ホームレス拾いますか?《YES/NO》   作:御伽辰巳

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再び主人公の一人称にバック


これは走馬灯ですか?《YES/NO》

-30-

 

 

「弟、ゲームをしよう」

 

「なんのゲーム?」

 

 数年前、まだ兄が高校生で、実家にいた時の話。

 突然、兄がそんな事を言ってきた。

 

「ここに六面ダイス――サイコロがある。そしてそのサイコロをすっぽり隠せるカップもある」

 

 兄は、何処にでもあるサイコロと、カップを取り出した。

 

「ルールは簡単、弟がこのカップでサイコロを隠す。僕はカップに一切触れずに――いや――一切の干渉を与えずに中に入ったサイコロを取り出す」

 

「そんなの出来るわけがない」

 

 僕は兄にそういう。当たり前だそんな事が出来る訳ない。

 でも、兄はそれでも自信満々で不敵に笑った。

 

「だからゲームだ。このゲームに僕が勝てば、そうだな、アイスを買ってもらおう」

 

 現在八月、外は恐ろしい程いい天気で、最高気温は三十九度と朝お天気お姉さんが言っていた。

 「そしてハーゲンダッツな」と兄は言ってくる。

 当時小学生の僕にハーゲンダッツを買わせるとは、この兄鬼畜だ。

 

「だが、弟が勝てば、今日から一週間アイスを買ってきてあげよう」

 

「ハーゲンダッツ?」

 

「うん。ハーゲンダッツ」

 

 この勝負に、僕はあっさりと乗ってしまった。

 アイスにつられたというのもあるが、何より、このゲームに負けるつもりがなかった。

 兄がいくらゲームに強くても、カップに入ったサイコロを、カップに触らず、それどころかカップに一切の干渉を与えずに取り出すなんて――不可能だ。

 カップをすり抜けて中のサイコロだけ取り出すという超能力が使えれば話は別だが、僕は今まで兄が超能力を使った所を見た所がない。

 

「分かった。じゃあそのゲーム受けるよ」

 

「それでこそ弟だ」

 

 僕は兄からサイコロとカップを貰い、もしかするとカップとサイコロになにか細工があるかもしれないと念入りに確認して、何も細工が無いことが判明してようやく、カップをサイコロの中に隠した。

 

「じゃあ、始めようか――ゲームスタートだ」

 

「…………」

 

「…………」

 

 ゲームが始まり、十秒。三十秒。一分が経過する。

 だが、兄は全く動かない。

 

「どうしたの? 何もしてないけど、僕の勝ちでいいのニィちゃん?」

 

 と僕は言ったが、兄は不敵に笑い、

 

「いや、僕の勝ちだ。何故なら僕の手の中にはもうカップの中のサイコロが入っているからだ」

 

 と言った。

 

「えっ!?」

 

 僕はビックリして声をあげる。そんな訳が無い。兄はずっと動いてなかった。

 そう、サイコロをテレポートさせて兄の手の中に転移させる超能力が出来ないとそんなのは不可能だ。

 

「じゃあ、本当かどうか、中を確認してごらん?」

 

 その時僕は、迂闊にも、中のカップを持ち上げてしまった。

 そして、カップの中にダイスは――入っていた。

 だが、それを確認した時にはもう遅かった。

 兄は僕がカップを持ち上げた瞬間、中に入ったサイコロを素早く掴み、自分の手の中に収めてしまった。

 

「はい僕の勝ち」

 

「えぇ~!?」

 

 つまり、さっき兄が言った言葉はハッタリだったのだ。嘘だったのだ。

 僕は兄に騙されたのだ。

 兄は僕を騙し、僕の手によってカップを持ち上げさせるのを狙っていたんだ、くそ、騙された。

 

「ずるいよニィちゃん!」

 

 僕は兄に抗議した。

 

「確かに今のは大人げなかったね」

 

 兄は少し困った顔をして「じゃあもう一度やる?」と言ってきた。

 

「もう一度やって弟が勝ったらさっきの勝負は取り消して、僕がアイスを買ってきてあげよう。でも、また僕が勝ったら今度は夏休みが終わるまで毎日アイスを買ってきてもらうよ」

 

「よし分かった」

 

 僕は単純な事に兄の挑戦を再び受けてしまった。もう僕は兄の底なし沼のような罠に掛かったとは知らずに。

 僕は再びサイコロの上にカップを被せてサイコロを隠した。

 そして、また十秒。三十秒。一分と時間がすぎた。

 僕は、もう兄の言葉には絶対に騙されないと決めた。

 だから僕は何がなんでもこのカップを持ち上げないぞと決意した。

 

「今度は僕の勝ちかな?」

 

「いや、それは違うな」

 

「え?」

 

「これは僕の勝ちだ」

 

 兄はそう言って笑った。

 

「だって、その証拠に僕の手の中にはサイコロが既に入っている」

 

「もうその手には乗らないよ」

 

「嘘じゃない」

 

 そう言って兄は、その握った手を開いた。

 

「ええっ!?」

 

 兄の手の中には、なんとサイコロが入っていたのだ。

 どうして!? まさか兄は超能力者!?

 と僕は素直に驚きながら、カップの中を確認するためにカップを持ち上げる。

 しかし、カップの中にはまだサイコロが入っていた、僕は「あっ!?」と思ったが、やはりもう遅かった。

 素早く兄にサイコロを取られ、再び僕は兄とのゲームに負けた。

 

「ど、どうして……?」

 

「いや、僕は予めサイコロを二つもっていただけだよ」

 

「そんなの反則だよ!」

 

「反則かな? それが反則でも、ばれなければそれは反則じゃないんだよ?」

 

「何それ!?」

 

「はっはっは」

 

 兄は悪戯が成功した子供のように笑って、泣きそうな僕の頭に手を乗せて撫でてきた。

 

「弟」

 

「なんだよ……」

 

「これが、現実って奴だよ」

 

 そうして僕は毎日、夏休みが終わるまでアイスを買いに走らされた。

 現実が何かをしった小学生のある夏の出来事だった。




御伽君のコスプレ画像ってあんま見ないなー
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