閃乱ジード   作:BREAKERZ

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さて、今回で中学時代の過去と決着です。


撃破する過去

ー理巧sideー

 

ーーーーグシャッ・・・・!

 

「「「(ニヤリ)」」」

 

猪本、狐坂、猿岡の三人は、理巧の顔面が潰れたと確信したのか、笑みを浮かべる。ポタッ、ポタッ、と血が流れ、床に落ちる音がした。

が、しかしーーーー。

 

「・・・・ぁ・・・・」

 

笑みを浮かべていた筈の猪本が声を震わせると、狐坂と猿岡め眉根を寄せて猪本を見ると、その顔は徐々に青ざめ、目には薄っすらと涙を浮かべると。

 

「ああぁぁああああああああ!! 手がぁ! 俺の手がぁぁ!!」

 

理巧の顔面・・・・嫌、よく見ると額にぶつかっていた。理巧はあの一瞬で、猪本のメリケン付きの拳に応戦しようと、頭突きを繰り出したのだ。

理巧から離れさせた手を見ると、メリケンサックを付けた四本の指が全て折れ曲がり、骨まで少し出て、血を滴らせていた。

 

「「猪本!?」」

 

「いい加減汚い手で、ベタベタ触ってんじゃーーーーないよ!」

 

「「うわーーーーぐべっ!?」」

 

驚いた二人に構わず、理巧は抑えつけられた両腕と両足を動かし、二人を持ち上げて浮かし、顔面から正面衝突させた。

そして、抑えつけられていた手が緩んだ一瞬で、身体を脱出させると、痛みで悶える猪本の上に、狐坂と猿岡が重なるように落ちた。

 

「「「ぎゃあっ!?」」」

 

床に這いつくばって手を押さえる猪本。顔を抑えて蹲る狐坂と猿岡。無様にヒイヒイと泣く三人を理巧は見下ろし、三人は理巧を見上げた。

 

「ーーーーおい」

 

「「「!!!???」」」

 

静かに声が発せられたその瞬間、三人は心臓が直に握られたかのように固まる。目の前にいるのが、あの大人しく殴られていたゴミではなく、巨大な猛獣に見えたのだ。

 

「ペガは、お前らが僕を呼び出すのに人質にした宇宙人は何処にやった?」

 

「て、テメェ・・・・調子に乗ってんじゃねぇぞゴミ野郎が!!」

 

猪本が再び理巧が殴る。理巧は無防備にその拳を受けるが。

 

「・・・・・・・・で? これでさっき返した一発分が戻っただけだね」

 

全くダメージを受けている様子が無かった。猪本が顔を青ざめ、後ろにいた孤坂と猿岡も理由が分からないと言いたげの顔だった。

 

「ど、どうなってんだよ? お、俺の剛力の鉄拳が・・・・?」

 

「はっ。こんなのが『剛力』? 『鉄拳』?? 本物の『剛力』って言うのは受けた瞬間、身体全体が粉々に粉砕される衝撃と迫力がある。本物の『鉄拳』は肉を潰し骨を断つ。お前のはただ力任せに振り回しているだけ。これなら蚊に刺された程度のダメージしかないな。ま、中学の頃から、お前のパンチなんてあんまり痛くなかったけど(と言うか、雲雀ちゃんや夜桜のパンチの方が強烈だし)」

 

そう。理巧は知っている。歴史からその名が刻まれなかった『本物達』を。更に言えば日頃は徒手空拳の忍達の模擬戦で受けているのもあるが。

 

「さてーーーーと。くだらない茶番はもう良いだろう。さっさとペガが何処なのか、話してくれないか?」

 

理巧がひどく冷静に問いかけてくる。

しかし、猪本は激痛と怒りで顔を真っ赤に染めると、メリケンを付けたもう片方の腕を上げた。

 

「こ、このゴミがっ!!」

 

ーーーーグシャッ!!

