閃乱ジード   作:BREAKERZ

76 / 107
調査のゼロ、妖魔の事情

ー理巧sideー

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

時刻は18時。理巧は基地に戻ると、ザムシャーに斬られた傷を針と糸で脇腹を縫い合わせると、痛みに弱冠悶える。

 

「おいおい理巧。アタイの『コスモスカプセル』か、叢の『ルナミラクルゼロカプセル』で治療すれば良いだろう?」

 

葛城が自分で治療する理巧に苦笑しながら言う。

 

「あまり、そう言う能力に頼ってばかりだと、自己治癒力が落ちてしまうし、命を顧みなくなるのはイケないと思うから、治療できる事は自分で、と思ってさ・・・・! ふぅ」

 

「存外、ストイックな所がありますね、理巧さん」

 

「だけど、今回の傷はあと数ミリ深く入っていたら、内蔵が溢れていたくらいよ」

 

「危ない勝負をするのは感心しませんよ理久くん」

 

雪泉に春花が苦笑し、斑鳩が苦言を言いながら、治療を終えた理巧に上着を羽織らせる。

 

「今回は、勝負をしないとこっちがやられていましたよ」

 

《傷は大きく深いです。理久の回復力を持っても、後に二十一時間四十七分はかかります。あくまで安静にしていればですが》

 

「理久にそれだけの傷を付けるとは、あのザムシャーという侍、それほどの使い手だったか・・・・」

 

理久の傷口の状態をレムが詳しく報告し、叢がザムシャーの実力に驚いた。

 

「傷を早く治すなら、栄養のある料理を食べるのが良いじゃろう」

 

「それじゃ! りっくんに美味しい料理を作って上げればいいよね!」

 

「と言うことで! 理久さんにはこれからわたくし特性のモヤシ料理をたっぷり作ってあげますわ!」

 

夜桜が言うと、飛鳥が元気よくそう返し、植物プラントの菜園ルームからモヤシを籠一杯に入れてきた詠がそう言った。

 

「なあ詠。最近菜園ルームのモヤシのスペースが広くなってないか?」

 

「もう五分の一がモヤシに占領されとるわ」

 

同じく菜園ルームから野菜を持ってきた焔と日影が半眼になってそう言った。

事実、最初は菜園ルームの小さなスペースだけだったモヤシのスペースが詠が基地に入り浸るようになってから徐々に広がっていったのだ。

 

「まぁ食費の節約になるから良いけどね。それに最近、斑鳩姉さんとかが料理の勉強を詠さんに教えてもらっているけど、どうして?」

 

「えっ、それは、その・・・・////」

 

斑鳩が頬を赤らめて言い淀む。『理久に手料理を振る舞いたい』という考えているので、今は黙っているのだ。そんな斑鳩の反応に、葛城がニヤニヤとしていると、ふと基地の隅に視線を向けると、雲雀と柳生、未来と四季と美野里が何やら話し合っているのが見えた。

何やってんだ思い、話しかけようとしたその時、転送エレベーターから、神妙な顔をした霧夜先生がやって来た。

 

「ーーーー理久。少しいいか?」

 

「ん? どしたの?」

 

「実はーーーー先ほど〈AIB〉から話が来てな・・・・」

 

霧夜先生は、基地に置かれたロッキングチェア(理久がおふざけで中古屋で買ってきた)に腰掛けながら話し出す。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

ー霧夜先生sideー

 

時間は、理久がザムシャーとの戦いを終えた頃。

霧夜先生は〈AIB〉にて、ハルカとナリカとスバルに伏井出ケイを任せ、担当編集者を保護し、彼の証言も使って伏井出ケイの捕縛を進言しに善忍上層部に行ったが、相も変わらず『宇宙人問題に我々善忍は干渉しない』の一点張りの上層部に僅かに苛立ちを感じていた霧夜先生は、鷹丸とゼナが使う〈AIB〉の車の後部座席に座り、基地のある展望台の近くにまで運んで貰っていた。

スマホを見てみると、鈴音先生‹凜›からの連絡が入っており、悪忍上層部に伏井出ケイの捕縛もしくは抹殺を進言しているが、伏井出ケイの事は善忍の動きを抑えてからと言われ、悪忍上層部も聞く耳を持たない状態であった。

因みに、伏井出ケイはハルカ達と僅かな間だけ戦うと、すぐに転送装置を使ってその場から逃げたようだ。

 

