閃乱ジード   作:BREAKERZ

96 / 107
ペガを取り戻す為に、理巧は因縁の地へ向かう。







注意:今回の話は、かなり不快な思いをするかも知れないので、見たくない人は回れ右をお勧めします


明かされる過去

ー霧夜先生sideー

 

「ーーーーペガくんが誘拐されたのは、本当か!?」

 

教師の仕事を粗方終えた霧夜先生が、基地に駆け込んできた。

そして基地では、鎖で簀巻きにされた理巧がソファに座らされていた。

 

「・・・・理巧。何でお前は鎖で簀巻きにされているんだ?」

 

「ペガの元に行こうとしたら、あーちゃん達に全員で縛り上げられたの」

 

「当然です」

 

「これは明らかにお前を誘き出そうとしてんだろ?」

 

「指定された場所は都内にある中学校です」

 

憮然として答える理巧に、斑鳩と葛城がそう言って、夜桜が手紙とそれに同封された捕らわれたペガの写真と、地図を手渡した。

 

「・・・・・・・・ん? この中学校は・・・・」

 

《霧夜。何か思い当たるのか?》

 

「少し待ってくれ、記憶を探る・・・・」

 

そう言って、霧夜先生は額を指でトントンと叩きながら記憶を思い返していた。と、次の瞬間、ハッとなった霧夜先生の指が止まり、改めて地図を見ると目を見開いた。

 

「ここは・・・・そうなのか、理巧・・・・!?」

 

「うん・・・・どうやらあそこみたい」

 

「あの、霧夜先生、この中学校って・・・・?」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・(コクン)」

 

二人のやり取りから、飛鳥の問いかけに、霧夜先生は理巧に目配せをすると、理巧も、簀巻きにされた身体を起こし、力を込めると、身体を拘束していた鎖を引き千切った。

ギョッと目を見開く飛鳥達に構わず、霧夜先生に向けて首を前に小さく倒したのを見て、霧夜先生は口を開いた。

 

「ここは理巧が・・・・中学時代に通っていた母校だ」

 

そうそこは、飛鳥達も話だけでしか聞いた事が無いが。理巧が・・・・イジメを受けていた場所であった。

 

「えっ?・・・・理巧がイジメを受けていた中学?」

 

「ああそうだ。一年の春から二年の秋まで、理巧は学校全体からイジメを受けていたんだ。特に、主犯は6人の男女からな。・・・・理巧。実はお前に、伝えていない事があるんだ」

 

「ん・・・・?」

 

「あの、ペダニウムゼットンとの戦いのおり、破壊されて吹き飛んだ瓦礫によって、『少年刑務所』の壁が破壊され、囚人達が逃げ出した。もう既に大半が捕まったんだが、その中に・・・・彼らがいた。しかも、『女子刑務所』からも、彼女達の脱獄も手引きしたようだ」

 

「・・・・そう」

 

理巧がそう短く応え、どういう事なのかと問おうとする飛鳥達だが、ペガの救出に向かった焔達と雅緋達、雪泉達が戻ってきた。

ーーーーしかし、ペガいなかった。

 

「おいペガはどうした?」

 

「・・・・妙な事が起こったのよ」

 

「妙な事?」

 

「なんかね。指定された学校に入ろうとすると、私達、お互いの姿がーーーー“『妖魔』に見えちゃうのよ”」

 

『えっ?』

 

柳生の問いに、春花がそう答えると、レムが解説した。

 

《どうやら学校周辺に、『幻覚作用を及ぼすフィールド』が展開されていると思われます》

 

「『忍結界』のようなものですか?」

 

「どうやら、理巧以外はお呼びではない、と言う事か」

 

斑鳩が理巧宛の手紙に、『暁月理巧だけで来い』と書かれた文に目やって、霧夜先生がそう言うと、理巧は道具箱から色々と使える武器を袖口や懐に装備し出した。

 

「行くの?」

 