 

「ぎゃあああああああああああ!!」

 

そして今度は、理巧がその拳をまたも頭突きで返すと、もう片方の手も潰れた。

 

「クソっ! クソクソクソクソっ!! どうなってんだよ!?」

 

「選択させてやるよ猪本」

 

「あぁ!?」

 

「このままペガの居場所を教えれば見逃す。教えないなら、連帯責任で全員に、“十八発殴り返させて貰う”」

 

「〜〜〜〜!!」

 

猪本は顔を歪めると、歯をガチガチ鳴らしながら、理巧を殺意に満ちた目で睨む。

 

「おい! 孤坂! 猿岡! 何してやがる! テメェらもやりやがれ!!」

 

「「!!」」

 

暴力担当だった猪本が両手を潰され、震えていた二人が懐から、『拳銃』を取り出そうとするが、理巧は片足で教室の椅子を蹴り上げると、二人に向かってサッカーボールのように蹴り飛ばす。

 

「「ぎゃぁっ!」」

 

飛んできた椅子が拳銃に当たると、二人は手放し、拳銃は教室の何処かに飛んでしまった。

 

「さて、と。ここからーーーー『暴力』で行こうか? 全員、殴られてから聞くって事で良い?」

 

「ふ、ふざける(グシャ!)ごぷっ!?」

 

猪本が怒鳴りながら蹴りを繰り出そうとするが、ソレよりも早く、理巧の拳が猪本の顔面が刺し、比喩無しで凹んでしまった。

そして拳の引き抜くと、猪本の顔面は潰れ、鼻や折れてしまい、歯まで折れて口を切ったのか血がドクドクと流れ、血まみれになってしまっていた。

 

「あ、あぁぁぁぁぁぁ!!」

 

鼻が潰れ、歯も折れて血が流れるのを見て、猪本は顔面が潰れた激痛から悲鳴を上げる。

 

「あと十七発」

 

「て、テメェ!!」

 

猪本が折れた拳で理巧を殴ろうとする。

が、理巧はその拳を首を傾けて回避してから、カウンターで猪本が右側の頰に拳を叩き付ける。

 

「あぼぅっ!?」

 

今度は左の頬骨が折れ、歯を数本吐き出した。

 

「あと十六発」

 

「こ、こんらの、う、うほだ・・・・! おえが、おふぁえのひょうなふぉみひぃぃぃぃ!!(こ、こんなの嘘だ・・・・! 俺が、お前のようなゴミにぃぃぃぃ・・・・!)」

 

懲りずにもう片方の折れた手で殴りにいくが、ソレよりも早く、理巧拳が右の頰を殴り、右の頬骨と歯を折った。

 

「がぼぅっ!?」

 

「あと十五発」

 

「ぁぁ、ああ!」

 

後ろに後退る猪本の顔面は、最早原形が無くなった程に酷い有り様であった。

 

「ひゃ、ひゃめれ、ろう、ひゅるひふぇ・・・・!(や、やめて、もう、ゆるして・・・・!)」

 

顔面を潰され、猪本は戦意を失った。しかし、理巧は冷酷に言う。

 

「いるよねぇ。自分が殴っている時は傲慢な態度を取るけど、殴られると途端に弱気になる奴。僕が『やめて』って言って、君達はやめてくれた?」

 

「「「っ!!」」」

 

それを言われ、猪本だけでなく、後ろで足が竦んでしまった孤坂と猿岡もビクッと震えてしまった。

 

「これで、十四発」

 

そう言って、理巧は猪本の顎を殴ると、猪本の顎は完全に砕け、宙を二〜三回程回転してから、白目を剥いて仰向けに倒れた。ヒュ〜、ヒュ〜、と完全に虫の息だが、一応は生きていた。

 

「い、猪本・・・・?」

 

「あわ、あわわわわ!!」

 

孤坂と猿岡が、ガタガタと震えるが、足が完全に竦んでしまって動けない。そして理巧がゆっくりと自分達に近づいてくる。

 

