「ん」と「ね」と「(単語)」しか言わないクラスメートの性欲がヤバすぎる件について 作:羽虫の唄
「…ふ、ふふ。ふふふっ。だめよこんなの…。今日から私はここに住む、梃子でも動かないからね…。–––ンはァん♡」
時は放課後、場所は職員室。周囲の興奮を解消させる為に発案したモフモフ化であるが、その結果はご覧の通りである。尾骶骨付近から生やした計9つの
「…Hmm. やっぱり俺は⑤番だな!」
「えぇー?! 絶対今の方が良いわよ! ⑨よ、⑨!」
「私ハ②番ヲ推サセテモラオウ」
「うーん。僕は硬めの⑥番ですね、やっぱり」
「–––⑦番だな。アレが最も触り心地に優れていた」
「……おいイレイザー。他クラスと言えど生徒であることに変わりは無いぞ。自分の
「その言葉そのまま返すブラド。お前の方こそ
–––とは、残念ながら言えなかった。
ハウンドドッグ先生の毛質を参考にしたものをVer.①とし、その後意見を取り入れ尻尾を覆う毛の長さであったり太さや硬さを調節していったのだが…ご覧の有様である。先生方の間で意見が見事に割れてしまったのだ。
「見事に意見が割れたねぇ。まァ俺も③番推しなんだけど…」
互いが互いに意見をぶつけ合い収拾がつかず喧々囂々な様子を見て、セメントス先生が苦い顔をしつつ話しかけてきた。うーんと唸る彼は討論の為にミッドナイト先生が離れた尻尾の1つを撫でながら訊ねる。
「それより
「あいや、変態に一々エネルギー使うんですよね。まぁお腹が減るくらいなんで大丈夫です」
サキュバスの肉体改造は結構エネルギーを消耗してしまう。恐らく今のオレは小学生低学年程度の背丈までになっているはずだ。ガチャタイプのベルトで助かった。
…にしてもどうするか。段々とヒートアップし始めた教師陣–––から視線を外し、オレはとある教員机を見る。
「………クフゥ〜ン」
そこには真っ白に燃え尽き、机に突っ伏してしまったハウンドドッグ先生が。どうして彼がああなっているかと聞かれれば…まぁ、オレの所為である。参考として先生の腕をモフモフさせてもらったのだが、触るや否やか細く堪える様な遠吠えを発し、終わる頃にはあの様な感じとなってしまったのだ。
どうやら今回の騒動で何かしらの能力が発現してしまったらしい。…動物系の異形型を刺激してしまう能力だろうか? 暫時的に『
先生の尊い犠牲を無駄にしない為にも、必ずしや性差年齢問わずリラックスさせるモフモフを完成させてみせる–––と、意気込んでいるものの…。うぅむ、どうしたものか。
「…長すぎず、短すぎず。太すぎず、細すぎず。それでいて柔らかすぎず、硬すぎず…か。難しいなぁ」
セメントス先生と一緒に首を捻る。全てに於いて『丁度良い』–––そんな理想のモフモフを一から生み出すとなると、その労力は計り知れない。何か参考となるものが有ればいいのだが…。
「–––やぁ! 犬でも熊でもない、その正体は校長さ! 済まないがオールマイトは居るかな?」
…さて。そんな時職員室へとやって来たのは、我らが雄英高校の根津校長先生である。本日も彼の毛並みは美し
「「「ッッッ!!」」」
ズドンッ! と次の瞬間、職員室に炸裂音が響き渡る。
何事!? …突然の音に体を震わせながら視線を巡らせたオレが見たものは…。
–––先ず、個性の「操血」を駆使しつつ突撃するブラドキング先生。校長は突然のことに驚きつつも拳法家の様な構えをとっさに取り…然し、マイク先生が発した超音波じみた高音に身を強張らせてしまい接近を許してしまう。
数歩分の間合いにまで接近をしたブラドキング先生。それに続くのは得物である捕縛布で天井から奇襲をかける相澤先生。それを確認した校長は側の机に置かれた紙束をばら撒き、目くらましを行う。それだけでなく、いつの間にか手に握っていたボールペンを飛び道具として射出する。
それを防いだのはいつの間にか包囲網を展開していたエクトプラズム先生の分身と、指弾の要領でスナイプ先生が打ち出した筆記用具類。それを見て次弾を用意しようとした校長だが、その体が不自然な方向に動き体勢を崩してしまう。正体は13号先生のブラックホールと、その吸引力に乗って校長を包み込んだミッドナイト先生の眠り香だ。眠気を誘われふらついたところを、遂にブラドキング先生と相澤先生の手によって拘束されてしまった。
………いや。あの、うん。なにやってんの?
