閃乱ジード   作:BREAKERZ

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遂に、忍達の敵が現れます。


襲撃、妖魔
異形の襲来


ー伏井出ケイsideー

 

光も射さない暗闇の世界。ソコに立っている伏井出ケイは地面からウゾウゾと這い出て来る、“異形の怪物”達を見てほくそ笑む。

 

「・・・・愚かな忍達のマイナスエネルギーによって生まれた憐れな存在。しかし、これらも使い用はありますね。では・・・・一つ新たな展開の為の火付け役をして貰いましょう」

 

ーーーーパチンっ!

 

ーーーーギシァァァァァァァァァァァァァァァ・・・・ッ!!

 

伏井出ケイが指を鳴らすと同時に、“異形の怪物”達は不気味な雄叫びを上げるのであった。

 

 

 

 

 

ー理巧sideー

 

「(あ、これ夢だ・・・・)」

 

その日、理巧は夢を見ていた。

夢と自覚したのは、怪獣が暴れたか、人類が愚かな戦争でもしたのかと思われる、破壊の限りを尽くされたかのようなビルの数々。大きくめくれ上がったアスファルト。ビルの破片に潰され、燃えている車。真っ黒な雲に覆われた曇天の空。

そして広い道路には破壊されたビルの破片、それも理巧の身の丈を越える破片が道路のアスファルトを貫いてに突き刺さり、ボロボロで僅かに血すら付いている半蔵学院の制服を着た理巧は、その破片に寄り掛かるように座り込んで空を見上げていた。

あまりにも非現実的な状況に、理巧はこれは夢だと直感した。

 

「(あぁもう最悪。こんな夢を見るとか、僕ってば中二病、いや、この年なら高二病か、それにでも患ったのかな?)」

 

夢の中でも冷静な理巧。ふと、足元にある割れたガラスの破片に目を向ければ、自分の姿がーーーー“闇のように真っ黒に染まったウルトラマンジードの姿になって映っていた”。

 

「(はっ・・・・遠くない未来で、僕は闇にでも堕ちて、地球を破壊するって啓示なのかな?)」

 

自嘲する理巧は、早く覚めろ~、と呑気に空を見上げてそう思っている。と、ソコで。

 

『何してるんだ理巧?』

 

「(えっ・・・・?)」

 

夢の中の自分に声をかけるその声。それを耳にした瞬間、理巧はその方向に目線処か、顔や全身を向けた。ソコに立っていたのは、鷹丸だった。

鷹丸は理巧に近づくと、手を差しのべた。

 

「(鷹丸、さん・・・・)」

 

『そんな所で黄昏てないで、早く来いって! ナリカが腹減ったってゴネてるぞ』

 

「(・・・・・・・・訂正。悪くない夢だ・・・・!)」

 

夢だと分かっていても、理巧は鷹丸の手を握ると立ち上がった。

その際、ガラスに映っていた闇に染まったジードが、まるで闇が剥ぎ落ちたかのように元の姿に戻っていたが、理巧は気づいていない。否、そんな物は二の次か三の次と言わんばかりに鷹丸に手を引かれながら歩み出すと、徐々に歩みが早くなっていく。

 

『早くいくぞ! 皆待っているんだからな!』

 

「(は、はい!)」

 

鷹丸に手を引かれながら走る理巧の目の前には、荒廃した世界でなくなっていく。崩れたアスファルトは花や萌えぐような草原が広がる大地へと変わり、破壊されたビルは消え遠くには山が見える丘へと変わり、曇天の空は透き通るのような青空へと変わった。

 

「(っ・・・・! ハルカさん・・・・! ナリカさん・・・・! スバルさん・・・・!)」

 

そして草原にシートを広げて二人を待っていたのは、鷹丸の奥方の三人だった。その時、理巧の身体が、まるで10~11歳くらいの子供の姿へと変わると鷹丸と一緒に、三人に向かった。

が、その時ーーーー三人の背後に『黒く巨大な影』が現れた。

 

「(っ! ハルカさん! ナリカさん! スバルさん! うあああああああああああっっ!!!)」

 

理巧が叫び声を張り上げると、『影』の足元から頭頂部分に到達すると、その『影』の頭に渾身の力を込めた拳を叩きつけた。

 

「(っ! コイツ、は・・・・!?)」

 

その瞬間、理巧の視界が真っ白に染まっていくが、その僅かな瞬間に『影』の正体を見て、驚愕した。何故ならーーーー。

 

『ピギャグゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!』

 

 

 

 

* * *

 

 

 

「っ!!」

 

「ん? 理巧、どうした?」

 

「んん~・・・・?」

 

