳩が作戦内容を話した。
「理巧くんが立てた作戦は、先ず自分が雲雀さんの護衛と、ペガさんによる蛇女子学園の内部構造の情報収集。時が来たとき“理巧くんが蛇女子の内部をかく乱し”、“わたくし達は飛鳥さんの『リトルスター能力』を使って奇襲”。理巧くんが陽動として他の蛇女子の忍達を相手にする間、わたくし達が天守閣にあるオーナーの部屋に置いてある『超秘伝忍法書を奪取』。奪取を終えたら各々に通信インカムを用いてレムに連絡。転送エレベーターで脱出。これで良いですわね?」
「「「(コクン)」」」
斑鳩の言葉に飛鳥と葛城と柳生も頷いた。
今回の作戦。理巧は飛鳥の『リトルスター能力』、『テレポート』が必要と書いていた。飛鳥の能力は、飛鳥自身が転送先をイメージできなければテレポートできない事は、前回の『這緊虞』の後で行った実験訓練で実証済みである。
蛇女子内部の情報をペガが隠し持っていたスマホのカメラで撮影し、それをレムに転送し、その写真から内部構造を構築し、飛鳥達に伝送し、飛鳥に最も最短のコースをイメージして転送する為だ。
「飛鳥さん。準備は?」
「万全です!」
「(コクン) 理巧くんが派手に外で暴れれば、それを鎮圧するために忍の多くは理巧くんの方に向かいます。すでに蛇女子の方もわたくし達が奇襲を仕掛けてくるのを知られておりますから、外で戦う理巧くんには忍学生や教官達が向かい、内部の守りはおそらく・・・・」
斑鳩と葛城と飛鳥と柳生の脳裏に、詠と日影と焔と春花と未来の顔が浮かんだ。
「焔ちゃん達が、待ち構えている!」
「上等だぜ! 今度こそ借りを返してやるッ!」
「雲雀を操り、『超忍法書』を盗ませたのが奴らなら、報いを受けさせてやる・・・・!」
「ええ。ですが、もしもの時は、『これ』を使いましょう。理巧くんもその為に残してくれたのでしょうから」
斑鳩と葛城と柳生は胸の谷間からそれぞれの『リトルスター』だった『ウルトラカプセル』を取り出した。
「アタイの能力は『回復』だ。みんなが怪我したら治してやるよ!」
「オレの能力は『防御』。雲雀を護るには十分だな」
「攻撃系の能力は、わたくしと雲雀さんだけですが、なるべくなら使いたくありませんわね」
「でも、焔ちゃん達も本腰を入れて守りに来るから、用心の為に持っていてって、りっくんが残してくれたんだから!」
「ええ。理巧くんの危惧も分かります。いざとなれば使いましょう・・・・。では、飛鳥さん。お願いします!」
「・・・・はい!」
イメージの為に瞑目する飛鳥。少し間を開けると、目をカッと開き、力強く頷くと『ウルトラマンゼロカプセル』を起動させた。
ーーーーセャァッ!!
ゼロの声が響くと、飛鳥の眼前に『ワームホール』が展開され、飛鳥達は『ワームホール』に飛び込んだ。
ー雲雀sideー
その頃、捕らえられた雲雀は春花に連れられ、座敷牢に閉じ込められた。
「ここで大人しくしててちょうだいね」
「春花さん達、負けたら死んじゃうの・・・・?」
「ええそうよ」
自分達が死ぬと言うのに、微笑みを崩さない春花に雲雀はさらに言葉を紡ぐ。
「そんなの可笑しいよ! 間違ってる!!」
「『軛の術』は、蛇女子学園に入学する際、全員『あの方』に掛けられてるわ」
「全員・・・・!」
「本来は、退学や脱走した学生が学園の存在を外部に漏らそうとした時に発動させる術なの。でも『あの方』は、術の発動条件を自由に変更できる」
「そんな恐ろしい術を掛けられて、恐くないの!?」
「ウフフフ。“死を恐れる者は、忍務の失敗を恐れぬ者”。・・・・でしたわよね、先生・・・・?」
春花が目を横に向けると、雲雀の座敷牢の隣の牢に、“鈴音が捕らえらていた”。
「っ・・・・」
「先生・・・・!?」
雲雀も、鈴音の存在に気づいた。
「どうやら理巧様が派手に暴れているわ。貴女のお友達も、無事に潜り込んだようね」
