助けるよ、理巧!
ー市民sideー
ウルトラマンジード、理巧がキメラベロスに吸収された翌日。ニュースで早速、その事についての報道がされていた。
《ーーーー昨日現れた、『黒い巨人』の映像をご覧ください》
キャスターがそう言うと、ウルトラマンベリアルの映像と、『クライシス・インパクト』の証拠として残された『ベリアルの写真』が表示された。
《・・・・やはり、ベリアルに似ていますね。ウルトラマンジードが地球に招いたのではないか? と言う意見まであるようです》
その報道を見て、市民の間に不安と恐怖が貌に現れていた。
ー鷹丸sideー
そしてここは〈AIB〉の基地にて、ゼナが捕縛したゴドラ星人の強制退去が執行されていた。
『お前達のくだらない計画は阻止された。残念だったな』
『ぬぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!』
ゴドラ星人が強制退去されたのを確認してから、月面に佇むキメラベロスの映像を見て、歯噛みをしている鷹丸達を見据えていた。
ー飛鳥sideー
基地に戻った飛鳥達と焔達と雪泉達と霧夜先生とゼロは、空中モニタに表示された、月面のキメラベロスの状態とニュースの映像、二つのモニタを見ていた。
《ーーーーやはりウルトラマンジードは、ベリアルの仲間ではないのかと言う見解が多いようです!》
「んな訳ねえだろうが! あの姉ちゃんの柳生ばりのおっぱい揉みしだいたろうか!?」
「キャスターに文句を言ってもしゃーなしじゃん?」
「未来。ネットでの反応は?」
「はっ、何にも知らない馬鹿共が、『私達の生活を脅かさないでよ!』だの、『ジードがベリアルを呼び寄せたんだ!』だの、『ウルトラマンジードはベリアルと手を組んで地球を侵略しようとしている!』だの、『ベリアルに吸収されたウルトラマンジードは、本当はベリアルの一部だった』なんて、くっだらない憶測を書き込みまくっているわ!」
葛城が映像のキャスターを指差し、四季が抑え、春花が問うと、パソコンを操作していた未来がネットの書き込みに毒づいていた。
そして、別の映像には、月面のキメラベロスをレムが解析していた。
『理巧は無事なのレム!?』
ペガが問うと、レムはキメラベロスの体内スキャンを表示し、キメラベロスのオレンジ色の体内の中心が青くなっていた。
『この青色の箇所がウルトラマンジードです。今はまだ大丈夫ですが、早く分離しなければ完全に融合し、理巧は二度と戻りません』
「そ、そんなぁ・・・・!」
「早く助けに行かないと、理巧くんが消えちゃうよぉ!」
「ーーーー行きたいが、宇宙船が無いのじゃ!」
雲雀と美野里がうっすらと目に涙を溜めて言い、同じ気持ちの夜桜が悔しそうに拳を叩き合わせる。
「斑鳩さん! 叢さん! こういう時こそ『鳳凰財閥』や『大狼財閥』の財力を使うべきですわよ!」
「無茶言わないで下さい! 今からロケットを買い取る事ができても、月に到着するのは四日以上かかるんですのよ!」
「ま、間に合わないですぅ〜・・・・!!」
詠が両手それぞれに斑鳩と叢の胸ぐらを掴んで盛大に揺すると、二人の豊満な胸がそれはもう盛大に揺れ暴れ、その拍子にお面が取れて涙目になってハワワとなる叢。
そう話していると基地のエレベーターから、善忍上層部と悪忍上層部に報告に向かっていた大道寺先輩と鈴音先生が、不機嫌極まりないと言わんばかりの雰囲気で入ってきた。
「大道寺先輩! 鈴音先生! 上層部は何と言っていましたか?」
雪泉が問うと、大道寺先輩はテーブルに置かれたペットボトルの水を一気飲みしてから、グシャッと握り潰した。
「見苦しい事この上なし!!」
ーーーーバゴンっ!
