多分(ぼそっ
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キースとの
兄に虐められた記憶。兄に騙された記憶。
そうだ、忘れていたがそんな事もあったな。
もしかすると、これは走馬灯と呼ばれる物なのかもしれない。
僕の負けは、もはや決定的だった。
キースの場には現在五体のモンスター。
ガトリング・キャノン。攻撃力2600。
ガトリングバギー。攻撃力1600。
機械王―プロトタイプ。攻撃力2000。
モーターシェル。攻撃力1300。
モーターバイオレンス。攻撃力2100。
そしてLPは6450。
対する僕は、場には何の役にも立たない伏せカード二枚。そして手札はなし。LPは1250。
この状況を変えるカードは無ければ、次のドローで引くこともない。
残りのデッキを全てドローしたとしても、僕はキースには勝てないだろう。
つまり、僕の負けは決定的となった。
僕が負けるという事は、姉を助ける事が出来ないという事、そして僕とシャレイは……一体、どうなるんだろう?
だいたいの予想は付くが想像したくない。
でも、いくら逃避しても、僕の負けは決定していて逃げる事は出来ない。
でも、勝ちたい。負けたくない。勝ちたい。勝ちたい。勝ちたい。勝ちたい!
でも勝てない! 勝つ! 勝つんだ!
勝ちたいと僕は心の底から思った。こんな所で負けられない。
僕はデュエルキングになる夢があるんだ。こんな所で負けるような人間じゃダメなんだ。
僕は走馬灯を見た。
走馬灯というのは、人間が死に追い詰められたときに、生き残る手段を必死に探すために人生を振り返ることらしい。僕の今の走馬灯に、生き残る記憶はあっただろうか?
…………。…………。あった。
兄は言っていた「反則はばれなきゃ反則じゃない」と。
つまり、勝ちたければばれない反則を使えばいいんだ。
その瞬間、僕の中にあった十五年間の価値観は――壊れた。
壊れた価値観は、瞬時に再構築され、新しい価値観が完成する。
勝つことに特化した、勝つためだけの、勝つために生きる新しい生き方。
勝つためなら、なんだってしてやる。
姉を助けるためなら、シャレイの過去を克服してあげる為なら、自分の好奇心によって巻き起こしたこの事件の、ケジメを取る!
勝つためなら、僕は汚れてもいい、腐ってもいい、犯されてもいい、辱めを受けてもいい、ただ……大切な物を守れれば、僕は悪にでも鬼にでも闇にでも裏にでも影にでも偽にも虚にも嘘にも騙にも鬱にも――なんだってなってやる。
そうすると、もう僕は負ける気がしなかった。
「僕のターンドロー」
そういい、僕はデッキの一番上のカードをドロー――する事はせず、リストバンドにしまってあるカードを取り出す。
これぞリストバンドドロー。
そして取り出したカードを早速使う。
「僕は、命削りの宝札を発動。デッキからカードが五枚になるまでドローする。僕の手札は零。よって五枚ドロー」
「五枚もドローだと! ふざけるな!」
キースのいちゃもんを無視して、僕は五枚ドローする。
このカードは昔兄から貰ったカードだが、あまりの強さに自分でもデッキに入れるのをためらったため、リストバンドの中にお守りとして入れていた。
でも、勝つためなら僕は普通に使う。例えデッキに入ってなくても使う。
五枚ドローした事により、僕がキースに勝つ準備は整った。
今までの僕なら、勝てなかっただろう。
でも、今の僕なら絶対にキースに勝てる。
「勝つ」だけなら僕は出来る。
そう思うと、僕はなんでも出来る気がした。
「手札から魔法カード発動。ディメンジョンダイス。このカードを発動したとき、僕は手札からダイスダンジョンを発動する」
僕は残り四枚の手札からダイスディメンジョンを選択して発動する。
すると、まるでフィールド全体が盤上遊戯のボードの上のような縦線と横線が引かれる。
「な、なんだこのカードは!?」
「今、教えてあげますよ」
僕は残りの三枚の手札からカードを一枚選び発動する。
「死者蘇生。墓地のモンスターを一体特殊召喚する。蘇生するのは、ゴッド・オーガス」
墓地から蘇るのは、巨大なバスターソードを持った大男。
ダンジョンの番人、僕の切り札。
このデッキの本当の使い方だ。
僕のデッキは一見ヒットアンドアウェイの攻めと守りを完全に分けたデッキだと思われる。
でもそれは嘘だ。
表面上は、そう繕っているが……実は違う。
これは兄がくれた世界に一枚しかないカード。デュエルモンスターズの創造主であるペガサス・J・クロフォードが、兄のために作ったと言われているカードを使ったデッキだ。
「いやまて、テメェこんな上級モンスター何処で……!?」
「手札抹殺」
