終われないぜ、僕達
ー霧夜先生sideー
『シビルジャッジメンター ギャラクトロン』、『宇宙竜 ナース』、『宇宙ロボット キングジョー』が機能停止したのを見た霧夜先生と飛鳥達、近くの公演会場から騒がしい声が響き、全員がそっちに顔を向けると、会場から大勢の観客達が出てきた。
どうやら解放されたようだ。ホッとする一同の目の前に杖を付いた伏井出ケイが、黒い笑みを浮かべて現れた。
「物語をよりエキサイティングにする要素として、ヒーローには強い悪役が必要なんですよ・・・・」
「「「「「っっ・・・・!!」」」」」
「待てお前達、一目がある・・・・!」
伏井出ケイに敵意を向けて攻撃しようとする生徒達を霧夜先生が止めた。観客達が伏井出ケイに気づいて近づいてきたからだ。
「では、またいずれ・・・・」
見下した笑みを浮かべた伏井出ケイは、観客達の元へ歩を進め、その背中を憎々しげに睨む事しか、飛鳥達にはできなかった。
「っ・・・・ゼロ・・・・! 俺を助ける為に・・・・!!」
霧夜先生は、石となってしまったウルトラゼロアイNEOを辛そうに見つめた。
ー理巧sideー
それから二時間程の時間が経ち、理巧と合流した一同は基地に戻り、飛鳥と雲雀と斑鳩が理巧の治療を行い、柳生と葛城は取り敢えず買い置きのパンや飲み物をお盆に乗せて持ってくる。
空中ディスプレイでニュースを映すと、ナース、ギャラクトロン、キングジョーの周りをマスコミや自衛隊のヘリコプターが飛び回っている映像が映された。
《突如出現した3体の怪獣達は、ご覧の通り、現在を停止しており・・・・》
治療を終えた霧夜先生はレムに身体の検査をしてもらい、ディスプレイに表示された身体の状態をレムが報告した。
『霧夜先生の体内から、ウルトラマンゼロの反応は検出されません』
『それじゃ・・・・ゼロは、死んじゃったのっ?!』
『或いは、検知できない程、エネルギーが低下しているのかと思われます』
レムからの報告に、一同が渋面を作った。
「っ! アイツ・・・・!!」
柳生が険しい声をあげ、全員がディスプレイを見ると、伏井出ケイがニュースに出ていた。
《ファンの皆様には怪我をした人もなく、それだけが幸いでした。あの時、ウルトラマンが来てくれなかったからと思うと・・・・。彼こそヒーローです。ありがとう。本当にありがとう》
「っっっ!!!!!」
自分が怪獣達を呼び出し、さらにファンの人達を人質に取ってゼロを殺した張本人に、ファンの無事を喜んだり、ジードをヒーロー扱いしてお礼を言う伏井出ケイに、腹の底から煮え立つような怒りが込み上がり、葛城は持っていたお盆を伏井出ケイに投げつけるが、ディスプレイを通過して後ろの壁に当たり、お盆が割れてしまった。
が、当然そんな程度で葛城の怒りは収まるはずがない。
「あの野郎! ぶっ飛ばしてやるっ!!」
「葛姉ぇ! 待って!」
「付き合うぞ葛城・・・・!」
「柳生ちゃんまで!?」
憤懣が収まらない葛城が伏井出ケイの元に行こうとし、静かに怒りを滲ませた柳生が同行するが、飛鳥と雲雀が二人を止めた。
「止めんな飛鳥っ! あんなふざけた事を言われて、このまま泣き寝入りだなんてできっかよっ!!」
「それは! そう、だけど・・・・!」
「雲雀止めるな。オレはここまで虚仮にされて、黙っていられない・・・・!」
「柳生ちゃん!!」
「行って、どうするのですか?」
「なに?」
憤る葛城と柳生に、理巧の外した左肩に包帯を巻き終えた斑鳩が、努めて冷静な声色で口を開いた。
「まんまと罠に嵌まり、人質を取られ何もできず、むざむざゼロさんを消されてしまった。わたくし達に何が出きると言うのですか? それに、あの男がその気になれば、怪獣達が活動を開始してしまう恐れもあります。理巧くんが変身できないのに迂闊な事をするべきではありませんわ」