そして、握り潰したペットボトルを持った手でテーブルを殴ると、テーブルに大道寺先輩の拳の跡がクッキリと出来上がっていた。
「な、何が起こったんですか・・・・?」
飛鳥が聞くと、大道寺先輩を少し落ち着いたのか、ふ~っと息を盛大に吐き出してから、皆に説明した。
「ウルトラマンベリアル本人が現れて、漸く現実から目を逸らしていた上層部も、これで現実を認識するだろうと思ったのだが・・・・」
「・・・・やっている事は、責任転嫁のオンパレードだ」
「せ、責任転嫁のオンパレード?」
苦々しく貌をしかめている大道寺先輩に変わり、鈴音先生も同じく貌をしかめながら話し、雪泉が首を傾げると、大道寺先輩が説明した。
「『何故ウルトラマンベリアルが生きているのだ!?』、『死んだと断言していたのは貴様の方だろう!?』、『貴様だって同意していたではないか!?』、『宇宙人関連の問題は〈AIB〉の領分だっ!』、『〈AIB〉は何故このような事態になるのを未然に防げなかったのだっ!?』、『そうだ! 全て〈AIB〉の怠慢が招いた結果だっ!』、『そんな事よりも、ウルトラマンベリアルにどう対処するかだ!』、『対処法などあると思うのか!? ウルトラマンジードですら負けたのだぞ!?』、『また『クライシス・インパクト』のような事を起こされれば、今度こそ我々はおしまいだぁ!』、等と、ベリアルは復活なんてしていないと断言しておいて、全ての責任を〈AIB〉に押し付ける始末だ」
「・・・・まだウルトラマンゼロがいるだろう?」
柳生の言葉に、大道寺先輩は少し顔を伏せて、フルフルと首を横に振った。
「それも言ったが、『クライシス・インパクト』を止められなかった〈光の国〉のウルトラマン達に対する上層部の信頼は殆ど無いと言っても過言ではない」
だから、今回ゼロと同化している霧夜先生は基地に残っていたのだ。
「そうか。思い他、上層部は恐慌状態になっているようだな」
「半蔵様と一時退院なされた黒影様が出てこられて、歯止めをなされているが。それもいつまで保つか・・・・」
霧夜先生の言葉に大道寺先輩は盛大に溜め息を吐いた。
すると霧夜先生は次に鈴音先生のほうに目を向けた。
「凛。悪忍上層部の方はどうだ?」
「・・・・ほぼ善忍上層部と同じ。だけど・・・・『ウルトラマンベリアルに全面的に無条件降伏をするべきだ』と言う意見がでてきたわ」
「・・・・誰が言うたか、想像つくわな」
「・・・・道元か・・・・!」
大道寺先輩と同じ、盛大な溜め息を吐いてから言った『降伏』の意見を提唱した人間を日影が想像し、焔が吐き捨てるように言うと、鈴音先生はその通りと言わんばかりに頷いた。
ーーーー道元。かつて、半蔵学院と蛇女子学園の『超秘伝忍法帖』を手に入れ、伏井出ケイから貰った『怪獣カプセル』と『コピークリスタル』を用いて事件を起こした、元蛇女のオーナーである。現在は善忍側との抗争を起こした責任を取り、蛇女の運営から手を引き、上層部では肩身の狭い立場になっていた人物である。因みに、理巧に数々の弱みを握られ、隠し財産を全て奪われ、本来は『抜け忍』である焔達を『暁月理巧を籠絡させる』と言う忍務を与える事で、追っ手を無しにされていた。
「大方道元はこれを機にベリアルに降伏し、暁月理巧に握られた弱みの数々が通じないようにし、自分に屈辱の数々を与える要因となった焔達を始末しようと企んでいるのだろう」
「今まで理巧が焔達の側で目を光らせ、凛が『弱み』と言う『首輪』を握っていたから大人しくしていたが、ここぞとばかりに洒落臭い事を」
鈴音先生と霧夜先生が、道元の思惑を推測(かなり高い可能性)を言うと、その場にいる全員が顔を顰める。
「ーーーー降伏をした所で、ベリアルが見逃してくれると思っているのですか?」
「例え降伏を受け入れられても、待っているのは『使い捨て容器』のような、都合の良い道具として扱われるだけの隷従の道だ・・・・!」
「私もそう言ったが、やはり上層部の大半は『クライシス・インパクト』を経験しているせいか、ベリアルの恐怖に囚われて、生き残れるのならそれでも、と考えている奴らも多い」
雪泉と焔が、不甲斐ないと悪忍上層部吐き捨て、鈴音先生も苦言を言うと、「しかし」と付け加えた。
「突然、〈基立星十字学院〉の『ゾディアック星導会』が、悪忍上層部にストップをかけたのだ」
