RIDER TIME 電光超人GRIDMAN   作:バース・デイ

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1993:ユメのUNION2018

『ご覧ください皆さん!!グリッドマンです!!26年前、私達を魔王の脅威から救ってくれたグリッドマンが、今再び、我々の前に姿を現したのです!!』

 

ラジオから聞こえるアナウンサーの興奮気味の声。

それを聞きながらソウゴ達は、この地に舞い降りた電光超人を見上げる。

翔直人と響裕太と合体し、真の覚醒を果たしたグリッドマンは、カーンデジファーの前に立ち、構えを取る。

カーンデジファーはデジファーソードを両手に構え、グリッドマンを睨みつけた。

 

『どこまでもこのワシを追って来るかグリッドマン!!』

『私の使命は、お前のような邪悪な心を持つ者から、この世界を守る事!お前がこの世界を脅かす限り、私は何度でもお前の前に立ちふさがる!!』

「随分しつこいじゃねーか、カーンデジファー。もう26年も経ってるんだ、いい加減諦めろ。」

『六花の心を傷つけた……お前だけは許さない!』

『小癪な!!』

 

 

走り出すカーンデジファーとグリッドマン。

カーンデジファーがデジファーソードを向けると、グリッドマンはそれを躱す。

更にカーンデジファーを自分の足に引っ掛けてバランスを崩させると、体勢を崩したカーンデジファーを掴み、地面に叩きつけた。

だがカーンデジファーはすぐに起き上がり、グリッドマンの腕を掴む。

グリッドマンの腕を掴んだまま彼を振り回すと、ソウゴ達のいる方向に向けてグリッドマンを投げ飛ばした。

 

「あわわわやばい!!こっちにくる!!」

「どこにも逃げ場が無いぞ!!」

 

慌てるソウゴ達だったが、彼等の前に、起き上がったグリッドマンシグマが立ち、飛んできたグリッドマンを受け止める。

二人共もその場で膝をつくが、お互いに手を取り合い立ち上がった。

 

『待っていたぞ、グリッドマン!』

『待たせてすまなかったシグマ。共に戦おう!』

「直人、君のその姿を見るのは何十年ぶりかな。」

「正直、まだ全然勘が戻ってこないわ。っていうわけで、頼りにしてるぜ裕太くん。」

『はい!!』

 

二人同時にカーンデジファーに襲い掛かるグリッドマンとグリッドマンシグマ。

だがカーンデジファーはデジファーソード二刀流でグリッドマンとグリッドマンシグマ両方の攻撃を防ぎながら、二人同時に地に伏せる。

この強さ……26年前以上だ。

それほどアナザーライダーの力は強く、グリッドマンとグリッドマンシグマの二人の戦闘力を圧倒している。

その様子を見ながら、ゲイツは拳を握り、その場を離れようとする。

 

「どこに行くのゲイツ?」

「グリッドマンの加勢に決まっている!タイムマジーンでは心もとないが……行かないよりはマシだ!」

「先ほど私が言った通り、私達ではグリッドマンの足手まといにしかならないよ。それに、さっき君が言ったはずだ、大きさが違い過ぎると。」

「ならばこのまま指をくわえて見ていろと言うのか!!」

「まぁまぁ、ちょっと待ってよゲイツ。」

「ジオウ………何か考えがあるのか……?」

「ううん。でも、俺達には俺達にしか出来ない、俺達のやるべき事がある。」

「やるべき事?それはなんなのソウゴ?」

「うん。それはね………、」

 

 

~~

 

 

 

その頃、ツツジ台…

 

『ぐあぁああああ!!!』

「裕太!グリッドマン!!」

 

ジャンクを六花の家の一階……『絢JUNKSHOP』の、今までジャンクがあった場所に移した内海達は、ジャンクを通じてグリッドマンとカーンデジファーの戦いを見ていた。

裕太と直人の二人と合体したグリッドマンがグリッドマンシグマと手を組んでいるにもかかわらず、それを圧倒するカーンデジファーの恐るべき戦闘能力に驚愕する。

 

「くそっ!!こっちじゃ見てるだけしか出来ないのか俺達は!!」

「響くん……グリッドマン……お願い、勝って……!」

「……こんな時、アレクシスがいたら……。」

 

 

 

 

「何も出来ないから、何もしないつもりか?」

 

 

 

「! 君は……!」

 

その時、店の中に、銀髪の少年が入って来た。

赤と青のオッドアイを持つその少年を見て、アカネは目を丸くする。

 

 

「アンチ……!生きてたの……!?」

「新条アカネか。」

 

 

彼の名は『アンチ』

かつてアカネが作った、人間に擬態できる自我を持つオートインテリジェンス怪獣。

グリッドマンを倒す為に作られた怪獣だが、心を持ったため新たな戦士『グリッドナイト』へと生まれ変わった少年だ。

以前アカネの目の前でアレクシス・ケリヴに剣で貫かれて死んだものかと思っていたが、なんとか一命を取り留めていた様だ。

 

「アンチくん、どうしてここに……?」

「借りを返しに来た。」

「借り?」

「昼間、この女に食べ物を貰った。だからその借りを返す。」

「六花、アンチに食べ物あげてくれてるんだ?」

「アハハ……うん、まぁ、たまに……。」

 

時々アンチを見掛けては六花は彼に食べ物を与えている。

六花からすればただの親切だが、アンチからすればそれだけで彼は六花の為に命を掛ける事が出来る。

アンチとはそういう男だ。

 

「でも、お前が来た所でどうしようもねーよ……相手は神様の世界にいるやつなんだぞ!?グリッドマンと合体できる裕太はともかく、お前じゃあそこには行けねぇ!」

「そうか。」

 

内海がそう言うと、アンチはジャンクの前に立つ。

そのまま彼の姿は光になってジャンクに吸い込まれ、店の中全体に電流が迸った。

 

 

 

「うわっ!?なんだコレ……!?まぶしっ!!」

「うっ……ってアレ!?アカネ、それ……!」

「え?」

 

 

 

