閃乱ジード   作:BREAKERZ

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第1章完結。次回から第2章です!


第一章完結。新たな始まり

ー理巧sideー

 

2体の怪獣と戦闘した場所から500メートル離れた所で変身を解除した理巧は、『ドウローダー』の両腕の爆発で道元の部屋から飛び出した『黒い塊』、いや『黒い金庫』を見つけた。

 

「・・・・これ、使えるな」

 

理巧は『黒い金庫』の中身を少し見て、それを転送エレベーターを使って秘密基地へと運んだ。

 

 

 

 

皆がいる筈の、もはや建物としての体裁を失った蛇女子学園に戻った理巧は、その場所で忙しなく動き回っている『黒服を着用した異星人の一団』と、その一人であろう渋い顔をした鉄面皮の地球人らしき男と何かを話している霧夜先生と、その話を聞いている飛鳥達と焔達を見つけた。

 

「みんな」

 

「あっ、りっくん!」

 

「その人達は?」

 

「『AIB』と呼ばれる、異星人達による警察組織みたいなモンだとよ。異星人と癒着していた道元を捕らえに来たみたいだぜ」

 

「霧夜先生によると、以前から道元にはその疑いがかけられていたそうなんですが、中々尻尾が掴めなかったそうですわ」

 

「それが今回の騒ぎで明らかになってな。その組織が動いたようだ」

 

「・・・・もっと早く動いて欲しい所だね」

 

全部終わったタイミングで来た組織に、理巧は冷めた目でそう呟くと。大道寺が口を開く。

 

「そう言うな。飛鳥達が蛇女に出陣したのと同時に、AIBが監視していた怪獣の卵が羽化し、その怪獣を補食しようと別の怪獣が現れてな。師とゼロが退治したのが、その事件の後始末に時間がかかってしまい、漸く来られたのだ」

 

「えっ? 飛鳥ちゃん達が蛇女に来るときに怪獣が現れたんですか?」

 

「うむ。その時、怪獣を羽化させようと成長促進剤や補食しようとする怪獣をおびき出していたのが、イカルス星人が金で雇ったチンピラ宇宙人だったのだ」

 

「なるほど。つまりあのゴミ<道元>が裏で糸を引いていたって訳ですね。それでヤツは?」

 

「先ほどAIBが護送していった。ほぼ意識が無い状態だったがな。しかし、『悪忍上層部に無断で『超秘伝忍法書』を強奪』。『善忍に対しての不可侵条約の違反』。『異星人と結託しての怪獣騒動』。これらの行為による責任を取らされ、しばらくはショバには出てこれないだろう」

 

「そうですか・・・・・・・・ん!?」

 

大道寺の話を聞いていた理巧は、突然バッ!と振り向くと、ソコにはAIBの職員らしき異星人達が蛇女子の生徒達や教官達の手当てをしていた。

 

「りっくんどうしたの?」

 

「いや、今覚えのある気配を4つほど感じたんだけど・・・・気のせいかな?」

 

「戦いの後の疲労で神経が過敏になっているのだろう。気にする事はない」

 

「そうです、ね。あ、そう言えば大道寺先輩。地毛は金髪だったんですね?」

 

「む。まぁな・・・・」

 

ゴワゴワした黒髪ではなく、サラサラとした金髪となった大道寺に見る理巧達だが、大道寺はチラッと理巧が振り返った先に隠れている『四人の職員』を一瞥すると、四人は「ありがとう」と言っているようにジェスチャーをしていた。

 

「理巧。戻ったか」

 

渋い顔の職員と共に、霧夜先生が近づいてきた。

 

「おじさんその人は?」

 

「彼はAIB日本支部の幹部、『シャドー星人のゼナ』だ」

 

「え? シャドー星人? 地球人にしか見えないですよ?」

 

飛鳥がそう言うと、ゼナの顔が渋い顔から、デスマスクのような顔に変貌した。

 

「うぉ」

 

『うわぁっ!!?』

 

「これで分かって貰えたか?」

 

驚く理巧や飛鳥達を見てデスマスクは渋い顔に戻ったゼナは、まったく口を動かしていないのに、声だけを発していた。

 

