閃乱ジード   作:BREAKERZ

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正義の証明
正義とは?


ー雪泉sideー

 

《ーーーーそうか。件の少年、暁月理巧がウルトラマンジード。そしてウルトラマンジードは、あの最悪中の最悪、ウルトラマンベリアルの息子、か・・・・》

 

「・・・・お爺様、是非わたくし達に、暁月理巧の討伐の許可を!」

 

雪泉がスマホ越しにいる黒影に、理巧の討伐の赦しを得ようとした。理巧は半蔵学院に籍を入れている生徒だ。そんな事をすれば、最悪月閃女学館と半蔵学院の間で抗争が起きる。悪忍サイドが道元の事で大人しくしている状況で、内部分裂を起こしている場合ではないと言うのに、雪泉はそんな事お構い無しに発言する。

雪泉の意見に夜桜が同意するように頷くが、四季も美野里は気乗りしないのか、渋面を作って黙り。叢はあの日から仮面を外さず、口数もかなり減らして喋らない。

 

《・・・・・・・・叢よ》

 

「っ・・・・はっ」

 

《お前の実家が、今度工場にする場所を知っているか?》

 

「はい」

 

《ソコに行け。ソコに暁月理巧が必ず現れる》

 

『っ!』

 

《そしてーーーー彼への対処は、個々の判断に任せる》

 

『えっ?』

 

雪泉達は少し目を見開いた。

暁月理巧がウルトラマンベリアルの息子と分かったのだ。黒影であれば即座に討伐指令を出しても可笑しく無い筈なのだから当然だ。

 

「お爺様・・・・何故討伐を命じないのですか?」

 

《・・・・・・・・・・・・・・・・》

 

「奴は、暁月理巧はウルトラマンベリアルの息子です! 『クライシス・インパクト』を知る黒影様は、ベリアルの驚異を誰よりも知っている筈では無いのですかっ!?」

 

雪泉の質問に沈黙する黒影に、夜桜が声を張り上げた。

 

《・・・・もう一度言う。個々の判断で、かの少年を見極めよ。ーーーーかの少年は“滅ぼすべき悪”か、それとも・・・・》

 

「お爺様?」

 

《・・・・以上だ》

 

黒影はそう言って、通信を切った。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

黒影の言葉に、雪泉達は少し戸惑った。そんな中、美野里が口を開く。

 

「どう、すれば、良いかな?」

 

「ーーーー決まっておる」

 

その問いかけに答えたのは、予想通りと言うのか、夜桜だった。

 

「我ら月閃女学館は『悪』を許しはしない。例えウルトラマンジードであろうとも、それは揺らぎはしない!」

 

「で、でも、ウルトラマンジードさんは、これまで怪獣から人々を守ってくれたよ?」

 

「ーーーーそれでも」

 

美野里の言葉に、雪泉は躊躇い混じりに声を発した。

 

「彼は、暁月理巧はーーーーウルトラマンジードは! あの“最悪の悪”、ウルトラマンベリアルの息子なのです、“倒すべき悪”なんです・・・・! そして、『悪』を討つ事こそ! 私達月閃女学館の『正義』なのです!」

 

「うむ!」

 

「・・・・・・・・(コクン)」

 

「・・・・・・・・」

 

雪泉の言葉に、夜桜は力強く頷き、叢は一瞬躊躇ったが小さく頷く。が、美野里はオロオロすると、俯いてしまった。

 

「・・・・・・・・あたし、いち抜~けた」

 

そんな中、四季は小さく息を吐いてから立ち上がると、手をヒラヒラとさせて雪泉達に背を向けた。

 

「なっ!? 四季さん!」

 

「四季! どういうつもりじゃ!?」

 

「黒影様も言ってたっしょ? 【個々の判断で、かの少年を見極めよ】ってさ、あたし理巧ちんの事嫌いじゃないし、ウルトラマンジードのファンでもあるし、嫌いになるのはもう少し『推し』を観察してからにするわ」

 

「何を言っておるのじゃ四季! 奴は、暁月理巧はーーーーウルトラマンジードは『悪』じゃ! 倒すべき『敵』なんじゃっ!!」

 

夜桜が怒鳴るが、四季はそんな剣幕を意に返さなかった。

 

「夜桜ちん、何でそんなに理巧ちんに当たりが強い訳?」

 

