閃乱ジード   作:BREAKERZ

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理巧のデート
求婚されたぜ、僕・・・・


忍名・雪泉。

善忍育成機関・月閃女学館の三年生。善忍であった両親を殉職により亡くし、叢に夜桜、四季に美野里と言った他のメンバーと共に祖父である『黒影』に育てられた。

祖父の意思である『悪を強く憎み、善のみの世界を作り上げる』と言う理念を継いでおり、それを正義だと信じている。そんな雪泉にとって、まさに正義の体現者のような存在が現れた。

それがーーーー『ウルトラマンジード』だった。

過去に類を見ない異常なまでの巨大生物、怪獣の出現。その度にウルトラマンジードは現れ、その圧倒的な強さで怪獣達を倒してきた。その姿に、雪泉は自分の理想とする、それこそ子供の頃に憧れた『正義のヒーロー』がソコに立っていた。

 

【いつか私も、ウルトラマンジード様のように・・・・!】

 

雪泉は今まで以上に修行を積極的にしてきた。修行を頑張るリーダーの姿に、叢達も触発されていった。

そんな雪泉達に、悪忍育成機関・『秘立蛇女子学園』が、同じく善忍育成機関・『半蔵学院』と交戦した事を聞いた。しかも、蛇女を制圧したのが、半蔵学院に特待生として編入した『たった一人の男子高校生』によって、その少年の名はーーーー『暁月理巧』。

祖父・黒影からその存在を知らされ、雪泉は、凄い少年と思うと同時に、彼がもし悪忍側に引き込まれれば、最悪の悪となると考えてた。

そして黒影から、

 

【暁月理巧を討伐せよ。奴は、あの忌々しき巨悪『ウルトラマンベリアル』と縁ある者だ。放置すればいずれ必ず、強大な悪となる可能性がある。討伐が不可能ならば、捕獲するのだ】

 

そう指令を受けて、暁月理巧をコッソリと監視していると、何と、蛇女子学園の生徒と交流をしている事が分かった。

これは悪の存在だと判断し、仲間の叢、夜桜、四季、美野里と共に挑んでみれば、想像を遥かに上回る圧倒的な実力で、自分達を叩きのめした暁月理巧に、雪泉は最後の勝負を挑んだが、

 

「んん!? んむ! んちゅ!?」

 

「んん・・・・」

 

色々と奇妙な偶然が重なり、現在自分は暁月理巧とーーーーキスをしていた。

自慢ではないが、雪泉は物心ついた時から善忍になる為に厳しい修行を積み重ねてきた。別に恋愛に興味がない訳ではない。雪泉とて女の子だ。素敵なお嫁さんに憧れる気持ちはある。

が、恋愛を現を抜かしている立場ではない為、これまでそう言った事を経験した事がない。

つまり、恋愛経験0なのだ。

 

「んん~~~~!! ぷっはっ!」

 

「はっ!」

 

漸く唇を離し、引き締まった美尻を地面に着かせた雪泉は、その体制のまま器用に後ずさった。

 

「あわ、あわわわわわわわわ!!///////」

 

恋愛経験0の雪泉が、男性と、しかも自分と同い年の少年とキスだなんて、脳の処理能力がキャパオーバーをし出し、

 

「はわ、はわわわわわわわわ!!///////」

 

顔どころか、身体の色白な肌が熟れ立てのトマトか塗装したばかりの郵便ポストのように真っ赤に染まり、頭から湯気が立ち上がり、目はグルグルと渦巻きを巻いて、言葉もマトモにでないほどに狼狽えていた。

 

「・・・・あの」

 

「ひょわっ!!!???//////」

 

理巧が話しかけると、雪泉は奇妙な悲鳴を上げて、さらに後ずさると、起き上がった叢と夜桜と四季の近くに到着した。

 

「う、うぅ・・・・///////」

 

「ゆ、雪泉?」

 

「だ、大丈夫、かの?」

 

「ヒュ~♪ チューなんてしちゃうなんて、雪泉っちったら大胆~♪」

 

「~~~~~~~っ、ふ、ふふ、ふにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!////////////」

 

ニヤニヤ顔の四季にそう言われ、雪泉はさらに奇妙な悲鳴をあげて、顔をさらに真っ赤にし、若干涙が滲み、両目がバッテンに顔を両手で覆い隠した。

 

「お、お~い」

 

「っっっっ!!!???/////////」

 

理巧の顔を指の隙間から覗く、が、すぐに指を閉じて顔を背けた。ワナワナと身体を震わせながら、雪泉は口を開く。

 

「しぇ・・・・!」

 

「しぇ?」

 

「責任<しぇきにん>、取って下しゃ~~~~いッ!!!!////////」

 

と、そう叫んで、雪泉はその場から逃げ出した。

 

「あぁ、雪泉っち!」

 

「っ!」

 