「・・・・ペガを連れ戻したかったら、僕一人で来いって事でしょう。ご指名されたなら、行くしかないよ」

 

そう言って、理巧は全員に色々と指示を出した。

 

 

 

 

 

 

 

ー理巧sideー

 

理巧は、指定されたかつて通っていた中学校に到着した。かつては都内でも有数の名門の進学校と呼ばれた学校だったが、数年前の理巧に対する悪質なイジメが全国規模でネット配信された事により評判は地に落ち、年々入学者が減り、廃校寸前にまで追い詰められてしまった学校である。

しかし、理巧は感慨や懐かしさなど欠片も感じていない。ただここにまた来る事になって、少し陰鬱な気分になる。

 

「・・・・・・・・」

 

《りっくん。大丈夫?》

 

装填ナックルから、飛鳥の声が響いてくる。

理巧が少し周りを見ると、校舎の近くの建物の屋上、路地裏、物影から、飛鳥達や焔達、雪泉達に雅緋達がそれぞれ配置についていた。

 

「・・・・大丈夫だよ。家出したペガを迎えに行くだけなんだから、僕一人で迎えに行った方が色々と話しやすいだろうし」

 

《ですが、相手はペガを人質に理巧を呼び寄せたのですが?》

 

《何か罠を仕掛けているだけだな》

 

「でも、ペガがいるんだ」

 

雅緋と焔がそう言うが、理巧はペガを助ける為に、手紙に同封されていた指示書を見てから、学校の敷地内に入った。

その瞬間、学校の中がーーーー『異質な空間』になったのを感じた。

『忍結界』に確かに似ているが、明らかに別物の空気がソコに充満していた。

 

「・・・・通信はできない、か」

 

装填ナックルで連絡を取ろうとするが、まるで応答がない。ここで待って皆も来るのを待つ方が利口かもしれないが、相手が痺れを切らしてペガに危害を加える可能性の方が十二分にある。仕方なく理巧は校舎の中に入る。

そして、かつて自分が使っていた下駄箱の扉の指定された場所に目をやると、

 

『死ね!』 『消えろ!』 『クソ』 『ゴミ箱(笑)』 『この世のクズ』

 

等と、汚い言葉を油性ペンで描かれ、扉を開けると『これ履いて教室にこい』、とメモが置かれた、ゴミが入った上履きが置かれていた。

 

「・・・・・・・・」

 

中学時代の思い出の一端が蘇り、理巧は小さくため息を吐いてから、上履きのゴミを近くのゴミ箱に捨ててから、サイズが少し小さい上履きのかかとを潰して履くと、校舎の中を歩いていった。

そして到着したのは、かつての自分の教室であった。扉を開けて、自分の席だった場所に行く。もう数年も経っているのに、理巧は不快感が湧き上がってくる。その席の机にはまた油性ペンで落書きがされ、机の中にはゴミがねじ込まれていた。

 

「ーーーーどうだ暁月? 懐かしいだろう?」

 

と、教壇の辺りから声が聞こえて顔を上げて目を向けると、教壇の上に小太りで腕の太い男子がニンマリとした笑顔に獰猛な光を宿した瞳をして座り、その左右には整った顔にニヤリとした笑みをしたチャラ男風の男子と、坊主頭に猿顔の男子がニヤニヤと笑みを浮かべていた。その二人も、教壇に座る男と同じ、獰猛な目つきをしていた。

 

「・・・・・・・・『猪本』。『狐坂』。『猿岡』。ここに君達だけって事は、『烏海さん』と『小森さん』、君達のリーダーである『虎山』は、別の所にいるのか?」

 

気配探知を広げようとしているが、この『異様な空間』が何かあるのか、気配探知が上手くできないでいた。

そんな理巧に、猪本は教壇から降りて、狐坂と猿岡を引き連れながら、周りの席を蹴っ飛ばしながら理巧に近づくと、顔を近づけて睨みつける。

 

「なぁに俺らに対して偉そうな態度取ってんだよ? このゴミがっ!!」

 

ーーーーバキッ!

