ヴァロンはワロタけどww
-EX5-
シャレイ、パンドラ達が乗り込んだ今は使われていない雑貨ビルの通り、その、人がいない殺風景な通りを、一人の青年が、一定のペースで歩を進めていた。
スラリとした背丈とスタイルを持った青年で、腕には、
黒いノースリーブのTシャツの上から、赤いシャツを羽織っており、ポニーテールに結んだ癖のある黒髪の額には真っ赤なバンダナが巻かれていた。
歩くたびに、紐を通してゆれるサイコロ型のピアスはユニークなアイテムで、整った顔立ちはそのファッションを見事に着こなしていた。
その青年が、雑貨ビルが並ぶ通りの、一つ――グールズのアジトとして使われている六階建てのビルの前で立ち止まる。
「ふむ……多分ここか」
青年は、記憶を掘り返し、目的のビルと今いるビルが同一の物か確認する。結果、一致した。
「ん? おいおい、なんだお前は? ここは俺達の縄張りだぞ? 用がねぇならとっとと去れ」
青年が、そのビルを見上げていると、ビルの入り口に立っていた見張りの男二人組が青年にドスの聞いた声を放つ。
二人の男は、真っ黒な外套で体をすっぽりと覆っていた。
しかし、青年はその声に怯んだりはせず、ちょっと通りすがりの人に道を聞くような感覚で、二人の男に話しかけた。
「すいません。ここって、グールズのアジトで合ってますか?」
「っ!? お前、何故俺達のアジトの場所を!?」
「何者だっ!!」
青年の質問に対し、二人の男は驚き青年を問い詰める。
「いやいや、大したもんじゃないですよ――ちょっと――ここに用事があるだけで」
そう言った瞬間、青年が言い終わったのと同時に、二人の男は倒れた。
死神が隣を過ぎ去った、そんな感覚で、二人の男は同時に倒れた。
そして、倒れた二人の男の横に落ちている、さっきまではなかった――二つの――六面ダイス。
「ごめんよ。僕は急いでいるんだ。だから勝手ながら入らせてもらうよ」
青年は、落ちている六面ダイスを広いポケットに入れ、倒れている男二人組に、そういい残し建物に入っていった。
「まったく……僕の家族に手を出すなんて……命知らずな連中だな」
先ほど、二人の男を同時に、気絶させた青年。
その際、青年はその二人の男に一切手を触れていない。
触れるまでもなかった。
青年は、ポケットに持っていた六面ダイス――つまりサイコロを投擲したのだ。
高速で投げ出されたサイコロは二人の男の顎を掠り、脳が揺れて意識を失った。
世界に二人しかいない、サイコロ投擲術の使い手である。
その青年は、建物の中に入り、二階へ続く階段を登る。
すると、その中には三人の男がいた。
入り口にいた二人の男と同じように、真っ黒な外套を着けた二人組――と、真っ赤なスーツを着た仮面を着けた手足が細い男。
三人の男は、さっきまで、
「にょほほほほ――私の勝ちですね! さぁ、それではこの道を空けてもらいましょうか? 私は奥の進んだ彼らの応援に行かないといけないので」
「ぐっ……」「仕方ないんだな」
どうやら、勝負の結果は、赤い男の勝利だったようだ。
だが、この三人の様子を見てみると、三人は二対一という変則的な
「しかし……先に行きたいのは山々なのですが、私の少々力を使いすぎました……どうやら、ここでリタイヤのようです」
赤いスーツの男は、そういい、方膝を地面に着ける、息は荒く、かなり憔悴している様子である。
そんな三人の様子を見ながら、赤いバンダナの少年はその部屋に入る。
「やぁ、皆さん。かなかな楽しそうな事をしているじゃないですか」
青年は、部屋に入るなり、全員に聞こえるような音量で、そう言った。
その声に、三人は反応する。
「今度は誰なんだな!?」「また新手かっ!?」
外套を着けた二人の男は、息を合わせてバンダナの青年に返した。
「いやいや、僕はあなた達に用事はないですよ。ちょっと最上階。君達のリーダーに話しがあってね。そんな訳でここを通してもらうよ」
青年のその言葉に、二人の男は、顔を合わせ、コクン、と首を振って、
「それは出来ないかんな」「どうしても通りたければ」「俺達を倒していくんだかんな」
と言った。しかし、言い終わったのと同じタイミングで、二人の男の着けていた仮面は――割れた。
「うっ!?」「がっ!?」
何が起こったのか分からない。と二人の仮面の男は思った。
ただ、何かが突然飛んできて、仮面にぶつかり仮面が粉砕したという事だ。
二人の仮面がなくなり、素顔が露わになる。仮面がなければ、大怪我をしていた。
二人ともそんな感想を抱き、恐怖した。
「お、お前……一体何を――」
と、二人の男――黒い仮面を着けていた男が青年にそういう――否――言い切る前に再び顔面に何かが飛んできて、その男は気絶した。
そして、コトン、と地面に落ちるサイコロ。
「あ、相棒っ!?」
と、いきなり倒れたパートナーを心配して、残ったもう一人の男が倒れた男に近づく――が、倒れた男に手が届く前に、サイコロが顔面に飛来し、同じく気絶する。
「はぁ……どいつもここいつも弱いなぁ」
そんな風に小言を零しながら、気絶した二人の下へ歩いていき、投擲したサイコロを回収する。
そして、首だけを後ろに向けて、赤いスーツの男――奇術師パンドラへと視線を向ける。
「あなたは……どうやら敵じゃないみたいなので、危害はくわえません」
「そ、それはありがたい」
パンドラは、突如現れ、二人の男を手も触れずに倒した青年を見て、素直に驚いた。
そして、動くことが出来なかった。
得体の知れない物には、迂闊に手を出せないというか、あの鮮やかな手つきを見て、只者ではないと悟ったのだ。
「それじゃ、僕は先へいくので」
青年は、それだけ言って、三階へ上がっていった。
壁を取り除いた大きな部屋に、気絶した男二人と、呆然としている奇術師だけが取り残された。
青年は、始めと変わらない一定のペースで歩を進める。
三階では先ほど、シャレイと、とある少年がグールズの下っ端達を
だが、その侵入者は――赤いバンダナを額に巻いたポニーテールの青年は、そんなグールズの『侵入者の排除』という行為を、それこそ自分の周りを飛んでいる虫を振り払うような手つきで、次々となぎ倒していく。
次々とやってきて
サイコロによる投擲を受けたグールズは、パタリパタリと倒れていき、地面に人間の山を作っていく。
「おいてめぇ!
グールズの一人が、赤いバンダナの青年にそう言うが、
「やだよ、時間の無駄だし」
サイコロをその男に投げて気絶させる。
五分もしないうちに、三階にいる全てのグールズ団員を倒し、立っているのはその青年だけだった。
「ふぅ。ここも制圧成功。さて、次へ進もうか」
青年は、誰に言った訳でもない――独り言を呟いて、四階へ続く階段へ向かった。
とりあえず、青年はリアリスト寄りのデュエリストです。
歴代遊戯王の主人公で、まともな職に就けたのって遊星ぐらいじゃないでしょうか?