「ん」と「ね」と「(単語)」しか言わないクラスメートの性欲がヤバすぎる件について   作:羽虫の唄

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雄英体育祭 その後

「──それではこれより表彰式に移ります! 今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」

 

 全ての試合が消化され体育祭も残すは閉会式を兼ねた、1位・2位、それから同着の3位2名を合わせた4名の生徒へメダルを授与するだけとなった。

 ミッドナイトが声を張るのに合わせ、遠方で影が跳躍する。独特なシルエットは弧を描き表彰台付近へと──

 

「我

「「「………、」」」

 

 …締まんねぇな、とミッドナイトとオールマイトがモロ被りしたことで訪れた静寂の中で誰かがそう呟けば、ぐふっとダメージを負うNo. 1ヒーロー。

 

 さて気を取り直し。

 

 打ち合わせ不足だったか、なんて考えながら表彰台の方へと向くオールマイト。彼の視界に飛び込む4人の生徒たちの様子はそれぞれだ。

 拘束具を破壊しかねない勢いで暴れる爆豪。澄ました顔で視線を合わせる轟。隣の悪鬼羅刹ぶりを発揮する爆豪を見て慄く常闇。それから…。

 

「さぁ、先ずは3位からだ!」

 

 んん゛ー!! と、オールマイトの声に反応する様に爆豪が拘束具の下からくぐもった唸り声を放った。贈呈するメダルをミッドナイトから受け取る頃には、その暴れ具合が最早ヴィランのそれに匹敵しており、テレビ放送して大丈夫なのコレ? と彼は内心でちょっぴり心配になっていたりする。

 

「──さて!」

 

 お゛ぅん゛む゛る゛ぅがァーッ!! と、既に人語の領域から逸してしまう爆豪の怒声。それを華麗にスルーしてオールマイトはメダルを贈呈──しようとして。

 

「…ごほん」

 

 咳払い1つ。

 困った様子のオールマイトを見て行動に移ったのは、3位の台に腕を組んで立っていた常闇である。彼は視線を己の隣へと向けた。そこには先程から多々説明が入った拘束された爆豪…ではなく。

 

 

 

 常闇の隣。彼と同じく3位の台に乗っているのは──巨大な()()であった。

 

 

 

 内部には8分目辺りの量まで色の濃い液体が満ちており、更にその液体内部に雄英指定のジャージやシューズ・伊達眼鏡やらが浮かんでいる。

 それらを確認した常闇は拳を握り、水槽の側面を数度叩いた。ごんごんッと硬質な音が発せられた後、変化が訪れる。

 

 先ず初めに、水槽全体──厳密に言えば内部の液体──が振動。したかと思えば、次の瞬間には液体が間欠泉の様に隆起した。…様に思える勢いで、実際には液体が『人型』を作り上げたのだが。

 ゔぉるんっ! と人型の胸に備わった双球が反動で暴れ狂う。

 

「デッッッッッk「黙っていろ黒影…ッ!」ギャー!」

 

 自分の半身にチョークスリーパーを仕掛ける常闇の横では、モチャモチャと音を立てながら人型が自分の体の中に取り込まれてしまったジャージ(上)を引き摺り出している最中だった。何とか着ようとするものの上手くいかず、最終的には諦めて放り捨てると同時、目前のオールマイトへと整えた表情を向ける。

 スライム娘キタコレー、と観客席からの謎の歓声を拾ったオールマイトは、

 

「先ずは、3位おめでとう弘原海(わたつみ)少女──おほん、少年! ナイスガッツだったぜ………うんそうだね、手短に終わらせるからもう少しだけ頑張って!」

 

 早口になる彼の目の前では、ガゴンっ、と出現させた()()()()()()()()()()()()『部屋』に力無く倒れ込むスライム…もとい弘原海の姿が。べちゃりと音を立て、そのふざけた文字群を流す壁面に溶けた体が張り付いてしまう。

 

 ──さて。何故弘原海が今現在こんな状態になっているかであるが………そろそろいい加減説明しよう!

 

 第3回戦の爆豪との試合にてこの淫魔、最後の最後でエネルギーが切れてしまい身体を維持出来ずにスライム化。突然人が液状に弾けると言うド級のトラウマ映像をお茶の間に流したのである!

