閃乱ジード   作:BREAKERZ

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大敗をきっした理巧。そんな中、ゼロと霧夜先生にもピンチが!


僕の名は
会いに行くぜ、半蔵お爺さん


ー理巧sideー

 

理巧は、真っ暗い空間をトボトボと歩いていた。

 

「(・・・・・・・・・・・・・・・・)」

 

何故そんな空間を歩いているのか分からなかった。しかし、ふと立ち止まったその瞬間、理巧に向かって幾つもの小さな光が集まってくる。

そしてーーーー。

 

ーーーーオォォォォォォォ・・・・!

 

「(っっ!!)」

 

理巧の周りに集まった小さな光から、唸り声が響いてくると、光の中に顔が浮かんでいた。

その顔は、理巧と同じように、『研究施設』で育ち、死んでいった人間達だった。

 

「(君、達は・・・・)」

 

ーーーーナゼ、オ前ダケ、生キ残ッタ・・・・!

 

ーーーーワタシ、達ハ、死ンダ、ノニ・・・・!

 

ーーーーオ前ハ、選バレタト言ウノカ・・・・!

 

そして唸り声に混ざって聞こえる怨嗟の声。

 

「(ぼ・・・・僕、は・・・・!)」

 

理巧は、自分の周りを渦巻きながら唸り声を上げ続ける『光』達に、理久はその場で両膝を突いて、蹲る事しか、できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ー飛鳥sideー

 

飛鳥達は、街を破壊し尽くしそうとする融合獣を基地の空中モニタで見ていた。

 

『キングジョーと、ゼットンが融合した個体と思われます。名称は、〈ペダニウムゼットン〉』

 

「あの野郎! 昨日の今日で性懲りもなく!」

 

「このままでは街が・・・・! ソコにいる人々が・・・・!」

 

レムの報告を聞きながら、焔と雪泉はモニタのペダニウムゼットンを鋭く睨んだ。

他の忍の仲間達やペガも同じだった。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

ただ一人、飛鳥は、未だ眠っている理巧に悲痛な視線を向けていた。

が、そんな思考を塗りつぶそうとするかのように、レムが更に報告をする。

 

『ペダニウムゼットンの体内に、異常な量のエネルギーを観測。奪われた六個のウルトラカプセルがペダニウムゼットンの体内に存在しているようです』

 

「なんですって!?」

 

「奪われたカプセルが全て!?」

 

「ヤツの体内に何が起こっているのじゃ!?」

 

『ーーーー不明です』

 

斑鳩と春花が驚き、夜桜の問いにレムが不明と応える。

 

「今なれるフュージョンライズは!?」

 

『残されたカプセルで可能なフュージョンライズは、『ムゲンクロッサー』のみですが、『ルナミラクルゼロカプセル』は現在、ウルトラマンゼロが所持しています』

 

叢の言葉に、レムはペダニウムゼットンが表示されたモニタの隣に、全てのフュージョンライズの姿と、必要なカプセルを表示されたモニタを表示すると、奪われたカプセルが、各ライズに必要なカプセルの片方だったり、両方だったりとかくフュージョンライズが『ライズ不能』と表示された。

ただ1つなれる『ムゲンクロッサー』も、『ルナミラクルゼロカプセル』がなくて『不能』扱いである。

 

「ウルトラマンゼロは、霧夜先生はまだ戻らないのか?」

 

『ーーーーウルトラマンゼロの帰還は不明です』

 

柳生の問い掛けに、レムは無情とも言える言葉を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーゼロsideー

 

そしてその頃。

ウルトラマンゼロは、赤黒い雲の中としか言いようの無い風景に支配された異空間の中を飛んでいた。

 

『ーーーーちっ、ベリアルの野郎! 何処にいる!?』

 

『「しかし、何と言う広い空間・・・・ゼロ!」』

 

『あぁ!ーーーーそこだ! 『エメニウムスラッシュ』!!』

 

背後から悍ましい程の気配を感知したゼロが、『エメニウムスラッシュ』を放つと、赤黒い異空間の中にあるソレに当たると、正体不明のソレが姿を現した。

 