「・・・・それで、蛇女の皆はどうなるですか?」

 

「蛇女子学園の生徒達は利用されていただけだが、参考人としてしばらくはAIBで保護させて貰う」

 

「そんな待ってください!」

 

「春花さん達は何も悪くないよ!」

 

「確かに怪獣を呼び出したり、わたくし達善忍と戦いを起こしましたが!」

 

「それもこれも全部、あの道元ってオッサンの命令だったんだ!」

 

「情状酌量はあると思うが?」

 

飛鳥達が弁護するが、ゼナは淡々と話し出した。

 

「これでもかなり譲歩している。だが、この娘達が命令とは言え怪獣を召喚し、その時に出た損害を考えれば、この処分が妥当だ」

 

「でも・・・・!」

 

「良いんだ。飛鳥」

 

「焔ちゃん・・・・!」

 

「わたくし達がやった事を考えれば、投獄されないだけましですわ」

 

「ま。負けたんやから、こんくらいはしゃぁないな」

 

「他の皆の身の安全も保証してくれようだしね」

 

「このあたりが良い落とし所ね」

 

焔だけでなく、他の蛇女の皆も同意のようだ。

 

「・・・・りっくんは、どう思う?」

 

飛鳥がさっきから黙っている理巧に問うと、理巧は冷静に声を発した。

 

「確かに、命令とは言え焔達がやって来た事は無罪放免って訳にはいかないよ。それに、おじさんとゼロが何も言わないって事は、信頼できる組織って事だよね?」

 

「・・・・まぁな」

 

「でも・・・・」

 

そう言った理巧の眼差しは、道元に見せた冷酷な輝きを発しながらゼナを一瞥する。

 

「もしも、焔達に妙な事をやらかしたら、AIBだろうがなんだろうが、許しませんからご理解を」

 

「・・・・善処しよう。“ウルトラマンジード”」

 

ゼナも理巧の視線に動じず、理巧の事を“ウルトラマンジード”と呼称した。

 

「流石に知ってましたか」

 

「AIBを甘く見るな」

 

≪本当はここに到着した時に理巧がトライスラッガーに変身したのを見たからだけどな≫

 

「(それを言うなよゼロ)」

 

そしてゼナは焔達と鈴音を連れて行こうとする。

 

「凜!」

 

「・・・・少し、時間をちょうだい。これからの事を考えたいから」

 

「・・・・分かった」

 

「凜先輩。我との決着はいずれ」

 

「ええそうね。じゃ、さよなら先生」

 

鈴音は霧夜先生と大道寺に挨拶を交わしていると、焔達も飛鳥達に話をする。

 

「じゃぁな。飛鳥」

 

「うん! またね焔ちゃん!」

 

「詠さん。貴女の育った街の人達が、少しでも助けられるよう、わたくしから家の方に頼んでみます」

 

「・・・・信じてあげますわ。斑鳩さん」

 

「ちゃんとケリをつけてやるからな! いつでもかかってきな日影!」

 

「ほな、そん時に相手して貰うわ、葛城」

 

「いい! 今度はアタシを無視すんじゃないわよ柳生!」

 

「一応覚えておく未来」

 

「ちょっとお別れだね、春花さん」

 

「ウフフ、次に会った時は、私の物にしちゃうからね雲雀」

 

それぞれにライバルとなった相手と挨拶を交わした後、焔達が理巧に近づく。

 

「理巧。お前にも世話になったな」

 

「ま、こっちも良い経験になったよ」

 

「・・・・所で理巧。お前、あの半蔵学院の奴らの誰かと、恋仲になっている奴とか、好いてる奴とかいるのか?」

 

『っっ!!』

 

焔の一言に、他の蛇女選抜メンバーと飛鳥達もピクッと肩を揺らす。

 

「ん? 恋仲の人はいないな。好きって言うならLIKEの方だけど」

 

「「「「「(ガクッ)」」」」」

 

「「「「「(グッ!)」」」」」

 

飛鳥達は肩を落とし、焔達は小さく拳を握りお互いに目配せをすると、焔はさらに理巧にソッと近づき・・・・。

 

