-EX6-
ビルの五階では、身長百八十を超えた長身に、白髪をオールバックした男性――シャレイ。
悪魔のような禍々しい瞳をした男性――
否――正確に言えば――その
「ぐっ……」
「ハハハ、どうやら、私の、勝ち、のようですね」
勝者は、真澄だった。
敗者のシャレイは、膝を付き、悔しそうに、その爬虫類のような目を真澄に向ける。
シャレイのデッキは、つい最近完成させたばかりのデッキで、使い慣れていないという事もあったが、下の階のグールズを次々と倒せていたあたり、決して弱い訳ではなかった。
それどころか、シャレイのデッキの強さは、町内のカードショップの大会で優勝できるほどの実力を持つ人間と、同等の強さはあったはずだった。
だが、シャレイは真澄に完敗だった。
何故か?
実の所、シャレイは、この
妙な違和感というのが、真澄のデッキとの相性だった。
なんと、真澄が使ったデッキは、どういう偶然なのか、シャレイのデッキの為だけに対策したような、シャレイのデッキには天敵である俗にいう――アンチデッキだったのだ。
だが、初めて闘う相手にアンチデッキで挑むなど、そんなもの偶然でしかありえない。
だが、それは偶然ではないのだ。
真澄は、下の階でシャレイの
真澄がいたのは、ビルの最上階の一室『モニター室』だった。
その部屋は、各階に設置された監視カメラの映像を全て確認する事が可能な唯一の部屋だった。
真澄はそこで、シャレイの
だから真澄は、シャレイのデッキにとって天敵である、アンチデッキをピンポイントに使う事が出来たのである。
だが――何故真澄が、何故、シャレイのデッキのアンチデッキを持っていたのか?
シャレイの
だが、真澄は持っていた――シャレイのデッキの天敵であるアンチデッキを、持っていた。
それは偶然か? 偶然といえば偶然だろう。
だがそれは、必然といえば必然とでもいえる。
何故なら真澄は――
真澄は常に百のデッキを体中に隠し持っており、どのようなデッキでも、ピンポイントにアンチデッキを使用する事が可能なのだ。
故に、下の階で散々手の内を敵に見せてしまったシャレイは、手も足も出せず、ただ防戦一方のうち、結果負けてしまった。
「すまない……」
シャレイは、悔しそうに呟く。
「いや、残念ですね、でも、あなたが負けたのを悔いる必要は、ありません、何故なら、この
悪魔のような目で、敗者を見下す真澄。
「さて、そろそろ、上の階で、キースさんの、
真澄は、取りこぼしてしまった少年の事を思い出し、様子を見ようとシャレイを置いて上を目指した。
「キースさんが、負けるというのは、ありえないと、思いますが、念には念を、様子を見にいきましょう」
「あ、ちょっと待って」
真澄が階段の方へ足を進めようとした瞬間、突如、真澄を呼び止める声が響いた。
その声の主は、シャレイではなかった、声が全然違う。
不思議に思った真澄は、後ろを振り向き、声の主を確認する。
それは、見覚えのない青年だった。
額には赤いバンダナが巻かれていて、癖のある黒髪をポニーテールにしていた。
耳には紐で吊るされたサイコロ型のピアス。
青年は、整った顔立ちで、笑顔を作り、真澄に声をかける。
「上の様子を見にいく前に、僕の相手をしてよ」
青年は、そう言った。
この青年、見たところ、変わった所はない。
ちょっと奇抜なファッションをしているが、何処にでもいる青年に見える。
だが、こんな場所に、まるで通行人に道を聞くような感覚で、自分に声をかけてくる青年を――不気味に思った。
「ほら、侵入者だよ? 排除しないと?」
と、青年は言う。笑顔を崩さず。
真澄は、その青年が、見れば見るほど不気味に思った。
不気味というより、胡散臭そうな。
この敵の陣地であるこの場所に、手ぶらでふらっと立ち寄ったみたいなラフな格好が、逆に真澄には不気味に見えた。
つまり、外見には見えないが、青年には何か自分には無いアドバンテージがあると真澄は予想してしまう。
そして――その予想は的中した。
「っ!?」
――殺気。
真澄は、殺気を感じた。
さっきまで爽やかな笑みを浮かべていた青年が、自分に殺気を向けて、攻撃を仕掛けてきたのだ。
真澄は、ほぼ自分自身の危機回避能力による反射神経で、その攻撃を防いだ。
腕に装着していた
その攻撃というのは――ご存知――サイコロだ。
特殊な加工を施されたサイコロは、中に鉛が入っており一般的なサイコロより重量があり、正方体の八つある頂点は鋭く尖っていた。
うっかり握ってしまったら手の中が血まみれになってしまうほど、そのサイコロは凶器として完成していた。