「そんなの、奴が『悪』じゃからに決まっているからじゃ!」

 

「いやいや、そんなんじゃなくて、もっと個人的な考えってぇのがカランでンじゃないの?」

 

「何・・・・?」

 

夜桜は四季の言葉に首を傾げると、四季は改めて口を開いた。

 

「ーーーー夜桜ちんはさぁ。ただ単純に、“自分を軽くあしらった理巧ちんが気に入らない”だけじゃん?」

 

「ーーーーな、何をっ!?」

 

四季の言葉に、夜桜は図星を突かれたかのように目を見開き、身体を揺らし息を呑んだ。

 

「軽くあしらわれたって事はさ。それがあたしらと理巧ちんとの実力の差って事じゃん? 夜桜ちんはソレを認めたくなくって、駄々をこねてるだけなんじゃないの?」

 

「っ! 四季っっ!!!」

 

挑発されたと感じたのか、夜桜はカッとなって思わず『忍転身』して、手甲で四季に殴り掛かろうとした。

がーーーー叢が羽交い締めし、雪泉も夜桜の腰に抱きついて止めた。

 

「止せ夜桜!」

 

「落ち着いて下さい夜桜さん! 美野里さんも止めて下さーーーー美野里さん?」

 

何と、それまで俯いていた美野里も立ち上がると、四季の方に歩いていった。

 

「四季ちゃんは、どうするの?」

 

「んー、見極めよって言われたし、もうちょい理巧ちんを観察しようかな? 美野里ちんは?」

 

「・・・・美野里も、理巧くんが本当に悪い人なのか、ちゃんと確かめたい!」

 

「「「美野里っ!?」」」

 

あの気弱な美野里が反対意見を言った事に、雪泉達は驚いて目を見開いた。雪泉達の反応に意を返さず、美野里は四季に近づく。

 

「四季ちゃん、行こう」

 

「・・・・そだね、んじゃね皆~」

 

四季は雪泉達に背を向け、手をヒラヒラと振りながら、美野里と共にホテルを出ていった。

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

夜桜は美野里と四季の行動に唖然となり、身体から力が抜け転身が解除されると、雪泉と叢も拘束を解き、夜桜は力なくその場に腰を落とした。

雪泉も叢も、夜桜と同じ心境なのか、二人が出ていった扉を呆然と見ているだけであった。

 

 

 

 

 

ー黒影sideー

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

黒影の脳裏に、十数年前に起こった『クライシス・インパクト』の情景が、次々と甦る。

破壊され、燃え盛る地上。

黒い雲に覆われ曇天となる空。

世界は今まさに終焉を迎えようとしているような光景。

 

【フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッ!!!!】

 

そしてーーーーそんな壊滅されていく世界の中心で哄笑を上げているウルトラマンベリアル。

その圧倒的なまで強さと存在感が、否が応もなく、黒影の脳裏に強烈に焼き付けられていた。

黒影は、自分の手にある『コピークリスタル』と、『五つの怪獣カプセル』を見つめていると、背後からーーーー伏井出ケイが姿を現した。

 

「いよいよあなたも、その『力』を試す時が来たようですね?」

 

「・・・・ワシの事も、蛇女子学園の道元と同じように『実験体』にすると言う訳か?」

 

「いえいえ、“道元ごとき小物”では、そのクリスタルの力を制御する事はできませんでしたが、あなたならばソレができると私は確信しているのです。『伝説の抜け忍 黒影様』」

 

「ふん」

 

伏井出ケイの言葉に、黒影で鼻で息を吐いた。

 

「私も力をお貸しします。共にウルトラマンジードを倒そうではないですか!」

 

伏井出ケイは大仰に両手を広げてそう言うと、黒影はクリスタルを持ってその場から離れていった。

 

「(毒蛇のように陰湿な男め。ワシを利用しようとしているようだが、簡単に利用される程、この黒影も耄碌しておらんわ!)」

 

黒影も伏井出ケイを欠片も信じていない。紳士的な笑みを浮かべてはいるか、その瞳の奥はーーーー汚れて濁ったドロ沼のような悪意に満ちている事を見抜いていた。

 

「(・・・・・・・・しかし、利用されていると分かっているがーーーーワシは確かめねばならん。あの少年を、暁月理巧を・・・・!)」

 

黒影は何かを決意するように、目を鋭くした。

 

 

 

 

 