「ひっ!? ま、待ってくれよ暁月! ほ、ほんの『冗談』だったんだよ! こ、子供の『遊び』だったんだよ!」

 

「お、俺は悪くないよ! 悪いのは他の奴等だ! 俺は無関係だ!!」

 

「はぁ!? ざけんなよ猿岡! テメェだって笑って楽しんでいたじゃねぇか!!」

 

「うるせぇ! 俺は無関係だ!!」

 

「・・・・・・・・」

 

先程までケラケラ笑っていたのに、いざ自分に矛先が向けられると保身の為に仲間を売る。

あまりに醜悪な姿に、理巧は氷のような冷たい視線で歩み寄る。

 

「あ、暁月! 早まるなよ! 虐めの事はもう昔の事じゃないか!」

 

「そ、そうだよ! 今時復讐なんて流行らないぜ、な!」

 

自分達の事を棚に上げて見苦しい命乞いをする。理巧は静かに呟く。

 

「ペガは何処?」

 

「え?」

 

この学校に張られた『忍結界』のような妙な空間が、理巧の気配探知を妨げをしているので、ペガの行方を聞いているのだ。

 

「お前達が僕を呼び出す為に連れてきた宇宙人だ。何処だって聞いているんだ?」

 

「あ、あの化け物なら・・・・」

 

「(ギロッ)」

 

「ひぃぃ!」

 

ペガを侮辱しそうになる猿岡を一睨みで黙らせると、孤坂が口を開く。

 

「あ、あいつの居場所は、俺らは教えられていないんだ・・・・お前を言う通りにさせる為に俺らも教えられていないんだ。虎山なら知ってると思う。次の理科室にいる烏海と小森が、虎山の場所を知ってる」

 

「そう」

 

「な、なぁ暁月! 俺らの事は見逃してくれるよな!?」

 

「・・・・十四発」

 

「「へ?」」

 

「連帯責任で、猪本に殴られた残り十四発。お前達も受け終えたら、許して上げるよ」

 

「「ひっ!」」

 

ーーーーバキッ! バキッ!

 

孤坂と猿岡はそれ以上は何も言えず、それぞれ理巧に一発ずつ殴られて、顔面を潰されて気絶した。

 

「・・・・仲直りしたいと言うなら、残り十二発分のパンチを受けてからにしな。それとさっき、僕の周りの女の子達をいただくとかほざいていたけど、お前らごときじゃ・・・・相手にもされないよ」

 

理巧は虫の息になって、気絶する寸前の二人にそう言う。そして二人が気絶するのを確認すると、『コスモスカプセル』で応急手当てをしてから、教室にあったカーテンを引きちぎって紐状にすると、三人を縛り上げて、次の場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして理科室に入ると、黒く長い髪をし、端正な顔立ちを憎悪で歪ませた少女、烏海がいた。

 

「あ~ら、暁月。お久しぶりね? 相変わらず綺麗な顔をして、ムカつくわね。猪本達も、顔だけは潰さないで残してくれたようね?」

 

「・・・・・・・・」

 

理巧は烏海の話をマトモに聞かず、周囲を見ると、やはりと言うか、ペガの姿は無かった。

 

「・・・・ペガは何処?」

 

「ふん! あの気持ち悪い姿した宇宙人? アンタ、友達いないから宇宙人なんかと仲良しこよししていたの? 体育館にいる虎山に聞いてみる事ね」

 

「(体育館か・・・・)君には関係ない・・・・と言うよりも、僕達のイザコザに、ペガを巻き込まないでくれる?」

 

「はぁ・・・・? カッコつけてんじゃないわよ!!」

 

烏海は近くにあった机の上に置かれたビーカーを持って投げつけるが、理巧は微動だにせず、顔の横をスレスレをビーカーが通り過ぎ、壁に当たって音を立てて砕けた。

 

「アンタのその! 綺麗な顔が気にくわなかったのよ! 初めて会った時から!!」

 

