守護者の誓い   作:ガンマン八号

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 気がついた。英語のタイトルは考えるのが面倒くさいと。
 英語苦手な奴が頑張ることじゃないんだよなぁ。


開始

『あっ、おはよう先生』

 

『おはよう。それと、私は別に先生じゃないって前も言わなかったかしら』

 

『いいんだよ。俺にとって先生は、先生だけなんだから』

 

『あらそう。なら早く私以外の先生とも出会えるといいわね』

 

『先生以外の先生?いらないよそんなの。つか、いねぇよ。先生がいてくれれば、俺はそれでいい』

 

『それはダメ。出会いって、本当に素敵なものなのよ?私とあなたがこうして仲良くなれたように、あなたが夢中になれる誰かを見つけないと』

 

『……見つけられるかな?俺に』

 

『できるわよ、君なら。そうだ!なら今度私の●●と………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……随分とまぁ、素敵な目覚めで」

 

 一人暮らしの自分に対し、皮肉めいた発言を目覚めに一言。疲れがとれたかと思いきや、どうやらストレスまではとれなかったらしい。

 目覚めたてということもあるかもしれないが、なんとなくだるい気がする。寝ていたはずなのに、精神的に疲れてるようだ。

 

 できることならこのままもう一度布団に倒れ込んでしまいたいが、今日は学校のある日だ。1日でも休んで授業の内容に支障が出てしまうのはまずい。特待生で大学に通ってる身としては好成績を維持しなければならないのだ。

 

「先生以外の誰か、結局達成できてないなぁ」

 

 それは後悔なのか、悲しみなのか。

 これ以上は良くないと思考を切り替え、朝食の支度を始める。といっても、昨日の夕飯の残りを温めなおすだけなのだが。

 

「いただきます」

 

 両手を合わせ、食事への感謝を忘れない。教えられたことだから、守らなければならないことだ。

 朝食を済ませたら身なりを整え、お弁当のおにぎりを握る。それと野菜も忘れない。

 

「あっ、おはよう蓮くん」

 

「おはようございます、(とおる)さん」

 

 家に出ると、見覚えのある青年の制服姿が見えたので挨拶をする。彼も愛想の良い笑顔で返してくれる。それが嬉しくて、こちらも笑顔が溢れる。

 

「いいよ、そんな丁寧に喋らなくて」

 

「あっ、そうでし…そうだった。透も学校?」

 

「そりゃ学生だからね。よかったら駅まで話していかない?」

 

「わかった」

 

 癖っ毛の強い眼鏡をかけた、一見地味そうな高校生、雨宮 蓮くん。でもよく見るとすごい美形なんだよな、彼。背丈も俺より少し大きいし。

 お互いここに引っ越してきた者同士ということで話をしてみたら、彼はどうやら聞き上手だったようで、気づけばこうして会話をする機会が増えている。こちらが年上ということで敬語を使ってくれていたが、どうも距離を感じてしまうので敬語をやめてほしいと頼んだら、意外とすんなり聞いてくれた。

 大人しそうに見えるが、実は大胆だったりする。

 

「そういえばこうやって話すの、結構久しぶりだよね。最近は帰りも遅いみたいだし、忙しい?」

 

「そうだな。友達とよく色々なことをしてるから、どうしても帰りが遅くなる」

 

「友達と、か。いいね、蓮くんが言うのだからそれは良い人達なんだろう」

 

「透の方は?」

 

「いつも通りさ。大学とバイト生活。たまに総治郎さんのありがたいお言葉をいただくの繰り返し」

 

「それは楽しそうだ」

 

「蓮くんも最近皮肉が鋭くなってきたね…。総治郎さんみたいにはならないでよ?流石にこたえる」

 

「透も友達と遊べば?」

 

「君以外の友達がいないと知ってて言ってるのなら、デコピンするよ?」

 

「なるべく優しくしてくれ」

 

「やっぱり蓮くん、ノリがいいんだね。いいよ、デコピンは水に流す。流すから前髪下ろしていいよ」

 

