RIDER TIME 電光超人GRIDMAN   作:バース・デイ

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…………ふむふむ……ほう!グリッドマンにはこんな秘密が……!

ん?おっと……失礼。この本(グリッドマン超全集)によれば、普通の中学生『翔直人』……彼には仲間達と共に魔王カーンデジファーと戦う『電光超人グリッドマン』としての過去があった。

電光超人と魔王との戦いから早26年……グリッドマンとしての使命はツツジ台に生きる少年『響裕太』へと託され、平穏な生活を送っていたかつての同盟達。

しかし、魔王カーンデジファーの復活により、その平穏は崩れ去ろうとしていた。

そしてついに、真の覚醒を果たしたグリッドマンが我々の前に姿を現すのであった。


1993:ユメのヒーロー

 

 

 

RIDER TIME 電光超人GRIDMAN

1993:ユメのヒーロー

 

 

 

 

「六花……必ず助ける!!」

『共に戦おう、ジオウ!』

「うん!なんか……行ける気がする!」

 

フルパワーアナザーグリッドマンを前にして、並び立つのは仮面ライダージオウと電光超人グリッドマン。

まずはジオウがライドヘイセイバーを構え、フルパワーアナザーグリッドマンに斬りかかる。

それに対し、グリッドマンキャリバーをジオウにぶつけ、対抗するフルパワーアナザーグリッドマン。

ジオウを弾き飛ばすと、今度はグリッドマンの蹴りが彼女の眼前に迫って来ていた。

 

『グアアァ……!!』

『六花!目を覚ますんだ!!私だ、グリッドマンだ!!』

『グリッド……マン………ほろ……ぼす……!!』

「グリッドマン、コイツから……六花を感じない……!」

『まさか、貴様の中にいるのは……!!』

 

フルパワーアナザーグリッドマンはグリッドマンを殴り飛ばすと、グリッドマンキャリバーを地面に突き立てる。

そしてフフフと六花の声で笑うと、彼女の声と男の声が混じり合った様な声で高らかに笑い始めた。

 

 

 

「『フッハッハッハッハッハ!!!何十年ぶりではないか、グリッドマン!!』」

『貴様……カーンデジファー!!!』

 

 

 

魔王カーンデジファー……それは26年ほど前に、ソウゴ達の世界で暗躍した次元犯罪者。

当時中学生だった藤堂武史に次々と怪獣を作らせ、コンピューターワールドを破壊し日本を大混乱に陥れた男。

だが彼はグリッドマンと、当時中学生だったグリッドマンの仲間達により滅ぼされたはずだった。

フルパワーアナザーグリッドマンの力と体を得たカーンデジファーはジオウとグリッドマンの首を掴むと、地面に叩きつけ、マスクの下にある六花の顔でニタリと笑う。

 

 

 

「『ワシは確かに死んだ。だが、貴様とアレクシス・ケリヴの戦いのエネルギーを得て、かすかに残っていたワシの細胞が復活を果たしたのだ!!復活したばかりでは満足に動く事も出来なかったが、丁度いい傀儡がいたのでな……この女をワシの完全復活の手駒にする事にしたのだ!!』」

「そんな……そんな理由で六花を………!!」

 

 

『アクセスコード!バリアシールド!!』

 

 

左腕のグラン・アクセプターが光ると、聞き覚えのある声が鳴り響き、空中に出現したゲートから彼の愛盾『バリアシールド』が降って来た。

バリアシールドはフルパワーアナザーグリッドマンを弾き飛ばし、グリッドマンの手中に収まると、グリッドマンはシールドの柄を引き抜き、愛剣『プラズマソード』を引き抜いた。

 

 

『よ、ようやく出番か……。』

「キャリバーさん!!」

 

『いい頃合いだ、サムライ・キャリバー!!』

「うわっ!すっごい!空から武器が降って来た!!」

 

 