 

猪本が理巧の横顔を殴ると、理巧は他の席を巻き込んで盛大に倒れる。

 

「おい! 狐坂! 猿岡! コイツ抑えつけておけ!」

 

「「ああ」」

 

狐坂が倒れた理巧の両腕を掴んで万歳させるように抑えつけ、猿岡が理巧の両足を掴んで抑えつけると、猪本が理巧の腹に座り込んだ。

 

「へへへへ、暁月ぃ? 知ってるか? 人間って生き物はマウントを取られるとーーーー無抵抗で殴られるってな!!」

 

ーーーーバキッ!

 

理巧が動けないのをいい事に、猪本は両手にメリケンサックを付けると、理巧の顔面に向けてその拳を振り降ろした。

 

 

 

 

 

 

 

ー霧夜sideー

 

「りっくん! りっくん!!」

 

「くそっ! どうなってんだ!?」

 

「学校に入ろうにも、何かの結界が展開されて入れません!」

 

「『忍結界』とは違う? 何かの機械によるものか?」

 

外にいた飛鳥と焔と雪泉が、学校の敷地内に入ろうとするが、見えない壁に阻まれて入れずにいた。雅緋は冷静に結界を分析し、他の皆も各々で入ろうとしたり、調べたりしている。さっさと転身してぶっ壊してやりたいが、この学校は都心のど真ん中、当然周りには人の目や街灯カメラが置かれ、派手な立ち回りはできない。

そんな中、ゼロが霧夜先生の口を使って声を発する。

 

「(デュォォン!) 霧夜。今回の相手、お前心当たりがあるんだろう? もう皆に教えても良いんじゃないか?」

 

『っ』

 

そう。ここまで理巧にペガを誘拐した犯人達に心当たりがあるような素振りを見せていたが、聞くに聞けない雰囲気だったので、皆聞かずにいたのだが、ここまで来たのならもういい加減に教えるべきだとゼロは言った。

すると、霧夜先生は観念したように声を発する。

 

「・・・・良いだろう。理巧からも、教えておいて良いと言われているしな。今回、ペガくんを誘拐したのは、中学時代、理巧をイジメていた主犯の六人だ」

 

『えぇっ!?』

 

霧夜先生の言葉に飛鳥達が、イジメにトラウマがある未来は特に反応した。

 

「中学時代。理巧は綺麗な赤い髪と赤い瞳をしていてな。それが原因でイジメを受けていたんだ。周りの奴らは理巧を、『髪を染めてカラコンを付けた目立ちたがり屋』。『気持ち悪い髪と目をした不気味なヤツ』、と。理巧の事を冷遇していたようだ」

 

「はぁ? 髪の色と目の色が気に入らないだぁ? そんならアタイや柳生や雲雀だってイジメの対象になるだろうなぁ?」

 

葛城が、髪や目の色なんかで人をイジメるならば、金髪碧眼の自分や、銀髪赤目&眼帯の柳生、ピンクの髪に花の形の瞳孔をした雲雀を見て吐き捨てるように言うと、柳生と雲雀も同意するようにうんうんと頷いた。

同じく、髪の色や瞳の色が日本人離れした面々も頷く。

 

「先生とかは、なんにもしてくれなかったんですか・・・・?」

 

飛鳥がそう聞くと、霧夜先生は顔を不快そうに歪めながら、フルフルと顔を横に振った。

 

「教師達は理巧の事を放っておいた。面倒事を避けたかったのか、理巧に対して、『お前が髪を染めてカラーコンタクトをしているからそうなるんだ』って言って、見て見ぬふりをしていたそうだ。いくら自前だって言っても頭ごなしに嘘だと決めつけて、悪いのは全部理巧にしてきたんだ」

 

「ふんっ。教師がそんなんじゃ、この学校もたかが知れるってもんだな」

 