余りの眩しさに目をふさいだ一同。

目を開けた時、アカネの右手に、紫色のアクセプターが装着されていた。

その外見は直人や武史の物とは異なり、覚醒前の裕太が付けていたアクセプター……プライマルアクセプターと同型だった。

 

「アンチ……コレって……!」

「そうか!グリッドマンや裕太が神様の世界の人間と合体すれば向こうに行けるように、グリッドナイトも神様の世界の人間……新条と合体すれば向こうに行ける!」

「じゃあ、アカネがアンチくんと!?」

 

自分の右手のプライマルアクセプターを見つめながら、しばらく考え込むアカネ。

少し目を閉じた後、彼女は目を開け、ジャンクの前に立った。

 

「私行ってくるよ六花、内海くん。」

「アカネ!!」

「私はここで、大事な事を教えてもらった。だから、絶対にここを守りたい。大丈夫だよ、ちゃんと戻ってきて、今度は……ちゃんと皆とお別れするから。」

「……わかった。よし!行ってこい新条!」

 

内海と六花に背中を押され、右腕を構えるアカネ。

そのポーズは、かつての裕太と丁度左右対称になっていた。

 

 

「アクセス……フラーッシュ!!」

 

 

~~

 

 

 

現実世界

 

現実世界のジャンクから紫色の光が放たれた。

その光はジャンクを通じて街の電線を通り、グリッドマン達の下へと向かう。

そして、光はグリッドマンとカーンデジファーの間に落ちると、そこから紫色の巨人を生み出した。

出現した紫色の巨人はカーンデジファーを殴り飛ばすと、軽やかにジャンプし、グリッドマンとグリッドマンシグマの間に降り立つ。

 

 

『誰だ?』

『お前は………グリッドナイト!!』

『グリッドマン、お前は俺が倒す。だからお前が奴に倒されないために、俺がお前を守る。』

 

 

その名も、グリッドナイト。

グリッドマンやグリッドマンシグマとは異なるメカニカルなボディを持つ、電光超人を守る電光騎士だ。

 

 

『どうしてグリッドナイトがこの世界に……!?』

「私がアンチと合体したからね。」

『その声……新条さん!?』

「新条アカネだと!?ハハハ……まさか、昔の僕と同じような事をしていた君が、今の僕と同じ道を辿るなんてね……。」

 

 

並び立つ3人の電光超人。

翔直人、響裕太と合体した電光超人グリッドマン。

藤堂武史と合体した電光超人グリッドマンシグマ。

そして新条アカネと合体したグリッドナイト。

3人は一斉に走り出し、カーンデジファーに襲い掛かった。

だがカーンデジファーも一人では無い。

火炎怪獣フレムラーと、冷凍怪獣ブリザラーがカーンデジファーを守る様にそびえ立つ。

グリッドナイトがフレムラーを、グリッドマンシグマがブリザラーをそれぞれ相手に取り、グリッドマンはカーンデジファーと交戦を開始。

そしてそれをサポートするため、ツクヨミがジャンクの前に座りゲイツとソウゴがその昔直人の仲間が書きためたグリッドマンの資料をかたっぱしから彼女に渡す。

ウォズはスペシャルドッグを食べ始めた。

 

「何食ってんだウォズ!!お前も働け!!」

「焦っていてはいい結果は出ないよ、ゲイツくん。」

「あった!あったよツクヨミ!これをジャンクに打ち込んで!」

「わかったわ。聞こえるグリッドマン達?今からアシストウエポンを転送するわ。」

 

ソウゴがツツジ台で見たサンダーグリッドマン。

アレがかつてこのジャンクで作られた物ならば、きっと今のグリッドマンも使える筈。

そう考えたソウゴの提案により、見つけ出した資料に記されたアクセスコードを入力し、グリッドマン達に支援メカを転送。

 

 

「アクセスコード!バリアシールド、サンダージェット、ツインドリラー、ゴッドタンク、ダイナファイター、キングジェット、Go!!」

 

 

ツクヨミがノリノリでアクセスコードを入力すると、グリッドマン達の元にゲートが開き、そこから大量のアシストウエポンが出現。

本来これだけのアシストウエポンを同時に転送すればジャンクは処理落ちを起こしてしまうが、それを防ぐためにツクヨミの未来タブレットをジャンクに接続し、一時的に容量を引き上げている。

転送されてきたアシストウエポンに向かい、グリッドマンとグリッドマンシグマが飛び上がる。

グリッドマンは新世紀中学生だった3つのメカと、グリッドマンシグマはキングジェットとダイナファイターとそれぞれ合体を果たした。

 

 

 

『『「超神合体!!サンダーグリッドマン!!!」』』

 

『「合体竜帝!!キンググリッドマンシグマ!!!」』

 

 

 

グリッドマンはサンダーグリッドマンに超神合体。

ダイナファイターが変形したドラゴニックキャノンを構え、グリッドマンシグマはキンググリッドマンシグマに竜帝合体。

冷凍怪獣ブリザラーの冷凍ガスがキンググリッドマンシグマを襲うが、彼はびくともしない。

体内から発せられる超高温のエネルギーが、絶対零度を誇るブリザラーのガスを無効化している。

ガス攻撃を無駄だと判断したブリザラーは、今度はキンググリッドマンシグマに肉弾戦を仕掛けてくるが、それでも一切のダメージは通らない。

 

 

『これでとどめだ!!』

 

 

ブリザラーを殴り飛ばすと、ドラゴニックキャノンをブリザラーへと向ける。

全身のエネルギーがドラゴニックキャノンへと注がれ、最強の必殺技をブリザラーへと叩き込んだ。

 

 

『シグマァァァ……ドラゴニック、ビーーーーーーーーーーーム!!!!!』

 

 

『ギャオオオオオオオオオオオオ!!!!!!』

 

キンググリッドマンシグマの必殺技が、ブリザラーを貫く。

砕け散ったブリザラーは爆発するのではなく、まるでパソコンのデータが消えるかのようにあっけなく消滅した。

 

 

 