「く…っ! 突然どうしたと言うのさ皆!」
本当にね。
「校長、是非ともお力添えを」
「生徒の為です」
「貴方の力が必要なんですよ」
ブラキン先生と相澤先生を筆頭にして、次々に先生方が口を揃えていく。…えー、そんな彼ら彼女らの欲求なのだが…。
*欲求:「「「これで根津校長を合法的にモフることが出来る…ッ!!」」」*
生徒をダシに使わないでいただきたい。
教師陣の心中に苦い顔となりながら、校長先生にオレの方からかくかくしかじかと経緯を説明する。弱めだったらしく説明を終える頃には彼はしっかりと目を覚ましており、だが拘束はされたままだ。
「ま、まぁそういうことなら思う存分触ってくれて構わないのさ! 言ってくれればこんなことせずとも良かったのに…」
教師陣には些か懐疑的であったものの快諾してくれた校長先生。彼の言葉にしからば早速–––とオレはその小さな御腕の毛を堪能しようとして。
「–––あ、でもオレが触ると…」
「いいえ、大丈夫よ弘原海君」
ハウンドドッグ先生の件を思い出し寸前で動きを止めたものの、オレの様子を見て問題無いとミッドナイト先生が言う。
なんと。この短期間で何かしらの対策を取って…?
「根津校長が承諾した音声はしっかりと録音したから」
それは一体何が大丈夫なのだろうか。さっきから様子のおかしい先生方に恐怖を覚えずにはいられない。
「…し、失礼しまーす」
「待って待ってなに? 君が触ると何が起き–––うひゃあ?!」
触れるや否や、彼の口から甘い声が発せられた。早急に終わらせる為にも、迅速に特徴点を捉えつつ並行して尻尾の毛質を変化させていく。
「ま、待つんだ弘原海くん! 一旦止め–––ひんっ! く、何だこれは。一体何が…っ! く、ふうぅっ?!」
「–––サテ、デハ我々モ」
「…待って!? 君たちが私を触る必要性は無いよね!? それから弘原海君は本当にね、少しでいいから手を止めて–––あひんっ!」
「何を言うんですか校長。何事も多角的な思考が大切です」
「イレイザーの言うとおりですね。ある一方から見ただけでは物事の正確な判断は行えない。生徒の補助は教師として当たり前のことです」
何だかそれっぽいことを口にしながら集団で彼の体を弄り(意味浅)始めた先生たち。オレの影響で敏感になっているらしきその体はあっという間にもみくちゃにされていく。
むにむに。わしゃわしゃ。モフモフ。なでなで。
「だ、だめだ…っ。気持ちよくなってなんか…! う、うぅ…っ! 」
…次第に校長先生の声に隠しきれない艶が帯び始める。それを聞いてオレは–––
–––
「アッ–––––––––––!!!」
放課後の職員室に響き渡る声。
一つ言えることがあるとすれば、先生の触り心地は素晴らしかったということだ。
–––そんなこんなで戻って来たB組の教室。
校長先生の尊い犠牲を
「重桜のやべーやつだああ!!?」
上記の様な悲鳴を泡瀬クンからいただくことになった。
いや
「どうしたァ?! 別人どころか別個体になってンぞォ!?」
「角や翼をどこへやってしまわれたのですか!?」
「と言うか、それ以前に! めっちゃ小さくなってる!」
「私よりもshortデース!?」
オレの変貌ぶりに皆は面白いぐらいに混乱しているので、一旦落ち着かせる為に説明を始める。
「背が縮んでいるのは変態にエネルギー消耗しただけッスから、皆さん落ち着いて–––」
「もっとのじゃロリっぽく!」
「縮んでおるのは変化にちと妖力を使いすぎてしもうてな。まぁ問題は無いから安心するのじゃ」
「ヨシっ」
円場クンからの要望に応えてみたが、何がヨシ?