四季と叢が雪泉の後を追い、夜桜が目を回している美野里を回収する。その際、理巧をキッと睨む。

 

「今日はここで終わりにしてやる。しかし、忘れるでないぞ! 悪の因子の貴様は、我ら月閃女学館が、必ず討つ!・・・・・・・・ほれ美野里、しっかりせんか」

 

「うきゅ~~ん・・・・」

 

そう言い残し、夜桜は美野里をおぶって、雪泉達の後を追った。

 

 

 

ー理巧sideー

 

「う~んまた面倒な事になったなぁ。・・・・ん? 何だ? 背中から複数の殺気がーーーー」

 

『り、理巧! 逃げてっ!』

 

背後に行列な殺気を複数に感じた理巧が首を背後に向けるとーーーー十人の鬼が立っていた。

飛鳥。斑鳩。葛城。柳生。雲雀の半蔵学院の五人が、焔。詠。日影。未来。春花の焔紅蓮隊の五人が、顔に禍々しいーーーー先ほどの叢のような鬼面よりも恐ろしい修羅面を被り、全身から殺気と怒気が混ざったオーラをユラユラと放ちながら、理巧を見下ろしていた。

 

「(あ、これ死ぬかも・・・・)」

 

理巧は死を覚悟した。

 

「りっくん・・・・いきなりキスってどういう事?」

 

「自分を始末しに来た奴とチュウとは、やってくれるじゃあねえか?」

 

飛鳥と焔が、まるで地獄の底から響くような声を発する。

 

「お姉ちゃんは許しませんよ、理巧くん・・・・!」

 

「わたくしの唇のはじめても捧げたと言うのに・・・・!」

 

仮面越しで妖しい目の光を放つ斑鳩と詠が、飛燕と大剣を持ち出した。

 

「どさくさに紛れてあの92センチのGカップバストとイチャコラかコラ? 何でアタイも交ぜない!?」

 

「変やなぁ、何か腹の底から、グツグツと煮たってくるわ。・・・・あぁ、これが怒りちゅうやつか」

 

葛城がズレた怒りを抱き、日影が怒りの感情を知った。

 

「許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん許さん・・・・!」

 

「浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者・・・・!」

 

ご丁寧に片目に眼帯を付けた修羅面を被った柳生と未来が、番傘と洋傘を構えて、呪詛の言葉を連続で呟き続ける。

 

「むぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「アラアラ理巧様ったら、ちょっとおイタが過ぎるんじゃなぁ~い?」

 

雲雀は能面越しでも膨れっ面をしているのが分かり、春花に至っては懐から怪しい色をした薬が入った試験管を幾つも取り出していた。

 

「・・・・・・・・ふぅむ」

 

理巧は少々唸りながら腕を組むと、サッと煙玉を地面に叩きつけ、

 

ーーーーボワァアアアアアアアアアアアン!!

 

煙で視界を封じてすぐ、その場から逃げた。

 

『むわぁてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!』

 

「さよなら~」

 

追いかけてくる十人の修羅から、理巧は死ぬもの狂いで逃げた。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

少しして、霧夜先生が基地に来て、理巧が月閃女学館と対峙した事を伝えられた。

 

「そうか。やはり月閃女学館が来たか」

 

「うん、まあね。今日は追い返す事ができたけど、近い内にまた来るだろうね」

 

「ふむ。過激な正義思考の黒影殿の教えを受けた娘達だ。このままおめおめと引き下がるとは思えん。理巧。単独行動は控え、なるべく皆と行動共にしておくと良いだろう」

 

「・・・・面倒臭いけど、仕方ないか」

 

「うむ。・・・・ところで、お前はどうして逆さ宙吊りになっておるのだ?」

 

「聞くに呆れる、語るに阿保らしい事が起こってね」

 

霧夜先生は、縄で簀巻きにされ、逆さ宙吊りになって天井から吊るされている理巧を半眼で見る。

宙吊りにされた理巧には焔の刀や日影のナイフや柳生の番傘が刺さり、その下では飛鳥達と焔達が修羅面を被ったまま武器を手に持って見上げていた。

端から見ると、江戸時代の刑罰か、邪教崇拝の生け贄にされそうになっている光景だ。

 

「あのさ皆。あれって事故みたいなモンだし。もう下ろしてくれないかなぁ?」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

『皆、もうコレくらいで許してあげようよ・・・・!』

 

『私の中で拷問めいた真似はやめていただきたいです』

 

理巧が聞いてみるが、十人の修羅達はまだ許してくれそうにないようだ。ペガとレムが必死に飛鳥達と焔達を宥めている。

 

 

 

 

ー雪泉sideー

 

東京の某所のホテルのスイートルーム。そこを拠点としている月閃女学館の善忍達は、理巧に付けられた傷の手当てをしていた。

 

「・・・・・・・・/////////」

 