ブリザラーの兄弟怪獣、火炎怪獣フレムラーと交戦するグリッドナイト。

軽やかな動きでビルからビルへと飛びまわり、フレムラーを翻弄。

彼は飛んできたバリアシールドを手に取ると、そこからプラズマソードを引き抜く。

更にそこに自分の力を注ぐと、プラズマソードは形状を変えて大型化し、グリッドナイト専用武器『グリッドナイトキャリバー』へと変化した。

 

「まさか君とこうなる日が来るなんて、思わなかったよ。」

『俺もだ。』

「しぶとく生きてたら何が起きるかわかんないね、お互い。」

『そうだな。生きてさえいれば……何が起きても不思議では無い。それが命だ。』

「怪獣の君に命のどうこうを言われるなんてね。ホント……君は失敗作だったよ。」

『あぁ。俺はお前の失敗作だ。』

「じゃあアンチ、失敗作なら失敗作なりの意地っての見せてよ。」

『わかった。』

 

グリッドナイトキャリバーを逆手に構え、フレムラーでは対応できない速度で走り回るグリッドナイト。

やがて彼は一瞬止まると、その一瞬でフレムラーを頭から一刀両断してしまった。

フレムラーはブリザラーの様にあっけなく消滅し、グリッドナイトは剣を降ろす。

だが、次の瞬間、彼は背中から何者かにエネルギー波の様な物を浴びせられた。

振り向くと、そこにはグリッドナイトの怪獣態である『臥薪嘗胆怪獣アンチ』とそっくりな怪獣……『忍者怪獣シノビラー』がいた。

 

 

『ご覧くださいカーンデジファー様!!この者は、このシノビラーが倒してご覧に入れましょう!』

「あの怪獣、喋って……!」

『俺と同じタイプの怪獣か……。だが!!』

 

 

グリッドナイトの目が光る。

すると彼の右手に新しく出現したプライマルアクセプターから、3つのアシストウエポン……『バスターボラー』『スカイヴィッタ-』『バトルトラクトマックス』が出現。

元々グリッドナイトにはグリッドマンをコピーする能力があった。

グリッドマンとの戦闘データを解放する事で、コピーしたアシストウエポンの力を実体化させたのだ。

そして彼はアカネと共に、3つのアシストウエポンとグリッドナイトキャリバーと合体を果たす。

 

 

『「超合体騎士!!フルパワーグリッドナイト!!!」』

 

 

頭部の構造上、ヘルメットは装着できず、フルパワーグリッドマン時にある胸部のパーツが無い事以外はフルパワーグリッドマンと同等の姿になったグリッドナイト。

彼はシノビラーを掴んで空中に放り投げると、両手で握ったグリッドナイトキャリバーを高く掲げる。

 

 

『フルパワーチャージ!!』

 

 

そして落ちてきたシノビラーに、アカネと共に強烈な必殺技を放った。

 

 

『「ナイト!!フルパワー……フィニーーーーーーーッシュ!!!!」』

 

 

 

『カーンデジファー様ぁああああああああああ!!!!!』

 

グリッドナイトの前にあっけなく散ったシノビラー。

フルパワーグリッドナイトはグリッドナイトキャリバーを再び逆手に持ち変えると、キンググリッドマンシグマと共にサンダーグリッドマンの下へ向かった。

 

 

お互いの腕を掴みあい、取っ組み合いを始めるカーンデジファーとサンダーグリッドマン。

二人の力はほぼ互角……だが、わずかにサンダーグリッドマンの方が強い。

サンダーグリッドマンはカーンデジファーを持ち上げると、そこに強烈なパンチを叩き込む。

倒れたカーンデジファーに、サンダーグリッドマンは拳を突きつける。

 

『サンダーァァァ………グリッドォォォォ………ビーム!!』

 

必殺のサンダーグリッドビームが命中し、カーンデジファーは雄叫びを上げる。

勝負をつける為、サンダーグリッドマンは走りだし、キックを放つが、カーンデジファーは間一髪でそれを躱した。

そこへ、キンググリッドマンシグマとフルパワーグリッドナイトが駆けつける。

 

 

『もう勝負はついている、カーンデジファー!!』

『おのれグリッドマン……またしても邪魔を……!!』

「もう諦めるんだカーンデジファー。お前じゃ僕達には勝てない。」

『………フッハッハ……武史、この愚か者め……!!ワシは、不滅なのだ!!』

 

 

勝利を確信した彼らは、一瞬油断をした。

 

カーンデジファーの投げたデジファーソードに、誰も対応できなかった。

その剣はサンダーグリッドマンを貫き、サンダーグリッドマンはその場に倒れる。

カーンデジファーは剣を引き抜くと、その先端に刺さっていたグリッドマンライドウォッチを手に取った。

 

 

『グリッドマン!!』

「直人!!しっかりしろ!!」

『フハハハハハ!!!!見るがいい武史!!そしてグリッドマンよ!!これがワシの究極の姿だ!!』

 

 

 

『グリッドマン!アーマータイム!!【BABY DAN DAN!】グリッドマーン!!』

 

 

 

ライドウォッチを起動すると、カーンデジファーの身体がアナザーグリッドマンと融合した様な姿に変わって行く。

全体像はグリッドナイトの様に代わり、頭部はカーンデジファーをアナザーライダー風に歪ませた形状に変形。

 

 

カーンデジファーとアナザーライダーの力が完全に融合した、『カーンナイト』だ。

 

 

 

『全ての生命に、安らかな死を!!』

 

 

そう叫び、カーンナイトは片手を振るう。

するとサンダーグリッドマン達に無数の雷が落ち、キンググリッドマンシグマもフルパワーグリッドナイトもその場に膝をつく。

 

『ぐっ………ま、まずい……このままでは……!直人とのアクセスフラッシュを維持できない……!!』

「くそっ!!俺達じゃカーンデジファーには勝てないのかよ!!」

 

ライドウォッチを奪われてしまった今、グリッドマンとしての使命を終えている直人とのアクセスフラッシュはそう長くは続けられない。

この世界の人間である直人との合体が解ければ、グリッドマンと裕太はこの世界で活動する事は出来ない。

 