焔は学校の校門に設られた名前を睨みながら吐き捨てるように言った。悪忍ではあるが、根は真面目で責任感のある性格をし、なおかつ『初恋の人』であった先生に裏切られた過去を持つが故に、そんな教師達が許せないのであった。

 

「ーーーーいや、恐らく髪と目はきっかけに過ぎないだろう」

 

「どういう事ですか?」

 

斑鳩の質問に、霧夜先生は一呼吸置いてから話し出す。

 

「理巧は意外に勉強の成績は上の中。運動神経は皆の知っての通り。顔立ちもスタイルも絶世の美少年と言っても良いくらいだ。ーーーーそれ故に、イジメのターゲットにされてしまったんだ」

 

「えっ? 理巧くんがそんなに凄いなら、逆に好かれそうじゃないかな?」

 

「・・・・いや、だからこそでしょうね」

 

美野里がどうして?と、小首を傾げて言うと、未来はボソッと呟いた。

 

「あたしはね。この通り身体は小さいし、そんなに強くなかったからさ、そう言う弱い子や貧しい子って自分の方が強くて優れているって主張したい自己顕示欲の強い馬鹿な奴等のターゲットにされるのよ。でも逆に、理巧のように優れた容姿や能力を持った子や、お金持ちな裕福な子も、『自分達を見下して、調子に乗っている悪い奴らだ』、って周りが勝手に決めつけてターゲットされるのよ」

 

「弱くて貧しい相手はイジメのターゲットにする。優れて裕福な相手でもイジメのターゲットにする。しかも、イジメを受けている人間を庇うどころか、見て見ぬふりや一緒になって嘲笑う・・・・。何なんでしょうね・・・・」

 

「大半の人間って言うのは、横一列が大好きなのよ。自分達の列を乱しかねない存在は嫌悪し、排除したがるものなのよ。馬鹿共はそう思っているんじゃないかしら?」

 

未来の言葉に、詠がイジメの加害者達やそれを見ているだけの傍観者達の心理がまるで理解できないと言わんばかりに言うと、春花がある程度の考察を述べていく。

 

「次第にイジメはエスカレートしていき、校舎裏や体育倉庫だけでなく、廊下や教室で堂々と殴られたり踏みつけられたり、馬鹿にされたり嘲笑われたりしていた。他の生徒達は無視しているか、一緒に笑っていたり、中には笑いながらスマホで写真を撮っていたりしていたようだ。教師達は『お前ら仲いいなぁ〜』と、同じ教職にある身としては、反吐が出るような事をしていたようだ」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

霧夜先生の話を聞いて、飛鳥達と焔達、雪泉達と雅緋達、ゼロですら、言いようの無い嫌な気持ちが湧き上がってくる。

 

「・・・・しかし、理巧様は無抵抗だったのか? あの『伝説の閃忍』である御三方の師事を、当時から受けていたと聞いたが?」

 

「確かに当時から理巧は既に、斑鳩や葛城、焔に咏に日影、雪泉に叢に夜桜、雅緋達くらいの実力を持っていた。その気になれば、ド素人共なんて相手にならなかった」

 

「中学からそんなに強かったのあいつは・・・・」

 

思わず両備が呟いた。

 

「だが、そんな事をすれば、当時はAIBに入ってまだ日が浅く、忙しかった鷹丸達に迷惑や心配をかけてしまう。それをしたくなかった理巧は鷹丸達にも黙っていたんだ。知っていたらあいつらの事だ、生徒達や教員達はただでは済ませなかっただろうな」

 

雅緋の問いに、霧夜先生はやれやれと肩を落としてそう言った。

 

「しかし、二年の秋頃だったか、理巧のそんな現状を覆す出会いがあった。それがーーーーペガくんだ」

 

『えっ? ペガ(くん)??』

 

「理巧から聞いたんだが、故郷を離れて旅をしていたペガくんは、宇宙船が隕石にぶつかり故障し、この地球に流れ着いた。宇宙船はもう修復不可能になり、野良犬のような生活をしていたペガくんを理巧が一緒に住む事にしたようだ。一人ぼっちのペガくんが、鷹丸達に拾われる前の自分と重なったんだろう。それからだ。すぐに地球のパソコンとかを使いこなせるようになったペガくんは、理巧が虐められている現場を逐一撮影し、それを全国に生でネット配信をした」

