「ん」と「ね」と「(単語)」しか言わないクラスメートの性欲がヤバすぎる件について   作:羽虫の唄

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祭りの熱気にあてられてテンション高くなって変なこと口走ったりしますよね。
しますよね?


雄英体育祭 その⑦(小大 唯:イグニッション)

 –––その戦いは熾烈を極めた。

 片や性特化、片や大きさの変換。互いが互いに戦闘向きでないが為に、己が肉体に有無を言わせる肉弾戦になるのは必然的であった。

 

 その頭部から血を噴き出しながら拳を放つ弘原海(わたつみ)。対する小大は身を屈めることでそれを避けカウンターで掌底を自己主張の激しい乳に向けて打つ。

 太くだらしのない声を短く漏らしつつも、すぐさま気を引き締め直し膝蹴り。を、小大はまるで羽が舞うかの様な軽やかな動作でそのむっちりとした太ももから臀部までをナメクジの様に粘着質な手つきで撫でながら躱し。

 ふにゃりとした悲鳴を零し、腰から崩れ落ちそうになる…のを何とか堪えた弘原海。追撃を恐れた彼–––現・彼女–––は急いで振り返る。そうして目と鼻の先に居た小大によってクリンチに持ち運ばれつつ性に目覚めた思春期の中学男子が泣きながら裸足で逃げ出すレベルの淫語を吐息と共に囁かれ–––。

 力の抜けた体を思い通りにすることは簡単である。即座に押し倒し十字固めを仕掛けた小大はその腕にどことは言わないがぐりぐりと押し付けながら訊ねた。

 

「ん。–––降参?」

 

 完全に腕を伸ばされた状態で十字固めから逃れるのは至難–––不可能とも言えるだろう。

 誰もが勝負ありと判断したその状況の中、弘原海は苦しげに言葉を発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 い い 加 減 に せ ん か い ! 」

 

 ドスッ! とタップの代わりに折れた角を力の限り彼女の足に向けて突き刺し、小大サンは突如としてふくらはぎに襲いかかった痛みに小さく悲鳴をあげながら拘束を解除する。

 

『ひぃっ!』

『うわぁ、マジか…!』

『相手女の子なのに!』

 

 蹲り、脂汗を流しながら突き刺さった角を引き抜く小大サン。その痛々しい姿に観客席からは疎らにオレを批難する声が発せられ–––それを聞き、反射的にオレは叫び声を上げていた。

 

「うるっせぇわピーチクパーチクギャースカギャースカ外野が騒ぎやがって!! あんたらプロのくせしてヴィランの見た目が美少女だったら手加減すんのかあ゛ぁんッ!?」

 

 割とガチ目にブチギレつつ叫ぶ。

 現場を知らない学生の身とは言えヒーローに臨む気持ちは真剣なものなので、プロヒーローたちのその言葉は結構怒りを覚えるものだった。

 オレが目指しているものは少なくとも、自身の責務も忘れて相手の美貌に見惚れ、失態を犯す様な暗愚魯鈍な存在ではない。

 

 …これは蛇足だが、第1回戦のラスト、爆豪クンと麗日サンの試合でも似た様な状況が起こりその時に相澤先生から一言が有ったらしい。いや、そんなことあったんならもう少し自分の言動考慮してプロヒーローの皆さん。咄嗟のこととは思うけどもさ。

 

 そんなことを考えながら、オレは小大サンの方を見る。

 

 

 

 

 

*欲求:「ふふ、なかなか…! この痛みも悪くない…!」*

 

 

 

 

 

 なんだこの…美少女っつーか微少女っつーかもはや(かび)少女じゃねぇか!