烏海はヒステリックに喚き始める。思えば良くこの子は理巧の顔を引っ叩いていた。まるで理巧の顔を潰さんばかりの殺意を込めて。

 

「私はねぇ、昔から女優の母親譲りの美貌で何でも思い通りにやってきた! 男も女も! 私に告白してきたり、私の言う事を何でも聞いてきたわ! 私はこの美貌を維持したり高めるのに、当時からどれだけの努力をしてきたのか分かる!? それなのに! アンタは!!」

 

烏海は、絶世の美形と呼んでも差し支えない理巧を憎いと言わんばかりに睨み付けた。

 

「私が高い金を使ってエステや美容院で努力してるのに! アンタは何の努力もしないでその美貌を維持してる! しかも! あの頃よりも更に磨きをかけて! ふざけんじゃないわよっ!!」

 

そして、薬品棚から薬品の瓶を取り出した。『硫酸』と記されていた瓶を。

 

「コレをアンタの顔面にぶち撒けてあげる! アンタと一緒にいたあの女の子達も、爛れたアンタの顔をみたら、どんなに気持ち悪いとアンタを拒絶するのか、楽しみね!!」

 

「そんな事言われて、大人しくしているとでも?」

 

理巧がやれやれと言わんばかりに言うと、烏海はニンマリと口角を上げると、

 

「それなら大人しくしてもらうだけよ・・・・小森!!」

 

「っ!!」

 

ーーーーバリバリバリバリバリバリバリバリバッ!!

 

「うぐぅっ!!??」

 

理巧の背後の長机の下から飛び出した人物が、理巧の背中、もっと詳しく言うと、延髄と背中越しの心臓近く、凡そ人体の急所と言える箇所に、激しい痛みと痺れを感じて振り向くとそこには。

肩口にまで伸ばした茶髪をし、性格は最悪かつ劣悪だが、烏海は美貌“だけ”なら斑鳩や春花や雪泉のような綺麗系であるのに対し、コチラは飛鳥や四季や紫のような可愛い系の可憐な顔立ちをしているが、その顔を歪めている少女、イジメに参加し理巧を嘲笑い、リーダーである虎山の彼女面して侍っていた小森だった。

 

「小森・・・・!」

 

「痛い暁月くん? 痛いよねぇ!? でもね、私達が受けた苦しみはこんなものじゃないんだよぉ!!」

 

小森は理巧に押し付けた武器、スタンガンを両手に持って、理巧の心臓近くや延髄に更に電圧を上げて押し付ける。

 

「〜〜〜〜っ!?」

 

「アハハハハ! 良いざまね暁月ぃ!? アンタのその苦悶に歪む顔! 最高だわ!!」

 

烏海は、理巧の顔面に硫酸を垂らしてやろうと近づきながらそう言った。

すると、

 

「ーーーーあっそう?」

 

「「えっ・・・・?」」

 

最大電圧のスタンガンを押し当てられ、崩れ落ちそうになっていた理巧だが、すぐに何事もない様に会話をしている。

 

「な、何で・・・・? このスタンガンって改造しているから、最大電圧は熊だって気絶するのに・・・・!?」

 

「(・・・・こう言う時程、『幼少時の地獄』が役に立つな・・・・)」

 

そう。幼少期の訓練の中には『電流に耐える訓練』も入っており、理巧の身体は、『電気椅子』の電流にも数分は耐えられる耐電体質にもなっている。暫くソチラの訓練は疎かになっていたから、今では少し身体が痺れる程度である。

 

「・・・・女の子にはあまり手荒い真似はしないのが僕の主義だったけどーーーー」

 

理巧は小森の両手を掴んで片方の手に収まったスタンガンを小森に、もう片方の手にあるスタンガンを烏海に押し当てた。

 

ーーーーバリバリバリバリバリバリバリバリバッ!!