 

『やめろぉぉおお!!!』

 

 

立ち上がったフルパワーグリッドナイトがカーンナイトに体当たりしてきた。

だがカーンナイトは多少ふらつきを見せるが、すぐにフルパワーグリッドナイトの頭を掴み、地面に叩きつける。

 

 

『新条アカネ、お前には感謝しているぞ。お前の情動のおかげで、アレクシス・ケリヴはワシを蘇らせるほどの力を得ることが出来た。どうだ?このワシと組めば、お前の望む世界を与えてやっても良いのだぞ?』

「そんな物……いらない。」

『何故だ?』

「どんな世界でも、そこにいる人達を自分の都合で勝手に動かしていいわけがない!」

『残念だったな……新条アカネは、お前が操れるほど簡単なヤツではない。』

『そうか。ならば死ぬがよい!!』

 

 

フルパワーグリッドナイトを掴み、キンググリッドマンシグマにぶつけるカーンナイト。

今にもアクセスフラッシュが解けそうなサンダーグリッドマン。

絶体絶命だ。

 

 

 

「グリッドマン達がやられるわ!」

「ジオウ!!」

「………大丈夫。ゲイツ、ウォズ、さっき話した通りだ。行こう。」

「やれやれ……その決断力と判断力、我が魔王ながら恐れ入るよ。」

 

『『『ターイム、マジーン!!』』』

 

 

 

~~

 

 

 

ツツジ台

 

ジャンク越しにグリッドマンを見守る内海と六花。

グリッドマンもグリッドナイト……裕太とアカネがなすすべなく一方的にやられている。

あまりの惨状に、六花は目をそらしてしまう。

 

「もう駄目……見てられない!」

「目を逸らしちゃダメだ!……俺達はグリッドマン同盟なんだ………たとえ何も出来なくても、裕太たちの事をちゃんと見てやらなきゃダメなんだ!」

「でも……響くん……アカネ……。」

 

 

『ぐっ………六花………内海………!』

 

 

その時、ジャンクから裕太の声が聞こえた。

思わずジャンクに身を乗り出す二人。

裕太の声に、耳を研ぎ澄ます。

 

 

 

『皆の力が必要だ……!俺と、直人さんと、グリッドマンに……もう一度、力を……!!』

 

 

 

カッ!と、ジャンクから激しい光が放たれた。

あまりに眩しさに目を瞑る二人……そして、次に目を開けた瞬間、二人の左腕に金色の機械が巻き付いていた。

 

プライマルアクセプターだった。

 

 

「アクセプター!?俺と六花に!?」

「響くんが呼んでる……私達を……。」

「……どうする、六花?」

「……行くよ、私は。怖いけど、響くんの力になりたい。内海くんももちろん行くでしょ。」

「当然!それに合体は、最近のウルトラシリーズじゃ定石だしな!」

「フフッ、何それ。気持ちワルッ!」

「気持ちワルかねーでしょ!」

 

 

その頃、現実世界で戦うサンダーグリッドマンの中にいる裕太にも変化が訪れていた。

彼の左手のアクセプターが砕け散り、中からかつて彼が使っていたプライマルアクセプターが出現。

それを見ながら、直人は裕太の肩を叩く。

 

 

 

「裕太。昔、俺達は全員一丸となって戦っていた。だからカーンデジファーに勝てたんだ。今度はお前の番だ。戦う勇気があれば、誰もが皆ヒーローになれる。行け、裕太!」

 

 

 

サンダーグリッドマンの中で、左腕を上げる裕太。

ジャンクの前で、左腕を上げる内海と六花。

3人は同じタイミングで叫ぶ。

あの言葉を。

 

 

 

「「「アクセス!!フラーーーッシュ!!!!」」」

 

 

 

~~

 

 

 

現実世界

 

『これで最後だ……死ぬがいい!!グリッドマン!!!』

 

カーンナイトがデジファーソード二本を合体させ、サンダーグリッドマンに突き立てる。

そしてそれをサンダーグリッドマンに思いっきり振りかざした。

だが、

 

 

『なに!?』

 

 

『感じる……!内海と六花の力を……!感じる、新たな力の目覚めを……!』

 

サンダーグリッドマンはデジファーソードを片手で掴み、それをへし折った。

彼はそのままゆっくりと立ち上がり、目を光らせる。

 

次の瞬間、サンダーグリッドマンを覆うアシストウエポンが全てはじけ飛んだ。

 

中からは生身になったグリッドマンが現れるが、その姿はカーンナイトの知る電光超人の姿では無い。

今の自分……いや、グリッドナイトと同じ強化アーマーに身を包み、左腕のグラン・アクセプターは、プライマルアクセプターへと変化していた。

この姿は以前、本来の力を出せないグリッドマンが取っていた仮の姿と同じ。

しかし、グリッドマン同盟にとってはこちらの姿こそが自分達の知るグリッドマンであり、26年の年月を経て生まれ変わった、新たなグリッドマンの姿。

 

 

『SSSS.GRIDMAN』

 

 

それが、この姿のグリッドマンの、新しい名前だ。

 

 

 

『うぉおおおおおおお!!!!』

 

 

グリッドマンはカーンナイトの顎をアッパーで殴り上げ、彼を空中へと飛ばす。

そして軽やかな動きでビルからビルへと飛び移り、空中から超電撃キックをカーンナイトへと放った。

地面に叩きつけられたカーンナイトは立ち上がり、アナザーグリッドマンソードを手に取る。

 

 

『どこにこれほどの力を……!?』

『お前は知らないだろう!!本当に信頼できる友達を持つ素晴らしさを!!コレは私の友が与えてくれた力!私と共に戦ってくれた直人、私に戦う力をくれた一平、私に優しさをくれたゆか、私と使命を共にした裕太、私と友情を育んでくれた内海、私を信じて見守ってくれた六花……彼等だけでは無い!グリッドマンを信じる人々がいる限り、私は何度でも立ち上がる!!それが、ハイパーエージェント!!それこそが、『電光超人グリッドマン』だ!!!』