『「デ、デカい・・・・!?」』

 

霧夜先生が驚愕に目を見開いたが、それも仕方ない。

姿を現したソレは、170mmもあるウルトラマンゼロの四倍近くはある体躯。目測だがゼロの身体は膝に届く程度。

四足の下半身に長い尻尾。背中にその山のような巨体に負けない大きさの羽を広げ、その上半身はまるで恐ろしい悪魔のようであった。

 

『こ、コイツは・・・・! 『傷無』がーーーーウルトラマンガイアとウルトラマンアグルが! 仲間達と共に倒した、『根源的破滅招来体』! 〈根源破滅天使ゾグ〉!!』

 

『キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

ゼロの声に応えるように超巨大怪獣、〈根源破滅天使ゾグ・第二形態〉は、異空間全体が震える程の金切り声を発する。

と、さらにゾグの背中に立つ、もう一体の怪獣が現れた。

 

『キュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

翼のような形状の背中の巨大な突起物と、ゾグと同じ金切り声を思わせる不気味な咆哮を上げ、腹部には六つの目玉のような模様のような器官が存在していた。

 

『今度は『ガイト』が! ウルトラマンオーブが戦った〈大魔王獣マガオロチ〉かよ!?』

 

『「なんて事だ・・・・! どいつもこいつも強力そうな怪獣ばかりだな・・・・!」』

 

『ああ! コイツら一体だけでも地球を僅か数日で滅ぼせる驚異だぜ!!』

 

『「コピークリスタルと怪獣カプセルで生み出された存在か?」』

 

『だろうな。さもなければ、この二体がこんな所にいるとは思えねぇ!』

 

『キャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

『キュアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

ゾグ・第二形態が口や両手から波動球を放ち、マガオロチが口から放つ雷撃光線『マガ迅雷』を放った。

 

『うおっとぉっ! いきなり攻撃とはな! まだゴングは鳴っちゃいねぇだろうがっ!』

 

『「ベリアルなりの! ゴング代わりか! 歓迎のクラッカーって事だろう!」』

 

『へっ! 上等だ! ならその歓迎にーーーー精々ド派手に応えてやるぜぇーっ!!』

 

ゼロは構えを取ると、ゼロスラッガーを飛ばし、マガオロチに切りつけていき、『エメニウムスラッシュ』でマガオロチを牽制。

続いて、ゾグ・第2形態の周りを飛びながら、『ワイドゼロショット』をあびていく。

 

『キャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

『キュァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』  

 

しかし、この二体の強力怪獣達には、あまり通じていないようであった。

 

『ちっ・・・・霧夜。気合い入れて行くぜっ!!』

 

『「無論だ!」』

 

『『「ハァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」』』

 

二人の声を重ね、強力怪獣達に立ち向かっていった。

 

 

 

 

 

 

ーペダニウムゼットンsideー

 

『ピギュルルルルルルル・・・・ゼットォォォォン!!』

 

ペダニウムゼットンが頭や肩の角から赤い電撃を放ち、力を貯め込むと、両腕から火球、『ペダニウム・メテオ』を放った。

 

ーーーードゴオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォンンっ!!!

 

何と、前方にあった山一つを軽々と消し飛ばしてしまった。

だがーーーー。

 

『(バチッバチッ! バチッっ!!) ゼットォォォォォォォォンン!?』

 

何と、ペダニウムゼットンの身体から電流がスパークすると、ペダニウムゼットンの巨体が後方に吹き飛び、ビルを巻き込んで倒れ込んでしまい、そのまま動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

ー飛鳥sideー

 

飛鳥達はその光景を見て、目を見開いた。

 

「な、何だぁ?」

 

「自分の攻撃で、吹き飛んだんでしょうか・・・・?」

 

『ーーーー超高圧縮不可により、神経系、及び脳の一部が焼き切れたようです。現在、自己修復中。暫くはこのままです。ーーーー大道寺から連絡が入りました。繋げます』

 

焔と雪泉が呟きに、レムが応えると、ペダニウムゼットンが映し出されたモニタの隣に、大道寺先輩の顔が映し出された。

 

