「ん」と「ね」と「(単語)」しか言わないクラスメートの性欲がヤバすぎる件について 作:羽虫の唄
世の中笑ってるやつが一番強いからな。
何が、と問われれば
「 し に そ う 」
((アカン))
覇気や正気諸々が抜け落ちたその一声に吹出たちは思考を一致させた。
少し前に「サキュバス」の副次能力について知識を得た吹出はもちろんのこと、体育祭にて既にそれを目の当たりにしている物間は弘原海がこうなった原因を理解し、それと同時に我らが雄英教師に対する評価を凄い勢いで暴落させているところである。
さっすがは18禁ヒーローだぜその名に恥じないとは恐れ入ります相手未成年の生徒で御座いますよミッドナイトォ…ッ!! と、その心中は穏やかではない。
「と、取り敢えず今日のところはもう帰ろう! 帰りにどっか寄ってさ、ご飯とか食べようそうしよう!!」
それこそ正に必死だった。
通路に倒れる弘原海を起こしつつ、兎に角声を張り空気を明るくすることに尽力する物間と吹出。両サイドから肩を貸し、でろりと溶解寸前の弘原海を引き摺りながら帰り支度の為に彼らは教室へと向かう。
えいさほいさとすること少し。教室前に到着する頃には既に弘原海も自力で歩行可能まで回復をし──※ハイライトは「じゃあの」している──この調子なら下校途中で食事を挟めばもう少し回復出来るな、と物間たちはアイコンタクトを取りながら他愛もない話をマシンガンじみた速度で展開していった。
そうしてからりと教室の扉を開く。
…──さて。
嗚呼、と声を漏らしたのは一体誰だったか。吹出か、物間か、弘原海か、はたまた全員か。
世界は基本的にこの淫魔に優しくない様だ。ただ打ちのめすだけでは物足りず、ワンクッション挟んでから追い討ちをかけて来やがった。
開かれた扉から教室内部の『その光景』が3人の目に飛び込んでくる。
閑散とした茜が差し込む教室。
そこで1人、とある机の角へ向けて自身の股座をヘコヘコ擦り付ける黒髪美少女なクラスメート。
「ホオオオォォォオオオオオアタァァアアアアアアッッッ!!!!!!!」
青い焔を四肢に灯したかと思えば、奇声を上げた弘原海が──教室の扉を開けた彼らに気付きつつも未だ作業を中断しない──小大に向けて凄まじい速度で接近し、流れる様にその顔面に渾身のストレートを叩き込む。派手な音を立てながらその体が倒れた。
机の角がてらりと光を放っている()。
「何してんだ馬鹿じゃねぇのかアンタ!? こ、この変態! 変態!! 変態!!!」
「よせ弘原海! どう見ても小大は喜んでる!!」
意図せず『アスキーアートとかパロネタ画像をネットでよく見るけど元ネタはあんまり知らないアレ*1』が再現された。
叫ぶ弘原海を羽交い締めにする物間の言葉のとおり、小大は普段の無表情さが嘘の様になりを潜め、瞳を蕩し頬を朱に染め吊り上げた口角から涎を垂らしていた。その表情はさながら、「ぶってくれたし罵倒してくれた…♡!」である。
彼らの背後で一連の流れを見ていた吹出は、今の小大と普段の小大を同一人物であると認識出来ずにその意識を宇宙空間に飛ばしている最中だ。
ぎいぃ…ッ! と虫の様な悲鳴を上げて頭髪を掻き乱す弘原海。
「いい加減にしろよマジにさあァッ!」
「ん」
「何でオレが悪いんだテメェが勝手に発情してんだろヴォケ!」
「ん」
「恋人じゃないし付き合ってないしそもそもアンタのこと嫌いだッつーのォオオオオオ!!!」
ドゴン! と背負い投げをされた小大の体が床と衝突し凄まじい音を発した。
側から見ると何故会話が成立しているのか不思議な光景だが、弘原海の個性について知っている物間たちからすればそれは小大に思考が読めることがバレてしまうのではないか?と冷や汗ものだったりする。
残念なことにHENTAI国家ニッポンには思姦なる言葉が存在するのだ。
さて、そんな中背負い投げをされた小大はと言えば──背面を強かに打ち付けたにも関わらず、とても嬉しそうに声を発する。
「ん。──好きと嫌いで両想い」
「「「無敵すぎるッ!!」」」
確かに好きの反対は無関心と言うけども! 嫌いも広義で見れば相手に感情向けているけども!! と弘原海が悲鳴を上げ、頭を抱える彼を眺めながら小大は立ち上がると、
「ん。──帰ろっか、彼ぴ」
渾身のサマーソルトが炸裂する。
「彼氏じゃねぇ! 付き合ってねぇ!! 付き纏うなセクハラしてくんな別れろッッッ!!!」
もうちょっと泣いちゃってた。
口汚く罵るも、当の小大がサマソを喰らった箇所を恍惚の表情で摩っていることから分かる様に逆効果の極みである。飴を与えようが鞭を与えようが同じ反応しかしないのだ、厄介どころの話じゃねぇや。
「ん。──彼氏でしょ?」