「そうか・・・・それじゃ、少し善忍共を出し抜いてやるか」

 

「は?・・・・ンムっ」

 

「ンン・・・・♥️」

 

「「「「「あーーーーーーーー!!!」」」」」

 

なんと焔が、理巧と唇を合わせ、キスをした。

飛鳥達が悲鳴を上げるのと同時に遠くから、「ウチの子に何してくれてンのよーーーー!!」と聞いた事のある声が聞こえたが、理巧は焔が唇を離した瞬間、詠が両手で理巧の頬を挟みーーーー。

 

「はんん♥️」

 

「(詠さん?)」

 

今度は詠が理巧の顔を自分に向けさせると、唇を合わせた。

また飛鳥達が悲鳴を上げ、「理巧くん! そんな口づけだなんて・・・・早すぎますよ!」と遠くから声が聞こえた。

 

コーーーーン・・・・!

 

詠は唇を離すと、詠の胸元からリトルスターの光が現れ、理巧の手に宿った。

 

「これは・・・・「理巧様♥️」 ん? 春花さング?」

 

次に理巧の背中に抱きついた春花が理巧の顔を自分に振り向かせるとーーーー。

 

「んん、レロ♥️」

 

春花はさらに舌を絡ませた。そして「良い度胸だな小娘共・・・・!」と、静かな怒りを含んだ声が遠くから聞こえた。

 

コーーーーン・・・・!

 

すると今度は春花の胸元からリトルスターの光が出てきて理巧の手に。

 

「は、春花姉様ズルい!」

 

「ほなワシも」

 

未来が理巧を春花から引き剥がすと、日影がその長い舌を理巧の唇に入れるようにキスはした。

 

「ズル・・・・っ! ん!? ズズッ! ふぇ、ひぅぁ♥️」

 

だが、理巧も反撃と日影の舌を吸い込むようにし、さらに甘噛みなどで日影の顔がトロンっとした。するとまたも遠くから、「流石は俺の子だ! 一気に五人もガールフレンドを作ったかっ!!」と声が聞こえた。

 

「何ディープキスなんてしてんのよ! だ、だったらアタシだって!!」

 

未来が日影から理巧を引き剥がし、自分の唇に理巧の唇を合わせた。

 

「んんん、ンチュ♥️」

 

コーーーーン・・・・!×2

 

そして日影と未来からもリトルスターの光が現れ、理巧の手に収まった。

 

「「「「「いつまでやってんのっ!!」」」」」

 

フリーズしていた飛鳥達が舌を絡めそうになっていた未来と理巧を引き剥がした。

 

「ほ、焔ちゃん! な、何してんのっ!?」

 

「フッ。これからは忍としてだけでなく、こっちの方でもライバルだな!」

 

飛鳥が驚愕した声で叫ぶと、焔達は理巧と口づけした唇にソッと触れると、飛鳥達に宣戦布告した。

 

「お前達半蔵学院がモタモタしていると、私達がソイツを、暁月理巧を貰うぜ!!」

 

そしてゼナに連れていかれた焔達の布告に、飛鳥達は小さく肩を揺らした。

 

「・・・・どうやら、新しい因縁が生まれたようだな」

 

≪“ギンガ達もそうだったが”、理巧も女難の運命を背負っているのかよ?≫

 

そして当の理巧はーーーー。

 

「フム。蛇女子学園は積極的なんだね」

 

『理巧。なんとも思わないの?』

 

存外冷静な理巧にペガが聞くと。

 

「んー? 良く育ての親の人達も、夜こういう風にキスしたり、その先をしていたからね。結構馴れた」

 

「(鷹丸。夜の情事を息子に知られてるぞ・・・・)」

 

霧夜先生は遠くで明後日の方向を向いている四人を一瞥した。

そして理巧は、詠。春花。日影。未来の四人から現れた四つの『ウルトラカプセル』に目を落とし、霧夜先生を通してゼロも視線を向ける。

 

ディヤッ!

 

シュァッ!

 

シャッ!

 

ヤー!