男子寮の自分の部屋で飛び起きた理巧。その両隣に雲雀(パジャマ姿)と柳生(パジャマ姿)が、眠そうに瞼を擦りながら起きる。何故ここに二人がいるのかと言うと、最近月閃女学館の相手ばかりしている理巧の疲れを癒す為に『お布団の妖精』となって癒しに来た、と言う体でイチャつきに来たのだ。

時計を見ると、午前5時半頃、季節的に太陽が登り始める時間帯だ。

 

「いや、何でもないよ。ちょっと早朝の訓練をしてくる。柳生さんと雲雀ちゃんはまだ寝てて良いよ」

 

「・・・・あぁ」

 

「分かった~・・・・」

 

柳生は訝しそうにしていたが、取り敢えず頷き、雲雀はまだ眠いのかすぐに眠りの世界にダイブした。

二人が眠るのを確認した理巧は、顔を洗ってトレーニングウェアに着替えて外に出ると、ランニングをしながら夢の事を整理していた。

 

「(あの時、何で夢の中にーーーースカルゴモラが現れたんだ? いや、それよりも気になる事がある。僕はもしかしたら、昔会ったのか? スカルゴモラに・・・・伏井出ケイに?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時刻は9時頃。秘密基地のある展望台に集まった一同(ペガは本日基地にてお留守番)。

 

「ふぁ~ぁ、さて今日も月閃の皆とデートかなぁ?」

 

欠伸混じりに理巧がそう言うと、飛鳥達と焔達は不満そうな顔になっていた。

 

「りっくん。伏井出ケイさんの居場所を探る為に月閃とのデートを許しているけど」

 

「伏井出ケイの居場所は分かったのかよ?」

 

「・・・・そうだなぁ、雪泉さん達とのデートもそれなりに面白かったけどねぇ。でもま、そろそろ雪泉さん達の上のヤツらも痺れを切らして動き出すかもね」

 

「待つしかないと言うのも、もどかしいですわね」

 

「コソコソしちゃって! 本当にムカつくヤツ!」

 

斑鳩と未来がそう言う。他の皆も似たり寄ったりだ。そんな中、葛城が話題を変えようと声をあげた。

 

「ま。果報は寝て待てって言うしな。アタイらは待ってやろうぜ。・・・・その前に理巧さんや?」

 

「・・・・なに?」

 

下卑た笑みを浮かべる姉貴分に、理巧は嫌な予感がして半眼になるが、構わず葛城は何処から出したのか、五着のバニースーツを取り出した。

 

「折角だからよ! このバニースーツをあの五人に着せてやってくれ!」

 

「・・・・何で? 嫌だよ」

 

「頼むよぉ~。潤いが欲しいんだよぉ~。最近お前がデートで忙しくて構ってくれないしさぁ~。目の前に色白美少女に長身ヘタレっ娘、オカッパのじゃ娘にエロいギャルに幼い系美少女。しかも全員巨乳と豊乳の眼福パラダイスなのにお手つき禁止されてるんだぜぇ~。蛇の生殺しじゃねぇかよぉ~」

 

土下座までして拝み倒そうとする葛城に、理巧や飛鳥達や焔達はここまでやるのかと、呆れを通り越して感服しそうになる。

 

「な! あの四季ってのはノリが良さそうだし! 美野里って子はお前に懐いているからOKしてくれそうだし! 叢ってのはこう、背中からお面を取り上げて、抱き締めるようにして、理巧が耳元で見たいって甘く囁いてやればイチコロだろうし! 三人がやると言えば雪泉と夜桜も仕方なくやるかも知れないだろっ!?」

 

「それで、葛姐さんは五人の艶姿や揺れるおっぱいを観察しまりたいって?」

 

「その通り! そしてあわよくばモミモミとーーーー『半蔵学院の恥部!!』(ガンッ!!)うきゃんっ!!」

 

手をワキワキさせながら涎を垂らし、イヤらしい笑みを浮かべる葛城の脳天に、半蔵学院組が鉄拳を振り下ろした。

そして、斑鳩が話を戻そうと咳払いをする。

 

「兎も角、本日のデートで理巧くんがあの五人の中で誰を選ぶのか決めさせられるかも知れませんわよ」

 

斑鳩がそう言うと、葛城がガバッと起き上がり、飛鳥達と焔達が円陣を組んで話を始めた。

 

「や、やっぱり雪泉さんかな? りっくんって年上が好きそうだし、凄い綺麗だったし、りっくんと・・・・キ、キスもしちゃったし・・・・」

 

「馬鹿! キスで結婚するってなら、私達紅蓮隊にだって権利があるだろうが!」

 