 

 人が真剣に臨んでいると言うのにこれである。怒りで頭に血が上り、心なしか噴き出る血の勢いが僅かに増した様にさえ感じられた。

 堪らず目前の彼女に向けて言い放つ。

 

「アンタもだぞ小大サン…! 巫山戯るのも大概にしとけよ、こちとら真剣にやってんだ! ()()()()U()S()J()()()()()()()()()()()()?! やる気が無いならとっとと失せろ!!」

 

 正直な話、騎馬戦で他科から煽りを受けた際に彼女が悔しそうにしていたのを見た時は、安堵に似た感情を覚えていたのだ。外見に反して内面がこんなでも、ヒーローに対する思いはちゃんと有るんだな、と。…だと言うのに!

 

 …と言うかそもそも、どうして誰も彼女の行いを問い質さないんだ?

 何、現実改変起きてる? 小大サンの外見に見惚れて皆認識出来てない? EuclidかKetel分類なのにSafe認定ですか? 何この傍迷惑すぎる存在。

 これでオレが何かすれば全部エロ方面に捉えられるのだから納得がいかん。堪らず歯軋りを行ってしまうが、きっとオレは悪くない筈だ。

 

「––––ごめん」

 

 声。

 一瞬それが小大サンのものと気付かず、慌てて出処を探ってしまった。

 漸く対戦相手である彼女のものだと理解し、そちらを見–––

 

 

 

 

 

 *小大 唯:性欲 1/100*

 

 

 

 

 

「–––本気でやる」

 

 –––多分この時のオレは間違い無く目玉が飛び出ていたと思う。それほどまでの衝撃だったのだ。

 だから反応が遅れ、ズボンを掴み裾を上げた小大サンが靴下を履いていない–––()()であることを認めても、すぐに動くことが出来なかった。

 

「大」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バゴォンッッッ!! と言うのは、試合会場の壁に巨大化した靴が勢い良く衝突した音である。靴飛ばしの要領で飛ばされたピンク色の可愛らしいシューズは、但しその個性によって全くもって可愛らしくない攻撃と化した。

 

『ここで小大、第1回戦で上鳴を瞬殺した技を繰り出したぁ! しかし弘原海、ギリギリでこれを回・避ーっ!!』

 

 プレゼント・マイクの実況が観客を賑わせる中、渾身の横っ跳びを行った弘原海は打ち付けた顔面のことなど気にも留めず、大慌てで起き上がる。が、さすがに小大の方が早かった。

 

「大」

 

 速度は音速。空気を引き裂き炸裂音を生み出したのは、巨大化し鞭として振るわれた()()()()()。顔面に受けた一撃は肉…までは行かずとも、その皮膚を裂き、赤を滴らせた。

 

「〜〜〜〜〜〜っ!!?」

「小」

 

 声にならない声を上げ激痛に苦しむ弘原海に接近した小大は、その衣服に触れ個性を発動。無理矢理縮められた衣服に動きを阻害され体勢を崩すものの、倒れてなるものかと気概を見せる弘原海。

 

「解除」

 

 しかしそれは小大が許さない。

 踏ん張ろうとしたその足下に現れるのは、いつの間にか仕掛けられていた靴下。盛大に滑ったことで体を強かに打ち付けた弘原海に向け、止めの一撃が放たれた。

 倒れたその体の上に投げられた、もう一方のシューズ。

 パンっ、と言う掌を合わせる音の後–––。

 

()大」

 

 –––ズン!!! と。先程とは比べ物にならない大きさとなったそのシューズが、その質量を持って襲いかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『–––人は見かけによらねえってのはまさにこのことだァ! 流れる様な攻撃に弘原海手も足も出せずゥ!!』

 

 …いや本当に、マイク先生の実況の通りだ。マジで手も足も出せなかった。

 

「………ん、ぅ」

 

 個性の反動だろうか。垂らしていた一筋の鼻血をジャージの袖で拭う小大サンの額には汗が浮かんでおり、その顔にも疲労が見て取れる。

 

 何と言うか、凄まじく恥ずかしい。小大サンに向けてあれだけ言っておきながらこの有様である。物の見事に翻弄され、今はこうして身動きが取れない状況に追い詰められてしまった。

 

((なっさ)けねぇ…! –––だけど!)