《ーーーー皆、聞こえているか?》

 

『大道寺先輩!』

 

《ソチラの状況は把握している》

 

「先輩。今まで何を?」

 

「伏井出ケイを追っていたんじゃなかったんすか?」

 

斑鳩と葛城が聞くと、大道寺先輩は顔を僅かに顰めながら応える。

 

《ーーーーすまなかったな。言い訳をするつもりは無いが、伏井出ケイを独断で調査していた事で、『善忍上層部』に呼び出されてな。先程まで取り調べの為と言う体で軟禁されていたのだ》

 

『えっ!?』

 

大道寺先輩は上層部に無断で、独自に伏井出ケイを捜索をしていたが、遂に上層部の耳に入ってしまい。査問会に呼び出され、ほぼ軟禁生活をさせられていたのだ。

 

《しつこく取り調べを受け、もう物理的に出てやろうかと思った矢先、〈AIB〉がお主達が捕まえたバド星人のスナイパー達から、伏井出ケイがこれまでの怪獣騒動。蛇女子学園での道元の黒幕が発覚し、そして黒影様からのお達しで開放されたのだ》

 

「おじい様が・・・・!」

 

「そ、それで、私達に連絡をしてきたのは?」

 

「上層部が漸く動き出したんですか?」

 

雪泉が驚き、飛鳥と斑鳩が僅かに期待した目を向けるが、大道寺先輩はハァ、とため息を吐いてから、苦々しく応える。

 

《上層部はそれでも、宇宙人問題や怪獣問題は〈AIB〉の管轄であり、関与はするな、と言ってきたのだ。鈴音先生‹凜先輩›の方でも、悪忍上層部は同じ意見だそうだ》

 

『〜〜〜〜〜〜〜〜!!』

 

大道寺先輩の言葉に、善忍側も悪忍側も、上層部の怠慢な考え方に苛立たしげに顔を歪めた。

 

《ーーーー実はな。〈AIB〉からの要請で、今現れている融合獣のいる地域の避難誘導の応援要請が来たのだ。警察や自衛隊は、先日のザムシャー‹侍宇宙人›やペダニウムゼットン‹融合獣›との戦闘被害での救援活動で手が足りないのだ》

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

飛鳥達は一瞬理巧に目を向けてから、迷っていた。

避難誘導や救援活動には行きたい。悪忍である筈の焔達ですら、あのペダニウムゼットンとの戦いでの大惨事を見た後だと、知らんぷりできない。

しかし、こんな状態の理巧を放っておいて行く事はできない。

どうしたらと思うとーーーー飛鳥が、顔を上げて声を発した。

 

「ーーーー皆。行こう。困っている人達を助けに」

 

『飛鳥(さん/ちゃん)・・・・』

 

「ーーーーりっくんなら大丈夫だよ。こんな事で負けるような人じゃないって、私達皆が知ってる筈だよ。りっくんは必ず起きて、必ず駆けつけてくれる。私達ができる事は、りっくんが思いっきり、存分に戦えるように、避難や救助をする事だよ!」

 

飛鳥の言葉に、全員が目を合わせ、フッと笑みを浮かべると、力強く頷いた。

 

『レム』

 

『了解。他のユートムを機動させ、避難者や救助者の捜索をします』

 

ペガの言葉にレムが応えた

そして、各人が、眠っている理久に代わる代わる挨拶をしてくる。

 

「理巧くん。起きて、怖い怪獣さんをやっつけたら、また美野里と遊ぼうね」

 

美野里が。

 

「理巧っち。またスポッシュ行こ♪ ローラースケート、ウチが教えたるし☆」

 

四季が。

 

「ワシを何度も倒した男が、こんな事で折れるなど許さんのじゃ」

 

夜桜が。

 

「・・・・理巧、様。漫画では、こ、こんな時、主人公は苦難を乗り越えるのが、王道です。だから、頑張って下さい」

 

般若面を外して叢が。

 

「理巧くん。あなたは私の唇を奪った責任をまだ果たしていないんですからね」

 

雪泉が。

 