ー伏井出ケイsideー

 

黒影が去った後、伏井出ケイは唇の端をつり上げながら、歪んだ笑みを浮かべた。

 

「ーーーーそう、あなたも存分に踊っていただきますよ、”骨董品の忍者“」

 

黒影の考え通り、伏井出ケイにとって、黒影もまた『コピークリスタル』の『実験動物<モルモット>』程度の存在としか見ていなかった。

 

 

 

 

 

 

ー理巧sideー

 

そしてその夜。

理巧は天文台の上で、鷹丸と電話で話をしていた。

 

《え? 『正義』って何かって?》

 

「はい・・・・」

 

《う~む、まさか理巧の口からそんな哲学的なセリフが出るとは思わなかったな。振り掛かる火の粉は何であれ蹴散らす! ってスタンスじゃなかったのか?》

 

「そうだったんですけど、ちょっとした『出会い』がありまして、『正義』って、一体何だろうなぁって思っちゃって・・・・」

 

理巧の問いに鷹丸は少しの間ウウム、と思案するように唸り声をあげ、およそ数分後に、声が返ってきた。

 

《ーーーー俺はさ、自分の享楽やエゴの為に、自分じゃない誰かを笑いながら傷つける奴を『悪』と呼んで、そんな人達を守る人間を『正義』と呼ぶな》

 

「笑いながら人を傷つけるのが『悪』。人を守るのが『正義』、ですか・・・・」

 

理巧の脳裏に、蛇女で戦った道元<ゴミ>の事が浮かんだ。

 

《だがな理巧。それはあくまで俺の考える『正義』だ。世の中には色んな人がいて、人の数だけ『正義』と『悪』がある》

 

「人の数だけの『正義』と『悪』・・・・」

 

「一重に『悪』と呼ばれている奴らだって、蓋を開ければ、そうじゃない奴もいるだろう?」

 

「ええ」

 

理巧は、生まれた環境、生い立ち、巡り合わせで『悪』の道を行くようになってしまった、焔達の事が思い浮かべた。

 

《理巧よ。お前にも自分の『正義』と、自分が許せない『悪』か存在している筈だ。それを少し考えてみたらどうだ?》

 

「僕にとっての『正義』と『悪』・・・・」

 

理巧は少し目を閉じて考えた。

理巧にとっての『悪』は勿論ーーーー鷹丸にハルカ、ナリカとスバル、理巧にとっての『大切な人達』に害をなす存在だ。それは絶対に揺るがない。そしてソレらから大切な人達を守るのが理巧にとっての『正義』だ。

だが・・・・理巧にとっての『大切な人達』の中に、鷹丸達以外の姿が浮かんできた。

最初に浮かべだのは、自分の『親友』であるペガだった。次に『仲間』であるレム、霧夜、ウルトラマンゼロ、大道寺先輩、鈴音先生、半蔵のお爺さん。

そしてーーーー焔が、詠が、日影が、春花が、未来が、斑鳩が、葛城が、柳生が、雲雀が、飛鳥の姿が浮かび、更にその他に、月閃の五人の姿も。

 

「・・・・鷹丸さん」

 

《ん?》

 

「“『大切な人達』がいっぱいいるのって、結構大変ですね”」

 

《・・・・・・・・》

 

理巧の言葉に、鷹丸は一瞬無言になった。少し前、半蔵学院に行く前は、鷹丸達以外の他者なんてどうでも良いと思っていた理巧が、『大切な人達』がいっぱいいる、と言ったのだ。鷹丸は、息子の成長に笑みを浮かべたような声を発する。

 

《そうだな・・・・でも、幸せな事だぞ。そう言う事はさ》

 

「そう、ですね」

 

《まぁ、それなりに『答え』が出たんなら、後はどうにかなるだろう》

 

「はい」

 

《それじゃまたな。その内俺達もお前の『クラスメート』達に会いに行くかも知れないからな》

 

「えっ?」

 

《じゃ》

 

そう言うと、鷹丸は通話を切った。

 

「・・・・・・・・・・・・鷹丸さん達が、皆に会いに来るか・・・・とりあえず、葛姐さんと春花がオイタをしないように釘を打っておくか」

 

「理巧ちーーーーん!」

 

「理巧くーーーーん!」

 

「ん?」

 

天文台の下に視線をやると、四季と美野里が手を振っていた。

 