 

 そう、だけどここで諦めるのは違う。

 

 さて状況を纏めよう。…纏めるまでもないけど。

今現在オレは無理矢理服のサイズを縮められた上で、巨大化した靴によって片腕と腹から下を下敷きになっており、脱出はほぼほぼ不可能に近い。

 たかが靴だ–––と言いたいところだが、残念ながら大きさが倍になれば重さも倍、と言える程世界は単純ではない。オレにスーパーパワーが備わっていれば話はまた別なのだが…。

 ………いや、心操クンとの時に超パワーは使ってたけど、アレはオレじゃないと言うかもし使えたとしても使いたくないと言うか…。

 ま、まぁ兎に角だ。何とかしてこの状況を打破しなくてはならない。さてどうするか。

 

 魅了の声–––動きを止めたところで意味無し。

 睡眠ガス–––眠らせても脱出出来なければ意味無し。

 催眠術–––控える様にとリカバリーガールからドクターストップ。

 野球剣(エロスカリバー)–––いやどうしろと。そもそもが取り出せねえ。

 

(…ム、閃いた!)

 

 脳をフル回転し考えを巡らせていたオレは『とある方法』を思い付く–––が、直後にリスクの方も考えてしまい表情を歪める。

 

 とある方法…まぁそう大したものではなく、「サキュバス」の基本能力である肉体改造で全身から()()–––鰻が纏っている粘液–––を分泌して摩擦をゼロにし脱出しようと言う考えだ。最初はナイスアイディアと思ったものの、この作戦だと…靴底と服が引っかかって下半身クールビズになってしまうリスクがある。小大サンのお陰で服のサイズが縮んでいるとは言え、万が一もあるしなぁ…。

 

 ……いや。確かに世間体は大事だ。

 けれど、ここで手段を持っているのにも関わらずそれを試さないで終わるのは違うだろう。あの小大サンが文字通りに本気で戦ったのだ、それなのにオレが本気で応えない程失礼なことは無い。–––ので!

 

(覚悟決めろよオレぇ…ッ!)

 

 すぐさま体内でヌタを生成。小大サンに気付かれない様に、先ずは彼女からは見えない下半身の方から分泌させる。

 

「弘原海君、これ以上の続行は…」

 

 審判のミッドナイト先生が戦闘不能の判断を下そうとするが、それに待ったをかけ。

 

「すいません、まだやれます…!」

 

 下半身側を十二分に塗れさせた上で、上半身の方も何時でも分泌出来る様に準備を万全にする。

 

「…ん」

 

 オレの言葉に、構えを取る小大サン。

 彼女のその姿を見たオレは拘束されていない腕で闘技場の床を掴み、それと同時に準備していたヌタを放出して脱しゅ–––

 

 

 

 

 

『–––––まさか弘原海、『アレ』を使うつもりか!?』

 

 

 

 

 

 …。

 ………。

 ……………。

 

 …………え。突然ナニ?

 今のは……黒色クン?

 

『知ってンのか黒色!?』

『ああ…。1度だけ見たことがある。だが、アレは…!』

『え、何? なんかヤバいの??』

『確かにこの状況を覆すことは可能だろう。しかし…嗚呼、口に出すことすら憚れるッ』

 

 B組の観客席の方から聞こえて来るのは、そんなクラスメートたちの会話。

 え、え? 何、え? 見た目は…まぁ確かに良くはないけど、そんな慄きながら言う様なことじゃ…? え? と言うか黒色クンは何で知ってんの? 人前でやったことないんだけど…。

 

 –––混乱するオレを余所に、彼の一言から始まった妙な空気がどんどんと伝播して行く。

 

「ん……っ」

 

 先ずは小大サンがより一層警戒を強めた。

 –––うん、やめて?

 

「フォローは任せて。何かあれば私たちが救けるから、貴方は思う存分にヤりなさい!」

 

 ミッドナイト先生が頼もしい言葉をくれる。

 –––ねぇ、やめて?