「理巧様。一応医学知識がある者として言っておくけど、起きてすぐに無理をしないようにね。まぁ無駄だと思うけど」

 

春花が。 

 

「理巧。早く起きてよ。新しく買ったゲーム、アンタも一緒にやってくれないとつまらないからさ・・・・」

 

未来が。

 

「理巧さん。アンタにはまだ教えて欲しい感情をいっぱいあるんや。はよ起きてや」  

 

日影が。

 

「理巧さん。起きたらわたくしが腕によりをかけて、美味しいモヤシ料理を作りますからね」

 

詠が。

 

「理巧。お前なら大丈夫だと信じてるからな。さっさと起きて、あのムカつく伏井出ケイを蹴散らしてやりな」

 

焔が。

 

「理巧くん。雲雀達ね。理久くんがジンコーだろうとなんだろうと、理巧くんが大好きだからね!」

 

雲雀が。

 

「オレは何も言わん。理巧。お前はきっと立ち上がれるヤツであると知っているからな」

 

柳生が。

 

「理巧。帰ってくる前に起きてなかったら、アタイがそのお尻を味わってやるからな!」

 

葛城が。

 

「理巧くん。わたくし達は『家族』ですわ。あなたは一人ではないんですのよ」

 

斑鳩が。

 

「・・・・りっくん。私のじっちゃんから手紙が来ていたの。きっと、りっくんの力になってくれるよ。・・・・だから、起きて。皆が、私が、りっくんを待っているんだから・・・・」

 

飛鳥は理巧の枕元に、半蔵からの手紙をソッと置いてから、皆と共に転送エレベーターで上へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー理巧sideー

 

飛鳥達が転送エレベーターで去っていくと、ペガは理巧に向けて声を発した。

 

『ーーーー理巧。起きてるんでしょう?』

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ペガの声に応じるように、理久はソッと目を開け、上体を上げた。

 

「・・・・いつから気づいてた?」

 

『何となくね。多分、何人かも気づいていたと思うよ』

 

「そうか・・・・」

 

『いつから起きてたの?』

 

「ペダニウムゼットンがまた現れた、って処からかな・・・・」

 

『・・・・大丈夫なの?』

 

「・・・・正直、結構堪えた・・・・」

 

それは、ペダニウムゼットンに、伏井出ケイに負けた事では無い。自分の出自の事であった。

すると、理巧のお腹から、クゥ〜、と腹の虫がなった。

 

『何か持ってくる?』

 

「・・・・カロリーが不足している。買い置きの菓子パン、何個か持ってきて」

 

『うん』

 

ペガが菓子パンを何個か持ってくると、理巧は全て食べきった。疲労と体力の回復にカロリーがとても高い菓子パンを摂取しているのだ。

すぐにカロリーをエネルギーに変換した理巧は、寝そべっていたソファーから起き上がると、身体の状態をチェックする為に、軽くストレッチをする。

 

「・・・・・・・・・・・・ん。問題無し」

 

理巧は半蔵からの手紙を手にすると、手紙を広げ、書いてある文字に目を走らせていく。

すると、転送エレベーターに向かうと、ペガが話しかける。

 

『半蔵のお爺ちゃんの所に行くの?』

 

「ーーーー手紙には、【話したい事があるから、家まで来てくれ】って書いてあった。【時間が無いから、できるだけ早く】、ともね」

 

『お爺ちゃん、何で呼び出したんだろう?』

 

「さぁね。だけど、あの人には少し疑問を抱いていたんだ。ーーーージーッとしてても、ドーにもならない」

 

エレベーターに乗り込む理巧とペガに、レムが声をかけた。

 

『ーーーー理巧。ペガ。いってらっしゃいませ』

 

『いってきま〜す!』

 

「・・・・あぁ。いってくる」

 

そう応え、理巧とペガは転送エレベーターで地上に向かった。

 

 

 

 

 

 

飛鳥の実家である寿司屋の近くに転送エレベーターで到着した理巧は、手紙に書かれていた住所を頼りに町を歩いた。

と、その時ーーーー。

 

「か、返して・・・・! 『べべたん』を、返して・・・・!」

 