「二人とも、一体どうしたの?」

 

「「暫く泊めて下さーーーーい!」」

 

「え?」

 

二人の言葉に、理巧は思わずポカンとした顔になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~ん。僕を始末するかは個々の判断に任せる、か。黒影って人、悪には容赦がない人って聞いていたから以外だなぁ」

 

「だしょ? あたしらも思いがけない展開に、マジで驚いたよ。ま、理巧ちんと戦わずにすんで、ちょい良かったって感じだけどねー」

 

「うんうん!」

 

基地でちゃぶ台(前に理巧とペガだけの頃に使っていた)を取り出し、その上でコンビニ弁当を食べる四季と美野里から、詳しく情報を聞いている理巧とペガ。

 

「あの~。四季ちゃん、美野里ちゃん・・・・」

 

「そんな離れた所で食事しないで、此方で食べれば良いのでは?」

 

理巧達から少し離れた場所で、長机を囲いながら食事を摂っている飛鳥達半蔵学院と焔達紅蓮隊の面々が、半眼になって頬にタラリと汗を垂らしながら、飛鳥と斑鳩が此方で一緒に食べようと言うがーーーー。

 

「あ、悪いんだけどさ。あたしも美野里ちんも、理巧ちんと戦うのはまだ検討中だから戦わないけど、悪忍と馴れ合うつもりはないから」

 

「美野里達、『悪』は許さないから・・・・!」

 

「そんな・・・・!」

 

「別に良いだろう」

 

「わたくし達も、馴れ合うつもりはありませんし」

 

「まぁ戦るつもりなら相手になったるわ」

 

「でもこの基地は中立地帯だしねぇ」

 

「理巧様に対するあなた達と対応が決まるまでは、お互い不干渉って事で良いでしょう」

 

飛鳥が四季と美野里の言葉に反対しようとするが、紅蓮隊は別段気にした風もなくそう返した。

 

「って言うか、あの二人の反応が善忍の悪忍に対する本来の反応なんだよ。寧ろお前らの方が変わっているだけだからな」

 

「「えぇ・・・・?」」

 

「「「・・・・・・・・」」」

 

焔が半眼になってそう言うと、飛鳥と雲雀が目をパチクリさせ、斑鳩と葛城と柳生が苦笑した。

 

「まぁそれは置いておいてさ。二人は何処で寝る? この基地で寝るなら布団とか出すけど?」

 

「えぇ~、それならさぁ・・・・理巧ちんの部屋に泊めてくれない?」

 

「ん?」

 

「ふぇっ!?//////」

 

『ブッ!!』

 

四季がしなだれるように理巧に寄りかかって、その豊満な95センチのGカップをフニュン、と押し付けた。

並の男ならば鼻の下を伸ばすか、恥ずかしがって生娘のように慌てふためくだろうが、ソコは理巧である。別段狼狽の様子を見せず、平然としていた。

 

「まぁ、僕は別に構わないけど」

 

『駄目に決まってるでしょっ!!!』

 

その場の大半の忍達に却下され、四季と美野里は基地でテントを張り、理巧はその近くで寝ると言う事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その翌日。

 

「理巧さーーーーん!!」

 

「ん・・・・?」

 

突然基地のフロアに、詠の声が高らかに響いた。

 

「ふぁ~・・・・どうしたの詠さん、こんな朝早く・・・・」

 

『うぅ~・・・・』

 

「何、睡眠不足はお肌に悪いんだけど?」

 

「ZZZ・・・・」

 

理巧とペガは微睡み、テントから顔を出した四季と美野里も眠たそうに目を擦る。

 

「あぁ、朝早くから申し訳ありません。ですが、一大事なのですわ!」

 

「一大事?」

 

「はい! わたくしが良くご飯とかを配膳している貧民街の事は、理巧さんもご存知ですわよね?」

 

「ええ。ご存知ですけど・・・・」

 

詠は蛇女に在籍していた頃から、忍務で出た報酬金で貧民街の人達に配膳等を配るボランティアを行っており、今現在も、理巧からの報酬金やアルバイト代を使って続けていた。

 

「その貧民街が、土地開発の為に潰されそうになっているのですわっ!!」

 

「えっ・・・・な、なんだってッ!?」

 

詠からの話を聞いて、理巧は眠気が一気に吹き飛んで、驚愕に目を見開いて大声を上げたのであった。

 

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