「皆が!?」
春花は恩師に向かって口を開く。
「これも先生の思惑通り?」
「・・・・・・・・」
沈黙する鈴音を置いて、春花は言葉を続ける。
「まぁ良いわ。こっちの方がちょっと面白そうだもの♪」
「ダメだよ!」
「?」
「戦って負けたら、春花さん達死んじゃうんでしょう!?」
「大丈夫。私達が負けるなんてあり得ないもの」
「そうかしら?」
春花の言葉を否定する鈴音に目を向ける。
「あら先生、お話しできるんじゃない」
「半蔵学院を、“霧夜”を甘く見ない方が良いわ」
「っ!」
「生徒が負ける度に、その敗因を精査し、弱点を補い、持てる長所を伸ばしている筈。それも確実に・・・・」
「じゃぁ私達は、“半蔵学院の子達を育てるために戦って来たってこと”?」
「フフフ・・・・。貴女達は私の最高の忍生徒よ。相手にも、それに見合う相手になって貰わなくてわね」
「・・・・貴女の『目的』は、何なの?」
「・・・・・・・・」
再び沈黙する鈴音を、雲雀はジッと見つめると、春花が話しかけてきた。
「ウフ。『目的』は何であれ、先生は私を『地獄』から救ってくれた恩人だものね」
「え? 春花さん!?」
雲雀は春花の言葉に首を傾げそうになるが、笑みを浮かべる春花を見て、嫌な予感を感じた。
「安心して、次会うときこそ、雲雀を私の本当の『お人形』にしてあげる♪」
歪な笑みを浮かべる春花は、そのまま去っていった。
ーオーナーsideー
《現在、半蔵学院の生徒とおぼしき侵入者と交戦中! 相手はたった1人です!》
「馬鹿なっ! たった1人のくせ者に外の者共は手こずっているのかっ!? ええい! この無能共めがっ!」
オーナーは外の忍の報告を聞いて焦り出し、ヒステリックに喚き出す。
外に現れたくせ者はおそらく陽動。だが、たった1人に蛇女子学園の忍が苦戦しているなど、報告ではすでに半分近くの忍達がやられている。このままでは蛇女子学園の威信に傷がつく。
「一体何者なのだ!?」
《侵入者は、“赤い髪と赤い瞳をした男”です!》
「なにっ!?」
報告を聞いてオーナー、『道元』は懐に入れておいた標的としている少年、暁月理巧の写真を見ると、侵入者はこの少年ではないかと推察した。
「・・・・貴様らは侵入者を捕らえろ! 多少の手荒い手段を用いても構わん! “死んでなければ良いのだ”! 焔達を除いた生徒達も使えっ! 何があっても侵入者を捕らえろっ! 城内の守備は焔達に任せる!!」
くせ者が半蔵学院にいる暁月理巧ならば、“ヤツ”への交渉の道具として必要故に、捕らえる事を優先した。
そして標的が囮となっているならば、他の忍達は今自分が持っている蛇女子が所持する『超秘伝忍法書 陰』と、先日半蔵学院から奪取した『超秘伝忍法書 陽』が狙いなのは明白だった。
「この学園を造るために費やした時間と費用は膨大なものだ。この失態が上層部に知れれば、築き上げてきたこの地位どころか、命まで・・・・。かくなる上は、二つの『超秘伝忍法』を完成させ、“ヤツから支給されたモノを使えばいい”。いや、暁月理巧を利用して、“ヤツ”が所持する『カプセル』と『クリスタル』の製造方法を手にいれれば、悪忍組織処か、この世界を我が手中に・・・・!」
道元は、『協力者』から送られた『6本の怪獣カプセル』と『大きめのコピークリスタル』と、“イカルス星人から送られた物”を見据え、標的の理巧を使っての企みを考えてほくそ笑んだ。
ー理巧sideー
「さてと、そろそろ飛鳥さん達が潜入した頃かな。こっちもそろそろ本腰って所かな?」
理巧が周りを見渡すと、蛇女子の忍、教官や焔達以外の生徒達が武器を構えて理巧を取り囲んでいた。
「陽動役1人に随分と集めたな。蛇女子学園は以外と臆病、いや、その傲慢さこそが最大の弱点だな」
