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「弟……あのホームレスの、何処を気に入ったの?」
僕がキッチンで朝食を作っていると、リビングの姉が僕に声をかける。
この家の構造は『4LDK』という奴で、一階は『リビング』『ダイニング』『キッチン』を全て一緒にした大きな部屋で、二階に個室が四つある。
トイレは玄関の横に一個、二階に一個、洗面所と風呂場は二階。
一般的な家庭よりかは広い家じゃないだろうかと思う。
まぁ、そんな訳で、姉の姿は見えないが声はここまで届く。
「ホームレスって言わないでよ……シャレイって名前があるんだから」
僕はフライパンの上に焼いている目玉焼きに少量の水を加え、フタを閉じる。
ジューという音がなる。水と油とコンロの火が混ざり――バチンバチンと油が跳ねる音がする。
「シャレイって……偽名でしょ? 弟が付けたの?」
「そうだよ」
「ふーん」
そうこうしている間に、背後のトースターから『チーン』という音が聞こえてきて、こんがり焼けたトーストが口から出てくる。
焼けたトーストを皿に移し、マーガリンを塗る。
我が家の朝は基本的にパンである。
「それで、あの居候の何処を気にいったの?」
「だから居候じゃなくてシャレイだって……」
当たり前というべきか、姉はシャレイのことを良く思っていない。
「気に入った、っていうか……可哀想だから……」
「同情?」
「…………かもね」
「中学生の子供故の幼児性と大人になりつつある自意識が生み出した偽善者精神?」
「…………否定は出来ない」
姉は、これでもかと言うほど、侮蔑の言葉を吐いてくる。
ストレートな罵詈ではないので、僕も言い返す事が出来ない。
確かに……偽善者かもしれない、僕は――って、、そろそろ目玉焼きが焦げる。
姉に思考を乱されそうになるのを何とか堪え、僕はフライパンから焼けた目玉焼きを取り出す。
取り出した目玉焼きは先ほどマーガリンを塗ったトーストの上に乗せ、塩コショウを振る。
よし、完成。
コップに牛乳を入れて、それをお盆に載せてキッチンを出る。
「ネェちゃん、朝食、まだ食べてないでしょ、まだ六月なのにアイスばっか食べてないで」
そう言い、僕はお盆の上のトーストと牛乳をダイニングのテーブルの上に置く。
我が家の朝食は各自自分で作る事になっているのだが、今日はついでに姉の分も作っておいた。
「あ、ありがと……わざわざ作ってくれて」
僕は「気にしないでいいよ」と軽く返し、お盆に残った二セットのトーストと牛乳を持って部屋を出る。
シャレイを家に住ませる条件として、シャレイは僕の部屋で食事を取る事となっているからだ。
僕は、部屋を出る直前、一度足を止めて、姉に一言言い残した。
「ネェちゃん……確かに、僕がシャレイを拾ったのは、同情とか可哀想とかの感情かもしれないし、子供の偽善者精神かもしれない……『僕は良い事をした』という自己満足から来ているのかもしれない……否定はしない」
「…………」
「でもね、そんな理由でも、僕は絶対に投げ出さないし、一度シャレイに付き合うと決めたら、シャレイの記憶が戻るまで僕は諦めずに頑張り続けるよ。やり遂げてみせるよ」
それだけ言い残し、僕は部屋を出ようとした。
すると姉が「ちょっと待って!」と僕を引き止めた。僕が「ん?」と振り返る――
「えっと……さっきは、偽善者とか言ってごめんね。弟の覚悟も知らないでさ……あと、朝食ありがと、食べるよ」
「ううん、謝らなくていいよ。さっきも言ったけど、僕が偽善者なのは自分でも否定できないから」
「だらしない癖に偉そうでネェちゃんでごめん……」
姉は、なんだか反省していたようで、僕はちょっと嬉しかった。
でも、それでも間違っているのは僕なんだろう。
覚悟があっても、やり遂げると誓っても、それでも僕は偽善者には変わりないんだから。
ただ……ちょっと……平凡な人生を送ってきた僕だけど……人を助けてあげたいって、気まぐれでも思っちゃったんだから。仕方が無い。
「ワガママな弟でごめん」
今度こそ僕は部屋を出て、自分の部屋へと向かった。
こいつら本当デュエルしねぇなぁ…………。
次回新キャラ登場!
脇役にも程がある奴が出てきますw