バリアシールドが光り、男の声が聞こえる。

この男はかつて『電撃大斬剣グリッドマンキャリバー』に変身していたグリッドマンの仲間の新世紀中学生『サムライ・キャリバー』

このバリアシールドはグリッドマンキャリバーの真の姿であり、電光超人が26年間ずっと愛用し続けていた武器だ。

フルパワーアナザーグリッドマンがグリッドマンキャリバーを振るうと、それをバリアシールドで防ぎ、それにより出来た隙をジオウがライドヘイセイバーで突く。

 

『グッ……おのれ……!!』

「すげぇぞグリッドマン!!ほら新条、新条も応援しようぜ!!」

「私も応援していいのかな……。」

「良いに決まってんだろ!!友達じゃねーか!!」

「う……うん!頑張れ!グリッドマン!!」

 

 

「誰も俺の応援はしてくれないのかー……なんか寂しい気がする……。」

 

『鎧武!』

 

『ファイナルフォームタイム!ガ・ガ・ガ・鎧武!!』

 

 

皆グリッドマンの応援しかしてくれない中、ジオウは鎧武ライドウォッチをディケイドライドウォッチへと装填。

右肩に『ガイム』、胸に『カチドキ』の文字が浮かび上がり、彼のアンダーウェアは仮面ライダー鎧武の物へと変化。

最後にジクウドライバーから鎧の前掛けが出現し、ジオウは仮面ライダー鎧武 カチドキアームズの力を持つ『ディケイドアーマー鎧武フォーム』へと変身。

ライドヘイセイバーの代わりに火縄大橙DJ銃の大剣モードを両手でしっかりと構え、グリッドマンと共にフルパワーアナザーグリッドマンを切裂いた。

 

 

『ぐぅぅ……フハハハ……!効かん……効かんぞ……!!』

 

 

「相手が固すぎる……!!だったら……!」

 

再びライドヘイセイバーを手に取ると、そこへ鎧武ライドウォッチを装填。

中心の針を3周回し、ジオウは腰を落とす。

 

 

『Hey!Sey!Hey!Sey!Hey!Sey!HeHeHeHey!!Sey!!鎧武!平成ライダーズ!!アルティメットタイムブレーク!!!』

 

『フィニッシュタイム!ディケイド!!アタック!タイムブレーク!!』

 

 

「おりゃああああああああ!!!!」

 

 

『アルティメットタイムブレーク』と『アタックタイムブレーク』の合わせ技がフルパワーアナザーグリッドマンに炸裂。

フルパワーアナザーグリッドマンは吹き飛ばされ、学校の体育館に激突した。

バレー部の部室の中に叩き込まれたフルパワーアナザーグリッドマンは周りの余計な物を破壊しながら再び立ち上がった。

 

『今のは効いたぞ……!おのれ、名前も知らぬ戦士め……!!えぇい!!邪魔だ!!』

 

(問川……。)

 

『ムッ?貴様、まだ意識があったというのか……鎮まれ!!』

「六花を返せ!!カーンデジファー!!」

『ぜ、全員で行くぞ……!』

『よし!行くぞ裕太!!』

 

 

『アクセスコード!ツインドリラー!!』

『アクセスコード!サンダージェット!!』

 

 

再び空にゲートが出現し、そこから更に二体のアシストウェポンが現れた。

 

新世紀中学生のボラーが変身する『バスターボラー』の真の姿、ドリル型メカの『ツインドリラー』

新世紀中学生のヴィットが変身する『スカイヴィッタ-』の真の姿、戦闘機メカの『サンダージェット』

 

二体のアシストウェポンは宙を舞い、レーザー光線でフルパワーアナザーグリッドマンを攻撃する。

 

『おらおらぁ!!偽物はとっとと引っ込め!!』

『俺、赤って落ち着きが無くて嫌なんだよね~。』

『すまない……。』

「グリッドマンの事言ってるわけじゃないと思うよ、多分……。」

 

 

サンダージェットの言葉に少し傷つきながらも、グリッドマンはグラン・アクセプターを更に構える。

 

 

『アクセスコード!ゴッドタンク!!』

 