 可笑しくてケラケラと笑ってしまう。こんな茶番に付き合ってくれるなんて、しかもセンスが良い。彼もまた笑っている。

 またこんな楽しいと思える日が来るとは、人生は本当にわからないものだ。

 駅に着くまで彼と雑談をし続けた。彼の話もとても面白いものが多かった。随分と個性的な友達を持ってるようだ。

 

「…最近、若者を中心に『怪盗団』を支持する声が増えていく一方です。彼らは一体何者なのでしょうか?」

 

 ビルについてる大型のモニターで流れているニュースをちらりと見る。家に小型テレビが一応あるが、節電対策のために滅多につけないようにしてる。しかし、精神暴走事件が起こっていたところに、突如現れた心の怪盗団。なんでも大物有名人の罪を告白させ、世界を良くしようとしているヒーロー、らしい。

 

「怪盗団ねぇ。蓮くんはどう思う?怪盗団って、実在するかな?」

 

「…実在してる、と信じたい」

 

「へぇ、どうして?」

 

「正しいことをしているから」

 

「なるほど、至ってシンプルで、わかりやすい回答だ」

 

 あまり表情の変化がわからない蓮くんが、少しだが顔を歪ませた。怪盗団に対して、何やら特別な思い入れがあるように思えた。

 

「透は?」

 

「うん?」

 

「怪盗団、どう思ってる?」

 

「俺かぁ。そうだね、ニュースでの情報ぐらいしか知らないけどすごいの一言だよね。誰も気づかなかった、いや手が出せなかったというのが正しいのかな?そういった相手から罪を告白させるなんて、まさしく超能力を疑いたくなるよ」

 

 俺の言葉を、蓮くんはいつもより真剣な表情で聞いている。なんだろう、怪盗団のファンなのだろうか。たしかに彼も正義感は人一倍強い人間だ。

 もちろん、俺もファンというわけではないが、怪盗団の動きについてはすぐに食いついた。

 

「たしか、最初は蓮くんの通っている高校の元メダリスト教師の鴨志田から始まったよね。その後は美術界の巨匠、斑目。そしてついこの間は警察が手を焼いていたマフィア、金城。どれも大物有名人だ。世間の食いつきが凄まじいものになった。正体も方法も不明。謎ゆえに話題になり、そして苦しんでいた人たちから賞賛を得られる」

 

「もちろんなかには『法律に基づかない私刑は正義から1番遠い存在』とか否定的な意見も多い。でもね、それでも俺は怪盗団は存在してるし、彼らはこの世で最も正しいことをしてると思うよ」

 

「だって、誰にもできなかったことを成し遂げてるんだからさ。何もできない俺たちがどうこう言うことじゃないと思うんだよね」

 

 少なくとも彼らは俺たち普通の人間とは何か違う、特別な力を持っているはずだ。それは使いようによっては、恐ろしい兵器になる何か。

 だがそれを心配する必要は怪盗団にはない。小さな子供にナイフを持たせるのが危ないように、ようは使うものではなく、誰が扱うかが重要になる。怪盗団はそれがわかってるのだろう。

 

 それに、もしかしたら。

 

 

 つながってるかもしれないしね。

 

 

 

 

 

『そういえば先生って、研究者だったよな』

 

『そうよ。そして君はその被験体のはずなのに、いつのまにか生徒になっちゃった』

 

『少なくともマッドサイエンティストには向いてないからな先生は。というか、ちゃんと研究進んでんか?いつも遊んだり雑談して終わりだけど』

 

『もちろん!私を誰だと思ってるの?研究は順調よ、あなたが気づいてないだけ』

 

『特撮鑑賞会が研究とは思えないんだよなぁ』

 

 

 

 

「透?もう駅に着いたけど」

 

「……えっ?あ、あぁごめんね。ちょっと思考が奥深くまで潜り込んでた。じゃあ学校頑張ってね」

 

 どうやら気がつけば駅に着いてしまっていた。いけない、たまに思考が奥深くまでいくと周りが見えなくなってしまうのは悪い癖だ。

 蓮くんとは電車がちがうので、ここで別れることになる。手を軽く振ってから自分の乗る電車に向かう。彼の方にチラリと振り向くと、金髪の青年と話し始めている。こちらは時間にもやや余裕がある状態で到着できた。

 

(『心』の怪盗団、そして精神暴走事件。絶対に何か重要なつながりがあるに違いない。必ず情報を得てやる!)