「はっ!?」
そう、僕が序盤で発動した手札抹殺で、このカードは既に墓地に捨てられていた。
これで、僕がキースを倒す準備は整った。
ここまでなら、リストバンドドローを除けば普段の僕でも出来る。
だけど、ここから先は、イカサマだ。
反則だ、詐欺だ、それでも、ばれなきゃ反則じゃない。
反則じゃなければ、やってもいい。
僕は勝利を求めているんじゃない。
勝つことによって取り返せる大切な何かを求めているんだ。
だから、大切な物を取り返すためなら僕は――
「伏せてある魔法カードを発動する。禁止薬物。このターン僕のモンスターは相手モンスター全てに攻撃できる」
これにより、僕のゴッド・オーガスは相手モンスター全員に攻撃が許される。
「だ、だがっ、俺の場には漆黒の太陽がある。お前がいくら俺のモンスターを破壊しても俺のLPは回復し続けLPを削りきることは出来ない」
確かに、そうだ。
僕が相手にダメージを与えても、その数値を上回る回復量をする。
「しかも、テメェの切り札の攻撃力は2500だ、俺のガトリング・ドラゴンを倒す事は出来ない。つまり次のターンガトリング・ドラゴンの効果でテメェのゴッド・オーガスを破壊してダイレクトアタックで俺の勝ちだ」
そう、僕のゴッド・オーガスじゃあ、ガトリング・ドラゴンに100攻撃力が足りない。
でも――問題ない。
攻撃力が高い? なら上げればいい――イカサマで。
モンスターが倒せない? なら下げればいい――イカサマで。
回復量が追いつかない? ならそれを上回るダメージを与えればいい――イカサマで。
今の僕には、既に勝利のヴィジョンは見えている。
反則でなら、こいつを倒す事は造作でもない。
「じゃあ、このターンでトドメを刺しますよ」
この世界は間違ってる。
だからこそ、僕は――この間違った世界で正解になろうとした。
でも僕は、その正解への道を――諦める。
不正解でいい、醜くていい、汚くていい。
僕がいくら人間として終わろうと、それで誰かが助かるなら――構わない。
「ゴッド・オーガスで、ガトリング・ドラゴンを攻撃だっ!」
バスターソードを構えた大男が、機械の龍に攻撃を仕掛ける。
だが、その攻撃力はガトリング・ドラゴンの方が上だ。
「へっ! 馬鹿め、これで俺の勝ちだなっ!」
キースの戯言など気にせず、僕は――勝つ。
「永続魔法。ダイスダンジョンの効果を発動」
僕がさっき発動した、魔法カード。
兄が、『インダストリアル・イリュージョン社』に交渉を持ちかけたときに、作ってもらったカード。
世界に一枚だけの、僕のナンバーワンでオンリーワンカードだ。
「ダイスダンジョンの効果は、戦闘をするとき、お互いのプレイヤーはサイコロを振る。そしてサイコロの目によってモンスターの攻撃力は変化する!」
「サイコロによって攻撃力が変化だぁ?」
「そう。これにより、サイコロの目によっては僕がガトリング・ドラゴンを倒す可能性も出てくるという訳だ……。悪いけど、あなたサイコロ持ってますか?」
「いや……持ってない」
「じゃあ――僕はサイコロ持ってるので、二人分サイコロ振りますね」
内ポケットから、サイコロを二つ取り出す。
そして、内一個のサイコロを振る。
手に持ったサイコロを、コロコロと地面に落とす。
サイコロは地面に落下し、一度バウンドして静止する――目は六だった。
「サイコロの目は六でした。これにより、僕のモンスターの攻撃力は倍になります」
「倍ィ!?」
ゴッド・オーガスの攻撃力は2500から5000へと底上げされる。
「そして次は、あなたのモンスターの番です。サイコロを振ります」
ポケットから取り出した二つ目のサイコロを振る――目は一だ。
「一が出た場合、モンスターの攻撃力は1000減ります、よってガトリング・ドラゴンの攻撃力は2600から1600へダウン」
「んな馬鹿なぁ!?」
初めはガトリング・ドラゴンの方が上回っていた力の差はいつの間にか5000と1600という、大きく逆転していた。
ゴッド・オーガスはバスターソードをガトリング・ドラゴンに振り下げ、首を切断する。
「うがぁぁっ!」
3400ものダメージを受け、6450あったLPは3050まで激減する。
だが、漆黒の太陽の効果でガトリング・ドラゴンの元々の攻撃力2600を回復し5650まで持ち直す。
「このターンゴッド・オーガスは、禁止薬物の効果で全てのモンスターに攻撃可能です。行きます、今度はガトリングバギーに攻撃」
「そして再びダイスロール」といい、サイコロを振りなおす。
ついでにダイスディメンジョンで変化した攻撃力は戦闘が終わると同時に元に戻るので、ゴッド・オーガスの攻撃力は2500だ。
