「そういえばそういうこともありましたねぇ…」
右京は三人の資料を見てそう言った。
あれからというもの、特命係及びパトレンジャーはアースラの一室に拠点を置いて活動している。
部屋自体は5人全員で使っても余裕があるくらいの広さで捜査に必要なものはもちろん、各自の私物の持ち込みも許可してある。
捜査するに当たって、管理局職員に転生者用探知機を用意して協力してもらったり、バンたちにはバリアジャケットの応用で仕事になると私服から切り替わる専用の制服を用意したり、三人を現場付近に転送するようにしたりと、準備を行った。
たまに自らアースラや特命係に来ては私物の持ち込みやそれぞれの魔法の修行をしたりプライベートで雑談に来たりするようになった。
その際、歳が近いこともあって、かこはアストルフォに対して砕けた口調で話すようになった。
バンもフレンドリーに話しかけたりと良い雰囲気である。
アストルフォに至っては迷惑をかけない程度に可愛らしい装飾を部屋に飾り付けたりしている。
ちなみにアストルフォの一件で助けた子猫は管理局で保護されており、アストルフォも時々顔を出してはじゃれたりしている。
そう言うことを思い返しているときに、映像と通信が入った。
『右京さん、少しよろしいですか?』
「これはこれは、リンディ提督。
どうされましたか?」
『もうすぐ、後1日もすればアースラは地球に到達します。
ですので事前に彼らにも説明してください』
「わかっております。
それでは、失礼」
映像に映っていた緑髪の女性であり、アースラの提督を勤めるリンディ・ハラオウンとの通信を終えて、映像もプツリと消える。
「さて、亀山くんも呼んでから、彼らを呼びましょうか」
そうして右京は連絡するのであった。
「それで、話って何ですか右京さん」
バン、かこ、アストルフォ、亀山は特命係の部屋に集められる。
「皆さん、お集まりくださってありがとうございます。
亀山くんは知っていると思いますが、後1日でアースラは地球に到着します」
「地球、ですか?」
「確か、2年前に闇の書とジュエルシードにまつわる事件が起こった世界ですね」
「おや、よくご存知で」
「これでも、無限書庫司書ですから」
「ねぇ、その二つにまつわる事件って何なの?」
「今はそれどころじゃねぇだろ?
…ところで、何で地球に?」
アストルフォはかこに事件のことを聞こうとしてバンに諫められる。
「そうですねぇ…」
本題に入ろうと、右京は口を開く。
「実は、最近地球では転生者による犯行が相次いでいましてねぇ。
中には、特典が暴走したことによる騒動もあるのですが」
「暴走…」
暴走という言葉を聞いて子猫のことを思い出したのか、アストルフォは暗い表情になる。
それについてはバンもかこも同じだが、アストルフォに至ってはルパンブラックの手で特典が暴走させられる場面を目の当たりにしたこともあって、かなり深刻に受け止めている。
「それで、それを取り締まるためにも地球で俺たち特命係は活動することになったんだ。
そこで地球で活動するに当たって、この街を拠点に動こうとしてるんだ」
そう言うと亀山は端末からある街の資料を取り出した。
「海鳴市?
何でそんな街に」
バンは何で海鳴市を拠点にしようとしたのか疑問を持って質問する。
「実はその街では、優秀な協力者がいましてねぇ。
それでその方たちと共に転生者の捜査を行えば、地球での活動もしやすくなるのです」
「へぇ、それはかなり頼もしいんじゃないですか!」
「でも、その協力者って誰なんだろ?」
「それは現地で会ってからのお楽しみですよ。
さて、実はもう一つ、地球に行く理由があるのですよ」
話を切り替えて、右京は別の資料を取り出した。
「これは転生者に関することかどうかはわかりませんが、以前地球では『ルナアタック』と呼ばれる月が落ちてくる現象が起こったそうでしてねぇ」
「ルナアタック?」
「文字通り、月が地球に落ちてくる現象ですよ。
とはいえ、地球ではどう捉えられてるのかわからないため、こちらでそう呼んでるのですが」
「うげぇ、そんなの怖いですよ、月が落ちてくるなんて。
でも、そんな現象が起こったのに地球は何ともないようですけど?」
アストルフォは若干引きつりながら質問した。
もし月が落ちてきたという話が本当だったら、何で地球は平気なのか。
いや、もしそんなことがあったというのなら、何で管理局は落ち着いていられるのか。
そう考えてる時に右京は返事をする。
「そのことなんですが、詳しいことはわかりませんが、その月が落ちてきたと思ったら、何らかの方法で元に戻ったのですよ。
僕としては、何故月が地球目掛けて落ちてきたのか、その方法とは一体何だったのか、それが気になりましてねぇ」
「…言われてみれば、確かに」
「それに、本当にどんな方法で月を戻したのかは不明なのですが、その際にある反応が観測されました。
それがVSチェンジャーにも酷似した、ルパンブラックにも似た反応です」
「あいつか…!」
「…!」
「ルパンブラック…」
三人はルパンブラックの名前を聞いて警戒する。
もしそうだとしたら、ルパンブラックのような特典を暴走させる存在が、地球のどこかにいるかも知れないからだ。
「しかし、それはあくまでも可能性の話です。
否定はできませんが、僕は地球で、このことを調べてみようと思うのです」
「じゃあそれでしたら、俺がバンくんたちのサポートしますよ」
「えぇ、僕が行けない時は、そうしてもらいますよ亀山くん」
「了解っす!」
「それでは皆さん、今言ったことを持って、明日僕たち特命係は地球へと降ります。
何か質問はありますか?」
右京は皆を見回し、誰か質問あるのかを確認した。
しかし、誰も手を上げてる様子はなかった。
「…では、僕からは以上とさせていただきます。
後は各自準備をしてそれぞれの場所に戻ってください」
『了解!』
その言葉を言ってから、バンたちはその場を後にした。
「さて、この『ルナアタック』、一体地球では何が起こったのでしょうかねぇ」
一人残された右京は、資料を見てそう呟くのだった。