『うっひょ〜♪』

 

ゴスロリ風のドレスに身を包み、フワリとした長い紫色の髪と、髪とお揃いの紫色の瞳をし、雲雀や美野里と同じくらいの背丈をした。理久と歳の近そうな女の子だった。

女の子は数人の、チンピラ風の格好をした大柄な男達に囲まれ、何やらその一人が、青紫色の熊のようなぬいぐるみを持っており、その女の子はぬいぐるみを取ろうとピョンピョンと飛び跳ねており、その度に男達から下卑た笑みが浮かぶ。

その理由はーーーー。

 

ーーーーバルン! バルン! バルン! バルン!・・・・。

 

その女の子の、ゴスロリ風の服装に包まれているが、その胸元は、春花処か、大道寺先輩すらも凌駕する圧倒的な質量をした豊満過ぎる胸部をしており、それが飛び跳ねる度にダイナミックに揺れる。

背丈が低い分、さらにその大きさが強調されており、その気弱な小動物な雰囲気が、チンピラ共の嗜虐心を刺激しているようだ。

 

「ねぇねぇお嬢ちゃん。そんなにこのぬいぐるみを返して欲しいならさぁ」

 

「ちょっと俺らと向こうで楽しまない?」

 

「大丈夫大丈夫。恐い事なんて何にも無いからさ」

 

「いや、寧ろ、凄く楽しい事だよぉ」

 

下卑た笑みを浮かべるチンピラ共に、理久は半眼で呆れていた。

 

『理巧! 助けないと!』

 

「・・・・はぁ、めんどーーーーっ!」

 

と、ソコで理巧は目を見開いてチンピラ共、否、その少女に目を向けた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

少女は顔を俯かせて、何も言わず黙っている。チンピラ共は諦めたのかと思い下品に笑い合っているが、理巧の直感がーーーー警鐘を鳴らした。

 

「(あの子ーーーーヤバい!)」

 

理巧はすぐにチンピラ共の一人からぬいぐるみを一瞬で取り上げると、少女にぬいぐるみを見せる。

 

「ーーーーもう大丈夫だよ」

 

「・・・・えっ? 『べべたん』?」

 

少女を顔を向けると、理巧はなるべく笑顔を作って、ぬいぐるみ、『べべたん』を渡した。

 

「あっ・・・・あの・・・・」

 

「テメェ何しやがる!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

理巧が鬱陶しそうにがなり立てるチンピラ共に振り返る。

 

「げっ、イケメンかよ。ムカつく」

 

「うほっ、美少年♪ 俺こっちでも良いぜ」

 

チンピラ共の一人が何か不穏な事を言うと、仲間のチンピラ共が若干距離を取った。

 

「帰りなよ」

 

「えっ・・・・でも・・・・」

 

「大丈夫だから、さぁ帰りなよ」

 

少女は戸惑いながら、その場を去った。

 

「おい待てよ!」

 

「あのさぁ。あんな女の子にダサい真似なんて止めたら? と言うか寧ろ、命拾いしたねアンタら」

 

「あぁっ!?」

 

チンピラ共の一人が視線を鋭くし、他の仲間達も拳を構えたりすると、理巧の胸ぐらを乱暴に掴んで、路地裏に連れて行く

 

「おいテメェ。その綺麗な顔面、グチャグチャにしてやんよ!」

 

「ーーーーあっそう。こっちも少しムシャクシャしてからね。・・・・ちょっと憂さ晴らし、させてもらうよ」

 

路地裏に付いた瞬間、チンピラ共の視界がすぐに真っ暗になり、目を覚ますと、何故か気絶する前の記憶が綺麗に無くなり、チンピラ共の顔と身体が凄まじく痛み、何故か壁やアスファルトに叩きつけられた状態になっていた。

 

「はへ?」

 

顔面が潰れたチンピラ共の一人が、歯が何本か無くなった口から、間の抜けた声を発していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数分後、全くの無傷&服に汚れすら付いていない理巧は、飛鳥の実家の寿司屋に辿り着き、店の前にはスマホで誰かとの電話を終えた半蔵が立っていた。半蔵は理巧に気づくと、朗らかな笑みを浮かべながら手を振った。