 

『久しぶりだな!!皆!!』

 

更にゲートから、新世紀中学生のリーダー格だった男 マックスが変身する『バトルトラクトマックス』の真の姿、タンク型メカの『ゴッドタンク』が出現。

全てのアシストウェポンがグリッドマンの近くに集まると、グリッドマンは飛び上がり、ゴッドタンクの上に騎乗した。

飛んできたツインドリラーは4つのパーツに分離し、サンダージェットは変形してグリッドマンの上に飛来。

そしてゴッドタンクは脚部に、ツインドリラーは両腕と両肩に、サンダージェットは上半身にそれぞれ合体。

最後にサンダージェットに収納されていたヘルメットの角が展開され、バリアシールドとプラズマソードが合体した大剣『グリッドマンソード』を手に握った。

 

 

 

『「超神合体!!サンダーグリッドマン!!!」』

 

 

 

3つのアシストウエポンが合体したグリッドマンの強化形態、その名も『合体超神サンダーグリッドマン』

グリッドマンソードとグリッドマンキャリバーをぶつけながら、サンダーグリッドマンとフルパワーアナザーグリッドマンは格闘戦を開始。

パワーはほぼ互角だ。

 

 

「そこにいるんだろ!?返事をして、六花!!」

『無駄だ!この女の身体はワシが完全に乗っ取っている!ワシはこの力で、全世界を支配するのだ!!』

『そうはさせない……裕太の世界も直人の世界も、私達が救って見せる!!』

 

 

サンダーグリッドマンがフルパワーアナザーグリッドマンを掴んで投げ飛ばした。

地面に激突したフルパワーアナザーグリッドマンはグリッドマンキャリバーを落とし、そこにすかさずジオウが斬りかかる。

 

「目ぇ覚ませよ六花!!裕太たちが待ってる!!仲直りしたいんだろ!?」

『無駄だと……言っているのだ!!』

「さっき、俺にも頼りになる友達がいるって言ったよね!?実は俺さ、未来では魔王になるみたいで……俺の友達は俺を倒す為に未来から来たんだ。色々あって、何度もアイツとぶつかったけどさ………今では俺の、一番の友達になってくれたんだ!だから六花も戻れるはずだ!!好きなんだろ!?皆の事!!だったら、こんな形じゃ無くて、もっと心からぶつかれよ!!」

 

 

しかし、ジオウの声は六花には届かない。

カーンデジファーの人格のままのフルパワーアナザーグリッドマンはジオウを掴み、サンダーグリッドマンへと投げ飛ばした。

二人は地面を転がり、ジオウはディケイドアーマーから通常形態に戻ってしまう。

フルパワーアナザーグリッドマンはサンダーグリッドマンを踏みつけ、高笑い。

 

 

 

『もはやワシの中にあの女の意識は存在しない。いよいよワシは、現実世界を支配するのだ!!』

 

 

 

「やべぇ……アイツ、強すぎる……!立て!!立ってくれ裕太!ソウゴ!グリッドマン!!」

「……まだだよ。」

「新条?」

「まだ六花の意識は消えて無いよ。さっき、バレー部の部室の中に入った時、アイツ少し動きが止ったよね?」

「あ……あぁ、そういえば……でもそれがなんだってんだ?」

「六花はずっと、私が殺した問川たちの事を気に掛けてた。あそこは、私が怪獣で問川たちを殺した場所だったから……。」

 

それに……とアカネは続けた。

 

 

「本気で自分を心配してくれる人がいれば、どんなに暗い場所からだって抜け出せる。それを教えてくれたのは、六花たちだったから……!」

 

 

そう言うと、アカネは飛び出した。

彼女はフルパワーアナザーグリッドマンとグリッドマン、ジオウの間に立つと、腕を大きく広げる。

フルパワーアナザーグリッドマンは拾い上げたグリッドマンキャリバーをアカネの喉元に当てると、彼女の首に小さな斬り傷を作った。

 

 