 

 

 

アナザーグリッドソードすらも素手で折り、グリッドマンは飛び上がる。

プライマルアクセプターを掲げると、フルパワーグリッドナイトとキンググリッドマンシグマの身体が輝き、二人はプライマルアクセプターの中に吸い込まれ、グリッドマンと一体化していく。

 

 

 

『今こそ全員の力、合わせる時だ!!!』

 

 

 

グリッドマンが叫ぶと、上空にゲートが出現し、そこから無数のアシストウエポンが出現する。

 

ダイナファイター、キングジェット、バトルトラクトマックス、バスターボラー、スカイヴィッター、そしてグリッドマンキャリバー。

 

ダイナファイターはキングジェットと合体し、超大型飛行メカ『ドラゴンフォートレス』に。

残りの4つのアシストウエポンはグリッドマンの全身に合体し、『フルパワーグリッドマン』に。

更にドラゴンフォートレスにフルパワーグリッドマンが騎乗し、上空へと舞い上がった。

 

 

 

 

『『『究極合体超人!!アルティメットグリッドマン!!!』』』

 

 

 

 

全アシストウエポン、全電光超人、そしてグリッドマン同盟の4人と武史、直人と合体を遂げた最強形態『究極合体超人アルティメットグリッドマン』

天高く舞い上がると、ドラゴンフォートレスの全銃口が開き、アルティメットグリッドマンの両肩のドリルと大砲が前を向く。

そして両拳を重ね合せ、そこに全てのエネルギーを集中させると、最強の一撃をカーンナイトへと放った。

 

 

 

 

『『『アルティメットォォォォ……グリッドォォォォォォォ………ビィィィィィィィム!!!!』』』

 

 

 

 

『馬鹿な……こ、こんなはずでは………ヌアァアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』

 

 

 

巨大な爆発と共に、消えて行くカーンナイト。

だが、その爆発は周囲の建物を破壊せず、爆発に巻き込まれた街を修復し始めた。

 

コレはグリッドマンの修復の力『フィクサービーム』の能力だが、アルティメットグリッドマンはその力をグリッドビームに乗せて放つ事が出来た。

破壊された街は一瞬で元の姿を取り戻し、地面に着地したアルティメットグリッドマンからアシストウエポンが外れ、元の姿のグリッドマン、グリッドマンシグマ、グリッドナイトに分離した。

 

 

『やりました!!グリッドマンが再び、私達人類を魔王の魔の手から救ってくれたのです!!』

 

 

アナウンサーがラジオで人類に、グリッドマンの勝利を伝える。

ついに魔王カーンデジファーを倒した………グリッドマン達は勝利を喜び、3人の電光超人は拳を合せた。

 

 

 

 

 

~~

 

 

 

 

西暦1993年

 

「早く来いよゆか!置いてっちまうぞー!行こうぜ一平!」

「おう直人!」

「待ちなさいよー!バカ直人ー!」

 

自転車でいつもの秘密基地に向かう3人の少年少女たち。

そんな彼らが過ぎ去った後の住宅街に、2メートル程の大きさのゲートが出現した。

そこから出て来た黒いマントの男は、その通りすがって行く少年たちに向けて右手を向ける。

 

 

 

 

「現在のグリッドマンを倒せないから、ライドウォッチの力で過去に戻って、まだ子供だった頃の翔直人を消す……か。」

 

 

『!!』

 

 

 

黒マントの男……消滅する寸前にライドウォッチの力で自分の一部を過去に飛ばしたカーンデジファーは、後ろから声を聞いた。

少年の頃の直人たちの姿が見えなくなると、カーンデジファーは後ろを振り返る。

そこにいたのは、3体のタイムマジーンと、それに乗ってこの時代にやって来た3人の男。

 

「成程な、まさかグリッドマンに一度倒された貴様が、こんな作戦に出るとはふつう思わない。」

 

 

「だけど、それは俺がすでに視た未来だ。」

 

 

そこにいたのは、常磐ソウゴ、明光院ゲイツ、ウォズの3人。

ソウゴは予め、カーンデジファーがグリッドマンに倒され、この時代に来る未来を視ていた。

だからこそ、グリッドマンを信じ、先手を打ってタイムマジーンでこの時代にやって来た。

 

『どこまでもワシの邪魔を………!!』

 

『グリッドマン!』

 

グリッドマンライドウォッチを起動し、カーンデジファーはアナザーグリッドマンに変身。

ソウゴ達もそれぞれドライバーを巻き、同じようにライドウォッチを起動する。

 

『『ジオウII!』』

 

『ゲイツリバイブ!疾風!!』

 

『ウォズ!!』

 

「行くよ、ゲイツ、ウォズ。」

「おう。」

「お供するよ、我が魔王。」

 

ソウゴはジオウIIライドウォッチを二つに割り、ジクウドライバーへ。

ゲイツはゲイツライドウォッチとリバイブライドウォッチの疾風をジクウドライバーへ。

ウォズはウォズミライドウォッチをビヨンドライバーへ装填。

 

『アクション!』

 

全員の待機音声が鳴り響き、後ろにはそれぞれの変身エフェクトが出現。

3人は同時に叫び、ソウゴとゲイツはジクウドライバーを回し、ウォズはビヨンドライバーを閉じた。

 

 

「「「変身!!」」」

 

 

『『ライダータイム!!仮面ライダー!!(ライダー!)ジオウ!(ジオウ!!)ジオーウ!!II!!!』』

 

『ライダータイム!仮面ライダーゲイツ!!リバイ・リバイ・リバイ!リバイ・リバイ・リバイ!リバイブ疾風!疾風!!』

 

『投影!フューチャータイム!スゴイ!ジダイ!ミライ!仮面ライダーウォズ!ウォズ!!』

 

 