 

「やぁ暁月くん!」

 

「半蔵のお爺さん。僕が来るのを分かってたんですか?」

 

「うむ。君がついさっきまで生死の境を綱渡りしていた事もな。ここに来る直前に可愛らしく胸がとてつもなく豊満な美少女をチンピラから守った、嫌、チンピラ達を守った事ものう。ーーーーずっと見ておったよ。君が、“ウルトラマンジードとして戦い始めた時から”、のう」

 

「っ・・・・!」

 

理巧の視線が弱冠鋭くなった。

ーーーーこの目だ。

理巧が半蔵に対して妙な違和感を感じていたのは。まるでこちらをずっと監視してきたような奇妙な『違和感』。それが理巧が半蔵に対するほんの僅かな疑心。

半蔵はそんな理巧の胸の内を見透かしているかのように笑みを浮かべると。

 

「まぁ立ち話もなんじゃ。家に来なさい。あぁ飛鳥の父と母は今夫婦で旅行を行かせておるよ。儂の女房もちと出かけておるから安心しなさい。さぁさ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

理巧は少し警戒しながらも、店に案内されると、カウンターには太巻きの材料と調理具が置かれていた。

 

「・・・・これは?」

 

「どうじゃろ? 飛鳥達が頑張っておるから、太巻きでも作ってやろうではないか。君が生死の境を綱渡りしている間、ずっと看病してくれていたからのう」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「どうじゃ? ペガくんも?」

 

『えっ、えぇっ!? えっと、その、ペガ、この中に・・・・』

 

半蔵が『ダークゾーン』にいるペガに話しかけたが、ペガは遠慮して影の中に隠れた。

 

「ふふふ。シャイじゃのう」

 

「・・・・半蔵のお爺さん。回りくどいのを抜きにします。ーーーー何で知っているですか? 色々な事を」

 

理巧が聞くと、半蔵はフッと笑みを浮かべて応える。

 

「ーーーー数ヶ月前、君がウルトラマンジードとして戦い始めた時かの。儂は妙に感覚が鋭くなり、女房の『小百合』も不可思議な力を得たのじゃ」

 

半蔵は次に、自分の胸元を叩く。

 

「このーーーー胸に『光』が宿った。それが原因じゃな」

 

「『リトルスター』・・・・!」

 

理巧の反応に、半蔵は笑みを浮かべ、話を続ける。

 

「儂は、“見たい物が見れるようになった”。女房の『小百合』は、“命を削る忍術で命を削らなくなった”。儂の能力を詳しく教えるとな。ここから一歩も動かずにず~と遠くまで、銀河の果ては勿論、お主らが住んでいる地下基地も見れるぞ」

 

「プライバシーの侵害って知ってます?」

 

「はははは! ついこの間葛城と四季と春花に夜這いされそうになって、三人仲良く逆さ磔にした事も知っとるよ」

 

「お孫さんに言いましょうか?」

 

「それは勘弁してくれ」

 

等といいながら、太巻きを作る理巧と半蔵。

 

「おぉ! 流石は器用じゃのう」

 

「少し前に寿司屋でバイトしてたんで。ーーーーそれよりも、僕を呼び出した理由はなんです?」

 

「ーーーー今君は、伏井出ケイに敗北し、自分の『本当の姿』を見失っておるじゃろう? だから手紙でここに来て貰ったのじゃよ」

 

「『時間が無い』って書いてあったのは、なぜです?」

 

「そうでも言わんと、君はこの老い先短い可哀想な老人の元には来んじゃろう?」

 

「老い先短い・・・・後、十数年は元気に生きてそうな気がしますけどね」

 

「ホッホッホッホ。まぁ、飛鳥の花嫁姿を見て、曾孫の顔を見ずでは、死んでも死にきれんよ」

 

「(曾孫の代まで生き続けるつもりなのかこの爺さんは・・・・?)」

 

朗らかに笑う半蔵に、理巧は目を半眼にし、呆れながら見つめていた。




寺田農さんのご冥福を祈ります。
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