 

「「ギャァアアアアアアアアアアアアアア!!」」

 

熊でも気絶するレベルの電圧を受けて、烏海と小森は、その美貌を醜く歪めながら悲鳴を上げ、口から泡を吹き、目が裏返ってしまい、身体は激しく痙攣してしまう。

烏海の手に持っていた硫酸の入った瓶は、痙攣した手からスッポリと落ちてしまうが、理巧が小森から手を離してキャッチするのと同時に、小森と烏海が後ろに盛大に倒れた。

 

「あ・・・・あぇ・・・・」

 

「ひ・・・・ひへは・・・・」

 

全身が痺れ、呂律も回らないくらいに痺れている二人。しかし、理巧は拾った二つの改造スタンガンを握力で握り潰すと、二人を先程の三人と同じように縛り上げて、最後の一人のいる体育館へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、体育館に着いた理巧は、体育館の舞台の上で、豪奢な椅子に腰掛けてこちらを見下すように見ている一人の男子がいた。まるで、舞台の上に君臨する王のように。

黒髪と怜悧な瞳、端正な顔立ちをしたスラリとした長身の美男子。はたから見ると少女漫画のイケメンにしか見えないが、その瞳には冷酷な光しか宿っていない。

 

「ーーーー虎山」

 

「懐かしいな暁月理巧?」

 

理巧と虎山。イジメを受けていた少年とイジメのリーダーであった少年が、数年の年月を経て再会を果たした。

 

「やっぱり、アイツらじゃお前を止められなかった、か」

 

「随分と冷静だね? 僕が来る事は織り込み済みだったのか?」

 

「あぁ。まぁ、な!」

 

虎山が懐から拳銃を取り出すと、理巧に向けて連射で銃弾を放つ。

 

「ーーーー!!」

 

が、未来の傘の機関銃すらも回避する理巧の動体視力と反射神経と瞬発力の前では、そんな銃弾など余裕で回避しながら走り出し、王様気分で椅子に座っている虎山の顔面に向けて、拳を放った。

 

ーーーードヒュゥゥゥゥ・・・・!

 

が、拳は虎山の眼前で止まり、その風圧だけで、虎山の顔と髪が波打ち、周りの埃とかも吹き飛んだ。

そしてそのまま睨み合う二人だが、虎山が口を動かした。

 

「・・・・暁月。世の中を自分の思い通りにするのには、何が必要だと思う?」

 

「・・・・・・・・」

 

突然言い出した虎山の言葉に、理巧は興味ないと言わんばかりに見据えるが、虎山は話しを続ける。

 

「それはなーーーー『金』。『権力』。そして『暴力』だ」

 

虎山は断言するように言った。

 

「『金』は勿論必要だ。衣食住を得る為に必要なのは何を置いても『金』だ。『お金が無くても幸せだ』等と言えるのは、金の必要性を全く理解していない幼稚な愚か者か、小さな幸せで満足できる小さな器の人間の戯言。『金』があれば大概の欲しい物は手に入るし、人間も思い通り動かす事もできる。そして『権力』。これも大切だ。『権力』を得れば社会を好きなように弄べるんだ。今のご時世もまた、『権力者』達が自分達の都合の良いように動かしているようなもんだからな。そして最後に必要なのがーーーー『暴力』。まぁ、この世の中で『暴力』だけで生きていけると考えているのは、猪本のような単細胞か、人間の皮を被ったケダモノのような奴らだけだ。だが、人間も所詮動物。自分より強くて凶暴な『暴力』には抵抗しようと思わない。『金』・『権力』・『暴力』。正にこの三つこそ、この世の全てと言っても差し支えないだろうよ」

 

「何が言いたい?」

 

長い話しをする虎山に、理巧が問うと、虎山は更に言葉を並べる。

 

「・・・・あの頃、俺の周りにいる奴らは、俺達の持つ『金』と『権力』と『暴力』に畏れる奴ばかりだ。他の生徒や教師達なんて、俺達の顔色を伺うばかりの『ドブネズミ』のような奴らばかりだった。正に人間と言うのは、生まれた瞬間から人生が決まっているって思っていたよ。ーーーーお前が現れるまではな」