「良く冷静でいられるな斑鳩? お前悔しくないのかよっ!?」
「っ、悔しいに決まっているのでしょうっ!!!」
葛城の言葉に、斑鳩が怒りを吐き出すように声を発し、葛城だけでなく、飛鳥達も肩をビクッとさせた。
「ですが! 今、義憤に駆られて動いたとしても、ゼロさんが戻る訳ではありません・・・・! わたくし達は、敗北したのです・・・・。伏井出ケイ、ただ1人によって・・・・!」
「~~~~!! ちぃっ!」
「っ!」
「くっ・・・・!」
「うぅっ!」
斑鳩が絞り出すように発した言葉に、葛城は悔しそうに舌を打ち、飛鳥は息を呑み、柳生も渋面を作り、雲雀は目に涙を滲ませた。
以前、蛇女に敗北したが、あれは修業をすれば挽回できる敗北だった。
だが、今回はそれとは明らかに異質な敗北。自分達は何もできず、成り行きを見ている事しかできず、そしてジードは見逃され、ゼロは消された。
グウの音も、言い訳もできない完璧な、そしたあまりにも屈辱的な大敗。
ムードメーカーの葛城、ここ一番で皆を引っ張る飛鳥、リーダーである斑鳩、天才の柳生、癒しの雲雀、五人は未だ嘗て経験した事の無い敗北感にうちひしがれそうになった。
「・・・・確かに、僕達は敗けた」
だが、それまで黙っていた理巧が口を開くと、一同は理巧を見据える。
「だけど、このままじゃ終わらないし、終われない。ゼロが消されてしまっても、ヤツがーーーー伏井出ケイが召喚した怪獣達や融合獣の脅威が去った訳じゃないんだ。悲しむのも、悔しむのも、嘆くのも、後で幾らでもできる。今は、自分達にできる事をやるんだ」
理巧の緋色の双眸はまだ死んでおらず、強い光を宿し、決然としていた。
『理巧。それでどうするの?』
「強くなる。今の状態じゃ、新たな融合獣に勝てない。だから僕は、強くなる」
「当ては、あるのですか?」
「一応ね。おそらく怪獣達が活動を起こすのは、僕のインターバルが終えて変身可能となった時だ。その僅かな時間で、僕は出来る限り自分を鍛える」
立ち上がった理巧は転送エレベーターに乗り込む。
「っ! りっくん!」
「皆、伏井出ケイが何をしてくるか分からない、僕の特訓が終わるまで、頼むよ」
そう言って理巧はペガと共に転送エレベーターで地上へと向かった。
「・・・・・・・・今、自分にできる事をやる」
「確かに、アタイらもこのままじゃ終わらないよな?」
「ええ勿論。終われませんわ!」
「理巧が特訓を終えるまで、オレ達も出来る限りの事をする・・・・!」
「っっ、泣くのも、悔しむのも、後回しだよね!」
飛鳥が顔をあげると、葛城と斑鳩もお互いを見て笑みを浮かべ、柳生も冷静となり、雲雀も目の涙を拭ってフンッと気合いを込める。
「斑鳩さん、先ず何をすれば言いかな?」
「そうですわね。・・・・レム、街の監視カメラ等にアクセスできますか?」
『可能です。怪獣達との戦いで電線などが断線しましたが、予備電源に切り替わっているカメラにアクセスできます』
「では、そのカメラの映像から、伏井出ケイの所在を洗いましょう。彼が変身するような素振りを見せたとき、直ぐにわたくし達が捕縛します。皆さん、理巧くんが変身できるのは明日の午後14時。レムは映像で確認を、わたくし達はカメラに映っていない死角から、伏井出ケイの動きに目を光らせましょう!」
「はい!」
「おう!」
「うん!」
「ああ!」
五人は新たに決意を固めると、迅速に動き出した。
「(さっきまで敗北感に呑まれそうになった全員の目に生気が戻った。理巧、お前は自覚していないだろうが、間違いなくお前は既に、この善忍クラスの柱になっているぞ)」
霧夜先生は静かに微笑むと、転送エレベーターが戻ってきて、エレベーターからペガが出てきた。