「違いますッ」
「ん。──付き合ってるよ?」
「ません!」
「ん。──私のこと好きでしょ?」
「全ッ然!」
「ん。──
「だからアレは──ッ」
いよいよ持って我慢の限界が訪れた弘原海が吠えようとした直後である。
「好きでもなんでもないのに香水をプレゼントしてくるなんておかしくないおかしいでしょおかしいよね普通じゃないよねそうだよね普通じゃないならそこには何かしら特別な思いがあって当然でしょそうだからアレをくれたんでしょうありすはそもそもまだ知り合って間もない頃だよあの時ってお互いのことなんて殆ど名前ぐらいでしょ知ってることなんてそれでもああして高価そうで丁寧な物をくれるってことはもうそうなんでしょ調べたけれど少なくとも一般的な市販のものじゃなさそうだったよもう好感情はあって当然だよねなきゃおかしいよね私これでもスキンケアとか髪のダメージケアとか美容には人一倍気を遣ってるの綺麗でしょ私自信じゃなくて自覚だよとても努力してるの顔だけじゃないよ体型もそうだよ綺麗でしょ綺麗でしょエッチでしょ興奮するでしょありすも好きでしょ好きだよね恋人なら好きにできるんだよ好きにしてよしろよしなきゃだめなんだよありすからプレゼントもらえた時はとってもとっても嬉しかった君が好き君が好き起きてる間は君のことしか考えていないよ眠っている間も夢の中でも君のことを想ってるよもうこれって恋人でしょそうだよねありすは私が好きで私はありすが好きなんだよもうこれはセックスでしょ性交じゃん交尾じゃん相思相愛じゃんうんそうだよなのにどうしてそんなことを言うのどうして拒絶するのしないでよそんなのおかしいじゃないああそうか周りの目が気になるのかなごめんね気付けなくて気遣いのできない女でごめんねこれからは気をつけるよ改善するからありすは恥ずかしがり屋なんだねかわいいなもうすごくかわいいよああそれとも自分の外見に自信が持てないのかな大丈夫私は個性を発動している時のありすが好きなんじゃなくて普段のありすもどっちも大好きだから証拠にいっぱいいっぱいありすで気持ちよくなったよ大体1日で普段のありすで20回くらいで個性を使っている間のありすで15回くらいかな毎日シているよ君を想ってするととっても気持ちよくてとっても幸せなのだからほら大丈夫だよ私はありすが好きだからもっともっと気持ち良くなりたいな2人で気持ち良くなりたいなほら好きでしょ好きなんだろ好きって言えよねえねえねえねえねえねえ私は弘原海ありすが大好きだよほら私は言ったよ君も言ってよ言えよそれともまだ足りないかな好きだよ好き好き好き好き大好き愛してる愛してる愛してる愛してる大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き愛してる愛してるエッチしよエッチしよ気持ち良くなりたい好き好き大好き愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる小大唯は弘原海ありすが大好き大好き愛してる愛してる好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き大好き愛してる好き大好き大好き愛してる」
「「ぴぎゃァアあああああッッッ!!!??」」
悲鳴を上げたのはむしろ物間と吹出だった。
唐突なその豹変に彼らは涙を流し、恐怖で震える体を支える様にお互いに抱き合った。
そんな彼らなど
「私のこと、好きだよね?」
カクン、と首が
「好きでもないのに、あんなことしたの?」
カクン、と首が
「
ガクン、と首が倒れる。
「それなのに、一切合切無かったことにしようとするの?」
メギリ、と首が軋んだ。
「 逃 げ ら れ る と で も 思 っ て い る の ? 」
解除。と続け様に放たれた言葉と共に彼女の傍に現れる、閃電を散らすスタンバトンを始めとした効果の不明な何かしらの錠剤の詰まった瓶や手錠といった拘束具に
ヒーロー科に犯罪者が居まァーす! と叫びたくとも恐怖のあまりその場で震えることしか出来ない物間と吹出。
艶のある
情けは人の為ならず、とは言うが。人の為と思っての行動が巡り巡って自身の
「上等だゴルァ…ッ! いい加減決着つけてやるよクソッタレがァ……ッッッ!!」
果たして『刀』がどの様な効果を有しているのかは不明だが、弘原海の怒りに呼応するかの様に禍々しいオーラが噴出する。
両者睨み合いが続く。
1秒。10秒。1分……。
そして、動──
「っ?」
「私のこと、好きだよね?」
カクン、と首を傾けた小大に、弘原海は首を振った。
「好きでもないのに、あんなことしたの?」
カクン、と首を
「徒に、私の心を弄んだの?」