一応佇まいもそれっぽくしていると、拳藤サンが此方に近づき訊ねて来た。小学生程度の背丈までに縮んだオレの視線に合わせる為に腰を屈めてから彼女は、
「問題が無いなら良いんだけど…。にしても、随分と思い切ったイメチェン(?)したね」
「…お主らの視線が喧しいからのう」
呪詛の込められたオレの声に、拳藤サンは背後へと視線を巡らし–––男子たちは揃って綺麗に彼女から顔を背けた。…どうして拳藤サンや女子の皆は自分は関係無いと思っているんですか? (電話狐)
…っと、いかんいかん。責任を皆にだけ押し付けては駄目だ。あくまでも彼ら彼女らはオレの個性の被害者なのだから。
咳払いを挟んでから、オレはどうしてこの姿となったかの説明を始める。
「こほんっ。…えと。皆の視線がどうこう言いましたが、オレも自身の個性の影響を考慮せずに、普段の距離感のまま接してしまったりしていました。なので…少し謝罪も踏まえて、今回オレはこう言った姿になりまして」
ふやんふやんと尻尾を揺らすオレを見て、拳藤サンが声を漏らす。
「それじゃあ、弘原海は…私たちの為に…?」
「…ッスね、ハイ」
苦笑いしながらオレが首肯すると、彼ら彼女らは俯いたり視線を逸らしたりと言った反応を見せた。
仄かに沈んでしまった空気を払拭する為に、オレは甲高いロリボイスで、わざとらしくのじゃロリ口調で放つ。
「まぁ面倒な話はここまでにしようではないか。–––ホレ! お主らの為に折角整えたのじゃ、思う存分撫でるが良いぞ♪」
意気揚々。オレは尻尾を彼らへと向けて–––
「「「………っ!? (ガタタッ)」」」
「いやケツじゃねーよ尻尾をだよ。何を慄いてんだ君らは」
…やっぱりオレが悪いんじゃなくてそういう目で見る皆が悪いんじゃないかなぁ。自然と臀部を突き出す形となってしまったのは悪いと思うけども、なんか釈然としない。
*欲求:「………っ!? (ガタタッ)」*
オメーはこっち来んな小大サン。
天敵である小大サンに警戒しているオレに、話しかけて来る女子生徒。小森サンだ。
「弘原海、ホントに触ってもいいノコ?」
「ええ、いいッスよ。さっきも言いましたけど、謝罪も含めて触られること前提で作りましたので」
「わーい!」
オレの言葉に、それまで視線を尻尾に向けて釘付けとなって居た彼女は、早速とばかり駆け出して来た。そしてその手が尻尾の一つに触れる。
–––ドサ。
「………え?」
「き、希乃子? どうし…ひぃ!?」
近づき、詳しく見えなかった小森サンの顔を直視した彼女は思わず悲鳴を上げていた。
それもそうだろう。–––なにせそこにあったのは、この世のありとあらゆる柵から解放されたかの様に穏やかな笑顔だったのだから。
…説明を求む、とこちらを見る皆の目が語る。
「–––まぁ何と言いますか。中途半端が一番いけないと言うか。その…本気を出しすぎた結果、完成度が高すぎて、触った人の意識を刈り取る様になってしまったんです……」
興奮や昂りをリラックスで発散させると言った当初の目的は何処へやら。出来たのは究極「すぎる」モフモフだったのだ。
………まぁ何が言いたいかというと。
「触るンなら覚悟しろよ? –––わりィが。こっから先は一方通行だ」
…さて、言わずもがな最初にモフモフの餌食となったのは完成に尽力してくれた先生方である。まず手始めに、マイク先生。
「…白雲」
何かしらを呟いた彼は、どこか遠くを見つめたまま一筋の涙を零すとそれっきり動かなくなってしまった。