「ペガくん。理巧は?」
『山の方に向かった。特訓を始めるから、ペガは飛鳥達に協力してって頼まれたんだ』
「そうか・・・・」
『理巧から霧夜に伝言!』
「ん?」
『【ゼロはこれまで、確率の低い奇跡を引き起こしてきたのを過去のデータから分かっている。だからおじさん、その0<ゼロ>じゃない万分の一か、億分の一とも言える僅かな可能性を、信じてほしい】、だって!』
「・・・・・・・・」
「霧夜先生!」
「っ、お前達」
霧夜先生が理巧からの伝言に、黙っていると、飛鳥達が声を発する。
「ゼロさんはきっと戻ってくるよ!」
「根拠の無い言葉なのは重々分かっていますが・・・・」
「それでもさ! 先生も信じてくれよ!」
「確率は絶望的かも知れないがな・・・・」
「でも、雲雀達は信じるから! 先生も、ゼロさんが戻ってくるって信じて!」
「お前達・・・・」
霧夜先生は懐から、石となってしまったウルトラゼロアイNEOを取り出し、ジッと見つめた後、再びしまい、飛鳥達に指示を出した。
「・・・・俺はこれから、善忍上層部とAIBに、伏井出ケイが怪獣の黒幕、ならびにウルトラマンベリアルとな関係もある事を伝えてくる。お前達も、伏井出ケイを探すのは良いが、決して先走るな。ヤツは油断できる相手ではないようだからな」
「「「「「はいっ!」」」」」
『うん!』
『了解しました』
飛鳥達とペガとレムの返事を聞いて、霧夜先生は頷くと、転送エレベーターに乗って地上へと向かった。
ー鷹丸sideー
「そうか、そっちは大丈夫なんだな。うん、うん、ああ分かった。やってみろよ」
ロボット怪獣達の監視をしていたAIBの職員であり、暁月理巧の育て親『戦部鷹丸』が、理巧との連絡を終えると、鷹丸の妻の『ハルカ』、『ナリカ』、『スバル』 の三人が近づく。
「理巧くんは、何と言ってましたか?」
「あぁ。理巧が少し怪我をしたが問題はないってさ。今は自分にできる事をやるって」
「敗北して、ゼロまでやられて、気落ちしてはいないようね?」
既にウルトラマンジードの正体が、我が子同然の理巧である事を知っている。
「まぁ、これで戦えなくなるようなヤワな子に育てたつもりはないがな」
「そうだな。・・・・それじゃ、息子が頑張っているなら、俺達も気合い入れないとな!」
「「「はい/うん/ああ」」」
理巧の親達は職務に専念した。後にやってくる霧夜先生から伏井出ケイの正体を知らされ、驚愕するのは少し先の事である。
ー理巧sideー
「・・・・打てる手は打っておいた。残り時間は16時間。後は・・・・」
善忍の修業場にやって来た理巧は、スマホの電源を切ると、少し歩き、目の前に背を向けて鎮座する巨漢の老人を見据える。
「本当に、強くなれますか? ウルトラマンゴライアン?」
「それは、お前次第だ」
そこにいるのはかつて、『光の国』が『宇宙警備隊』を結成する前、ウルトラマン達が超人になって間もなくの頃の時代ーーーーウルトラ6兄弟と兄弟の絆を結んだ五人のウルトラマンの1人、『剛力の戦士・ウルトラマンゴライアン』と、本人から聞かされた。
「さて・・・・」
ゴライアンは懐から球体のカプセルを取り出し、それを起動させると、カプセルが開き、ソコから光が溢れた。
「っ!」
理巧とゴライアンを包み込んだ光が消えると、2人の姿が消えていた。
◇
「・・・・・・・・ここは?」
光に包まれた空間。だが、理巧とゴライアンはお互いの姿を視認できていた。
「ここは、ゼロが『シャイニングウルトラマンゼロ』に変身した時に使える『シャイニングフィールド』も模して、『ウルトラマンヒカリ』が開発した特殊フィールドだ。外の時間で15時間経っている頃には、こっちでは3ヶ月程の時間が経過する。本来ならば傷が癒えていないゼロを養生させる為の物だったのだが仕方ない。この3ヶ月の間にお前を鍛える」