ソウゴは仮面ライダージオウIIへ、ゲイツは仮面ライダーゲイツリバイブ疾風へ、ウォズは仮面ライダーウォズへ変身。

全員で武器を構えると、アナザーグリッドマンと戦闘開始。

まずはゲイツリバイブが猛スピードでアナザーグリッドマンとの距離を縮め、ジカンジャックローでアナザーグリッドマンの持つデジファーソードを抑え込む。

そこへウォズがジカンデスピアのカマモードで追い撃ちを掛けて行く。

 

 

『ワシは魔王カーンデジファーなのだ!!全ての物は、このワシの下にあるべきなのだ!!!』

「悪いな。魔王ならもう間に合っている。」

「その通り。我々の世界に君臨すべき魔王は、ただ一人で十分である。」

『何だと!?誰なのだそれは!!』

 

「俺だ!!!」

 

『ライダー斬り!!』

 

 

ジオウIIのサイキョーギレードの一撃が、アナザーグリッドマンを捉える。

吹き飛ばされたアナザーグリッドマンに、ジオウII達は更に叩き込んでいく。

 

『ジカンギレード!!』

 

『サイキョー!フィニッシュタイム!!』

『フィニッシュタイム!リバーイブ!!』

『ビヨンドザタイム!!』

 

 

ジカンギレードとサイキョーギレードを合体させ、サイキョージカンギレードを作るジオウII。

彼よりも先に、ゲイツリバイブとウォズの二人のライダーキックがアナザーグリッドマンに炸裂。

 

 

『百烈!!タイムバースト!!』

『タイムエクスプロージョン!!』

 

 

二人の攻撃を、間一髪デジファーソードで防ぐアナザーグリッドマン。

だが、その次に待っているのは魔王の攻撃。

 

 

『ジオウサイキョー!!キング!!ギリギリスラッシュ!!』

 

 

「おりゃああああああ!!!!!」

 

 

『 ジ オ ウ サ イ キ ョ ー 』の文字を叩き込み、アナザーグリッドマンを切裂くジオウII。

しかし、アナザーグリッドマンはそれを躱す。

だが、それでいい。

これはすでに、彼が視た未来だ。

 

 

「ゲイツ!今だよ!」

「了解した!」

 

 

アナザーグリッドマンが攻撃をかわした先には、すでにゲイツリバイブがいた。

ゲイツリバイブはジカンジャックローをアナザーグリッドマンに突き刺すと、彼の中からグリッドマンライドウォッチを引き抜く。

当然アナザーグリッドマンは抵抗しようとするが、ウォズがジカンデスピアをアナザーグリッドマンの首元に当てて抵抗を許さない。

そして、ゲイツリバイブの投げ渡したグリッドマンライドウォッチを受け取ると、ジオウIIはそれを起動する。

 

『グリッドマン!』

 

ジオウIIライドウォッチを取り外し、ジオウライドウォッチをジクウドライバーへと装填。

更にグリッドマンライドウォッチを左側のスロットに差し込み、ジクウドライバーを一気に回す。

 

 

 

『ライダータイム!仮面ライダージオウ!!アーマータイム!【BABY DAN DAN!】グリッドマーン!!』

 

 

 

音声が鳴り響き、ジオウにアーマーが装着される。

両肩にはアクセプターに似た装飾、胸部にはグリッドマンと同じくトライジャスターが装着。

グリッドマンに似た顔面のパーツには、目にも見える『グリッドマン』の文字が。

グリッドマンの力を得たジオウ……ウォズは手を広げ、その誕生を祝福する。

 

 

 

「祝え!ライダーだけでなく、あらゆるヒーローの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来をしろしめす時の王者!その名も仮面ライダージオウ グリッドマンアーマー!!魔王を騙る不届き者に、真の魔王が鉄槌を下す瞬間である!!」

 

 

 

グリッドマンアーマーを装着したジオウはジクウドライバーに装着された二つのライドウォッチのボタンを押す。

腰を落としてグリッドビームの体勢に入ると、グリッドマンと同じく腕を回す。

 

 

『フィニッシュタイム!グリッドマン!!』

 

 

「決めろジオウ!!」

「さぁ、我が魔王!」

「うん!!はぁぁぁぁ…………!!」

 

両肩のアクセプターに力が溜まる。

そしてアナザーグリッドマンに狙いを定めると、ジオウはグリッドビームのポーズを取り、そこからさらに両手を顔の前に持って来た。

 

 

『アクセス!!タイムブレーク!!』

 

 

 

「グリッドォォォォ…………目からビーーーーーーーーーーーム!!!!!」

 

 

 

『おのれ……おのれ仮面ライダー……おのれグリッドマアアアアアアアアアアアアアン!!!!!』

 

 

 

ジオウの顔から放たれた『グリッドマン』という文字の形状を取ったビームは、アナザーグリッドマンを完全にとらえた。

アナザーライダーを倒すには、元のライダーの力が必要。

すでにグリッドマン本人により本体自体を倒されていたカーンデジファーの一部であるアナザーグリッドマンは、ジオウの必殺技を受け、ついに爆散。

 

こうして、新条アカネの世界で生まれた宝多六花の悲しみの象徴であるアナザーグリッドマン……カーンデジファーは完全に消滅した。

 

 

 

 

~~

 

 

 

ツツジ台

 

全ての戦いが終わり、グリッドマンと合体していた裕太、内海、六花の3人と、グリッドナイトと合体していたアカネは、六花の家のジャンクの前に戻って来ていた。

彼等の隣には電光超人の姿に戻ったグリッドマンと、人間態に戻ったアンチ、そしてソウゴも一緒にいた。

アカネのプライマルアクセプターと、ソウゴのディケイドライドウォッチの力を併用すれば現実世界に帰れるらしい。

 

 

『裕太、内海、六花、ジオウ、そして新条アカネとグリッドナイト。君達の協力に感謝する。』

「ったくよー……グリッドマン。次は俺に宿れっつったじゃんよー。でもまぁ、また会えてうれしかったぜ。」

「グリッドマン。本当に色々ありがとう。君がいなかったら、俺は大事な事を忘れたままだった……俺は、本当の友達を持つ大切さを、皆に教わった。本当にありがとう。それからソウゴも。」