「それでは、叢さん、でしたでしょうか? 殿方はああいう隠れた美少女を好むと、本で読んだ事がありますし・・・・」

 

「確かにあり得ますわ。彼女自身も理巧さんに骨抜きにされているようでしたわ・・・・(でもあの方、何処かで見た記憶が・・・・)」

 

「もしかしたら大穴で夜桜って事はねぇか?」

 

「そらないやろ。戦りあったヤツとの恋愛やなんて・・・・うん。多分ないな」

 

「それじゃ四季じゃない? 男ってエロいJKギャルが好きだって聞いた事があるわ!」

 

「いや、理巧はああいうタイプは選ばんだろう」

 

「それなら、理巧様は保護欲がそそられる美野里って娘かしら? 雲雀がそうだしねぇ」

 

「え? どういう事春花さん?」

 

等と好き放題言い出す飛鳥達と焔達に、理巧はヤレヤレと言わんばかりに肩をおとした。

 

「ん、来たか」

 

と、思案していると、雪泉、叢、夜桜、四季、美野里の五人がやって来た。

 

「おはようございます」

 

「あ、お、おはようございます暁月さん///////」

 

「っ///////」

 

「ふん///////」

 

「やっほ~」

 

「おはよう理巧くん!」

 

雪泉と叢(仮面越し)は顔を赤らめ、モジモジしながら返事をし、夜桜も顔を赤くしながらプイッとソッポを向いた。四季と美野里は明るく返事をしたが。

 

「で、今日のデートの予定は何ですか?」

 

「あ、はい、その・・・・私達五人と、既にデートはしていますからーーーー本日は私達五人とハイキングをと」

 

「へぇハイキング。それは楽しそうだ(まぁた『這緊虞』みたいなのにならないと良いけどーーーー)っっ!!」

 

「うぅっ!?」

 

不意に、理巧と雲雀の身体がビクッと震えると、理巧は身構えて辺りを見回し、雲雀は脅えるように近くにいる柳生の背に隠れた。

 

「あの、暁月さん? いかがなさいました?」

 

「どうした雲雀?」

 

雪泉と柳生が二人の行動を訝しむと、他の皆も首を傾げた。が、理巧は目線を鋭くし、臨戦態勢を取った。

 

「・・・・・・・・・・・・何かくる」

 

「えっ?」

 

「人間・・・・? いや違う、宇宙人の気配でもない・・・・! しかし、この妙な、嫌な気配は一体・・・・!」

 

「み、皆! 何か来るよ! とっても恐くて、とっても嫌な気配がする何かが!」

 

『っっ! 『忍転身』!!』

 

理巧と雲雀の言葉を聞いて、半蔵学院(雲雀も遅れて)と紅蓮隊が転身すると、全員が武器を構えて、理巧と同じように臨戦態勢を取って陣形を組んだ。

 

「な、何があったのですか?」

 

雪泉達月閃女学館は、一拍遅れて転身すると、周囲を警戒する。

感知能力に優れる理巧と雲雀は瞑目し、感知範囲を広げる。

 

「・・・・15ーーーー20ーーーー30、35・・・・!」

 

「まだ増え続けているよ! あぁ! 近くまで来てる!」

 

理巧が敵の数を数え、雲雀が焦ったような声を発した。

 

「何処や・・・・?」

 

「つか、本当に何か来てんのか?」

 

「二人の感知能力はズバ抜けているわ。その二人が感知したなら、本当でしょうけど・・・・」

 

「まさか、空に?」

 

日影が鋭い視線を向け、葛城が疑わしげに言うが、春花は二人の感知能力の高さを言い、飛鳥が上空に顔を向ける。

しかし理巧は、感知能力をさらに高める。

 

「(近くにまで来ている・・・・! 二十メートル以内にいる! しかし、姿が見えない! 遁術を使っている気配もない! 上空にも気配がない! とすれば残るは!)」

 

理巧が地面に四つん這いになって地面に耳を当てた。するとーーーー。

 

 

 

 

 

ーーーーズルズルズルズルズルズルズルズルズルズルズルズルズルズル・・・・!!

 

 

 

 

 

「っ! 下だっ! 真下にいるぞっ!!」

 

地中から、何か大きな物が身体を引きずり動いている音が聞こえ、理巧が声を張り上げた瞬間。

 

ーーーードゴォン! ドゴォン! ドゴォン! ドゴォン! ドゴォン!ドォゴォォォォォォンン!!