続いてはエクトプラズム先生・スナイプ先生・セメントス先生の3名。触れた瞬間に意識を刈り取られ膝から崩れ落ちた彼らは最もスタンダードな症例である。
「「らめぇえええッ♡♡♡!!」」
続いた被害者は数少ない女性教員であるミッドナイト先生と13号先生。アヘ声をぶちかましつつ頭部以外の装甲がパージした彼女たちの体を、大慌てで隠そうと着ていたパーカーと制服の上を投げ付けている間。
「「ぐわぁぁああああ!!?」」
いつの間にやら復活を果たしていたハウンドドッグ先生と根津校長は、見えざる巨大な拳の一撃を受けたかの様に職員室の壁まで吹き飛んで行った。
いよいよオレ1人では手に負えなくなったその頃に、最後であり最も酷い具合となったのが–––ブラドキング先生と、そしてA組の相澤先生である。
オレの尻尾に触れるや否や、2人は
「「あなたトトロって言うのねっ!」」
と、甲高い悲鳴を上げて気絶。…したかと思えば、次の瞬間には2人の頭上から謎の光が差し込み、何とそのまま上昇を始めたのだ。彼らを現世に留めるのにひどく苦労してしまった。
「–––どうしたんだい? 何だか騒がしいけど…いや、本当にどうしたんだい!?」
–––事態が収束したのは、職員室にオールマイト先生が来た頃である。
「とまぁ、そんなことがありまして」
オレが吐露した職員室での出来事に、吹出クンや物間クンたちが乾いた笑いや微妙な反応をした。まぁ仕方がないだろう。オレが彼らの立場だったら同じ様な反応になるはずだ。
「あふんっ」
…ドサリ、と背後で音が鳴る。これで通算15回目。今オレの尻尾の犠牲となったのは取蔭サンである。尻尾に触り易い様に背もたれを胸側にして座っているオレの周囲は、正しく死屍累々の有様だ。
物間クン・吹出しクン・拳藤サン・塩崎サン・鉄哲クンの5人は尻尾には触れずに無事残っており、後は全員意識を刈り取られている。常識人四天王の様にただ気絶をする者も居れば庄田クンの様に物言わぬオブジェクトと化した者もチラホラ見受けられた。
…再三注意したにも関わらず尻尾に触れた宍田クンと角取サンは揃って仲良く壁に向かって吹き飛び、そのまま力尽きた。何故触れたし。
「うぅ。どうしたらオレは普通になれるんだ…?」
「……ま、まぁ? 皆幸せそうだから良いんじゃない? あは、あはは…。–––うん。ごめん」
拳藤サンが必死にフォローしてくれるものの、最終的に俯き加減で謝ってしまう。何だかなぁ。
「–––、んぅ」
–––近くで安らいだ表情のまま寝入っていた小大サンが声を発したので、すかさずその口腔へ指先から分泌した睡眠液を放り込む。
因みに彼女、唯一オレの尻尾に耐えた人物であり…然し、その時の様子としては。
『–––はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁ…っ! –––んんっ!』
–––と、荒い呼吸を繰り返しながら堪能していたかと思えば、突然尻尾の一つを自分の股に挟みそのまま腰をカクカクさせ始めたのである。咄嗟に睡眠液を飲ませてしまったオレは悪くない。
その時は
そんなことを考えるオレの後ろでは、地に伏した取蔭サンを塩崎サンが運んでいるところだった。壁を背にする形で楽な体勢を取らせる彼女を手伝いたいのだが、如何せん、エネルギーを消耗し省エネ状態となった現在ではろくなことが出来ない。
申し訳なく思い、塩崎サンに声をかける。かけようとして、
*–––性欲 79/100*
(–––うん?)