※そしてついでに、何だかんだでイケメンな爆豪を己のスライムボディで濡れ透けの餌食にしたことで幾人ものお嬢様・お姉様方を覚醒させると言うコラテラルダメージも発生させているのだ!

 

 その後サポート科担当のパワーローダーの協力によって巨大強力スポイトで回収された弘原海はA組の八百万に創造してもらった水槽をB組の小大がサイズを変え、そこに叩き込まれて今に至る感じである。

 因みに試合続行を(率先して)許可したブラドキングはリカバリーガール監修のもと石抱きの刑に処された。

 

 取り敢えず要点を纏めて表彰へとオールマイトは移る。

 

「正直に言えば、君に対する評価は賛否両論だと思う。中には個性だけで君の人格まで判断する心無いものも含まれるだろう」

 

 しかし、と挟み。

 

「一方で、君の言葉や姿に心を動かされた者もきっと居る筈だよ、少年。道のりは決して楽な物では無いが、どうか挫けずに頑張ってほしい」

 

 ──そこまで語ったオールマイトが見たのは、ニッと笑顔を浮かべた弘原海だ。上等とでも言わんばかりのその顔を見て「良い表情だぜ!」と自然と彼は笑みを浮かべた。

 …実際のところは人型を維持するのがやっとで鼓膜を生成出来ていない弘原海が適当に反応を示しただけなのでその言葉は何1つとして届いていないのが真実である。

 

「よく頑張った。──さ! それではメダルを…」

 

 そんなことは露知らず、メダルを弘原海へと運ぶオールマイト。そして…、

 

 

 

 すっ (←メダルを首にかける音)

 

 ぶちッ (←重みで食い込んだ紐が首を切断する音)

 

 ドボンッ (←千切れた頭が水槽に落ちた音)

 

 

 

「弘原海少年ンンンンンッ!!!」

 

 ド級のトラウマ映像(2回目)が生産され力の限り叫ぶオールマイト。なんだか基本的にハプニングやらパニック状況しか生み出していない弘原海は心中で嘆きつつ、人型を形成し直して大丈夫とアピールする。

 

 ──その後としては大体問題無く進行された。オールマイトからの有難いお言葉──現役No.1ヒーローなので比喩ではなく割とガチ──を受け、常闇は御意やら轟は清算云々。最後の爆豪は1位を取ったもののやれクソモブに遅れを取っただの半分野郎には舐められただの騒いでいたが、オールマイトがえいえいと無理矢理メダルを咥えさせることで黙らせた。

 

「怒った?」

「○×△※〒$%*<@#ッッッ!!!」

 

 何故か無駄に煽りつつ。

 

「さァ今回は『彼ら』だった! しかし皆さん、この場の誰にも()()に立つ可能性はあった! 次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!」

 

 一呼吸挟み。

 

「…てな感じで、最後に一言! 皆さんそれではご唱和下さい!!せーの──」

 

 

 

 ──こうして長い様で短かった体育祭が終了した。

 最後の最後でNo.1ヒーローの掛け声と観客のそれが揃うことは無かったことを、ここに一応記しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雄英体育祭後に設けられた2日分の休日。

 を、八百万さんの豪邸さにビビり散らしながら謝罪したり尋ねた爆豪家で「メンドくせェことしてンじゃねェボケ!(※要約:気にしなくて良いよ)」と門前払い(爆破属性)を受けたりあれだけのことをしてしまったのできっと顔も見たく無いでしょうから失礼とは存じ上げますが電話対応させていただきますと小大家に電話で謝罪をすれば娘も気にしていないから君も気にしないで良いさと小大父から寛大な言葉を受けどうして親がコレで娘がああなのかと頭を悩ませて消化。

 

 迎えた登校日は生憎の雨。まるでオレの心の様である。

 

「皆おはよう。本日のヒーロー情報学だが事前に伝えていた通り………おい、大丈夫か弘原海」

「大丈夫に見えんのかコラ」

「えっごめん」

 

 思わずブラキン先生に乱暴な口調で返してしまう。失礼しました。

 今日の授業は「休日中にある程度形にしておくと良いぞ」と体育祭後に伝えられていた通り、コードネーム…つまりは自分のヒーロー名を決めると言うヒーロー志望としては夢の膨らむ内容である。──が、体育祭でやりにやらかした身としては数日で気持ちを切り替えるなんて不可能な訳で。

