「ん」と「ね」と「(単語)」しか言わないクラスメートの性欲がヤバすぎる件について   作:羽虫の唄

2 / 28
続いた。


予想外にお気に入り登録や評価・感想を頂けましたので、これを機に短編から連載へ、文章量もボリュームアップしました。
不定期更新になると思われますが、よろしくお願いします。



「ん」と「ね」と「(単語)」しか言わないクラスメートの感度がヤバすぎる件について

 クラスメートの感度がヤバい。

 

 それを実際に体験したのは何時のことだったか、記憶が確かならば、きっと×曜日のことである。

 

弘原海(わたつみ)の個性は結局何が出来るんだ?」

 

 そう訊ねてきたのは回原クン。

 〝個性〟「旋回」の彼とは昼食を一緒にする仲だ。

 午前中に行われたクラス委員長決めの際、副委員長に任命された彼は決意表明(?)で「個性だけで弘原海の人格まで判断するのは良くないことだ」と発言。今後の高校生活ぼっち待った無しのオレに救いの手を差し伸べてくれた人物である。

 

「エロいことって言われても、漠然としすぎててなあ」

「まあ、確かに」

 

 両隣でそれぞれカツ丼と拉麺を頬張る、泡瀬クンと鱗クンが苦笑いしつつそう漏らした。オレの『個性』は……まぁ、淫魔(サキュバス)なんて名を冠しているのだから、エロいことに特化しているなんてことは一目瞭然ではある。

 が、具体的にどの様なことが行えるかはイメージが難しい。

 ……難しい。何度も言うが、イメージは非常に難しい。

 

 催淫? 強制発情? 感度3000倍……? 知らない子ですね。

 

 ヒーロー飽和社会と言われる現代だが、一方で情報飽和社会とも称されている。その気になればネットの海で、誰もが幾らでも識ることが出来てしまうものだ。

 サキュバスと聞いてもそこまで上手くイメージが出来ていないらしい3人。後ろめたさからススス、とオレは視線を逸らす。

 見ないで…、汚れたオレを見ないで! 

 

「そ、そうッスね。えぇと──」

 

 既に半分ほど食べ進めていた野菜炒め定食(特盛り)を摘む手を止め、個性を発動。

 ボンッ、と音を立てて分かりやすく膨らみを持ったオレの身体を前に、回原クンたちは慌てて目を逸らしたり、咳払いをしたり、と。まあ、絵に描いた様なドスケベボディを前に年頃の男子としては至極当たり前の反応である。

 

「正直なこと言いますと、相手を強制的に発情状態にする毒液を分泌出来ますし、魅了(チャーム)を使えば相手の意思に関係なく意識をオレにだけ向けさせられますし、肉体改造で感度3000倍とかも可能だと思います」

 

 ……オレの説明に青ざめた顔で泡瀬クンたちはゆっくりと、昼飯ごと距離を取り始めた。それに苦笑いしつつ、

 

「でも、そもそも人間は万年発情期の生き物ですし、魅了の発動条件が滅茶苦茶デカイ大声なんでそりゃ意識向けざるを得ないだろうし、感度3000倍もあくまで自分に対してのことなので……」

 

 だから、まあ、何と言うか。

 

「オレの個性、()()()()()女体化するくらいなんですよねぇ」

 

 対面に座る回原クンが、難儀な個性だな、と呟く。

 勿論他にも出来ることはあるが、そう馬鹿正直に全て言う必要はないだろう。多弁は銀沈黙は金、だ。

 

 *回原 旋:性欲 19/100*

 *泡瀬 洋雪:性欲 26/100*

 *鱗 飛竜:性欲 21/100*

 

 ……4人の頭上には例の数値が、(さなが)らゲームのステータス表の如く現れている。

 つい最近に判明したサキュバス状態の補助能力である、数値化された他人の性欲の視覚化。回原クンたち以外にも、ぐるりと食堂内を見渡せば様々な数値が視界に飛び込んでくる。

 

「うーん…」

 