何だ。今、異様に高い性欲値が視界に映った気がするぞ?
頭に無数のハテナを浮かべるオレに、塩崎サンが声を掛けて来た。
「弘原海さん。申し訳ないのですが、少々私も撫でさせていただいても宜しいでしょうか?」
そう申し出た彼女に他の4人が驚いた様子を見せ、その反応に塩崎サンが恥ずかしそうに俯いた。
「うっ。あの、いえ…。その。とても触り心地が良さそうで、その…」
「…気持ちは分からなくもねぇが……。こいつらのこと見てよく触る気になったな、塩崎」
鉄哲クンに言われ、居心地が悪そうにする塩崎サン。まぁこちらとしては特に問題は無いので構わないのだが、彼の言うとおり、よく触る気になったな…。
はて、先程の性欲値は一体誰のものだったのだろうか。小大サンにしては低すぎるしなぁ、などと考えながら塩崎サンへ尻尾を向けようとオレは体勢を変え–––
*塩崎 茨:性欲 79/100*
*感度「中」*
*状態「興奮」*
*属性「お姉様目百合科ロリ属」*
*欲求:「ああいけません弘原海さんその様なあどけない表情と可愛らしいお姿で私を誘惑なさらないで下さいいけません堪えるのです茨弘原海さんは級友なのですよですが弘原海さんも弘原海さんですどうしてそんなに無防備でいらっしゃるのですかまるで誘っている様ではありませんか誘っているのですか誘っているのですねと言うことは後ろから抱きしめても
………ふぁっ!? 塩崎サン–––いや本当に塩崎サンか今オレの目の前にいるのは!? 小大サンじゃなくて!? どうした!? どうし…どうした!? ど、どうした!!?
「–––それでは弘原海さん。失礼します」
(め、目が据わっていらっしゃる…ッ!)
小大サン級の変態が爆誕し、尚且つそれが今目の前に居ると言う恐ろしすぎる状況に体が硬直してしまい動けない。
何、オレの所為? 幼女の姿が彼女の性癖にブッ刺さってしまったの…?
暴かれてしまった彼女の内面に恐れ慄いていると、ぽんっ、と言う音がぴったりな力加減で彼女の手がこちらに触れる。
「…うふふっ」
普段であれば聖女もかくやと言う彼女の微笑みが
「あの、塩崎サン? 撫でるなら尻尾を…。それ、オレの頭なんスけど…?」
「ああなんて柔らかい。…ふふっ、髪もサラサラで…。ほっぺたもこんな、うふふ…っ」
一瞬でも触ればそれだけで意識を持っていく尻尾を触らせようとするも…駄目だ聞いちゃいねぇ。トリップしてやがる。
「塩崎サン? 塩崎サン聞いて? ちょ、一旦手を止め…。塩崎サっ、あのちょっ! –––あ、そこ良い……(陥落)」
や、やだ。塩崎サンったらテクニシャンだわ…。
妖しく笑う塩崎サンに頬や頭を散々撫でられること暫く。自分でも分かる位に上気しており、顔が熱い。塩崎サンは一旦手を止めたもののまだ満足していない様で、こちらに向けて手をわきわきしていた。
く…っ! 撫で撫でなんかに負けない!!
無意味であるとは理解しているものの火照った体でオレは身構え、それと同時に塩崎サンの手がこちらに–––
「–––––私は正気に戻った!」
「えっ? ………きゃあっ?!」
突然発せられた悲鳴の後、ズボっと言う音がオレの頭部から聞こえてきた。
…………………ズボ?