「だ、だが、テメェのダイスディメンジョンの効果が俺に利が来る効果になれば――」
キースがなにかふざけたことを言っていたがそんな可能性はない。
一度目サイコロの目は六。これで僕のゴッド・オーガスの攻撃力は再び5000となる。
そして二回目のサイコロの目は一。よってガトリングバギーの攻撃力は1000下がる。
攻撃力600と5000のモンスターとの戦闘で発生する戦闘ダメージは4400だ。
キースのLPはこれで1250、しかし漆黒の太陽で1600回復し2850だ。
随分と減った物だ。
「次の攻撃対象は、機械王―プロトタイプです」
「ぐ、偶然が続くわけが無い……」
キースは顔中に汗を浮かべながらボソリと呟いた。
そうとも、偶然がこうも続くわけない。だが、これは偶然じゃないんだ、必然なんだ。
サイコロの目は僕は六。キースは一だ。よって攻撃力5000と800の戦闘が起こる。
これでキースのLPは4200減りLPは0となる。
「ば、バカな…………」
キースは、何かが可笑しいという顔で、顔色を真っ青にして、地面に両膝を付いた。
ついでに、サイコロで三回連続六が出る可能性は『1/216』。三回連続で一が出る可能性も『1/216』。
その二つが同時に起こる可能性は『1/46656』。もはや奇跡の領域だ。
だが、初めに言った通り、これは偶然でも奇跡でもない。
ただのイカサマだ。
「お前……サイコロに細工でも仕上がったのか?」
「いえ、していません」
「ならっ! どうして……そんな事がっ!?」
「もしもの話しをしましょう」
僕は、納得がいかなくて今にも倒れそうに絶望しているキースに、たとえ話しをする。
「ある所に一人の少年がいました。その少年は、昔からサイコロを振るのが大好きでした。大好きで大好きで大好きで、一日中サイコロを振っていました。サイコロを振るたびに、少年はサイコロについて詳しくなっていき――サイコロの目を自由に操れるようにまでなりました」
「そ、そんな馬鹿なことがっ……!?」
「あるんですよ……回転するルーレットにピンポイントに狙った所にボールを入れるイカサマディーラーとか、捜せば世の中にはいるかもですよ?」
「…………」
「それと同じ。僕はサイコロの目を自由に、好きな数字に振る事が可能なんです」
それを証明するために、僕はポケットから十個のサイコロを取りだし、同時に全部投げる。
すると、ばらばらに飛んでいったサイコロは――全て六の目で静止した。
「い……い、イカサマだっ!!」
「そーですね」
キースのいちゃもんに、大した抗議もせず、あっさりと僕は認める。
「そうですイカサマです。反則です。でも、サイコロの目を自由に選択して振れるなんて、誰が信じるんですか? 証明できるんですか? 『0,0000000001%』でも、『0%』でなければ、ありえる可能性なんです」
「そんな訳が……」
キースは、納得したいが納得できない。
納得できないが納得するしかない、そんな表情をしていた。
「僕の勝ちです。ネェちゃんを返してもらいますよ」
「……最後に、聞かせてくれ」
キースは、くちびるを震わせて、そう言った。
「お前は一体……何者だ?」
その、キースの最後の質問に僕は――答える。
きっと、僕が自分の事を名乗るのは初めてだろう。
自己紹介って、好きじゃないんだよね。
「伝説のゲームマスター。Mrクラウンの息子であり、天才ゲームクリエイター。
どこにでも平凡な中学生の肩書きは――あっさりと崩れ去った。
僕は、始めから平凡なんかじゃなかった。
サイコロ少年は、初めて自分の名前を名乗った。
「僕の名前は××××です」
ま、ぶっちゃけ名前なんてどうでもいいんだけどさ。
この話は結構好きでした。
主人公のデッキは実は、アニメのノア編で御伽君が使ったDDMデッキです。
Mrクラウンとかマイナーキャラすぎだろ…………。
普通にリストバンドからカードをドローしたり、俺は勝ちたいぃぃぃぃ! とか言って大量ドローしていますが、これも遊戯王にはよくあることです。
ヘルカイザーもキースもやってます。
むしろ勝手にカードを作ってドローするシャイニングドローの方が反則ですよ!
と、いう訳で、主人公は御伽龍児君の弟でした。
まぁ、結構前からばれてそうですがねwwww
主人公の名前が不明なのは仕様です。そういうオリキャラに名前を付けないのが僕のポリシーなのです←今作った。
てんってってんてーん♪←DM予告のBGM
サイコロ少年にデュエルで負けたキース。でもキースはまだ諦めていないわ。
そうよキース! あんな反則少年に負けちゃだめよ! ここは本職のリアルファイトの出番ね!
次回「キース死す」デュエルスタンバイ(杏子ボイス)←嘘予告。