 

「何だぁーーーー!?」

 

突然地面から何かが飛び出し、焔が大声で叫んだ。

土の中から現れたのは、一言で言えば、蜘蛛のようだった。しかし、サイズが桁違いに大きく、異形の形をしていた。

 

「く、蜘蛛ぉっ!?」

 

「いや、明らかに普通の蜘蛛じゃないっしょ!」

 

「見れば分かるわっ!」

 

美野里と四季が驚き、夜桜が声を発した。

 

『キャァァァァァァァァァァ!!』

 

蜘蛛の怪物達は奇声を発しながらその鋭い前足と牙で襲いかかってくる。

 

「っ! 散!!」

 

理巧がそう言うと、飛鳥達と焔達はすぐに散開し、雪泉達も一拍遅れて散開したが、送れた美野里が蜘蛛の怪物に襲われそうになる。

 

「きゃぁぁぁ!」

 

「美野里さん!」

 

「「「っ!」」」

 

鋭い前足を突き立てられそうになり、美野里がやられそうになるのを見て、慌てて戻ろうとする雪泉達だが間に合わない。美野里も目を瞑ったが。

 

「!」

 

理巧が寸前で美野里をお姫様抱っこで抱えて回避した。

 

「ぁ・・・・」

 

「大丈夫だよ、美野里ちゃん」

 

「うわぁ~ん、理巧く~ん!」

 

笑みを浮かべる理巧に泣きながら抱きつく美野里。理巧はキッと蜘蛛の怪物達を睨むと、カプセルホルダーから、ウルトラカプセルを取りだし、それぞれのリトルスターだった飛鳥達や焔達に投げ渡した。

 

「皆!」

 

『っ!』

 

全員がリトルスターを受けとるのを確認すると、理巧は声を張り上げる。

 

「身の安全を最優先にするんだ! いざとなればソレを使ってくれ! コイツらに手心を加えてはならない!」

 

『了解!』

 

「(コイツらは地面の下からやって来た。・・・・まさか!)」

 

全員が返答すると、理巧は美野里を近くにいた夜桜に渡して、蜘蛛の怪物達の攻撃を回避しながら、装填ナックルを使って雪泉達に気づかれないように声をひそめてレムに連絡する。

 

「レム。コイツらは地中から攻めてきたが、基地は大丈夫なのか!?」

 

《イエ。こちらに攻めては来てはいないようです》

 

「そうか。だが油断するな。基地にシールドシステムがあったな。それで基地を守っていてくれ」

 

《了解しました》

 

「シールドの強度は?」

 

《データ上では、『宇宙恐竜 ゼットン』の火球に耐えられる強度です》

 

「分かった」

 

《理巧! ペガはどうすれば良い!?》

 

理巧とレムの会話に、ペガが入ってきた。

 

「ペガは今は出ないでくれ。状況に応じて外に出て、『ダークゾーン』を使って皆をサポートして」

 

《うん!》

 

通信を終えると、理巧は再び周囲を見る。

まずは半蔵学院は。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

「しっ!」

 

「オラぁっっ!!」

 

「ふっ!」

 

「え~い!」

 

飛鳥が小太刀二刀流で斑鳩が飛燕で切り捨て、葛城が蹴りを叩き込み、柳生は雲雀を守りながら番傘で迎撃し、雲雀も怯えながらも戦う。

次に紅蓮隊を目を向けると。

 

「そらっ!」

 

「たぁっ!」

 

「・・・・!」

 

「はっ!」

 

「おりゃぁぁぁぁぁ!!」

 

焔と詠が斬り捨て、日影が死角からナイフを突き立て、春花が傀儡を操って押さえつけると、未来が傘に仕込んだマシンガンで攻撃する。

次に月閃は。

 

「はぁっ!」

 

「っ!」

 

「とぉぉぉっ!!」

 

「りゃぁぁっ!!」

 

「そ、それ!」

 

雪泉が氷で凍らせ、叢が大太刀を、夜桜が手甲を叩きつけると四季が大鎌で首を刈ると、美野里も手裏剣を投げて援護する。

 

「(この怪物達は僕達だけじゃなく、雪泉さん達も狙っている? 一体何が目的で・・・・っ!)」

 

と、ソコで理巧は新たに現れた異形に目を見開いた。色彩を失ったかのような真っ白い肌、無造作に伸びた長い髪、氷の如く冷酷な瞳。雪泉と似た格好をしていたがそれはまるで、おとぎ話に出てくるーーーー『雪女』のようであった。

 

『フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!』

 

「なっ! うわぁあああああああっ!!」

 

『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

雪女が息を吹き出すと、凄まじい吹雪が舞い上がり、理巧だけでなく、飛鳥達に焔達に雪泉達を、諸ともに吹き飛ばしてしまった。

 




襲撃された理巧達は!?

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