 

詠からは『超古代の勇者・ウルトラマンティガ』。

 

日影からは『闘志の戦士・ウルトラマンダイナ』。

 

未来からは『大海の光・ウルトラマンアグル』。

 

そして春花からは『ウルトラマンレオの弟・アストラ』の『ウルトラカプセル』を受け取った。

 

≪師匠の弟のアストラ。そして、『ルクス』と『ハヤト』と『傷無』の力を手にしたか・・・・≫

 

恩師の弟と、かつて『十勇士』として共に戦った三人の少年の顔を浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから何日か過ぎ、飛鳥が昇段試験を合格して、柳生と同じ段位となり、半蔵学院が『夏休み』を迎えようとしていた。

まだ霧夜先生が来ていない忍教室では、理巧と飛鳥の子供の頃の話で盛り上がっていた。

 

「アハハハハハハハ!! 飛鳥がカエル嫌いになった理由って!」

 

「子供の頃、理巧くんと遊んでいたら、小学校近くの小池に飛鳥さんが落ちて・・・・!」

 

「その飛鳥ちゃんの顔にカエルさんが引っ付いちゃって・・・・!」

 

「飛鳥が、その・・・・“お漏らしをしてしまったからか”・・・・プッ」

 

「うわーーーーーん!! だから言いたくなかったのに!!」

 

「その後、僕があーちゃんを背負って家まで送ったんだよね。まさかそれでカエルが苦手になっていたとは」

 

「だって! あの時目の前についた水かきと太ももが恐くて! それで・・・・/////」

 

と、そこでーーーー。

 

ボワァアアアン!

 

いつもの霧夜先生の煙玉が炸裂し、いつもの通り六人が噎せていると、霧夜先生が現れた。

 

「霧夜おじさん。焔達は?」

 

「・・・・AIBからの報告では、彼女達は昨日から姿を消したようだ」

 

「えぇっ!? 焔ちゃん達がっ?!」

 

「あぁ。蛇女子学園でウルトラマンベリアルと関わりがあったのは、どうやら道元1人でな。その道元も、ずっとAIBの息がかかった医療機関で治療を受けていたが突如行方を眩ませた」

 

「悪忍の上層部が回収したんだろうね」

 

「たぶんな。それで理巧。お前は道元が、『ベリアルの配下』だと思うか?」

 

「・・・・いや、奴は使い捨ての駒だったんでしょう。『ベリアルの配下』は別にいる」

 

「? 何故そう思う?」

 

「僕は融合獣は道元が変身していると思っていた。だが、道元がタイラントに取り込まれた後に融合獣が現れた。ベリアルが変身していたなら、ゼロが気づいたんじゃないかな?」

 

「(デュォンッ!)確かにな。だが、あの融合獣からは、ベリアルの気配が感じられなかったし、ベリアル本人が変身してたんなら、斑鳩達に簡単に足止めされる筈がない」

 

「これは道元に『コピークリスタル』や『怪獣カプセル』を渡し、さらに融合獣に変身していたのはベリアルでも道元でもなく、『第三者』がいるって事なんだ」

 

「じゃぁ・・・・!」

 

「うん。まだ終わっていないって事だ」

 

「うむ。斑鳩と飛鳥、柳生と雲雀は一時帰省するんだったな?」

 

「はい。改めて、お義父様やお兄様に、貧民街の皆さんの援助をお願いしたいので」

 

「私は、もう一度じっちゃんに鍛えて貰おうと」

 

「オレも雲雀も、一度帰省して修行してくる」

 

「頑張ります!」

 

「んじゃアタイは理巧と二人っきりでしっぽりと! 手取り足取り腰振り模擬戦と行こうかっ!!」

 

自主トレで残る葛城は理巧に飛び掛かるが、ヒラリもかわされ壁に激突した。

 

「悪いけど葛姐さん。僕は今日は予定が有るんで模擬戦はまた今度ね」

 

「(デュォンッ!)何かあるのか?」

 

「・・・・育ての親の人達と、久しぶりに夕食を、ね」

 

「ふっ。そうか。・・・・いずれにしても、ベリアルの脅威が抜けていない今、各々の能力アップをしっかりとしておけ!」

 

『はいっ!』

 

「(さて、鷹丸さん達との時間まで少し余裕があるな)」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー焔sideー