「俺は何もしてないよ。勝てたのは、裕太たち皆のおかげじゃん。」

「グリッドマン。これでお前は俺に借りが出来た。いずれ返せ。」

『わかった。その時は、いくらでも相手になろう。』

「約束は守れ。それが礼儀だ。」

「ププ……グリッドマン、怪獣に礼儀教わってるし。」

『ぜ、善処しよう。』

 

 

アカネよりも一足先に、グリッドマンはこの地を経つ。

彼にはハイパーエージェントとしての次の任務がある。

名残惜しそうにしながらも、グリッドマンは出現したゲート……パサルートをくぐり、この世界を後にした。

 

グリッドマンの姿が見えなくなると、次はいよいよアカネとソウゴとの別れだ。

 

ソウゴに背中を押され、アカネは前は六花としか出来なかった別れの挨拶を、一人ずつにしていく。

まずは内海からだ。

 

 

「内海くん。内海くんとはもっと怪獣の話、したかったな……。」

「俺的には怪獣だけじゃなくて、もっとヒーローの話とかも出来ると嬉しなーって……ダメ?」

「アハハ、ヒーローかぁ。ヒーローってあんまり好きじゃ無かったんだけど、これからはちゃんと見てみようかな?内海くん、私と友達になってくれてありがとう。」

 

 

内海に挨拶をすると、次は裕太の方に。

 

 

「響くん。響くんとは……その、色々、あったね……。刺しちゃったりとか……。」

「全然気にして無いよ!って、今の俺が言うのも変だけど………。新条さん、俺が記憶喪失になって初めて学校行った時、弁当忘れた俺にパンくれたよね。あれ、ホントに嬉しかった!俺達は知ってるから、新条さんが本当は優しい人だって。だから、向こうの世界でも元気で。」

「………響くんさぁ、他の女の子にそんな事言っちゃダメだよ?そっちも元気でね、六花をよろしく。響くん、私と友達になってくれてありがとう。」

 

 

裕太の額を軽くつつくと、今度はアンチの方へ。

 

 

「アンチ。えっと………ちゃんとご飯食べてる?」

「問題無い。」

「そっか……あ、お風呂も入らないとダメだからね、臭いから!あとご飯食べたらちゃんと歯を磨いて、服もちゃんと着替えてよ!」

「わかった。」

「……君には色々酷い事しちゃったと思う。」

「気にするな。」

「君は少しは気にしようね。全く……そういう所が失敗作だって言ってんの!でも、失敗作も悪くないかもね。アンチ、私の所に生まれて来てくれてありがとう。」

 

 

最後にアンチの頭を乱暴に撫でるアカネ、最後は六花の方に。

しかし、六花はずっと顔をうつむかせたままアカネを見ようとはせず、体の前で手をもじもじさせていた。

 

 

「アカネ……その………私と違って神様じゃないし……だから、ホントはもう二度とアカネとは会っちゃいけないって言うか………あー、もう、何言ってんだろ私……とにかく!向こうでも……元気、でね……。ずっと、応援……して、してるから……だから……、」

「六花。」

 

 

ポンッと、裕太と内海が六花の両肩にそれぞれ手を置いた。

彼女はそれでハッとし、その時初めてアカネの顔を見れた。

アカネの顔は、前の別れの時と同じく泣いていたが、前の時とは違い笑顔だった。

そのアカネの顔を見る六花に、裕太が呟いた。

 

 

「自分の気持ちに嘘をつかなくてもいいんじゃないかな?きっと新条さんも、六花の本当の言葉を聞きたいはずだから。」

「あ………。」

 

 

そう言われ、六花の中が我慢していた物が一気に決壊した。

彼女は流れる涙を止める事が出来ず、思わずアカネに抱き着いた。

 

 

 

「アカネェ!!嫌だよ……離れたくないよ……!ずっと一緒にいてよ……!もう二度と会えないなんて嫌だよ……寂しいよ……!一緒に学校に行こうよ……放課後一緒に遊んで、来年は受験だから一緒に勉強して、皆で一緒に卒業して……大人になってもずっと仲の良い友達でいたい!アカネと一緒なら、絶対に楽しい!響くんも内海くんもなみこもはっすも皆一緒に……!!」

「六花。」

 

 

 

六花を抱き締め返すアカネ。

この時間がずっと続けばいい……お互いにそう思っただろう。

だが、そういうわけにはいかない。

アカネは六花の顔を見つめ、微笑んだ。

 

 

 

「六花、私と友達になってくれてありがとう。…………またね。」

「! うん……うん……!アカネ………またね……!」

 

 

 

力の抜けた六花を裕太に託し、アカネはジャンクに向かい合いプライマルアクセプターを構える。

その隣でソウゴもディケイドライドウォッチをジャンクにかざす。

 

「もういいの?」

「うん。伝えたい事は、もう伝えたから。」

「そっか。……あ、ちょっと待って。」

 

そう言うと、ソウゴはポケットからグリッドマンライドウォッチを取りだし、それを裕太に渡す。

裕太もソウゴからそれを受け取ると、しっかりと握りしめて自分の胸元に押し当てた。

 

 

「後はよろしくね、裕太。」

「うん。そっちも、新条さんをよろしく。ソウゴ。」

「……なんか、行ける気がする!」

 

 

やがて、ジャンクが光り、ソウゴとアカネは姿を消した。

その瞬間はあっという間で、まるで今までが全部夢だったんじゃないかという感覚に襲われたが、手に握るグリッドマンライドウォッチがそれが夢じゃ無い事を証明していた。

 

 

 

~~

 

 

 

数日後……現実世界 桜が丘町

 

 

『昨夜未明、考古学研究所で保管されていた約5000年前のミイラが、突如姿を消しました。この事件について、関係者の方は『ミイラが突然動き出した』と語っており、警察では何者かによってミイラが盗まれた可能性が高いとして捜査を進めています。』

 

 

「美味い!!やっぱ直人さんの餃子は最高だなぁ……ねぇ皆!」

「あぁ!コレは本当に美味い!!……ってウォズ!!それは俺の餃子だ勝手に食うんじゃない!!」

「早い者勝ちだよゲイツくん。」

 