 

「僕?」

 

「ああ。中学に入ってすぐだった。初めて見た時からお前は他の奴等とは圧倒的に別の『存在』だってな。他の奴等は皆『ドブネズミ』だったのに、お前だけはーーーー何か得体の知らない『何か』だとな。そしていずれお前は、俺達が立っているヒエラルキーを崩すだろうと確信した。『出る杭は打たれる』ーーーー才能が開花する前に、潰してやろうと思ってな。ちょうど、猪本と孤坂も、サンドバッグ兼オモチャを欲しがっていたし、烏海はお前の美貌に僻み妬んでいたし、猿岡と小森も俺達に従っているように見えて、根は腐りきったゲスだからな。俺の真意なんか気づかずに、皆でお前を排除しようとした」

 

「ソレが、僕を虐めていた理由か・・・・?」

 

「ああそうだ。そして俺の予想通り、見事お前は俺達六人を破滅させた。まさか、宇宙人を『手下』にしていたとはなぁ?」

 

「・・・・君達の御託と恨み節にはもうウンザリなんだ。僕がここに来た理由はただ一つーーーーペガは何処だ? もしもペガに何かあったら・・・・痛い思いじゃ済まないよ?」

 

ーーーーゴォォォウゥッ!!!

 

「っ!」

 

理巧の身体から、凄まじいまでの怒気が静かに放たれ、ソレがまるで巨大な怪物となって虎山を見据えていた。

虎山は一瞬息を呑むが、すぐに笑みを浮かべて口を開く。

 

「まぁそんな顔するなよ。あの宇宙人なら、俺達がいつもお前を虐めていた、体育館の倉庫の中にいるよ」

 

虎山が体育館倉庫の扉を指さすと、理巧は怒気を納め、もう用はないと言わんばかりに背中を向けて歩を進めた。理巧がここに来たのは、ペガを連れ戻す事、この一点のみ。余計な邪魔にわざわざ付き合う義理はないのだ。

 

「!」

 

と、理巧が背中を向けた瞬間、虎山は瞬時に飛び出し、理巧の背中に張り付き、理巧の内股から足を引っ掛けてホールドし、理巧の首に虎山の手が回り頸動脈を絞める、『チョークスリーパー』を掛けた。

 

「ぐっ!?」

 

「油断したな暁月ぃ! 何であの単細胞の猪本が俺に従っていたと思う? 俺の方がアイツよりーーーー強いからだよ!!」

 

虎山が理巧の頸動脈を絞める力を強めた。

 

「〜〜〜〜!!」

 

「ふん! どんなに体格差や体重差があろうと、どんなに強い人間でも、後ろから頸動脈を絞められれば、簡単に落ちるんだよ!!」

 

そう。頸動脈を圧迫されると、途端に血圧低下に徐脈、失神に脳梗塞のリスク増加など、人体に悪影響を与える。

通常の人間であれば、五秒から十秒で気を失ってしまうので、ソレから急いで逃れようともがくだろう。

しかし、理巧はーーーー。

 

「ーーーーコォォォォォォォォ・・・・」

 

身体の肺の中から空気を全て絞り出さんばかりに息を吐き、全身の筋肉の力を極限にまで脱力させた。

絞め技を受ければ、大抵の人間は脱出しようと抵抗し、筋肉を強張らせ余計な力を入れてしまい、血液を流れを早くし、動脈に無駄な運動をさせてしまう。ソレがさらに絞め技の威力を上げてしまうのだ。

ーーーー故に理巧は、全身の筋肉を完全にリラックスさせていく。

理巧の師匠であるハルカとナリカとスバルは超一流のくノ一、つまり女性忍者達である。女性の筋肉は男性の筋肉よりもしなやかさと柔らかさがあり、先ず三人は理巧を鍛えるのに際し、ストレッチや柔軟訓練、お酢等と言った食事で、理巧の身体の柔軟性を高める為の訓練を重点的にしてきた。