ゴライアンの言葉に理巧は決意を込めて頷くと、ふと思った疑問点を話した。
「ゴライアン。レムのデータベースには、貴方の名前が無かった、それは何故だろうか?」
「・・・・『宇宙警備隊』が結成される前、『光の国』が壊滅寸前まで追い詰められた大戦が起こってな。他の兄弟達は戦死し、私自身もその大戦の『首謀者』と戦いーーーーこの通り、右膝が使い物にならなくなってな。それからは、戦死した兄弟達が安らかに眠れるように、墓守のような事をしていた。おそらくそのデータには、『宇宙警備隊』所属のウルトラマンのデータしか無かったのだろう」
「なるほど。・・・・貴方にとって、ウルトラマンベリアルはどんな奴だったんだ?」
ウルトラマンベリアルの事を聴くと、ゴライアンは悲しそうな目となり、ゆっくりと口を開いた。
「『ウルトラの父』が私達兄弟の親父ならば、ベリアルは私達の兄のような存在であった。粗野で口は悪かったが、強く、本当に強く頼れる、私達の兄貴だった。特に私は、彼が提唱する『力を持って宇宙の平和を成す』と言う考え方を完全に間違っているとは思わなかった」
それには理巧も一理あると思っていた。確かに力を使う事は危険性を伴うが、力なき正義はただの偽善とも考えているし、平和を維持するためには力は必要だとも思っている。
「しかし、その為に無益な殺生をするやり方には同意できなかった。だが、それでベリアルを孤立させてしまったのかもしれないな・・・・」
「ゴライアン・・・・」
「さて、話はここまでだ。少年よ、お前には私の持つ『剛力』だけではない、我が兄弟が編み出した『技』と、胸に宿した『心』を教える!」
「っ!」
理巧の目に奇妙な光景が映った。ゴライアンの背後に、四人のウルトラマンの影が見えたからだ。
「『氷結の剣士 ウルトラマンザージ』。『灼熱の戦士 ウルトラマンカラレス』。『次元の戦士 ウルトラマンフレア』。そして、『粉砕の拳闘士 ウルトラマンドリュー』。我が兄弟の心と技と力。お前に授けるっ!」
「・・・・はいっ!」
理巧は気合いを込めると、ゴライアンとの修業を開始したーーーー。
ー霧夜先生sideー
「・・・・っ」
霧夜先生は善忍上層部への報告を終え、怪獣達を遠くで見上げていると、苦虫を噛み潰したような渋面を作った。
上層部はこう言った。【伏井出ケイが怪獣騒動とウルトラマンベリアルと癒着している確固たる証拠が無い以上、伏井出ケイを調査する事はできない】と言われてしまった。自分達が目撃したと言っても、目撃情報ではなく、写真や映像等の情報でなくては証拠にならないと言われ、上層部は話を聞いてくれなかった。
霧夜先生は、今思えば『講演会の警備』だなんて忍務自体に、疑問点が浮かんできた。
「(上層部は理巧達だけでなく、俺も忍務にも参加するように指示を出していた。さらに警備員は全て異星人だった。あまりにも都合が良すぎる。・・・・まさか・・・・!)」
霧夜先生は『もしもの可能性』が頭に過ったが、すぐに頭を振るい、鷹丸達に連絡しようとしたが。
「少し宜しいですか?」
「ん?」
自分に話しかけてきた青年に、霧夜先生は訝しそうに見つめる。
「何でしょうか?」
「貴方に聞きたい事があるのです。ウルトラマンゼロの相棒」
「っ! お前は、何者だ?」
伏井出ケイの仲間と思った霧夜先生は一瞬で距離を取り、クナイを構える。が、青年は両手を上げて敵意が無いことを示した。
「申し遅れました。私の名は、『セリザワ・カズヤ』。貴方と同じ、ウルトラマンと融合した者です」
次回、セリザワ隊長との出会いが霧夜先生に何をもたらすのか?