【結局、善忍上層部も悪忍上層部も、協力しないの一点張りか】

 

【ああ。お互いに不毛な睨み合いが忙しいようだ】

 

【たくっ、古い考えに縛られた大きな組織ってのは、思考が頭でっかちで動きが鈍重な、老害な木偶の坊だな】

 

善忍と悪忍の両方の上層部のくだらない睨み合いに霹靂する鷹丸。ゼナはヤレヤレと肩を竦めながら霧夜先生にガラス板、否、液晶しかないタブレットを取り出すと、ソコに表示された、伏井出ケイの映像と宇宙空間の座標を見せた。

 

【伏井出ケイの正体は『ストルム星人』。捕まえるのは困難と判断し、諜報に徹する事にした】

 

【この座標は《霧夜。俺に変わってくれ》ゼロ? 分かったーーーー(デュオン!)ーーーー銀河座標、銀経二百十三度、銀緯マイナス十三度?】

 

【ああ。アイツらは『超光速思念体通信』を行う事ができる】

 

【ストルム星人が発した電波を、五百二十三種類のあらゆる手段で観測・計算した結果、その場所が割り出されたんだ】

 

霧夜先生、もといゼロが訝しそうに見ていたデータを、ゼナと鷹丸が詳しく説明した。

 

【ここに『黒幕』がーーーーもしかしたら、ベリアルがいる】

 

【(コクン)】

 

ゼナの言葉に、鷹丸も頷いた。

 

【・・・・何故俺に、こんな重要な情報を見せる?】

 

【・・・・調査にして欲しいからだ。ウルトラマンゼロ】

 

【ふっ・・・・ウルトラマンジードに頼んだらどうだ? 鷹丸からの頼みだと言えば、アイツは文句も見返りと打算も抜きで引き受けてくれるぜ?】

 

【いや、俺もハルカ達も、まだ理久に自分の職業を打ち明ける心の準備がな・・・・】

 

理久の性格をある程度把握したゼロがそう言うが、鷹丸がバツの悪い顔をして顔を背け、ゼナが話をする。

 

【ウルトラマンジードは、つい先ほどのザムシャーとの戦いで負傷している。それに、我々の組織内でも、彼の見解は割れているのだ。まだ全幅の信頼を寄せる訳にはいかない、と】

 

 

 

 

* * *

 

 

 

霧夜先生は鷹丸の事を交えず、〈AIB〉からの調査依頼を理久達に説明した。

 

「とまあ、その調査をする為に、俺とゼロは暫く地球を留守にすると、教師という立場上お前達にも言っておこうと思ってな」

 

「そう言う事でしたら、わたくし達も文句はありませんが・・・・」

 

「〈AIB〉の人達、りっくんの事を疑っているんですか!?」

 

「善忍上層部も悪忍上層部も、怪獣騒動が多発しているのに、まぁだお互いの腹の探り合いが忙しいってか!?」

 

斑鳩が霧夜先生の話に納得するが、飛鳥と焔、否、斑鳩を含めた他の皆も、それぞれの温度差はあれど、各々の上層部の能天気さと言うか、現実を見てなさ具合と言うか、憤然としていた。

 

「上層部の事は一先ず置いておいて、おじさん。ーーーーウルトラマンベリアルがそこにいるの?」

 

理久にとって、上層部の腹芸も、〈AIB〉の思惑も、正直どうでも良いが、霧夜先生とゼロがこれから赴く座標の方が気になったようだ。

 

「・・・・もしかしたら、だがな。理久。ザムシャーと戦って次の変身までは?」

 

「・・・・あと十八時間は掛かるってさ」

 

「そうか。まぁ、本当にベリアルがいるかどうかは分からないが、調べてみる価値はありそうだ。が、伏井出ケイが何かアクションを起こしてくる可能性も十二分にある。理久。変身可能時間になるまで、傷の療養に励めよ。他の皆も、気を抜くんじゃないぞ」

 

『はい!』

 

霧夜先生の言葉に、理久以外が力強く頷いた。が、理久は一つだけ気がかりとなっている事を霧夜先生から聞くために口を開く。

 

「おじさん。この間僕達が遭遇した、異形の怪物達。おじさんは心当たりがあるんじゃないの?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

ーーーー『妖魔』。

それは『忍結界』内にて、忍が流した血を糧に現世に誕生すると言われている人間とは違う種族の異形の者達。

古来より、人間に仇なす存在として言い伝えられ、何人も善忍たちが妖魔退治で命を落としたと、霧夜先生は全員に伝えた。

 