 

 拳には自然と力が篭るのを感じた。

 

 

 

 

 今日もあっという間に時間が過ぎてしまい、気がつけばもう帰りの時間になっていた。大学の学生の噂話やネットにあるいくつかのサイトには多くの怪盗団に関する話題が飛び交っている。

 が、どれも信憑性のかけるものばかりだった。正直有力な情報は1つも見つかっていない。

 というより、そもそも判断基準がわからない。こういうところで、自分の非凡な頭を恨む。

 

「まぁ、ネットや噂話なんてこんなものだよな。ほぼ全てデマしかないだろうし、仮に事実があったとしても見分ける方法もないしなぁ」

 

 はぁ、とまた自然とため息が出てしまう。今日もまた収穫は1つもなかった。今は渋谷の駅広場にあるベンチに座って、適当にくつろいで乗り換えの電車を待っているが、正直疲れが取れる気がしない。

 

「…あれ?なんだこれ?」

 

 次の電車時刻を調べようとスマホの電源を入れると、そこには見覚えのないアプリがインストールされていた。赤黒い目玉が不気味なアプリだ。こんなもの入れた覚えがない。

 

「なんだこれ、気持ち悪い。ウイルスとか持ってる悪質なアプリか?これどうしたらいいんだろう。消しても問題ないのかな」

 

 本当ならさっさとアンインストールするべきだと思うが、勝手に入っていたという事実と見た目のダブルパンチの不気味さを感じてしまっている。この手のアプリに触るとどうなるか、警戒心が強くなる。

 クソッ、携帯が壊れるなんてことになったら洒落にならないぞ。一体幾らかかってると思ってんだ。それに世間のニュースをいち早く知る、貴重な情報源だぞ。

 

「……よし、全会一致だな」

 

「今回のターゲットは1人だ、行くぞ」

 

「あれ?蓮くん?」

 

 なにやら聞き覚えのある声が近くから聞こえてくると思ったら、すぐ近くの人混みに蓮くんがいた。それも何人かお友達と一緒に。

 

(全会一致?ターゲット?なんだろう、何かのオンラインゲームの話でもしてるのかな?)

 

 何やら会話をしてるのはわかるが、いかんせん人混みのせいであまり聞こえない。話の節々からゲームの話題かと思ったが、それにしては蓮くんたちの顔がどこか険しい。

 

(うーん。どうやらあまり楽しい会話をしてるわけではなさそうだなぁ。でも僕が何かできるわけでもないし、蓮くん以外は初対面だしな。遠慮させてしまうかもしれないし)

 

 

『わかった?約束よ』

 

 

……ああもう!なんだ!なんでここ数日、こんなにも焦る?なんで急にあの時を思い出す?なんだ?一体俺はどうしたらいいんだよ。僕が一体、何ができるっていうんだよ!

 

「……ああくそ、わかったよ。声かけるよ。だってほっとけないし、蓮くん友達だし、友達の友達なら問題ないし」

 

 自分に言い訳を言い聞かせる。側から見たら不審者だが知ったことか。もう最近疲れてるんだよ、イラついてるんだよ。

 こうやってうじうじ考えてるのも飽きた。元々俺、こんな人間じゃないし。

 

「おーい、どうしたんだ蓮く……」

 

 なんてことはない、友人に話しかけるのに至って平凡な声かけだ。手を挙げ、こちらに気づいてもらえるよう近づいただけだ。

 

 その筈だった。だけど。

 

 

 

『ナビゲーションを、開始します』

 

 

 

 その時、文字通り僕の世界が変わった。

 

 




 
 長々とつまらない描写が続いて、全然進んでねぇ。
 すまぬ、次で話がちゃんと進むから。

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