『〈基立星十字学院〉!? 『ゾディアック星導会』!?』
『ーーーーって、なにそれ?』
ペガが首を傾げると、春花が指を立てて説明した。
「私達蛇女と同じ、悪忍育成の学校よ。分かりやすく言うと、半蔵学院と月閃女学館のようなものね」
「つまり、悪忍のエリート校よ」
「ですが、なぜ星十字学院が・・・・?」
「それは分からないが、いつまで止めていられるか分からん。早く暁月を取り戻さなくては・・・・」
春花の説明に未来が加わり、詠が問うが鈴音先生は首を横に振り、改めてキメラベロスが表示されたモニタに目を向けると、他の皆も目を向けた。
「・・・・いずれにせよこのままでは、上層部が暴走するよりも先に、ベリアルが理巧を取り込まれてしまうな」
唯一キメラベロスの元に行ける霧夜先生が、拳をキツく握り締めながら呟いた。
ー理巧sideー
そしてここは地球から約384,400kmも離れた月面。
キメラベロスが悠然と佇んでいた。
『ハァァァァ・・・・!』
その内部、インナースペースでは、理巧とウルトラマンベリアルが、激しい雨の中で戦っていた。
「ーーーーはぁっ!!」
『フッ』
理巧が高速で縦横無尽に動きながら、ベリアルに攻撃を繰り出していくが、ベリアルは理巧の高速で繰り出される拳打と蹴撃を、その大きなカギ爪の手で払っていく。
「らぁっ!!」
『フンっ』
理巧の拳をベリアルが掴むと、語りかける。
『目を覚ませ・・・・息子よ・・・・!』
「黙れ! 僕の事を息子と呼ぶなっ!!」
理巧はその手を振り払って離れる。
『俺はお前の・・・・』
「うるさいっ!!」
理巧が再び拳を突き出すが、ベリアルはその拳を振り払い、ガラ空きになった腹部に拳を深くめり込ませた。
『フンっ!!』
「ぐはぁっ!!??」
『ーーーー父親だ』
「うっ・・・・うぅっ・・・・!」
流石に効いたのか、前に倒れそうになる理巧を、ベリアルは優しく抱き締めた。
『息子よ・・・・会いたかったぞ・・・・』
「くっ・・・・!」
ー霧夜先生sideー
徐々にキメラベロスの中にあるジードの反応が弱くなっていくのを、飛鳥達は黙って見ている事しか出来ず、悔しそうに拳を握り締めた。
と、その時ーーーー基地のエレベーターから、鷹丸達がやって来た。すると、霧夜先生はゼロと交代した。
「(デュォォンッ!) 鷹丸。“偉そうな声が聞こえる”って話だったが?」
「あぁ。威厳のある声が、ベリアルの接近を予言した。六年前、融合獣を追い払う時も聞こえた・・・・『キミの愛する家族を守りなさい』って、声に似ていたな」
それを聞いて、ゼロは一瞬思考すると、確信を込めて話し出した。
「その声は恐らくーーーーーーーー『ウルトラマンキング』だ」
「っ! ウルトラマンキング!? まさかあの!?」
「あの、誰なんですか?」
鷹丸達大人組が目を見開き、ペガや飛鳥達が首を傾げると、ゼロは説明した。
「十数年前の『クライシス・インパクト』の崩壊から、この宇宙を護ってくれた爺さんだ。彼は、粉々になったお前達の宇宙を自らの身体を粒子状に分解し、まるで接着剤のようにくっつけて、今もズタズタになったお前達の宇宙の傷を癒しているんだ」
「そんな凄い力を持ったウルトラマンなら、理巧をキメラベロスから分離できるかも知れないな」
「可能性は、0じゃないが・・・・」
スバルの提案に、ゼロは難しい顔で頷くと、ナリカが話しかけた。
「鷹丸! すぐにウルトラマンキングに相談してみよう!」
が、鷹丸は首を横に振った。
「難しいかも知れない。声が聞こえても、すぐに途切れるからな・・・・」
「・・・・キングの爺さんのエネルギーが濃く残っている場所は知っている。そこに行けば、交信できるかも知れないな」
「っ! ゼロさん、そこはどこですか!?」
「・・・・『クライシス・インパクト』の始まりの場所ーーーー爆心地だ」
それを聞くと、鷹丸達は基地を出て車に乗り込むが、飛鳥達も焔達も雪泉達も、付いていった。
そしてーーーーいつの間にか尾行していた雅緋達も・・・・。
ー理巧sideー
理巧は、見覚えのある施設、否、“記憶の奥底にあった施設”を目の当たりにした。
「っ!」
大きな培養槽が並列に並べられた、何処かの研究施設のような空間。
ーーーーあぁ~ん! あぁ~ん! あぁ~ん!・・・・