「ふぅん。それじゃ、伏井出ケイは妖魔を支配下にしているって事か・・・・」

 

「可能なのですか? 霧夜先生」

 

雪泉の質問に、霧夜先生は応える。

 

「・・・・不可能ではない。十年前、遥か過去の時代から現代を侵略に来た『ノロイ党』による『ノロイ党事件』。忍の世界や一般の世界に起こった大事件。その際、『ノロイ党』は当時の忍達の血から生まれた妖魔達を自分達の軍勢に加えていたからな」

 

「『ノロイ党』・・・・?」

 

その単語に、理久はピクリと反応すると、斑鳩がコホンと咳払いをして、詳しく話す。

 

「霧夜先生が言ったように、十年前、『クライシス・インパクト』によって生まれた時空間の亀裂よりやって来た邪悪な集団『ノロイ党』。当時の忍達も戦いましたが、『クライシス・インパクト』によって多くの忍が殉職し、さらにまだ数年しか経っておらず人材も不足していました」

 

「男性の忍は悉く殺され、くノ一達は奴らに殺されるか嬲り物にされていたそうですわ」

 

因みに、当時学生だった鈴音先生‹凜›と大道寺先輩も、『ノロイ党討伐』の忍務について戦っていたのだが力及ばず、後少しのところで嬲り物にされそうになっていた時に、霧夜先生と半蔵に助けられた。

しかし、スーパー忍者を目指していた鈴音先生‹凜›にとって、この敗北は深い傷となってしまい、その傷を埋めようと霧夜先生に無理を言って『特殊忍務』に付いたが、その時に行方不明となり、道元に拾われ、蛇女子学園の忍となったのだ。

 

「そして、その『ノロイ党』を壊滅させたのが、『伝説の閃忍』と呼ばれる三人のくノ一だ。彼女達は未だ全国のくノ一達の憧れの忍とされている」

 

詠と叢が補足をすると、理久はその『伝説の閃忍』に心当たりがあったが、言わないでおいた。

 

「ーーーーま、妖魔が伏井出ケイの戦力になっているなら、これからさらに気を引き締めながらならない。修行を怠るんじゃないぞ」

 

霧夜先生の言葉に善忍・悪忍が頷いた。

すると理久は、カプセルホルダーから、二本のウルトラカプセルを取り出すと、霧夜先生に投げ渡す。

 

「おじさん。ゼロ。持っていきなよ」

 

「ーーーーおっと、これは・・・・!」

 

ーーーーセェヤァッ!

 

ーーーーフッ!

 

渡されたのは、『ストロングコロナゼロカプセル』と、『ルナミラクルゼロカプセル』だった。

 

「・・・・理久」

 

「向こうで何が起こるか分からないんだ。これくらいの手助けはさせてよ」

 

「(デュオン)・・・・ふっ、サンキュー理久。この二つがあれば百人力だぜ!」

 

霧夜先生はゼロに変わると礼を言った。現在ゼロの最強戦力は『ゼロビヨンド』だが、『ストロングコロナゼロカプセル』と『ルナミラクルゼロカプセル』に内包されたエネルギーを使う事で、『ストロングコロナゼロ』や『ルナミラクルゼロ』へと変身が可能になった。

これで、未だ本調子ではないゼロの戦力が上がる。

 

「(デュオン)ーーーー皆。修行は怠るなよ。特に理久。お前も少しはやる気を出して訓練に取り組め。偶には飛鳥達と模擬戦をしたりな」

 

「は~い。まぁこの怪我じゃぁ今日明日は無理ですけど」

 

ヒラヒラと手を振る理久に、やれやれと息を吐いた霧夜先生が基地を出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基地を出た霧夜先生。そしてそれを見送ろうと、理久に飛鳥達に焔達、そして雪泉達もやって来た。

 

「皆。伏井出ケイが何か仕掛けてくるかもしれん。十分に警戒しておけよ」

 

『はい』

 

「おじさんも気をつけなよ。ベリアルがいるにしても、いないにしても、警戒はしないに越した事はないんだからさ」

 

「あぁ。行くぞゼロ」

 

霧夜先生はウルトラゼロアイNEOを懐から取り出して、目に当てスイッチを押した。

 

「シャッ!!」

 

すると、霧夜先生の身体が光り輝き、ウルトラマンゼロへと変身すると、宇宙へと飛び立った。

 