 唸りつつ、視線を正面……回原クンの方へ。

 具体的に言えば、その後ろ。彼の斜め後ろの方。

 

「う、うぅ〜ん………?」

 

 視線のその先──テーブルの一つに固まった女子グループ、その内の一人。目を凝らし、目を凝らし……。

 

 *小大 唯:性欲 100/100*

 

「どうした弘原海! なんでいきなり頭を抱えるんだ?!」

 

 貴方の性的興奮度が分かりますだなんて、口が裂けても言わないし言えないことだ。そしてそれは同時に、誰にもこの苦しみを相談することが出来ないということでもある。

 

 分からない、分からない……! 

 サキュバス状態のオレを見た3人でさえ30に満たない数値なのに対し、それの4倍近いって何!? そもそも今はランチタイムの筈、エロ要素なんて皆無じゃないか……! 

 

(──いや待て、あのグループは白昼堂々猥談で盛り上がっている……?)

 

 その考えに至り、慌てて小大さん以外の女子に目を向けるが……、

 

 *塩崎 茨:性欲 3/100*

 *拳藤 一佳:性欲 9/100*

 *角取 ポニー:性欲 5/100*

 

「弘原海大丈夫か! どこか具合が悪いのか!?」

 

 もうこれ以上見たくないと『個性』を解除し、組んだ腕の中に顔を埋める。

 もはや小大サンではなく、オレの方がおかしいとさえ思えてきてしまう。年頃の男女なんてそんなものなのか? 小大サン以外が落ち着きすぎているだけなのか…? 

 

 ……いやでも、それにしたってあの数値はおかしい。

 

 100/100。 つまりMAXということ。それが意味するのは、彼女はこうしている今現在も酷い欲求不満状態に陥っているということだ。

 

(と言うか、この前から数値に変動が見られないけど、MAX状態ってそんな我慢できるものなのか……?)

 

 小大サンを心配している時、ふとした疑問が生まれてしまう。

 性欲──人間が生きていく上で必要不可欠な機能である三大欲求の内の一つであるソレは、そう称されるが故にストレスもその分溜まりやすい。極度のストレスに晒され続ければ、心身共に何らかの異常・支障を来たしてしまうものだ。

 つまり何が言いたいかというと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…………。

 

「……ん? 何か垂れて……え! これ、血!?」

「も、もしかして反動があるタイプの『個性』だったのか!?」

「おい弘原海……!? 泡瀬そっち持て、リカバリーガールのとこまで運ぶぞ!」

「だ、大丈夫ッス! 大丈夫ッス!!」

 

 昼食もそっちのけでオレを担ぎ始めた回原クンたちを慌てて止める。

 もうやだ! もうやだ、これだから男は! クラスメートで何てことを妄想してるんだオレは、これだから男ってやつは! もういっそ女になり──あ、なればいいじゃん。……嗚呼、性欲値が視界にッ! 

 キャパオーバーを起こした脳は溜まった熱量を鼻から排出することを選択し、オレはその対処に追われポケットテイッシュで垂れたテーブルも含め、それらを拭っていく。

 

 ……と、そんな時であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『─────!!!!!』

 

「な、なんだァ!?」

 

 誰の声か、鳴り響く突然の警報音に対する疑問。大音量のサイレンの後、設定されていたであろう機械音声が異常事態を知らせる。

 

『セキュリティ3 が 突破されました

 生徒のみなさん は すみやか に 屋外 へ 避難して下さい』

 

「セキュリティ3……!?」

「校舎内に侵入者じゃなかったっけッ!?」

「お、おい早く逃げろ!」

 

 何処からか発せられたその声に、次の瞬間には──それこそ雪崩が如く食堂内の人間が我先にと出口へ向けて動き始めた。

 

「いってぇ!」

「さすっがは雄英、対処が迅速……!」

「迅速すぎてパニックになってんだろコレぇ!?」

 