 

「ーーーーっっ!!」

 

虎山の絞め技から脱出した理巧は、ホールドされていた足め脱出させ、虎山に回し蹴りをお見舞いした。

 

 

 

 

 

 

 

ー虎山sideー

 

「(な、何だコレは・・・・!?)」

 

虎山は、奇妙な違和感を感じていた。チョークスリーパーのような絞め技や関節技と言った技は、少年刑務所で自分達にチョッカイをかけてきた馬鹿共を相手に研鑽を続けてきた。

しかし、今締めている相手、暁月理巧は締めれば締める程、その身体を弓なりに仰け反らせながらすり抜けていくように感じる。

まるで、ウナギでも掴んでいるように、表面に粘液でも生み出し滑るように、暁月理巧の身体が徐々にすり抜けいきそしてーーーー。

 

「ーーーーっっ!!」

 

完全に自分のチョークスリーパーを脱出した暁月理巧の回し蹴りが水月(みぞおち)に突き刺さった。

 

「げはっ!?」

 

視界が一瞬真っ白になり、呼吸が一瞬止まって吹き飛び、後ろにあった椅子を破壊して倒れた。

 

「ケホッ、ケホッ、ケホッ・・・・虎山。さっき言ってな? 【人間と言うのは、生まれた瞬間から人生が決まっている】とか何とか・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

一瞬咳き込んだ暁月理巧が聞くが、虎山は意識が薄れ始め、返事をする気力も残っていない。しかし、暁月理巧は続ける。

 

「ーーーー生まれなんて、知った事か」

 

暁月理巧は断言するように言った。

 

「裕福に生まれようが、貧しく生まれようが、ソコでその人の人生が完全に決定される訳じゃない。ちょっとした巡り合わせで、劇的に変わってしまう事だってある。大切なのは、『そこから自分がどう生きる』か、だ。自分の生まれの運命を受け入れるのも、運命に抗って生きるのもソイツの覚悟次第だ」

 

財閥の養子になった斑鳩や叢のように、家族と離別してしまった葛城や柳生のように、本来なら善忍になる筈だった焔のように、忍になる事で極貧から解放された詠のように、ほんの少しのボタンの掛け違いで、生き方が変わってしまった娘達を、理巧は知っている。

 

「そして僕は・・・・自分の運命は、自分自身の意思で決める!!」

 

そして理巧自身も、ウルトラマンベリアルの為に造られた人工生命体として、この世に生を受けた。しかし、理巧はベリアル達の思い通りの人生を拒み、新たな道を選んだのだ。

 

「お前達がそんな風になったのは、誰のせいでもない。お前達自身のせいだ。這いつくばって泥水を啜るような底辺にまで落ちたなら、後は全力で、這い上がってみたらどうだ? それなりの悪知恵があるなら、その頭脳を使って這い上がってきな」

 

そう言って、暁月理巧は、背中を見せ、ペガの元へと向かった。

 

「(・・・・・・・・終わった・・・・ゲームオーバー、か・・・・)」

 

虎山は、完膚なきまでの敗北を受け入れ、意識は闇の中へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー理巧sideー

 

そして理巧は体育館倉庫を開けると、その中央に置かれた椅子の上に、縛り上げられていたペガが座っていた。

 

「ペガ!」

 

『っ! 理巧! 助けに来てくれたんだね! ありがとう! ペガ嬉しいよ!』

 

ペガを見つけて笑みを浮かべた理巧が名を呼びながらペガに近づきと、ペガは満面の笑みを浮かべたように見えた。

そしてそのまま、理巧がペガに近づくと・・・・。

 

「ーーーーああ・・・・そうかい!!」

 

理巧は何を思ったのか、ペガに向かって・・・・拳を繰り出した。




次回、絆を掴むフュージョンライズが登場。
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