 

「ーーーーあっ! 思い出しましたわ! 少し昔に、一人の男子生徒をクラス全員がイジメていた事がネット配信され、ちょっとした騒ぎになった事がありましたわね!」

 

「ああ! あったあった! うちも知ってる! そっか、その男子生徒って理巧っちの事だったんだ!」

 

「確かその後、教育委員会から、その学校の教員達は解雇処分。主犯の生徒達も退学処分をされたな」

 

「他の奴等はお咎め無しなのか?」

 

斑鳩と四季が思い出したように声を上げ、叢と夜桜が続けた。

 

「他の生徒達は、『イジメをしていたのは六人で、自分達は無関係です!』って言って厳重注意で済まされた」

 

「ふんっ! 理巧がイジメられている時は遊び感覚で笑っていた癖に、自分達が悪者扱いされると思ってなすりつけたのね」

 

「ヒドイ・・・・」

 

「自分達のやった事を棚に上げて被害者面か。名門の進学校の生徒にしては、頭の出来は小学生以下だったようだな」

 

未来の吐き捨てるような言葉に、雲雀が涙目になり、柳生が不快感を隠そうとせず言った。

 

「それから理巧は一度学校に戻ったようだが、クラスメイト達は理巧にゴマをすって、『俺達はアイツらが怖かったから仕方なくなんだよぉ』、『私達も本当は辛かったんだよぉ』、『俺達は悪くないんだ、悪いのは主犯のアイツらなんだ許してくれよぉ』、と媚びへつらいながら言ってな。そしてすぐに理巧は、『お前達なんかと一緒の空気を吸ってたら、肺と心が腐る』って言って、二度と学校に通わなくなったんだ」

 

散々主犯達と共謀してきた癖に、自分達が不利になると手の平を返す。確かに同じ空間にいて、同じ空気を吸うのも吐き気がするのも当然だと、ほぼ全員が思った。

 

「しかし、それではいけないと思った鷹丸達が、俺を臨時の家庭教師として雇い、俺は理巧と面識を持ったんだ」

 

「そっか。それで霧夜先生、りっくんをイジメていた主犯の六人って、どうして刑務所に・・・・?」

 

「その六人、小学生の頃、空手の全国大会で優勝した経験を持つ猪本。顔が良く、口も回る銀行の頭取の息子の狐坂。芸能人の母親を持ち子役として成功していた女子、烏海。ソイツらにゴマをすって腰巾着のポジションだった男女、猿岡と小森。最後に、大物資産家の孫であり、主犯達のリーダーであった虎山の六人は親からも勘当を受けて、家を追い出されてしまったんだ。そして奴らは仕返しなのかーーーー理巧を拉致しようとしたんだ」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・は??』

 

その場にいた霧夜先生意外の全員が、『なんて命知らずな真似をしたんだ』、と言いたげに、半眼で呆れ果てた顔を晒してしまった。

 

 

 

 

 

ー理巧sideー

 

「おらっ! おらっ! おらぁっ!!」

 

「っ・・・・っ・・・・っ・・・・」

 

理巧に馬乗りした猪本は、一頻りに理巧の顔面を殴ると、一端息を整えようと、殴るのをやめた。

 

「ふぅ、ふぅ、ふぅ・・・・はは、はははは!! 痛えかあぁ暁月!? 怖えかぁ!? まだ気絶すんじゃねぇぞ! まだまだお前は殴り足りねぇし! 狐坂と猿岡をお前を殴りたいんだ! その後、烏海と小森がいる理科実験室に連れて行って、最後は虎山がお前を可愛がってくれるんだ!! 気絶してもすぐに起こしてやるよ!!」

 

「・・・・・・・・」

 

しかし、理巧のその目には、少しの恐怖もなく、涼しい顔で猪本を見据えていた。

 

「〜〜〜〜!! テメェのそのスカした面が一番気に食わないんだよっ!!」

 

ーーーーバキッ!!