–––一瞬何が起きたのか分からず、少年少女らの間に流れていた空気が固まる。
突如奇声を発して起き上がったのは、それまで安らかな表情で眠りに就いていた小森少女。彼女は自身の意識を刈り取った究極のモフモフに向かってそのまま駆け出し、結果体当たりじみた一撃を塩崎が受けることとなった。
然し問題なのはそこではなく…小森に突撃される前、彼女が弘原海の頭を撫でようとしていたことが拙かった。両手を前にしていた状態で、突然予期しない衝撃が背後から。結果どうなったかと言うと…。
「いやァ–––––っ!!」
「「「うわぁ–––––!?」」」
ズッポリと両手がケモミミに挿入されてしまっていた。
塩崎の金切り声を皮切りに、惨状を目の当たりにした鉄哲たちの叫びが木霊する。
「尻尾尻尾尻尾尻尾おおぉおー!!」
「ちょ…落ち着け希乃子ォ!」
「オイ! 早く抜いてやれ塩崎ッ!」
「ててて、手首が引っかかって…?!」
「大丈夫か弘原海ぃい!!」
間に居る塩崎などお構いなしにモフモフの塊に向けて前進を続ける小森を拳藤が止めに入り、鉄哲の言葉にパニック気味の塩崎が返した。その間に吹出が安否を確認するも、耳を塞がれていて聞き取ることが出来ないのか当の本人からは返事が無い。
「–––––––俺は正気に戻った!」
え? と物間が声を漏らし…直後、先程の小森の行動をなぞる様に、今度は鱗が突然立ち上がりそのまま弘原海に向けて突撃を開始する。
背後からぶつかられた衝撃で小さな体は前へと押し出され、その分塩崎の両手が奥へと進んでしまった。
「ふぎ…ッ!?」
と、体を跳ねさせて弘原海が悲鳴を漏らす。
塩崎もその様子に小さく悲鳴を上げ、顔を青くしながらも何とか手を引き抜こうと躍起になる。拳藤が小森を抑え、鉄哲が鱗を抑えるこの状況、はたから見ずとも十二分にカオスであった。
「し、塩崎サン落ち着いて…。ゆっくりで大丈夫ですんで、と、兎に角早く抜いて下さいぃ」
大丈夫なのか早くして欲しいのか微妙な言葉を聞き塩崎も急ぐが、これまた綺麗に嵌ってしまっておりなかなかどうして抜ける気配が無い。
「–––––––私は正気に戻った!」
ごずっ、と三撃目。起き上がった柳が突撃し、心なしか抜けかけていた塩崎の手がまたもや奥へと。
「くびゃっ、えべ…っ! ひゅっ、ひゅう…っ!」
–––この辺りから弘原海の反応が異色さを帯び始めた。言葉になってない声を漏らしながら、涎や涙に鼻水と様々な体液を漏らすその様に、いよいよ塩崎のパニックもピークを迎えつつあり目に涙を浮かべその顔は蒼白に染まっている。
そんな間にも次第に周囲では再起動を始める人影が増えつつあり、拳藤たちは身構えた。
「何だこれゾンビ映画か!?」
「言ってる場合かよ、来るぞ!」
鉄哲と物間のやり取りの直後、幽鬼の様に不安定な動作を繰り返していた彼ら彼女らが一斉に–––お馴染みとなった台詞と共に–––動き出した。
全員正気云々言っているが、その目に光は灯っておらず一様に不気味な笑顔を浮かべている。どこぞの裏切り王が証明している様に、やはり正気に戻ったと自分で言う人間は正気に戻っていないのだ。
「だぁーもう落ち着「あぎゃっ!」けお前ら!」
「物間、凡戸の個性コピーし「いっひっ、はぁっが!」て動き止められないか!?」
「駄目だ凡「びゃ、おえ゛っ」戸まで近づけない! 吹出! お前の方で「あ、はぁー! じ、ぎぎぎぃ…!」似た様な擬音は出せないのか!?」
「僕の個性だと範囲「やめ゛っ、耳だめ!」的には無理だぞ!?」
「無い「お゛っおぉ゛! おぐゴリゴリじないでッ! やめれ゛っ♡!!」よりはマシだ!」
「 や め て 弘 原 海 聞 き た く な い ! 」
合間合間で聞こえてくる声に、遂に耐えきれなくなった拳藤が悲鳴を上げながら個性の「大拳」でクラスメートを薙ぎ払い始め、それを見た彼らも形振り構わず後に続いた。