「六花……私は六花の気持ち、わかるよ。」

『何を言っている?ワシはカーンデジファー……この身体の意識などもはや存在しない!!』

「私もあっちに戻った時、一人だったから。でも、頑張ったんだよ。勇気を出して学校のクラスメイトに話しかけたり、家族とも色々話し合ってみたんだよ。難しかったし、怖かった。でも、それが出来たのも、全部……六花たちのおかげだったんだよ。」

『どうやら、本当に死にたいようだな……ならば……!』

 

 

グリッドマンキャリバーを振り上げるフルパワーアナザーグリッドマン。

アカネの首を掴みながら、彼女にグリッドマンキャリバーを振り下ろす。

 

 

 

 

「六花たちがいたから、私は一人じゃ無かった!だから、六花も怖がらなくていいんだよ……おびえないで、もう……君は一人じゃ無い!」

 

 

 

 

『………なに……!?』

 

振り下ろしたグリッドマンキャリバーが、アカネに突き刺さる寸前に止った。

その後、フルパワーアナザーグリッドマンは苦しむように悶え、頭を抱える。

徐々に全身のアシストウエポンが剥がれ落ち、最後に残ったバスターボラーのヘルメットが地面に落ちる。

すると地面に落ちたアシストウエポンは光の粒子になって一つに集まり、アナザーグリッドマンウォッチとなった。

更にジオウがそれを拾い上げると、アナザーグリッドマンウォッチの表面が割れて崩れ落ち、中から年号部分に『2018』とライダーズクレスト部分に『1993』と記されたライドウォッチが出現した。

 

 

「コレは……グリッドマンのライドウォッチ!!」

『新条アカネの言葉が、六花に届いたのか!』

「いける……今なら、六花を助け出せる!!ありがとう、新条さん!!」

 

 

『グリッドマン!』

『ジカンギレード!ジュウ!!』

 

ジオウがグリッドマンウォッチを起動した。

ジカンギレードを構えると、それをジュウモードに変形させてグリッドマンライドウォッチをはめ込む。

その隣ではサンダーグリッドマンが胸にエネルギーを溜め、拳を握る。

 

 

 

『フィニッシュタイム!!』

 

 

 

『まだだ……ワシは……ワシは不滅なのだ!!!』

 

 

六花の意識により拘束されたアナザーグリッドマン。

そのアナザーグリッドマンを目掛け、ジオウとサンダーグリッドマン、二人のヒーローの必殺技が炸裂した。

 

 

『グリッドマン!!スレスレシューティング!!』

 

 

「『サンダー……!!』」

「W~~!!」

 

「「『グリッドビ――――――――――ム!!!!』」」

 

 

 

 

サンダーグリッドマンの『サンダーグリッドビーム』とジオウの『グリッドマンスレスレシューティング』がアナザーグリッドマンを捉えた。

アナザーライダーの力を失ったアナザーグリッドマンは六花の姿に戻ると、その場に倒れそうになる。

だがそれを、ギリギリの所でアカネが受け止めた。

 

変身を解除し、駆け寄るソウゴと裕太。

少し経つと六花は目をさまし、自分を心配そうに見る彼らの顔を見ると、ばつが悪そうに眼を逸らした。

 

 

「……皆………その、ごm、」

 

「「「ごめん!!!」」」

 

「え……ちょっ……なんで皆謝るの……?謝るの、どう考えてもウチだし……。」

「ううん、俺が六花の事ちゃんと覚えてれば………それに、記憶が無いからって色々勘違いしちゃってたし、俺………だから、ホント、ごめん……。」

「裕太は悪くねーよ!!記憶無かったんだし!!それよか、そんなに悩んでたなんて気づかずに、無神経な事言ってた俺が一番スイマセンでしたでしょ!!」

「それを言うなら元はと言えば全部私のせいだし……六花の事も、響くんの事も……。」

「でも今回一番悪いの私じゃん。皆に謝れるのは、なんか違うって言うか……。」

 