 

今度は鼻を潰さんばかりに理巧の顔面にメリケンサック付きの拳を叩きつけた。

しかし、マトモに受けた理巧は、それでも毅然とした態度で、自分を拘束している三人に話し出した。

 

「僕が気に入らないって、ただそんな理由でこんな事をしているのか? あの時も」

 

「はぁ? 理由なんてそれだけなんだよ! お前みたいな抵抗をする根性の無いゴミは、俺達のサンドバッグがお似合いなんだよ!」

 

「お前ってその見た目だから注目されてたよなぁ? ただの一般家庭の庶民が、調子に乗り過ぎなんだよ」

 

「俺達みたいな、“善良な人間”が、何で少年刑務所‹ムショ›なんかにぶち込まれて、お前は高校であんなエロい女の子達に囲まれてハーレム生活だぁ? こんな理不尽あるかよっ!!」

 

三人の自分達は無実だと言わんばかりの態度に、理巧は内心疲れながら言葉を紡ぐ。

 

「あのね。君達がやったのは学校の備品に落書きなんかをする器物損壊罪の他に、暴行罪と傷害罪、脅迫罪、侮辱罪と名誉毀損罪に当たる犯罪行為なんだ(バキッ!)」

 

理巧の言葉を、猪本が拳で黙らせた。

 

「うるせぇ! テメェみてぇなゴミが! 人間様の法律持ち込んでじゃねぇよ! 中学の時も言ったよなぁ? 【お前は俺らの『おもちゃ』なんだよ、『おもちゃ』は『おもちゃ』らしく、俺らに遊ばれてな】ってよぉ! 『おもちゃ』の分際で、人間様に逆らいやがって!!」

 

「しかも、あんな『気持ち悪い宇宙人』なんかを味方にしやがって、俺達を破滅させやがってよ! 償わせてやるぜ! お前の身体でな!!」

 

「女達の方は心配すんな、俺らが可愛がってやるよ! 俺の好みは黒髪のポニーテール(飛鳥)と金髪のお嬢様(詠)と灰色髪の姉ちゃん(雪泉)だな!」

 

「あっ、それなら俺は鳳凰財閥のご令嬢(斑鳩)と大狼財閥のご令嬢(叢)と、後は背と胸のデカい姉ちゃん(春花)だな! コイツのせいで刑務所‹ムショ›に入らなかったら、俺があのご令嬢の二人のどちらかを手に入れたんだからな!!」

 

「それなら俺は、あのピンク髪(雲雀)と黒髪のロリ(未来)と紫髪で一番の爆乳女(紫)だな! たっぷりと可愛がってやるぜ!!」

 

猿岡が厭らしく顔をニヤけさせなながら、口から涎を垂らして言うと、狐坂と猪本が各々好き勝手をほざく。

そして、理巧が小さくため息を吐いてから静かに呟く。

 

「・・・・十八発、か・・・・」

 

「あ?」

 

「猪本。お前に今殴られた回数だよ。もう少し話を聞いて、ペガの居場所でも聞いたらにしようと思ったけど・・・・この『くだらない茶番』に、もう付き合うのもいい加減面倒臭くなったからな」

 

「はは、ははははははははははははははは!!! なぁに言ってんだよこのブゥワァカッ!! お前はなぁ・・・・一生俺らの足元で、惨めに這いつくばってるのがお似合いなんだよっ!!」

 

ーーーーバキッッ!!

 

猪本は、十八発もメリケンサック付きの拳で殴っているのに、“全くの無傷の理巧の顔”に向かって、拳を思いっきり振り下ろした。

 

ーーーーグシャッ・・・・!

 

そして・・・・肉と骨の砕ける音が、四人しかいない教室に響いた。




さて、どうなる次回?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。