性差も関係無いとばかり顔面だろうと容赦無くぶん殴っていき、モフモフに取り憑かれた者も残り数名となった時である。
–––
「ひ」
振り向き、ソレを見て、誰かの悲鳴が漏れ出る。
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
まるで壊れたラジオの様に、小刻みに、同じ抑揚で、喘ぎ声を繰り返す–––ぐりゅんぐりゅんと
ごぽぽっ、とその口と鼻からは胃の内容物が一定のリズムで逆流を繰り返し、蠢き続ける眼球の縁からは次第に涙に混じり赤い液体が漏れ出し始めた。
「わ、わあぁ…!」
拳藤が慌ててそちらへ駆け寄り、他3人が残りのクラスメートを叩き潰す。
塩崎は既に放心状態であり、虚ろな表情のまま口の開閉を繰り返すだけだ。拳藤は彼女の両手を掴み、足を弘原海が座っていた椅子へかけて力任せに引っ張り–––ズリュリ、と音を立ててその耳から漸く両手が引き抜かれる。赤とも茶色とも言えない不透明な粘液が糸を残した。
「わ、わたつ」
ガンっ! …と、音。
安否を確認しようとした拳藤を、壁に向かって顔面が叩き付けられた音が遮った。
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」
喘ぎ声を発しながら、もう一度頭突き。
もう一度。もう一度。もう一度。–––そうして6度目をしようと背を逸らし…そのまま背面に倒れ、股間からはしょわあああと音が鳴り、湯気と共にアンモニア臭が次第に立ち込める。
「…–––––はぁ」
…その様子を見て、とうとう塩崎が意識を手放した。
–––沈んでいた意識が浮かんでいく。
–––五感が本来の感覚を取り戻していく。
「…う、うぅん……?」
瞬きを数度。自分が横になりどこかに寝かされていること、顔に何かを被せられていることを次いで理解していく。未だ冴えない頭で何とか思考を巡らし、何が起きたのか理解する為に記憶を辿る作業を始めた。
うぅ、頭がクラクラする…。
取り敢えず、現状を把握する為にもオレは顔にかかっていた布…だろう、を摘んで退けた。
「ん」
「…、?」
「ん」
–––直後に頭上から聞こえてきたクラスメートの声。かなりの時間をかけて、オレが摘み上げたものが彼女の–––小大サンのスカートであることを理解する。
(…わぁ、ア◯ガミで見たことあるやつだあ)
股枕と言う単語を頭に浮かべながら馬鹿みたいな感想を抱いたオレは、すぐさま意識を引き戻しつつ。
「えぇ、なにしてるんスか…」
「ん」
「いや、んじゃなくて」
「ん。–––大丈夫?」
…彼女の言葉に、苦笑いしながら答える。
「あー、まぁ。大丈夫…ッスかね、多少は」
「ん」
「心配ありがとうございます。…はぁ。クラスメートの前で漏らすとか恥ずすぎる…。服も着替えさせられてるし、リカバリーガールに後でお礼言っておかないと」
断片的な記憶を辿った結果、何とも恥ずかしすぎることを思い出してしまい、思わず声が漏れてしまった。制服からジャージになっている辺り、恐らく、今は席を外しているらしいリカバリーガールが着替えさせてくれたのだろう。
「ん。–––このくらい、当たり前」
「おい待てアンタが着替えさせたんか」
変なことしてないだろうなと問い質すも、返って来るのは「ん」の一言のみ。してないよな? 何もしてないんだよな…??
怪しんだところで確かめる術も無く、何も起きてないことを祈るばかりだ。
その後小大サンから事の顛末を聞き、皆ある程度なら落ち着きを取り戻したことが判明する。…うぅむ。こんな騒動を起こしてしまったのだ、今後は〝キュウビフォーム〟は封印か…。トホホ、折角頑張ったのに。
がっくりと気落ちしながら時計を見る。–––っておい、もうこんな時間かよ!