そんな中、手当てを終えた雪泉は窓の近くに置かれた椅子に腰掛けて月を見上げ、自分の唇にソッと手を触れて、仄かに顔を赤くした。

 

「はぁ・・・・/////////」

 

「あぁぁぁぁもう! 最悪! つか、アイツ何なんだし!? あんなに強いとか聞いてないし!」

 

「っ!」

 

理巧とのキスの感触を思いだし、艶かしい吐息を漏らした雪泉は、四季の怒声にハッとなると、姿勢を正した。

 

「ボヤクな四季。しかし、あれほどの実力を持っていたとは・・・・」

 

「正直、今の我らでは相手にならない・・・・」

 

「うぅ・・・・」

 

夜桜、叢、美野里も、圧倒的過ぎる理巧の強さに、夜桜と叢(お面越しだが)苦虫を噛んだような渋面となり、美野里はほぼ涙目になっていた。

 

ーーーーピリリリリリリリリリリリリリリ!!

 

「「「「「っっ!!」」」」」

 

そんな空気の中、雪泉のスマホが鳴り響き、雪泉達はビクッと肩を揺らした。

この着信音は、祖父・黒影からの着信だったからだ。

恐る恐ると、雪泉が部屋に設られた椅子にスマホを置き、ハンズフリーで通話状態にした。

 

《雪泉。叢。夜桜。四季。美野里》

 

「「「「「っ!」」」」」

 

スマホから聞こえる厳格な声に、五人は身体を緊張しながらも、スマホに向かって横一列に並び、片膝を突いて頭を垂れた。

スマホの向こうにいる人物、『黒影』は厳かな声色で五人に声を発する。

 

《一部始終を見せて貰った。思いの外、件の少年は手強いようだな》

 

「っ! はい、お爺様」

 

“一部始終”と言う事は、自分が暁月理巧にキスしてしまった事を知られたのではないかと、雪泉は声を固くする。

 

《お前達五人を圧倒するとは、増援を送る事を視野に入れなければならんーーーーが、あれほどの力を有している少年を倒すのは簡単だが、惜しいとも言える》

 

「お、お爺様?」

 

《・・・・古来より、くノ一は魅了による籠絡こそその本領とも言われてきた》

 

「えっ?」

 

《雪泉。叢。夜桜。四季。美野里》

 

「「「「「っ、はっ!」」」」」

 

《よいか、かの少年、暁月理巧をーーーー》

 

「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

黒影が次に発した言葉を聞いて、雪泉達は数秒程、沈黙すると・・・・。

 

「「「「「ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!???」」」」」

 

 

 

 

 

ー理巧sideー

 

「ふぁ~ぁ」

 

その翌日の朝、理巧は珍しく半蔵学院男子寮の自室で起きた。

夏休みになってからは、もっぱら地下基地で寝泊まりして、怪獣やら宇宙人やらの情報を勉強したり、菜園ルームの野菜や果物の様子を見に行ったりしていたのだ。

が、昨日の雪泉とのキスから、基地で寝ようとしていたら、葛城と春花が夜這いを仕掛けてきてゆっくり眠れなかったから、男子寮に避難したのだ。

ちなみに夜這いをしてきた葛城と春花は簀巻きにして基地に放置している。

顔を洗い、歯を磨き、軽めに朝食を終えた理巧が、寮を出て少し歩き、人目がない公園に着くとーーーー。

 

「・・・・昨日のリベンジですか? 月閃の人達」

 

今朝から男子寮の外で自分を監視している気配を察していた。

理巧の目の前に、五人の影が降りてきて、理巧が少し身構えた。

がーーーー。

 

「え?」

 

理巧が間の抜けた声を漏らす。なぜならば雪泉が、白無垢の花嫁衣装で現れたのだった。

 

「えっと、雪泉さん? 一体何のおつもりで?」

 

「あ、暁月理巧、さん・・・・//////」

 

「はい?」

 

「あ、あなたは私の唇を、奪いましたね?//////」

 

「え、ええ」

 

「不慮の事故とは言え、結婚前の女性の唇を奪ってしまった以上、あなたには・・・・責任を取って頂きます・・・・//////」

 

「責任?」

 

顔を赤くした雪泉が、叢と夜桜が足元に敷いた蓙に座り、楚楚とした動作で、理巧に向けて頭を垂れた。

 

「あ、暁月理巧、さん・・・・せ、責任を取って、わ、わわわわ、私と・・・・!//////」

 

「・・・・・・・・」

 

理巧は何やら嫌な予感がして堪らなかったが、後ろで四季と美野里が逃げられないように回り込んでいた。

 

「わ、私と・・・・・・・・結婚してくださいっ!!!//////」

 

「・・・・・・・・マジで?」

 

理巧が後頭部に大きな汗を流しながら、呆気に取られてしまった。




求婚された理巧。次回はデート回だ。

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