ガクン、と首を倒す小大に、前提条件が間違っていると弘原海は返した。
「それなのに、一切合切無かったことにしようとするの?」
メギリ、と首を軋ませる小大に、そもそも何も始まってないと弘原海は声を荒げた。
…その言葉を聞いた小大は、そっと一言。
小さく、「そっか」と声を漏らした。
一呼吸挟み、もう一度。
「ん。──そっか」
──その時、彼女は確かに笑っていた。
それは何かを嘆いている様で。
何かを諦めた様で。
何かを悲しんでいる様な──そんな笑顔
…──
悪魔じみた笑顔を前にして、物間と吹出が精神防衛の為にいよいよ意識を手放す。
さしもの弘原海も、ちょっとばかりトラウマを刺激され小型犬みたいに震え出していたりした。
そんな彼らの前で──向けているのは弘原海に対して、だが──小大が口を動かし言葉を放つ。
B組教室に向けて女子の集団が歩みを進めていた。
顔を覆い頭から湯気を放っている取蔭を囲む拳藤たちは揃ってホクホクといい笑顔である。
「根掘り葉掘り聞かれた…! 包み隠さずっ!」
「「「ごちになりましたーっ」」」
全体的にツヤっとしている彼女たちは、取蔭の恨みがましい声に見る者を極めて苛立たせる表情で声を揃えていた。
「……──ふーん、そっか…。鎌切が、切奈の…この体を……隅々まで、ふーん──…」
「そ、そこまでいってねぇわい!!」
柳の舐め回す様な視線に対し、慌てて両手で自身の体を庇う取蔭。未だ持て囃す周囲に対し、顔を真っ赤にした彼女は個性で己の十指を分割しそれらで燥ぐ級友たちの眼球を刺突していった。
あっという間に悲鳴を上げながら彼女たちは床をのたうち回ることになる。
さて。そんな阿鼻叫喚の地獄絵図の向こう側からは、なんか謎に人一人が収まりそうな大きさの袋を運ぶ男子の集団がB組の教室を目指している最中であった。取蔭たちからは距離の為詳しくは不明であるが、取り敢えず先頭の回原の口からは『焼却』と聞こえた気がする。
そんな彼らに胡乱な視線を向けながら取蔭がB組教室の扉を開けようとした時だった。
『…──どうして、ありすは……私の気持ちに答えてくれないの?』
「?」
教室の中から聞こえてきたのは、普段から口数が極端に少ないクラスメートの声。
こんなに喋るとは珍しいと驚く反面、何やら不穏さを感じる内容に思わず耳を澄ませる取蔭。彼女の背後では、少しダメージが治まってきたのだろう少女たちがよろよろと力なく起き上がり始めている。
そんな彼女たちを不思議そうに眺めつつ、取蔭と同じ様に男子グループが反対側の扉に指先を引っ掛けた。
『…──私はこんなにも、ありすのことが好きなのに…!』
ちょっと待って、と取蔭が慌てて制止の声を発するも僅かに間に合わず、内部から聞こえて来ていた声に気づかなかった彼らは扉を開けてしまう。
そうして小大の次の言葉が発せられた。
遮蔽物が無くなり、通路までよく届く大音量で。
「──
鉄哲によって在らん限りの力で閉じられた扉は閉じ切った際に衝撃でひん曲がり壁に突き刺さる。
対称的に彼らが閉じた方と反対側は渾身の力で開け放t──と言うか寧ろ蹴破られた。
そうして教室内部に雪崩れ込んでくる、女子、女子、女子。
皆一様に怒りの余り一周回ってその顔から血の気を失せさせている。
それら一連の流れを見た弘原海は、数秒後に自身に襲来する『結末』を認識しながら迅速に動いた。
反動など知ったことかとその四肢に
…逃走の為ではない。先の小大に中てられ気を失った物間・吹出を抱え上げた彼は、全力を持って級友2人を窓の向こう側目掛けて投擲して見せた。
最初から、彼らは自分の相談に善意で応じてくれたのだ。散々事態に巻き込んでしまったが、これ以上2人を巻き添えにするわけにはいかない。
巨拳が、蔓が、茸が、角が、浮遊した物品が、分割した人体が。それらが到来するまでのその刹那。
──ふと、飛んで行く2人と目が合った。
最後まで気を失っていた方が幸せだっただろうに、不幸にも意識を取り戻してしまったらしい。
状況は分からずとも尋常ならざることが起きようとしていることは察したらしく、物間たちは驚愕の表情を露わにする。
それを見た、弘原海は。
──ニッ、と。
卵とは言えども、ヒーローらしく。
最期まで、笑って見せた。
「わたつ、」
声は間に合わない。
直後、怒れる女子たちの手によってB組教室が弾けた。
〜今回発動した主人公の能力一覧〜
『乳袋』
胸の谷間(にある亜空間)に物品を収納する。
ネタ募集箱より
『
日本刀。斬りつけた相手をメスガキにする。ダメージは無い。
『業物・
日本刀。斬りつけた相手を達磨状態にする。ダメージは無い。
こっちを引き抜こうとして今回主人公は間違えた。