 

『どーやら奥の手が有る様だが、一体何を見せてくれンだあ弘原海〜ッ!!』

 

 お い や め ろ 。

 

 

 

「………………………………………………うおおおおおおおお–––ッッッ!!!」

 

 

 

 我ながらなんと情け無い精神力だろうか。あらゆる視線と興味が集中したこの状況、最早ヌタ塗れになる程度では済まされ無いと思われる空気感に耐え切れず、オレはヤケクソ気味に雄叫びを上げる。

 

(………アイツ、アトデ、シバク)

 

 –––脳裏に黒づくめのクラスメートの姿を思い浮かべながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおお–––ッ、お、ごっぽぇげほ! ……っゔぉえ!」

 

 –––カラン! と唐突に発せられた硬質な音の正体を探ろうと、視線を巡らせる観客…及び生徒や教師陣。

 

『ンだ、ありゃあ…?』

 

 実況席のイレイザーヘッドの疑問の声がスピーカーを通して会場に響く。

 

 一点に向けて注がれる視線。巨大化したシューズの下敷きとなった美少女、その先。

 ピンク色の棒状の部分と、その先端に備えられたメタリックに輝く大きな三日月の装飾、それに囲われるクリスタルで出来たハートマーク…。

 手っ取り早く言えば、幼女向けアニメに登場する魔法少女の魔法のステッキ(変身ツール)が転がっていた。–––唾液か胃液に塗れた状態で。

 

 

 

『〝守護(まも)って☆天使(エンゼ)ちゃん!〟でホーリーエンゼルから受け取ったラブピーステッキ…!? 完成度たけーなおい』

『止めとけ吹出。周りがドン引いてる』

『〝守護(まも)って☆天使(エンゼ)ちゃん!〟、ホーリーエンゼルのギブするラブピーステッキ…!? クオリティーたけーデスネおい』

『『『ポニー?!』』』

 

 

 

 そんな会話がB組内で行われる中で、ひゅうひゅうと喉を鳴らしながら少女が動く。

 拘束を免れた右腕で件のステッキを掴み取った弘原海はそれを小大に向ける。と、その先端に魔法陣–––何とも凝った–––が生み出された。回転しながらその大きさを増していくそれが、一定の大きさに達した時である。

 

 –––どぴゅっ。

 

『『『いや音』』』

 

 実況席の3名は見事に声を揃えつつ()()()()()()()を探し–––すぐに見つけた。

 場所は小大の腹部。…無数のイボや血管を浮かび上がらせた、粘液塗れの触手を。

 

『わぁー』

 

 蛇の様な芋虫の様な、海鼠(ナマコ)の様なナメクジの様なそれにプレゼント・マイクが万歳じみた声を漏らす間にも、弘原海による触手射撃は続けられた。どうやらそれなりに勢いがあるらしく一撃受ける毎に小大の体がじりじりと後退を行って行く。

 気ッ色悪いことこの上無いがそれだけでなく、射出された触手群は互いが互いと組み合わさることで拘束具に似た役割を持ち始め次第に小大の動きを阻害していった。なかなかどうして厄介な攻撃である。

 

 その見てくれに虫嫌いなプレゼント・マイクは顔を青くしているが仕事を放棄したりはせず、己の役割を務めた。

 …否、正確には務め()()とした。だが、出来なかったのである。

 

 

 

 

 

 –––触手に纏わり付かれた小大の服が溶け始めているのに気づいてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 服が溶け、肌が露出し始めている。

 それに気づいた観客たちは一斉に声を荒げた。

 

『さ、最低っ! 女の敵じゃん!』

『ちょっとカメラ止めなさいよ! 何撮ってんの!?』

『止めさせろ雄英–––ッ!』

 

 次々と発せられる–––その殆どが弘原海に対する批難の声。やっていることがやっていることなので、彼ら彼女らの反応は至極当然と言えるのだが…。

 これ以上は小大もそうだが、弘原海の立場が危うくなってしまう。いや、もう十分に最悪な部分まで来てしまっているだろう。マイクは慌てて声を出す。

 