と、ソコで、一つの培養槽から一人の赤ん坊の泣き声が聞こえた気がした。
そして理巧は直感する、この施設がーーーー“自分が創り出された場所である”、と。
そこから蘇ってくる記憶は、地獄としたか言いようが無かった。当時から自分達は、『あらゆる環境に適合する身体作り』、『死と隣合わせの戦闘訓練』、『毒やウィルスに対する免疫力』、『ダメージや電圧に対応できる耐久力』、ありとあらゆる訓練を物心つく前から叩き込まれ、感情を、心を完全に失うような日々であった。
『ーーーー辛かっただろう。苦しかっただろう。孤独だっただろう』
「・・・・・・・・」
脳裏に過る記憶の数々で、呆然自失となる理巧が顔を上げると、施設の天井がめくれ上がり、鮮血のように真っ赤な空と、ウルトラマンベリアルが顔を出した。
『戻ってこい、父の所へ。俺はお前を一人にはしない・・・・ 』
「・・・・僕を、受け入れてくれるの・・・・?」
『勿論だ。俺達は『家族』じゃないか。地球人も、お前を完全には受け入れていない、いずれお前はーーーー奴らから爪弾きにされるだろう。地球人は自分達よりも優れた存在を、自分達の理解を超えた存在を『畏怖』し、『恐怖』し、『拒絶』し、『異端』とし、『異物』とし、『存在してはならないもの』とする、愚かで臆病で脆弱な者達ばかりだ。その醜悪な姿を、お前はかつて嫌という程見てきた筈だ。お前は賢い。それは人間のほんの一面にすぎないだの、気の迷いだの、魔が差しただけだのと、綺麗事を並べて見て見ぬふりをする愚か者ではない』
ベリアルの言葉に、理巧は否定できなかった。
「・・・・・・・・でも、心を失った僕に心を呼び起こさせ、育ててくれたのもまたーーーー地球人だ」
『だが、心の奥底では分かっていた筈だ。自分は地球人とは違うと。そして求めていた筈だ、『本当の家族』を!』
さらなるベリアルの言葉を、理巧は否定でき無かった。確かに、自分は何処か皆と違うと言う、疎外感のようなものを、理巧は感じていたのだ。
『さぁーーーー身を委ね、楽になれ』
ーーーードクンっ・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
理巧は強烈な睡魔に襲われ、目を閉じて倒れそうになった。
が、その身体を、ベリアルが優しく受け止めた。
『フフフフフフフフ・・・・』
ベリアルが不気味に笑うと、周囲の空間が変わり、無数の触手のような物に絡みつかれた、ウルトラマンジードの姿があった。
『「あっ・・・・あぁっ・・・・」』
ジードの目が徐々に赤く染まっていく。
ーゼロsideー
月面に鎮座するキメラベロスを見ていた霧夜先生(inゼロ)は、ジードの反応が徐々に消えていってるのが見て取れた。
『理巧が、減っていくよぉ・・・・!』
「二十時間経過・・・・さて、行くとするか!」
『何処に行くの!?』
ペガに向かって、霧夜先生(inゼロ)がニヤリと笑みを浮かべて、ウルトラゼロアイNEOを取り出した。
「決まってるだろ?ーーーー月だ! ヘァッ!!」
ウルトラゼロアイNEOを付けた霧夜先生(inゼロ)が、ウルトラマンゼロビヨンドへと変身した。
ーベリアルsideー
『ーーーーあ?』
キメラベロスが宙を見上げると、ゼロビヨンドが降り立ってきた。
『来たか、ウルトラマンゼロ・・・・!』
『ふっ。待たせたな。何度も生き返りやがって!』
『お前との戦いは血が滾る!』
『ーーーー行くぞ!』
月面にて、不倶戴天の宿敵である二人のウルトラマンがぶつかり合う。
『ハァ!』
『グゥ! カァ!』
ゼロビヨンドが蹴りをぶつけると、キメラベロスは一瞬怯むが、そのカギ爪を振るうが、ゼロビヨンドがそれを受け止め、拳をキメラベロスの胸に叩き込む。
『フッ!』
『フン! グァー!』
その拳を叩き落としたキメラベロスが、カギ爪を振り上げ、ゼロビヨンドの身体を引っ掻く。
『ウォッ!?』
ゼロビヨンドはその威力に吹き飛び、月面の岩山に背中からぶつかる。
『っ・・・・力が、増した・・・・!?』
先日よりも力の増しているキメラベロスに、ゼロビヨンドは戦慄した。
そして、ゼロビヨンドは気づいていない。
ーーーーキメラベロスの姿が、瞳を真っ赤にしたウルトラマンジードに変わっている事に。
次回、ジードを救う為、家族と仲間達が大奮闘!