 

 ごほん、と咳払いをした先生が再開する。

 

「本日の授業では自身のヒーロー名を考案してもらう! 今後名乗り続け世に認知されればプロ後もそのまま名乗る場合も充分ある。適当なものは付けない様にな!」

 

 と言うわけで早速フリップボードを配ろうとしたブラキン先生──を、挙手した拳藤サンが質問することで遮る。

 

「先生すいません。前に言ってたドラフト指名については…」

 

 彼女の質問に、少し慌てた様子で謝罪を挟むブラキン先生。どうやら忘れてしまっていたらしい。

 ドラフト指名。先日の雄英体育祭にて、将来的に即戦力として採用出来るかどうかを判断したプロヒーローから来る指名である。まぁ簡単に言えば興味を持たれているかどうかだ。

 先生が操作すると、ハイテク黒板に今回の指名状況が表示される。上は千近い数百件から下は1桁まで様々。自分の指名件数を見たクラスメートたちは口々に感想を述べていく。

 

 さてそんな中、オレはと言うと…。

 

 

 

 弘原海:1

 

 

 

 …うん。…うん、想定していたのは指名件数ゼロだから、最悪ではない。雄英体育祭で──同着ではあるものの──3位と言う順位を勝ち取ったにも関わらずこの件数。やはり世間的にもプロヒーロー目線でも、オレの個性はアレと言うことである。大丈夫、大丈夫。想定よりはマシだから、皆オレのことをチラチラ見たりせずに自分たちのことで盛り上がってくれ…。

 

 …多分本当はもっと指名されていたんだろうけど、その多くが()()()()()()()()()ものだったのは想像に難くない。きっと先生が事前に取捨選択をしてくれたのだろう、ご迷惑をおかけしますとブラキン先生に謝罪の念を込めた視線を向ける──。

 

「弘原海はチアガールから来ていたな」

「ゼロじゃねーかッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぁそんなこんなでヒーロー名決めである。もうこんなのは無理矢理にでも切り替えて行かないとやってられないぞちくしょう。

 

「ブラドはネームセンスが無いわけじゃないんだけど、親身になって考えすぎるから一人一人に時間がかかっちゃうのよね。…と言うわけで私が来たわよ! さあさあじゃんじゃん考えちゃいなさい!!」

 

 ミッドナイト先生を加え、ヒーロー名考案に努める。

 …と言ってもオレの場合はもう考えて…と言うよりももう決まっているので、特に何かをする訳ではなく。ささっとフリップボードに書き込んだ後は、周囲に耳を傾けたりしてみる。

 円場クンや角取サン辺りが深みにハマったらしく早速頭を抱えていたり、黒色クンからは「ダーク…漆黒……。いや、ここは敢えてのホワイト…?」と言った具合の呟きも聞こえて来た。多分周辺の人たちがフォローをすると思うので酷いことにはならないと思うのだが。

 

 

 

 

 *欲求:「小大 ありす」*

 

 

 

 

 

 ふと巡らせた視界に唐突に飛び込んで来る文字。余りの恐怖に漏らすかと思った。

 …と。

 

「──そろそろオーケーかしら? それじゃあ出来た人から発表してね!」

「え゛っ、発表形式っすか?!」

 

 突然のミッドナイト先生の発言に回原クンが声を上げ、そんな彼に当たり前でしょうと眉根を下げる先生。

 

「プロになったら嫌でも人前で名乗っていくのよ? たかだか教室で二十余人。こんなところで恥ずかしがってどうするの」

 

 彼女の言い分は最もである。…が、それでもやはり出辛いのは変わりなく、互いに顔色を伺うこと数分。トップバッターは意外な人物が飾った。

 

「──それじゃあ私からいくノコ!」

 

 1人目はまさかまさかの小森サン。溌溂とした声と共に勢い良く挙手をした彼女はタッタッタッ、と小走りで教壇へ進み──フリップボードを開示(オープン)した。

 

「私のヒーロー名は…〝ニョキーニョコニョコ〟、ノコ!!」

「「「言い辛い!!?」」」

 