気付いた時には、全員笑っていた。

裕太も、内海も、六花も、もちろんアカネも。

手に入れたグリッドマンライドウォッチを見ながら、ソウゴも微笑む。

彼は六花の前に立つと、彼女に笑いかけた。

 

 

「いいよね、友達って!」

「……うん、そうだね。」

「そりゃもうグリッドマン同盟ですから!なっ、裕太!」

「あぁ!新条さんも!」

「私もいいの?」

「当たり前じゃん。アカネだって、私達の友達なんだから。」

「じゃあ俺は俺は?」

「ソウゴは……うーん……友達だとは思うけど、グリッドマン同盟って言われると微妙かも……。」

「えー!?なんで!?」

「だって、円谷と石ノ森って別会社じゃん。」

「そんなぁ~……。」

 

 

 

 

 

 

 お  の  れ  グ  リ  ッ  ド  マ  ン…………!!!

 

 

 

 

「!!」

 

背後の殺気に気付き、裕太が振り返った。

先ほどアナザーグリッドマンが倒された場所に、黒い靄のような物が浮かんでいる。

それらは一つに集まると、黒いマントを羽織った怪人の姿へと変わり、バサッとマントを翻す。

 

 

『だが……すでに十分なエネルギーは補給し終わった……!現実世界でお前達の仲間が倒した怪獣たちのエネルギーがな……!』

「カーンデジファー……!!」

『ワシは魔王カーンデジファー!!いよいよワシは、現実世界を侵略するのだぁ!!フッハッハッハッハッハ!!!!』

 

 

アナザーグリッドマンとなっていた事で、エネルギーの補給を済ませてしまった魔王カーンデジファー。

その体が再び黒い靄のようになると、カーンデジファーは近くの電柱の中に吸い込まれる。

そして電線を通りながら、この街の電力エネルギーを更に吸収。

やがて彼は空にゲートを開くと、その中へと吸い込まれて行った。

 

 

「このままじゃアイツが外の世界で暴れる……!!俺、行かなきゃ!!あ、でもアカネどうしよう……。」

「あそこがアカネたちの世界に繋がってるの?」

「………常磐くん、だったっけ?私の事は気にせずに先に行って来て。」

「でも……。」

「大丈夫。私を信じて。」

「………わかった!」

「ソウゴ、俺に……っていうか、グリッドマンに考えがあるんだ。向こうに着いたら、藤堂武史って人に伝えてほしい。」

 

 

裕太からメッセージを受け取ると、ソウゴは再び仮面ライダージオウに変身。

更にそこからディケイドアーマーブレイドフォームに強化変身を遂げると、オリハルコンウイングを広げた。

間もなくゲートが閉じる……急がなければ。

 

 

「それじゃあ、皆!!元気で!!アカネ、後で絶対迎えに来るから!!!」

 

 

空に浮かぶゲートへと消えて行くジオウ。

彼に手を振った後、グリッドマン同盟の4人はすぐに六花の部屋の、ジャンクへと向かった。

 

 

~~

 

 

 

その頃、現実世界

 

街に出現した怪獣を殲滅したゲイツとウォズは、ボロボロになりながらもクジゴジ堂に戻って来た。

そこにはすでに武史もおり、彼は倒れそうになるゲイツに肩を貸す。

 

「おっと……大丈夫かい?」

「あぁ……問題無い……それより、カーンデジファーは見つかったのか?」

「いや。コンピューターワールドのどこを探しても、カーンデジファーらしき存在は見当たらなかった。」

「我が魔王は?」

「アナザーグリッドマンと合わせて、まだ見つからないわ。コンピューターワールドにいるのは、間違いないんだけど……。」

『もしかしたら、彼等はツツジ台にいるのかもしれない。』

「ツツジ台?シグマ、どこなのそれは?」

『ツツジ台とは、新条アカネの作ったコンピューターワールドだ。あの世界に外側からアクセスできるのは、グリッドマンだけ……。もしあのアナザーグリッドマンがツツジ台に潜り込んでいたら、常磐ソウゴが自力で脱出する以外に方法は無い。』