 

「さて、バイトでも探そうか・・・・」

 

焔達は現在。街から離れた郊外にある、天文台近くの森にある洞窟で生活していた。

悪忍の重鎮である道元に反旗を翻した焔は、組織にいる事ができず『抜忍』。つまり善忍からも悪忍からも狙われる立場となってしまった。最初は焔だけ抜忍となろうとしていたが、詠に日影、未来と春花も一緒に抜忍となり、襲撃者から身を隠すためにこの洞窟に来て、五人で生活していた。

しかし、悪忍として忍務をしていた時は依頼等の報酬で生活していたが、抜忍となれば依頼なんて来るはずがなく、自分達で生活しなければならなかった。

金銭的な管理と炊事は詠がしているが、「モヤシが至高ですわ!」と言って主食はモヤシと野草で生活する事になり、バイトで生計を成り立たせたくとも、未成年の焔達では割りの良いバイトも見つからず苦労していた。

 

「随分苦労しているようね」

 

そんな一同が住む洞窟に、客人が現れた。

 

『鈴音先生!?』

 

恩師である鈴音だ。鈴音もあの後悪忍の教官職に残り、現在は焔達の後任となる選抜メンバーを鍛えていたが、時おり、教え子である焔達の様子を見に来ていた。

 

「貴女達に伝えておく事ができたの」

 

「伝えておく事?」

 

「貴女達に悪忍上層部から、『暁月理巧を悪忍側に引き込め』と命令がくだったわ」

 

『えぇっ!?』

 

鈴音の言葉に焔達が驚愕の声をあげた。

 

「どういう事ですの先生。わたくし達に理巧さんを籠絡しろって事ですの?」

 

「仮つまんで言えば、ね」

 

「わしらは抜忍やろ?」

 

「“表向きは”、ね」

 

「表向き?」

 

「そう。現在暁月理巧は善忍側にいるが、今回の独断専行と蛇女子学園の生徒達と教官達との戦闘行為。さらに道元に全治10ヶ月の重症を負わせた事により、『半蔵学院の忍生徒として在席しているが、善忍としての適正に欠けると見なされ、善忍と認められない』、と善忍上層部は判断したの。悪忍上層部は蛇女を1人で制圧し、選抜メンバーである貴女達をも凌ぐ実力を持った忍が善忍側にいるのは、後に悪忍側にとっての脅威と考えた。だが今なら善忍ではない彼を悪忍に転向する事ができる。しかし、悪忍側から彼に接触すれば善忍側との不可侵条約に触れる」

 

「なるほどね。抜忍となった私達なら、暁月理巧様と接触しても問題は無いから、私達に命令が降りたのね?」

 

鈴音の話を春花が端的に言うと、鈴音は頷いた。

 

「お前達がこの忍務を引き受ければ、それなりの給金は支給せれるし、悪忍側からの刺客も収まる」

 

「なるほどなぁ。しかし、理巧さんを籠絡かぁ」

 

日影がチラッと周りを見ると、春花は嬉しそうに鼻歌を歌い、未来と詠も頬を染め、焔も若干顔を赤らめた。

 

「みんなやる気あるみたいやなぁ」

 

「そう言う日影さんも、満更でも無さそうですわよ」

 

「っ、そうか?////」

 

日影も両手を頬に当てると、体温が上がっていっていたのに気づいた。

 

「まぁ、奴には悪忍の素質があるとは思いますが、良く上層部がそんな命令を出しましたね?」

 

焔がそう言うと、鈴音が口を開いた。

 

「まぁ、上層部も今回のあらましを聞いて思い立ったからな。・・・・それで引き受けるか?」

 

鈴音の言葉に、焔達はお互いの顔を見合わせると、全員鈴音に向けて顔を向けーーーー。

 

 

 

 

ー鈴音sideー

 

鈴音は焔達の洞窟から離れると、天文台の近くに転送エレベーターでやって来た少年・暁月理巧と出会った。

鈴音も、理巧もお互い示し会わせたように出くわした。

 

「焔達には?」

 

「悪忍からの刺客は来ないと伝えておいた。これであの子達の身の安全は少し保証されたわ」

 