「おォい、これ以上はヤバイ–––」

 

 –––そうして彼が、見たものは。

 

「………教えてくれ、2人とも…ッ! 俺は一体、どうすれば良い…ッ!!」

 

 あてがった手に己の頭を握り潰さんばかりの力を込めながら、ブラドキングは問いかける。

 

「分かっている、今起きていることが1人の少女を辱めていることぐらい…ッ! だが、ここで止めてしまえば俺は、…俺は弘原海(あいつ)の覚悟を、決意を! 踏み躙ってしまう…ッ!!」

 

 …思い出される、第1回戦での『宣言』。

 その個性の性質上どうしても世間からの印象が悪くなり–––現に、こうして周囲を敵に回してしまっている弘原海。それでも彼が自身の行いを止めようとしないのは、その言葉に–––覚悟に嘘偽りがないからだ。

 

 弘原海を切り捨てるか(止めるべきか)小大を見殺しにするか(止めないべきか)

 

 ブラドキングは、苦渋の決断を迫られていた。

 

「………ったく、馬鹿野郎が。頭を抱える暇が有るなら、先ずはあいつらのことを見てやれブラド」

 

 そんな彼を見てイレイザーヘッドが声を発する。

 

「やり過ぎだと思うのなら止めればいい。だが、踏み躙りたくないのであれば()()()()()()。…2人ともまだやる気だ」

 

 言われ、見る。

 片や、脇や腹部だとか太腿を大胆に露出しつつも、押し出されてなるものかと拘束を解こうとし。

 片や、心無い罵詈雑言を浴びせられ続け、血涙を流すも一切手を緩めずに勝利を掴み取ろうとし。

 

「借りるぞ」

 

 言いながら彼は、実況用のマイクを手繰り寄せた。

 

「好き放題言うのもそこまでにしとけよ。お前ら1回戦目で何聞いてたんだ?」

 

 冷ややかな–––だがそれでも、状況が状況だ。今回ばかりは観客席からは反論の声が湧き上がる。

 

『だからって物事には限度があるだろーが!』

「…逆に聞くが、一言でも小大は()()()()()()()?」

 

 –––その一言で、物の見事に全員押し黙った。

 

「ヒーローになればこうした状況でヴィランと戦うこともある…」

『滅茶苦茶多いわよ!』

「説得力のある言葉ありがとうございますミッドナイト。…言うのは易い。プロの現場を知らない学生の身で、それが出来る奴は少ないだろう」

 

 ギリギリでパンクと表現が可能な小大。彼女に纏わり付いていた触手群はその背丈よりも大きなものと化し、拘束と言うよりも引っ張り出そうと蠢いている。

 それを力任せに毟り取りながら躍起する小大と、一切手を緩めない弘原海。彼らは既にイレイザーヘッドたちの会話など聞こえていない様であった。

 

「ヒーローとしちゃあ卵も卵だ。だが教師として、大人として。俺はこいつらのこと()()するよ」

 

 一呼吸挟む。

 

「分ったなら黙って見てろ。そいつらの–––目標(ヒーロー)に対する気概ってやつを………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなものは無い!!」*1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナカッター!!? とマイクが叫び、ブラドとイレイザーは完全に動きを停止させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と–––ドメッ!」

 

 イレイザーのフォローを台無しにした弘原海が宣言する。

 どぴゅるっ、とふざけ切った効果音と一緒になって大き目の個体が射出され、それが最後の一押しとなり、小大が遂に場外へと押し–––引っ張り–––出される。

 

「小大さん場外!」

 

 勝敗を言い渡すミッドナイトは数枚のバスタオルを抱えながら小大の元へ駆け出す。1回戦目のことを考慮して用意していたものだが功を奏した。…使用する対象は予想とは違ったものの。

 試合終了にも関わらず拍手は起こることはなく…恐ろしい程微妙な空気の中、勝者となった弘原海はと言うと。

 