 

グリッドマンシグマの読み通り、ソウゴとアカネはツツジ台にいる。

そこであった事件の事は、彼等は何も知らない。

やがて徐々に辺りが暗くなってきはじめた。

もうそんな時間かと、ウォズがカーテンを閉めようとしたら、ツクヨミがある異変に気付く。

 

 

「待って……まだ16時よ。いくらなんでも暗くなるのが早すぎない?」

「………まさかもうすでに……!!」

 

 

何かに気付いたのか、武史が慌てて外へと出た。

彼の眼前に広がっていたのは、あまりにも異様な光景。

 

空は黒い雲に覆われ、まるで台風の目の様に中心には切れ目。

その切れ目にはまるでタイムマジーンが出て来る時のような時空の歪みが生じており、その中からどす黒い靄が溢れだしている。

やがてそれらは一つの塊となり、巨大な魔王を形成した。

 

 

 

『フハハハハハハ!!!!ついに……ついに戻って来たぞ愚かな人間どもよ!!我が名は魔王カーンデジファー!!この世界の、新たな支配者である!!』

 

 

 

 

蘇った魔王……カーンデジファー。

 

その姿は26年前と変わらず、黒一色のマントを翻している。

手始めにカーンデジファーはデジファーソードを構えると、近くにあったビルを一刀両断してしまった。

 

 

「バカな……巨大すぎる……!!」

「あれがカーンデジファー……恐れ入った……これほどの敵とは……。」

 

ゲイツとウォズも、カーンデジファーの巨大さに恐れを無し、後ずさった。

しかし武史はアクセプターを右腕に巻き、グリッドマンシグマの宿るパソコンを持って走り出した。

 

「どこへ行くんですか!?」

「この世界で実体化したヤツと戦うためには、ただのパソコンではダメなんだ!!急いで桜が丘に戻らなければ!!」

 

武史に言われるがまま、ツクヨミはタイムマジーンを呼び武史を乗せる。

同様にゲイツもウォズをタイムマジーンに載せ、4人は桜が丘を目指す。

タイムマジーンの速さならば歩きでは時間のかかる桜が丘でもものの数分で到着し、武史は急いである場所を目指した。

そこは『INTERIOR SPACE彩』というインテリアショップであり、それを見たゲイツは呆れて肩を落とす。

 

 

「こんな時に何を買うつもりだ!?」

「違う。用事があるのはこっちだ。」

 

 

そう言いながら武史が入ったのは、『彩』の傍にある地下スペース……倉庫の様になっており、その中の一台、大事そうに布を掛けられた古いパソコンに手を触れた。

 

現実世界での、『ジャンク』だ。

 

武史が電源を入れていないにもかかわらず、勝手に電源が入ると、すでにグリッドマンシグマはその中に移動していた。

 

 

「なんだこの古いパソコンは?」

「グリッドマンの力の源……僕達の、原点さ。行こう、シグマ!」

『あぁ!一緒に戦おう、武史!!』

 

 

「アクセース!!フラーッシュ!!!」

 

 

いつも通り、アクセスフラッシュをしてパソコンの中に吸い込まれていく武史。

その様子を見守りながら、ツクヨミは未来タブレットでニュースを見ていた。

 

 

『皆さんご覧ください!!カーンデジファーです………26年前、我々を恐怖に陥れたあの魔王が、ついに帰ってきてしまったのです!!助けて……助けてグリッドマン!!』

 

 

「どうやら、この街の人間はグリッドマンの存在を知っていた様だな。」

「えぇ。それでも、今の若い子は知らない人も多いみたい。」

「26年前………1993年か。この本にも、クウガ以前の歴史については記されていない。我々にとっては、カーンデジファーは未知数の敵というわけだ。」

 

ウォズがそう言って、本を閉じる。

 

 

 

そして、カーンデジファーの目の前には、青いヒーローが降りたった。

グリッドマンシグマだ。

 