 あっという間に人の波に飲まれ、回原クンたち3人とは離れ離れになってしまう。あちらこちらから似た内容の悲鳴が上がり、それがまた別の悲鳴と怒号にかき消されていった。

 突然の出来事に、呆然としていたオレも例外ではなく、人に揉みくちゃにされあっちを行ったりこっちに戻ったりと忙しない。

 都内の電車通勤の人の気持ちをこんな場所で体験することになろうとは、絶対に登下校には電車は利用しないと心に固く誓った。

 ……と。

 

「ん!?」

 

 聞き慣れたわけではないが、人の波の中から聞こえたその声に、反射的にそちらを向く。

 

「おい人転んだ! 危ねえって、押・す・なァ!!」

 

 足を(もつ)れさせたか、人とぶつかりよろめいたか。人と人との隙間から見えたのは、体勢を崩したクラスメートで──

 

小大サンッ!!

 

『個性』を発動。魅了の効果が乗せられたオレの声を聞き、周囲の人間は視線を俺の方に向けたまま体を石像の様に硬直させる。その隙を突き、幾分か膨らみを持ったものの、抜群の柔らかさとなった身体を滑らせ彼女の方へ向かう。

 小大サンが完全に倒れこむ寸前、その体をなんとか受け止めることに成功し──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、誰かが発した「大丈ー夫!!」の声に、原因がマスコミであることが判明。落ち着きを取り戻した食堂では、既に掃除等の作業も終わり先ほどの騒動はすっかり影も形も残ってはいない。人ももう疎らなものとなり始めていた。

 オレと小大サンは取り敢えず近くにあったイスに腰を下ろし、どことも言えず視線をぼうと泳がせている。

 

「……」

「……」

 

 お互い会話も無く、しばらくそうしていると、向こうの方から拳藤サンと柳サン……それから、回原クンたちが駆け足でこちらへと向かって来た。

 拳藤サンたちは小大サンの方へ、回原クンたちはオレの方へ。

 

「唯、大丈夫だった?」

「ん」

「弘原海無事だったか?」

「ハイ」

 

 隣の女子ズの会話にほんの少しだけ意識を向けつつ、回原クンの問いかけに答える。小大サンは立ち上がると、拳藤サンたちと一緒に食堂出口へと向かい歩き始めた。

 

「皆、怪我もなくて何よりだったよ。……泡瀬が鎧の『個性』の人にタックルされたけどな 」

「良いのを鳩尾に食らっちまったぜ……」

「ハハハ、災難でしたね……」

 

『……? 唯、大丈夫? なんか顔赤いし息荒いよ?』

『本当だ』

『ん』

 

「いやぁ昼食食い損ねたなー。まだ腹減ってるよ、俺」

「ランチラッシュ先生に頼んだらサンドイッチとか貰えないかな?」

「ちょっとこの腹具合で午後の授業はキツイよな」

「そうッスね……」

 

『本当に大丈夫? なんか震えてるし、内股……あ。も、もしかしてトイレっ?』

『それなら私、『個性(ポルターガイスト)』で揺らさずに運べるよ』

『レイ子、お願いできる?』

『いいよー』

『ん……』

 

「……回原クン」

「ん、何だ?」

 

 食堂から出て行った小大サンたち。

 その姿が完全に見えなくなったところで、オレは回原クンに声をかけた。

 

 

 

「──今すぐオレの脳天ブチ抜いてもらってイイッスか?」

 

 

 

「「「何言ってんだ弘原海!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ありありと思い出されてしまう、受け止めて暫くして、何故か小大サンが僅かに身震いしたこと。オレの胸に埋まった彼女の顔が、何故か表情そのままで見る見る内に紅潮していったこと──。

 

 

 

「ん」と「ね」と「(単語)」しか言わないクラスメートだが、性欲だけでなく感度もヤバすぎるらしい。

 

 

 




小大ファンの方、申し訳ありません。

今後の展開には、どの様な要素を取り入れれば良いと思いますか?

  • ラブコメ
  • シリアス
  • バトル
  • んほぉ゛♡!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。