『シュァッ!』

 

 

 

 

 

ー理久sideー

 

「・・・・ねえ、りっくん」

 

そして理久はその夜。皆で晩御飯を終え、傷の治癒に集中していると、飛鳥が話しかけてきた。

 

「ん・・・・? どうしたの?」

 

「今日、ザムシャーさんと戦った地区って、りっくんの家があったんだよね?」

 

「あぁ。そうだよ」

 

「・・・・りっくんの家族って、今どうしているのかなぁ? って思ったんだけど、どんな人達なの?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

飛鳥の言葉に、理久は周りを見ると、他の皆も聞き耳を立てていたりしていた。ペガに視線を向けると、『そう言えば皆に、鷹丸さん達の事。話してなかったよね?』と視線が送られた。

 

「(・・・・・・・ハルカさんとナリカさんとスバルさんが『伝説の閃忍』かも知れないというのはヌキにして、話をしても良いかもな)ーーーーまぁ良いけど。そうだなぁ、僕は八歳以前の記憶は朧気だけど、それから先の事を話すよ。僕を養子として育ててくれたのが、旦那さんで父さんの鷹丸さんと、母さんである"三人の奥さん"」

 

『ぶっ!?』

 

"三人の奥さん"という所で、飛鳥達は全員思わず吹き出してしまった。

 

「さ、三人っ!? りっくんの養母さんって、三人もいるのっ!?」

 

「うん。三人とも若くてね。僕とは・・・・一番上の母さんは十五歳くらい、二番目の母さんは十二歳くらい。一番下の母さんは七歳くらい離れていてね。近所だと歳の離れた姉弟と思われていたよ」

 

「いやいやいやいやいやいやいや! ソコじゃねぇよ!」

 

「三人も奥さんがいるだなんて! 重婚じゃないですか! 犯罪じゃないですかっ!」

 

焔と雪泉が勢いよくツッコんだ。

それに続くように、他の皆もヒソヒソと話しだした。

 

「マジかよ。理久って結構爛れた環境で育ったのか?」

 

「どうりで理久くんが次から次へと女の子を無自覚にオトシていっている筈ですわね」

 

「三人も奥さんがいるその養父に悪影響を受けていたか」

 

「でもでも、理久くんが優しいから、きっと良いお父さん何じゃないかな?」

 

「貧民街でも、モテる男性もしくは女性には複数の方と結婚しているような様子でいますし」

 

「そら大家族やな」

 

「理久が妙に女の子の裸体に慣れていたのも、そのお母さん達が影響してるかも」

 

「そうじゃなかったら、こんな女の子だらけの空間で平然としていないわね」

 

「し、しかし、三人も奥方を・・・・/////」

 

「不純じゃ! 不潔じゃ! 淫猥じゃ!!/////」

 

「う〜む。理久っちも何人も女の子を侍らかせっかも? あっ、ウチらがそれか」

 

「どんなお父さんとお母さん達なのかな?」

 

他のメンバーもヒソヒソと理久の家族がどんな人達なのかコソコソと話をしていた。

 

『因みに、理久を鍛えてきたのも、その三人の奥さん達なんだよ』

 

『え"っ!?』

 

忍少女達がまたもや目を見開く。あの! 最強の大道寺先輩ですら「本気でやらねばこちらが死ぬ」と言わしめ、蛇女子選抜メンバーの焔達を総ナメにし、蛇女子学園をほぼ一人で制圧し、善忍のエリートである月閃女学館の雪泉達にも圧勝した。もう鬼のように強い理久を鍛えた三人の奥さん達に戦慄したのだ。

 

『(理久くんのお母さん達って、ゴリラみたいな人達なの?)』

 

と言わんばかり乃視線を送ってきた。

 

『何か鷹丸さん達。最低男やゴリラ女って言われてるよ?』

 

「まぁ鷹丸さんの方は傍から見るとそう思われるし、ハルカさん達の方は後々面白そうだから黙ってよう」

 

ペガとコッソリとそんな話をしている理久。

 

 

 

 

 

 

 

ー鷹丸sideー

 

「ーーーーへっきしゅんッ!」

 

「「「ーーーークシュンっ!」」」

 

その頃、伏井出ケイとの戦いで少し負傷したハルカとナリカとスバルの治療をしていた鷹丸は、奥さん共々盛大なクシャミをしていた。




次回、伏井出ケイと対面する!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。