 ものの見事に全員の声が揃う。なんともきゃ○ーぴゃむぴゃむ感が溢れる名前を思い付いたな。…ん、ぴゃむぴゃむだよな? あれ、ぱむぱむ? ん? あ、ばみゅばみゅか。……違ぇわぱみゅぱみゅだ。

 オレがアハ体験をしている最中ミッドナイト先生から、インパクトはあるけど流石に言い辛いからもう少し考えてごらんと諭され、小森サンはむむむと唸りながら席に戻って行った──その途中。

 

 バチコン、と彼女はオレたちに向けてウィンクを放つ。

 

(??? どうして小森氏は我々にウィンクを…)

(…ハッ! まさか希乃子は後の私たちが発表しやすい様に自ら…!?)

(そ、そんなの…)

 

 

 

(((惚れてまうやろー!!)))

 

 

 

 ──後のアイドルヒーロー〝シーメイジ〟。そして彼女のファンクラブ誕生の瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──私のヒーロー名は〝バトルフィスト〟! ちょっと安直かもだけど…」

 

 とまぁ、小森サンのおかげ(そんなこんな)で尻込みしていた最初と異なり、我先に我先にと自身の考えたヒーロー名を発表していくクラスメートたち。時々再考を受ける人も居たが、決定していないのもオレを含めて残り数名までとなっていた。

 今は拳藤サンが発表を終えたところである。次に誰か来るかな、と暫く待ってみたものの特に誰も発表に移らなかったので──満を持してオレの番とさせてもらおう。

 フリップボードを脇に抱えて教壇へと向かう。

 

「自分でも会心の出来だと思います。良い感じにオレらしさを出せたと言うか…」

 

 教壇に立ったオレは、オレのヒーロー名はと語ってから一息にフリップボードをオープンした。

 

「〝快楽絶頂イクイクマン〟で」

「弘原海君!」

 

 ミッドナイト先生が悲鳴を上げる。

 ちょっと過激すぎたか、では次だ。

 

「〝激シコびゅるびゅる丸〟」

「弘原海君!」

 

 これも駄目な様だ。それではとっておきを。

 

「〝キンタマン〟」

「弘原海君!」

 

 3つとも悲鳴をいただいたところで、視線を手元のフリップボードから皆の方へ向ける。

 

「どうしたんスか皆さん。捨て身のギャグッスよ? 笑えよ

「笑えるかぁ!!」

 

 言った瞬間、鉄哲クンが立ち上がらんばかりの勢いで声を荒げたので、いい加減ちゃんとしたものを発表するとしよう。

 

「冗談ッス、冗談。それじゃあちゃんとしたものを…」

 

 言いながらフリップボードに書き直す。その間隣のミッドナイト先生は「ああ良かった。自暴自棄になったかと思ったわ…!」と心底安堵した様子で呟いていたりした。

 すいませんちょっとした出来心ですなどと心中で頭を下げながら、書き終えたフリップボードをオープン。ほいっとな。

 

「…ん?」

 

 さて。書かれたヒーロー名を見て、真っ先に声を出したのは小大サンだった。ただし首を傾げ眉を顰めていることから、オレのヒーロー名を彼女が不思議に思っているのは一目瞭然である。小大サンだけでなくちらほらと他数名のクラスメートも似た様な反応を見せていて、ブラキン先生も「これは?」と訊ねてきた為説明を始める。

 まぁヒーローっぽい以前に名前っぽくないからなぁ。

 

「えーとまぁ、ちょっと自分で考えたわけではなくてですね。まぁー…()()()()()()()名前でして」

(──名乗るとしたらこれしかないもんなー…)

 

 …当時のことを思い出し耽っていると、何かを察したらしくミッドナイト先生が静かに「思い入れがあるのね」と声をかけて来る。

 それにより意識を引き戻したオレは──では、改めて。

 

「オレのヒーロー名ですが──」

 

 一呼吸分置く。

 今日から『これ』が、オレのヒーロー名だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〝ハイエンド〟で」




コメディのはずがホラーになってしまったでござる(´・ω・`)

主人公の職場体験先は? (深く考えずにお答え下さい)

  • ミルコ(エッチな目に遭う)
  • ミッドナイト(エッチな目に遭う)
  • リューキュウ(エッチな目に遭う)
  • Mt.レディ(エッチな目に遭う)

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