『はぁあ!!!』

『貴様はグリッドマン!!………いや、違うな。グリッドマンはあの世界に閉じ込められているのだから。』

『やはりグリッドマンは、ツツジ台に閉じ込められていたのか……!!どおりでコンタクトが取れないはずだ……。』

『貴様は何者だ?』

『俺はハイパーエージェント、グリッドマンシグマ!!グリッドマンの弟……そして、お前の因縁の相手でもある!!』

 

グリッドマンシグマが、ついにカーンデジファーに殴りかかった。

デジファーソードを躱しながら、グリッドマンシグマはカーンデジファーにパンチやキックを命中させる。

しかし、スペック上ではグリッドマンと同等の力を持つグリッドマンシグマの攻撃にもかかわらず、カーンデジファーはダメージを受けている様子は無い。

 

『馬鹿な……!?』

『フハハハハハ!!ワシはアナザーライダーの力をそのまま受け継いだ!!今のワシに、グリッドマン以外の力は通用せんわ!!!』

 

 

元の姿と、以前よりも強い力を手に入れたカーンデジファーは終始グリッドマンシグマを圧倒し続ける。

それでもグリッドマンシグマは負けじと、人々を守りながらもカーンデジファーへと反撃。

だが、通用しない。

 

『む?貴様……もしや、武史か……?ほう……貴様がハイパーエージェントになるとはな。』

「カーンデジファー……この世界を、お前の好きなようにはさせない!!」

『フッハッハ!!ワシと共に世界を滅ぼそうとした男が今更何を言う!!』

『武史はお前とは違う!!今の武史のパートナーは、俺だ!!』

 

そう叫び、反撃するグリッドマンシグマ。

だが、突然彼の後ろにゲートが開き、そのゲートに通じるコンピューターワールドの中から、二体の怪獣が現れた。

 

火炎怪獣フレムラーと、冷凍怪獣ブリザラーだ。

 

二体の怪獣はグリッドマンシグマを後ろから攻撃し、彼を地面に叩き伏せる。

そしてその顔面を、カーンデジファーが踏みつけた。

 

『ぐっ………!』

『今のワシは、全ての怪獣を思いのままに生み出せる。もはやこの世界は、ワシに物になったのも同然なのだ。』

 

 

 

 

 

「このままじゃやられる……どうにかして助けないと!」

 

グリッドマンシグマのピンチに、ツクヨミは焦りを感じてゲイツとウォズに言った。

しかしゲイツもウォズも顔をうつむかせる。

 

「助けたいのはわかる。だが、奴の大きさが違い過ぎる……。」

「ざっとみてタイムマジーンの3倍以上。正直、私とゲイツくんが加勢した所で、シグマの足手まといが増えるだけだ。」

「そんな……どうすればいいの………。」

 

 

 

ドカッ!!うわっ!いってぇ……!

 

 

 

「!」

 

突然下から物音が鳴った。

更に聞き覚えのある声がしたので、急いで3人は地下に降りる。

するとそこには、ジャンクから出て来たと思わしき彼らの魔王の姿があった。

 

「ソウゴ!!」

「ジオウ!!」

「我が魔王!!」

 

 

「いててて……あ、ただいまみんな!」

 

 

常磐ソウゴが帰って来た。

彼の手にはグリッドマンライドウォッチが握られており、それを見たウォズは目を丸くした。

 

「そのウォッチは……!」

「新条アカネはどうしたジオウ?一緒じゃないのか?」

「説明は後だ!それより、人を探さないと!」

「人?」

「うん。藤堂さんならその人の居場所を知ってる筈なんだけど……もう戦い始めちゃってるのか~……。」

 

はぁ~と、ため息をつきながら頭を抱えるソウゴ。

彼はグリッドマンウォッチを握りしめ、とある人物を探す為に地下室から飛び出した。

すると外には見覚えのある男が立っており、彼はソウゴ達の話を聞いていたのか、ソウゴ達に『よっ!』と挨拶をしてきた。

 