だが、その凶器のサイコロを、真澄は偶然にも、反射神経だけで防いだ。
「へぇ……初見で僕のサイコロを防ぐなんて、凄いなぁ」
青年は、笑顔を崩さず、真澄に賞賛を送る。
だが今の攻撃を防げたのは、ただの偶然だった、それは真澄自身がよく理解している。
そして、次来たら避けることはまず出来ないと、真澄は思った。
たった一発。たった一度。たった一撃の攻撃により、自分があの青年の格下であると自覚してしまった。
しかし、運がいい事に、その青年は、今の攻撃の二発目を繰り出す事はなかった。
「あなたには僕の攻撃が通用しないみたいですね。じゃあいいです、ここは素直に――決闘(デュエル)で決着を付けましょう」
青年は、
真澄も、この状況で、自分が逃げる事が出来ないと悟り、仕方なく青年の挑戦を受ける。
その一連の光景を、シャレイはただ見守る事しか出来なかった。
「「
青年と真澄の
真澄のバトルスタイルは、相手のデッキを観察し、その天敵となるアンチデッキを使う
だが、そのバトルスタイルには決定的な弱点が存在する、初めて闘う相手には通用しないという事だ。
相手のデッキが分からなければ、対策を立てる事が出来ず、アンチデッキを使用する事が出来ない。
故に、真澄は先ほどシャレイを相手した時に使ったデッキをそのまま連続で使う事となった。
「先攻は僕がもらうよ。ドロー」
先攻を取ったのは赤いバンダナの青年だった。
青年は合計六枚のカードを確認し――ニヤリと笑った。
初期手札が良かったのか、ニヤリと、勝ちを確信したような笑みだった。
「僕はカードを三枚セット」
青年は、六枚のカードの内、三枚を選び
「そのままターンエンド」
モンスターを出さずにターン終了? と真澄は青年は行動を疑問に思った。
普通に考えれば、初期手札に召喚可能なモンスターがいなかったと想像するだろう。
だが、目の前の青年の爽やかな笑みを見ていると、それが単なる手札事故だとは思えなかった。
真澄は、相手にモンスターがいなくても油断するような事はせず、慎重にプレイしようと思った。
「私のターンドロー!」
だが、その心配もすぐ無駄になった。
何故なら――この
「僕は伏せカードを発動。
青年の前に出現した、大きな正方体の箱。
その箱が開くと、中に入っていたのは大量のミサイル。
箱の中のミサイルが、全て同時に発射され、真澄に向かって飛んでいく。
白い煙を尾のようにして真澄にぶつかり、真澄のLPは600減り3400になってしまった。
だが、まだ3400ある。そう思い真澄は手札を見て作戦を考え――ようとはできなかった。
「もう一枚罠発動。ファイアーダーツ。手札が零枚の時にのみ発動可能なカードで、サイコロを三個振って、そのサイコロの目の数掛ける100のダメージを与える」
青年は、懐からサイコロを取り出し――先ほど真澄に投げつけたのと同じような特製サイコロ――三つ同時に投げる。
その目は――全て六だった。
「目は全て六。よって1800のダメージだ」
青年の前に火のついた矢が十八本出現する。そして全てが同時に真澄に飛んでいく。
真澄のライフは、まだ二ターン目なのに関わらず、LPは1600まで減ってしまった。
だが、まだ終わらなかった。逆に言えば――これが終わりだった。
「もう一枚罠発動。ファイアーダーツ」
「も……もう一枚……だと!?」
ファイアーダーツはその効果上、相手に与えられるダメージは300から1800。
真澄のLPは残り1600。つまり目の合計が十五までなら生き残れると言う訳だ。
そして、生き残れば青年の場にカードはなくなり、手札も全弾発射(フルバースト)で全て捨ててしまったので、青年はもう負けたも同然。
しかし――そんな希望はあっさりと打ち砕かれる。
「サイコロの目の合計は十八。よって1800のダメージだ」
「な、何っ!? 六回連続六が出るだとっ!?」
ついでにサイコロを六回振って全て同じ数が出る確率は六の六乗なので『1/7776』。
現実的な数字は無い、だが、青年はやり遂げた。
『1/7776』。ありえない。真澄はそう何度も自分に言ったが、残念な事にそれは紛れも無い現実だった。
「僕の勝ちだ」
青年は――爽やかに笑った。
シャレイVS百野のデュエルがまるまる省略されているのは仕様です……(震え声
シャレイの新デッキを期待していた読者様にはなんといえばいいか……orz
青年はもう、お分かりだと思いますが……あの方です(笑)
そう! ガトリングオーガを使うロットンです←大嘘