グリッドマンが去り、再び直人の餃子屋に足を運んだソウゴ達。

特に直人に用事があったわけではないが、ここの餃子の美味さは癖になる。

もはや週一で食べなければ落ち着かない。

お店のテレビから流れてくるニュースを聞きつつ、騒ぐ男3人を呆れた眼で見ながら、ツクヨミが直人に尋ねた。

 

「そう言えば、藤堂さんはどうしたんですか?」

「武史はシグマと一緒に、次の仕事に行ったよ。この街での仕事はひと段落したんだと。ほい、野菜餃子お待ち。」

「ありがとうございます。うわぁ、美味しそう……いただきます!あら?なんだか新食感……!」

「わかる?それ、中にトマト入ってんの。新しい常連さんがトマト好きって言うから、試に作ってみたのよ。お、噂をすれば……へいらっしゃーい!!」

 

直人が入って来た客に大声であいさつした。

入って来たのは女子校生の3人組。

制服はこの辺では一番近い、ツツジ工業高校のモノだった。

 

 

「ねぇアカネ、ホントにお昼ここで食べんの?」

「大丈夫だよ。ここ、すっごく美味しいから!」

「へー、アカネがそう言うならそうなんだろうね。」

「私のおすすめはねぇ……あ、おじさーん!野菜餃子のトマト入り3人分くださーい!」

「はいよー!」

 

 

 

 

 

 

 

こうして、グリッドマンの力は響裕太に受け継がれ、グリッドマンを巡る常磐ソウゴの戦いは幕を閉じた。

 

新条アカネがどのような未来を歩むのかは、彼女次第。

 

そして、常磐ソウゴが次に出会うレジェンドは………『仮面ライダーアギト』、津上翔一。

 

更にツクヨミに隠された秘密が少しずつ紐解かれ………おや?どうやら皆さん、すでにご存じの様で。

 

これは失礼、この物語は皆さんにとってはすでに、『過去』の出来事……でしたね。

 

 

 

 

RIDER TIME 電光超人GRIDMAN

1993:ユメのUNION2018

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツツジ台高校 放課後

 

『平成最後のユートピア!『Arcadia』です!さて、本日の企画は~……、』

 

「お!それ『Arcadia』の新作動画じゃーん!まだ見て無かったんだよね~!」

「へー、問川たちも『Arcadia』好きなん?あたし断然ヤマトくん派~!」

「私今井ちゃーん!でもほら、うち中華料理屋じゃん?動画見てうるさくしてると怒られるんだよねー。」

 

スマホでYoutubeを見ながら、盛上がるなみこ、はっすとクラスメイトの問川。

そこへ偶然通りががかった裕太が3人に尋ねてきた。

 

「ねぇ、六花知らない?」

「六花?」

「今日店番あるとかで先帰ったよ。」

「そっか、ありがとう。」

 

六花が先に帰った事を知り、裕太は鞄を持って帰路につく。

今日は内海は風紀委員会の仕事で帰りは遅くなるそうだ。

学校を出て、しばらく歩いていると、アンチともう一人……見覚えのある少女が一緒にいるのが見えた。

二人は彼の探し人からスペシャルドッグを一つずつ貰っており、ペコリと頭を下げる。

 

「借りは返す。」

「だから良いって。」

「ダメだよ~、うちの家訓だよ~?」

 

むりやりお礼の約束をつけると、アンチと少女はその場から立ち去る。

裕太は自動販売機でお茶を買うと、それを持って六花の下へと駆け寄った。

 

「六花!」

「ん?あ、響くん。今帰り?」

「うん。あ、これどうぞ。」

「ありがと。私に何か用事?」

「えっとー……いや、ほらー、今世の中物騒だし、一人で帰るのは危ないから送ろうかな~って……。」

「アハハ、嘘下手すぎ。いいよ、一緒に帰ろ。」

「あ……はいっす。」

 

六花の隣を歩き、一緒に帰る裕太。

アカネとソウゴと別れてしばらく、六花は立ち直れなくて3日ほど学校に来れなかった。

数日前から登校してきた六花はまだ本調子では無かったが、なみことはっすという奇跡的に空気の読めない友人二人のお蔭で多少元気を取り戻した。

彼女が元気になるまでは自分達がちゃんと支えよう、内海とそう約束した。

それに、アカネからも六花を任されたし、何より裕太は六花の事が……、

 

 

「この街はさー。」

「え?」

 

 

突然、六花が口を開いた。

 

 

「この街は、どんどん変わって行ってるよね。新しい建物や新しい人がどんどん入って来て……ちょっと前まで、こんな事無かったんだよね。」

「そうだね。ちょっと前まで、この世界はこの街しか無かったんだし。」

「アカネも、向こうで変わろうと頑張ってるんだよね。………私も、変われるかな……新しい自分に。」

「!」

 

 

六花がそう言って、裕太は思わず拳を握った。

今なら、言いたい事が言える気がする。

意を決し、裕太は六花に向かって口を開く。

 

 

「か、変われるよ!少なくとも………俺と、六花の関係は………これから、いくらでも変えられる……!」

「響くん?」

「六花!俺………俺、ずっと……!」

 

 

裕太が自分の想いを言葉にしようとした瞬間、六花が左手の人差し指を裕太の口に当てた。

驚いて面を喰らう裕太、それを見て、六花は久しぶりに声を上げて笑った。

そして再び手を自分の後ろで組むと、裕太に言う。

 

 

 

 

 

「その先は、私が変わってから、もう一度聞かせてよ………裕太。」

 

 

 

 

「! 六花、今……俺の名前……!」

「ほらほら、早く帰りますよー。私店番あるんで、お先ー。」

「あ、ちょっ……待ってよ六花!!」

「~~♪」

 

自分がどれだけ変わっても、どれだけ強くなっても、たとえ電光超人になれても、六花には一生勝てない気がする。

上機嫌に『Believe』の鼻歌を歌う六花を見ながら、裕太は心底そう思った。

 

 

 

 

 


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