理巧が言い終わると、取り囲んでいた忍達が、一斉に理巧に飛びかかった。
何人かが爆弾を理巧に向けて投げ放つとーーーー。
ドゴン! ドゴン! ドゴン! ドゴン! ドゴン!・・・・。
夜の蛇女子学園に爆裂音が鳴り響いた。
ー飛鳥sideー
そして理巧の予想通り、斑鳩達は『ワームホール』から飛び出ると、蛇女子学園の天守閣のある城内に潜入し、廊下を走っていった。
「たくっ! 天守閣に直行で向かえなかったのかよ飛鳥!」
「ゴメン! この廊下が一番イメージしやすかったから!」
なんて言い合っていると、行き先に煙幕爆弾が放たれ、煙が巻き起こり四人が立ち止まり煙が晴れると、広間があり、先に続く通路の前に1人の少女がいた。
「ウフフ。いらっしゃいませ」
「貴女は!」
「手厚くおもてなしさせていただきますわ。半蔵学院の、お嬢様方。ウフフフ・・・・」
斑鳩と因縁ある悪忍、詠が大剣を構えて淑やかに微笑んだ。
「ここまで来れた事を誉めて差し上げますわ!」
「わたくし達は仲間と、『超秘伝忍法書』を取り返しに来ました。邪魔立てするなら、容赦は致しません!」
斑鳩の言葉に、飛鳥達も構える。
「他人の家に土足で踏み込んでおいてその横暴な物言い・・・・。流石お金持ちの娘ですわ! 次は札びらで頬でも叩きますか?!」
詠は大剣を振り上げて斑鳩に斬り込むが、斑鳩も飛燕でその一撃を受け止める。
「フフフフフ・・・・」
「くぅ・・・・!」
つばぜり合いとなる二人だが、斑鳩が飛鳥達に叫ぶ。
「ここはわたくしが押さえます! 皆さんは先に向かって下さい!」
「そんな・・・・!」
「お前1人を置いて行けるか!」
「もしかして、わたくしを嘗めていらっしゃいます?!」
「いいえ、だからこそです! 『忍結界』!!」
「っ!」
斑鳩はそのまま詠を連れて、自分の戦闘空間へと転移した。
「斑鳩さん!」
「斑鳩!」
「・・・・先を急ごう」
ただ1人、柳生は先へ行こうとした。
「おい柳生!」
「斑鳩は負けない・・・・!」
「「っ!」」
振り向いてそう言う柳生の瞳には、少し前までには無かった、『仲間への信頼』があった。
「・・・・そうだな! アタイがアイツを信じないでどうすんだ! よし行くぜ飛鳥!」
「はい!」
3人はレムが構築した地図をスマホで見て、城内を警戒しながら進む。
「こりゃ迷路だな。ペガとレムが地図を作ってくれてなかったら迷ってたぜ。兎に角今は先に進むしかねぇ!!」
ー雲雀sideー
春花の気配が無くなったのを確認した雲雀は、鈴音に問いかけた。
「あ、あの・・・・。半蔵学院出身って本当なんですか?」
「・・・・・・・・」
「どうして悪忍に?」
「・・・・・・・・」
沈黙を続ける鈴音に、雲雀は忍島で見つけた落書きの事を話す。
「忍島に行ったこと、ありますよね? 【目指せスーパー忍者! 頑張れ私!】。天井の柱に書いたの、貴女ですよね!?」
「・・・・・・・・どうして?」
ようやくこちらに目を向けた鈴音に、雲雀は話す。
「分かりません。・・・・でも、貴女を見たとき、急に見えたんです。あの落書きが・・・・」
「・・・・ふ」
「???」
少し悲しげに微笑む鈴音。
「朧気ながらも『透視術』を覚醒させるまでに育てていたとはね・・・・。流石、我が師」
「そ、そんな凄い術、雲雀教えて貰った事なんて・・・・!」
「“忍術は心の技”。心の成長が技を生み、技の強さが心の強さとなる」
「え・・・・?」
鈴音は立ち上がり、身体からチャクラを放出させると、牢屋を破った。
「鈴音様! 何をうあっ!」
見張りの為に残っていた忍を一蹴した鈴音の姿は、口をマスクで隠し、首には長いマフラーを、上半身を胸当て一枚、下半身は忍装束、腰にボロボロのマントを巻き、刀とクナイを構えた『忍転身』の姿だった。
「鈴音、先生・・・・」