 

 

「その必要は無い。君達が探そうとしてるのは、多分俺だ。」

「あなたは………餃子屋の店主さん……?」

 

 

 

そこにいたのは、順一郎に連れられて食べに行った餃子屋の店主だった。

 

彼はソウゴの手にあるライドウォッチを見ると、ふむ、と顎に手を当てる。

ソウゴは彼に近づくと、グリッドマンライドウォッチと彼の顔を交互に見た。

 

 

 

「アンタが、翔直人?」

「いかにも。俺の名前は翔直人。グリッドマンのパートナーだった男だ。」

 

 

 

餃子屋の店主……直人はグリッドマンシグマとカーンデジファーを見上げた。

カーンデジファーの復活を知り、いても経ってもいられずにジャンクの部屋に駆けつけたらしい。

直人はソウゴ達と共にジャンクの前に行くと、懐かしそうにジャンクを撫でる。

 

「これほど身近にレジェンドがいたとは……!」

「グリッドマンに頼まれたんだ。『自分を直人に会わせて欲しい』って……そして、コレはアンタの力だ。」

「グリッドマンか……懐かしいな。」

 

ソウゴからグリッドマンライドウォッチを受け取る直人。

するとジャンクに再び光が灯り、そこには、ソウゴと共に戦った響裕太が映し出されていた。

 

 

 

『えっと………アナタが、直人さん……?』

「君は?」

『あ、響裕太です。グリッドマンやってました!』

「そうか、君が……!」

『お願いします!俺と一緒に、グリッドマンとして戦ってください!!』

「………あぁ、もちろんさ。そのつもりで俺はここに来たんだから。」

 

 

『グリッドマン!』

 

直人がグリッドマンライドウォッチを起動した。

ライドウォッチの力が彼の左手に宿り、やがてその力はアクセプターの形を形成する。

現実世界とコンピューターワールド……二つの世界でそれぞれアクセプターを構える翔直人と響裕太。

初めて出会う二人だったが、お互いに懐かしさを感じていた。

何故なら響裕太はグリッドマンだったから。

そして翔直人とその仲間達は、グリッドマンのモデルとジャンクの生みの親なのだから。

 

 

 

「『アクセース!!フラーッシュ!!!』」

 

 

 

それぞれの世界でアクセスフラッシュを行う二人。

コンピューターワールドでは裕太はグリッドマンに変身し、現実世界では直人は合体用スーツに変身を遂げる。

そして直人がジャンクに吸い込まれると、向こうの世界のジャンクの前に出現し、そこにいたグリッドマンと一体化。

現実世界へ向かうゲートが出現すると、現実世界側のジャンクにパスワードの入力画面が現れた。

 

 

 

『戦闘コードを打ち込んでくれ!アクセスコードは、『GRIDMAN』!!』

 

 

 

ジャンクの入力画面に、ゲイツがアクセスコード『GRIDMAN』を入力。

すると今度は画面に『Special Signature to Save a Soul GRIDMAN』と表示され、グリッドマンのステータス画面に変化した。

 

 

26年

 

長い月日と、様々な思いを重ね、直人と裕太という二人のパートナーと合体を遂げたヒーローは、ついにこの世界に姿を現した。

 

全長約70メートル、体重約6万トン

 

巨大なボディと、それより大きな優しさを持つ、かつて日本中の子供たちが憧れたヒーローの姿がそこにはあった。

 

 

「ほらほらウォズ!いつもみたいに祝ってよ!」

「我が魔王がそれをお望みとあらば、喜んで。」

 

 

カーンデジファーの前にそびえ立つ、赤いハイパーエージェント。

その登場に、かつて子供だった者は手に汗握り、今の子供たちは歓声を上げた。

 

 

 

「祝え!全時空を股に掛け、世界を悪の魔の手から救うハイパーエージェント!その名も電光超人グリッドマン!!今まさに、誰もが待ち望んだ『夢のヒーロー』が、この地に降り立った瞬間である!!」

 

 

 


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