「うわぁ早く帰らな–––ぐえぇっ?!」
さて。慌てて立ち上がろうとしたオレだが、小大サンが股を閉じオレの頭を挟み込んだことで妨害されてしまう。
「うぐぐぅ…っ! な、何ですか小大サン、てかぐるじっ」
「ん」
「いやだからんじゃなぐでえぇぇえ…っ!」
呼吸が出来なくなる程ではないにせよ息苦しいことに変わりはなく、こちらを見下ろしている小大サンの意図を読み取る為、彼女のエロステータスへと視線を巡らせた。
*欲求:「2人っきり、保健室、放課後。何も起きないはずがなく…」*
逃 げ ね ば 。
「–––
と、その心中に戦慄している間に、普段のクールさが一瞬で霧散してしまう妖しい笑みを浮かべる小大サン。
ヒィッ、トラウマが! 彼女にお持ち帰りされた時のトラウマがががががが!!
「こだ、小大サン! そろそろ帰らないとまずいですよホラ! 帰りましょ、ねっ? …ねっ!?」
「えへっ、えへへっ! んん〜っ♪!」
「話聞こう!? 会話しようぜ、きっと楽しいから!! …お、おい止めろボタンに手をかけるな!! ノゥッ、ノォ–––ウッ!!?」
–––と、こちらをしっかり拘束しつつ自身の制服のボタンを彼女がはずし始めた時である。
「おーい。大丈夫かー?」
「弘原海ー、ごめんねほんとー…って」
「「あ」」
保健室にやって来たのは、拳藤サンと小森サンであった。組んず解れつ(一方的に)なオレと小大サンの様子を見て動きを止めた2人は–––次の瞬間、爆発音と共にその顔面を茹で蛸の様に赤くさせる。
「うわあああああ!! ごめえええぇぇぇぇん……」
「待って行かないで委員長ォオオッ!!」
ドップラー効果を起こしながら爆速で保健室を後にしてしまった拳藤サン。小森サンも数瞬遅れた後、か細い悲鳴を上げてから入口へと駆けて行ってしまう。
「ひゃあぁ…っ!」
お願い、待って…! エネルギー不足の今のオレでは小大サンに対応出来ないんだ…!
そう思ったところで、羞恥に襲われている彼女が戻って来てくれるはずも無く–––
パタムッ (←小森サンが扉を閉める音)
ガチャンッ (←小森サンが鍵をかけた音)
とすっ (←小森サンが椅子を持って来て近くに座る音)
「………さ。続けて?」
!!?!?!?
「こんな機会滅多に無いノコ! 2人の情事を見せてもらうノコ! 是非とも! 後学の為にも!!」
「何言ってんの!? 何言ってんの!? メモ帳取り出してないで早く助けてよ!! 馬鹿なの!? 」
「弘原海! 女の子に恥をかかせたらダメキノコ(意味深)だよ!!」
「その親指をにゅってするのを止めろ貴様ァ!!」
女の子がそんな卑猥なハンドサインするんじゃありません!
「ん。–––それじゃあ、続き。…シよ?」
「おい馬鹿しか居ないのかここには!? 続きも何もなんも始まってねぇンだよこの…っ! くそ、力強…っ!? ちょっと小森サン本当に助けてっ、やだちょっと待って! あ゛─ッ♡!?」
〜今回発動した主人公の能力一覧〜
『キュウビフォーム』
もふもふ! モフモフ! もっふもふもふ! モフモフモフモフ!!
と言う訳でめっちゃ長ったらしくなった脳姦編、これにて終了です。詰め込みすぎて疲れた…。
次回からは本編の再開を予定しております。もっと綺麗にまとめられる様になりたいですね……。
この後めちゃくちゃ…
-
モフモフした
-
◯ックスした