「欲する物有らば、命駆けで取りに来なさい! それが忍・・・・!」
そう言って、鈴音が消えると、雲雀は倒れた忍の近くに落ちてあった、牢屋の鍵が目に入った。
ー飛鳥sideー
飛鳥を先頭に通路を走る3人。
「「うわっ!?」」
「えっ!?」
だが、葛城と柳生の足元が突如下がり、二人は下の階に落ちてしまった。
「な、何だこれ・・・・! だ、ダメだ!」
「罠か・・・・!」
葛城は何とか這い上がろうとするが無理だった。
「葛姉ぇ! 柳生ちゃん!」
「来るな飛鳥!!」
「えっ!?」
降りようとする飛鳥を柳生が止めると、二人の視線の先には、日影と未来が現れた。
「飛鳥。悪いけど、後はお前1人で頼むわ。どうやらこれ以上うえに登られたら、よっぽどマズイみたいのようだしな!」
「行け!」
「葛姉! 柳生ちゃん!」
「馬鹿! なにしてやがる! 何のために理巧が1人で陽動をしてんだ! 何のために斑鳩がタイマン張ってると思ってんだ!」
「・・・・みんな・・・・っ!」
理巧も斑鳩も、雲雀と『超秘伝忍法書』を取り戻すために自分にできることをしている。
それを自覚した飛鳥は、前を見据えて走り出した。
ー葛城sideー
飛鳥が走り出したのを確認した葛城は、日影と未来をキッと睨む。
「やぁだ。1人上に残しちゃったじゃない」
「仕掛けが間に合わんかった。あの飛鳥言う忍。思ってたより足が早い」
「って、他人事みたいに・・・・!」
「へっ! やっぱり潜んでやがったか!?」
「まぁ良いわ。アタシ、あの子にリベンジしたかったし!」
柳生を指差す未来。
「とりあえず、コイツらだけでも始末しとこうか・・・・」
「言ってくれるじゃねぇか!」
ナイフを取り出す日影に、葛城は拳を構える。
「最初に見たときから、アンタが気に入らなかったのよ!!」
「雲雀は何処にいる?」
未来を眼中に無いと言わんばかりの柳生に、日影はやれやれと肩をすくめるが、無視された未来は当然・・・・。
「アタシを無視するなぁっ!!」
怒り心頭だった。が、それも無視して。
「葛城!」
「ああ!」
柳生は未来に、葛城は日影に近づくと。
「「『忍結界』!」」
それぞれの戦闘空間へと転移した。
ー飛鳥sideー
そして飛鳥は、最上階に向かって駆けていくと、最期の階層でその子がいた。
「1人か・・・・」
「焔ちゃん!」
「もう少し残っているものと思っていたのにな」
「雲雀ちゃんは無事なの!?」
「牢屋に入ってるよ。盗み聞きがバレてな」
「っ・・・・やっぱり雲雀ちゃん、1人で忍法書を取り替えそうと・・・・」
ボソッと呟く飛鳥だが、『忍転身』し、背中に六本の刀を召喚した焔を見て、気を引き締める。
「先に進みたいなら、私を倒すんだな・・・・『半蔵の孫』!!」
「『忍結界』!!」
六本の刀を持って構える焔と、二本の小太刀を構える飛鳥が戦闘空間を展開させた。
「飛鳥! 舞い忍びます!!」
「ふっ! 面白い!」
刀を構える両者が、眼前の相手を見据えた。
ー雲雀sideー
そして雲雀も、牢屋の鍵を取ろうと手を伸ばすが、その鍵は突然現れた手によって奪われた。
春花だ。
「残念♪ 音がしたんで戻ったら、案の定ね」
「春花さん! お願い、ここから出して!」
「出てどうするの?」
「みんなに伝えないと! 蛇女の人達が戦いに負けたら術で殺されちゃうって!」
「それで?」
「え?」
「私達に勝たなければ、貴女達の目的も果たせないわよ?」
雲雀の言葉を春花が否定する。目的、『超秘伝忍法書』の奪取を諦める事だ。
「でも、こんなの忍の使命と関係無いよ!」
「ウフ。確かに関係無いわ。私達の居場所はここ<蛇女子学園>だけだもの。前に言ったでしょ? みんな色んな事情があってここに来たって」
「さっき言ってた『地獄』って、じゃぁ春花さんも?」
雲雀の問いに、春花は薄く笑みを浮かべて口を開いた。