「それは上々。上手くいったみたいで何よりです。“道元もちゃんと約束を守ったようですね”」

 

「・・・・貴方が、“道元が隠していた自身の不正行為の証拠を渡してくれたお陰よ”」

 

そう。理巧はあの戦いの後、レムに鈴音を捜索してもらい鈴音と接触し、『黒い金庫』の中にあった道元の今まで上層部に隠れて行った不正行為の証拠を渡した。

『人身売買』。

『組織の金の横領』。

『上層部に無断で悪忍と関わりのある政治家との裏取引き』。

『犯罪宇宙人を使った違法兵器の製造』。

『宇宙ケシの実を使った薬物の売買』。

『宇宙植物ルグスの栽培』等々。

叩けば叩くほどの埃を鈴音に渡し、これらを使って鈴音は、悪忍用の医療機関で治療を受けている道元に、これらの証拠物を上層部に知られたくなければ、焔達の身の安全の保証と、『黒い金庫』に隠していた大金を焔達の生活費として使わせる事を条件とし、戦々恐々とした道元はこれを承諾。そして『暁月理巧を悪忍に引き込め』と言う極秘忍務を上層部に進言したのだ。

 

「良くこんな事を思い付いたものね」

 

「“理由作り”ですよ」

 

「“理由作り”? っ!」

 

理巧を見た鈴音は思わずゾッとした。その時の理巧の瞳に、冷酷な光が宿っていたからだ。

 

「僕にとって、鷹丸さん達に危害を加えると言った時点で、“道元を始末する理由”になります。ですが、道元がいないと“焔達が危険だ”。だから、道元が生きていると焔達が安全だから、道元を“始末できない理由”を作る為です。幸い僕は正式な善忍と言う訳じゃないですから、こういった“やり方”ができるんですよ」

 

善でも悪でもない自分の立ち位置に危機感を抱かず、逆に利用する強かさ、鈴音は理巧に『悪忍の素質』を見た。

 

「(確かに。この少年には悪忍の資質があるわね)・・・・暁月理巧」

 

「ん?」

 

「一応、生徒達の力になってくれた礼をするわ」

 

鈴音は理巧に向かって『カプセル』を投げ、理巧がそれを掴むと。

 

シュワッ!

 

『ウルトラマン80カプセル』が渡された。

 

「鈴音先生。これは?」

 

「数日前に私の身体から出てきた『ウルトラカプセル』よ。これで少し借りを返したわ」

 

そう言って、鈴音はその場から消えた。

 

「まだまだ、終わりそうもないな」

 

「お~い! 理巧ーーーー!」

 

自分を呼ぶ声に振り向いた理巧の目の前に、戦部鷹丸とハルカとナリカとスバルがやって来て、理巧は飛鳥達も焔達も見た事もない屈託の笑みを浮かべる。

 

「(そうだ。この人達との日々を汚そうとする者がいるなら、僕は善だろうが悪だろうが利用してやる。例えそれが、『遺伝子上の父親』と戦う事になってもな!)」

 

 

 

 

 

ー伏井出ケイsideー

 

「さぁ、序章<プロローグ>はここまで、本番と参りましょうか!」

 

伏井出ケイはチェス盤の上に置かれた、『タイラントカプセル』等の『怪獣カプセル』を見て、不気味な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

ー第1章 新たな光の誕生・完ー




第1章終了。これはまだまだ、理巧と飛鳥達と焔達、そして霧夜先生とゼロの、ベリアルとの戦いのスタートライン前だったんです。


ー次回予告ー

夏休みの間に久しぶりに全員揃った僕達は、伏井出ケイと言う小説家の講演会の警備と言う忍務を受けた。だが何故だ? 伏井出ケイを見ると身体が震える。
そして伏井出ケイが『カプセル』を見せた時、それは僕の『逃れられない宿命』と『拭えない過去の影』が、ゼロの『ベリアルとの長き因縁』が浮上した。
おじさん! ゼロ! これは罠だっ!

次回、閃乱ジード。

【第2章・宿命の始まり サクリファイス】

滾るぜ! 闘魂!

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