「…ハーイコッチオイデー」

 

 悲しいまでの棒読みでステッキを振るい、小大に纏わり付いていた触手の塊を自身の元へ引き寄せていた。血涙を流しながら笑顔を貼り付けるその様子は何とも痛ましい。

 

 色々と色々と色々と色々と起こってしまったが、それでも決着が着いたことだけは確かであった。結果はどうあれ、勝負は終わったのである。後は選手が退場するだけ–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「–––くひっ♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後にする、だけなのに。

 小大の介抱に当たっていたミッドナイトは突如背後から聞こえて来た声に勢い良く振り返り、彼女は見た。

 

 

 

 巨大な靴を持ち上げ引き摺り出した主人に群がる触手の群れを。

 

 

 

「………ちょっと待って消えて無くなる感じじゃないの!?」

 

 ミッドナイトの悲鳴に「ソンナツゴウノイイワケナイジャナイデスカー」と言う棒読みが祟り神の一部と化しつつある少女から発せられる。

 何十何百…下手をすれば千と数百にも及ぶ「ふあ♡?!」群にその体のどこと「あぅ♡!」言わず満遍無く這い回わられながらも必死に「はーっ♡ はーっ♡」体を動かし、腰を抜かしかけ足を内股気味にしつつも触手と共に「んお゛ッ♡」何とか通路へその体を滑り込ませた弘原海であった。

 

(健気ッ!!)

 

 ほんの少し瞳を潤ませながら、ミッドナイトは急いでその後を追い–––同じく心配だったのだろう、バスタオルを巻いた小大もそれに続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザザ–––ザザッ、ザ……ザザ。

 –––それは通路に3人が消えてすぐのことである。体育祭の進行や警備の情報を伝達する為雄英教師が備えているインカムに、唐突にノイズが走った。

 緊急事態かと実況席のプレゼント・マイクたちはインカムから聞こえてくる音に意識を集中させる–––。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『–––何で2人とも来ちゃったのもぉおおお、お゛っ?!♡』

『あんなの見せられたら誰だって心配する…ウヒィ♡!?』

『ん! …ん゛ん♡?!』

『と、取り敢えずどうすれば良いのコレ弘原海君!』

『い、いや終わるまでどうにも…。自動(オート)なんでコレ…ほへぇっ♡!? ちょっと待って何でオレだけ同時ぃ♡!?』

『うっそおおおォ!? …や、やだ待ってスーツの中に入って来ィいン♡!?』

『んん゛っんんん゛ッ♡♡!』

『おっほ♡ これヤッベ♡!!』

『変な声出すにゃあミッドナイトっほぉお゛♡♡!?』

『ん、だめ、これ……だめッ♡!』

 

 

 

『『『–––んあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ♡♡♡!!!』』』

 

 

 

 

 

 

 

 彼らの反応は様々である。

 ある者は天を仰ぎ、ある者は頭を抱え、そしてまたある者は力無く額を机に打ち付けた。

*1
*欲求:「触手プレイだなんていい趣味してますねぇ、ほらほら一緒に楽しもうぜぃ!!」*

「そんな趣味(もの)は無い!!」




〜今回発動した主人公の能力一覧〜

魔法(んほぉ)のステッキ』
触手量産装置。因みに収納(物理)。

触手(ワーム)
機動力は無いがそこそこの筋力を持った、衣服を溶かす粘液を纏う生命体。数が揃うと融合し巨大な個体を形成する。
捕らえた人間の身体を包み込むと全自動で隅々まで披露具合をチェックし、状態に応じて、按摩、指圧、手揉み、垢擦り、オイル、カイロプラクティック等の健全マッサージを行う。
超テクニシャン。



ありえないほどひどくてものすごくひどい(映画タイトル感)
と言うわけで色々と本当に色々と酷いvs小大さんでした。

次回、黒色 支配:デッドエンド! お楽しみに!!
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