「ん」と「ね」と「(単語)」しか言わないクラスメートの性欲がヤバすぎる件について   作:羽虫の唄

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こんなペラッペラな作品ですが、多くのお気に入りや幾つもの高評価、ランキングに載るなど、感謝の極みです。


アンケート設置しました。宜しければご意見お聞かせ下さい。




「ん」と「ね」と「(単語)」しか言わないクラスメートが…

 クラスメートの行動でオレがヤバい。

 

 その事態に陥ったのはついさっき。

 具体的に言えば、小大サンの尋常ならざる性欲値その他諸々を視認し、オレが雄叫びを上げて直ぐのことである。

 

「……アレ? 唯、その()()–––」

 

 そう声を漏らしたのは拳藤サン。

『個性 大拳』の彼女はB組の委員長で–––って、そんなこと言ってる場合じゃない。

 ホームルーム前の僅かな時間。荷物を整理し終え、特定のグループで固まり談笑に花を咲かせていた彼ら彼女らの視線は1人の女子生徒へと注がれている。

 具体的に言えば、青い内容物が収められた香水を自身に吹き付け始めた小大サンへと。

 

 ……いや、なにをしとんねん。

 

 

 

な に を し と ん ね ん 。

 

 

 

 思わず似非関西弁となる程の衝撃がオレを襲う。

 知人から「洋画で訛りが強いシーンを高確率で関西弁にされる俺たちの気持ちが分かんのかおォん!?」と早口で捲し立てられ、気安く使わない様にと心に誓っていたにもかかわらず、だ。

 

 –––拙い、非常に拙い。

 

 小大サンが徐に吹き付けた香水改め鎮静薬は、元々知人に祝い品として渡す予定の物として扱い、効果を確かめる為、クラスの数名に実際に確認を取ってしまっている。

 想像して見て欲しい。知人に渡すと言っておきながらその実相手は、間違いなく美少女に分類されるであろうクラスメートであり、しかも渡したのは菓子類やアクセサリーならまだ兎も角、香水ときた。

 もう、どこからどう見ても一目惚れのアレでアレしたアレですありがとうございます。

 

「ぃ、いゃぁの、これは……っ」

 

 クラス中の視線はゆっくりと、小大サンからオレへと向けられ始め、誰に問いただされた訳でもなく形にならない弁明が口の隙間から溢れていった。

 何だ、どうしたらいい。–––混乱極まり、ただただ硬直するだけのオレに、意外なところから救いの一手が差し出される。誰あろう、小大サン本人からであった。

 

 彼女はオレの傍へとやって来ると、

 

「ん」

「……、?」

「ん」

 

 何、え、何? 

 ずぃっと詰め寄ったかと思えば、小大サンは自分の首元をオレに向けて–––え、な、本当に何だ。クソ、こういう時本当にコミュ障であることを恨めしく思う。

 ……いやでも、「ん」だけで相手の思考を判断出来るものなのだろうか。よく小大サンと居る拳藤サンなどは問題無い様に見えるけれど……。

 

「–––ん!」

 

 意図を読み取れず、沈黙するオレ。

 次の瞬間、まるで痺れを切らしたかの様な小大サンの声が耳に届き……おや、なんだか軽い衝撃と一緒にやわらかなかんしょくとちんせいやくにまじってやわらかなにおいがこれはこだいさんがだきついて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「–––あれ?」

 

 ふと気づけば、目の前には食べ慣れた野菜定食・特盛りが。……おかしい。今朝から昼食に至るまでの記憶がすっぽり抜け落ちている。いつの間に食堂にやって来たんだ……? 

 

「やっるじゃーん、弘原海ィ〜!」

「奥手そうに見えるけど意外と積極的じゃんね!」

「どこに惚れた……とか。訊いても……?」

 

 対面に小大サンの形でオレはテーブルの端に着いており、お互いの隣には取蔭サン、小森サン、柳サンの3人が居り、何やら賑やかしい。

 3人からのテンション高めな声に、自分でも分かる位に表情が死んでいく。いやまぁ、元々ある程度死んでるけど。ハイライト先輩に至っては4才の頃に完全に絶命したけども。

 

『–––あの野郎これ見よがしにイチャつきやがってよォ……!』

『許せねえ、許せねぇぞ……ッ!』

『爆発四散してしまえ』

 

 背後から放たれる鱗クンを除いたB組常識人四天王(泡瀬クン・円場クン・回原クン)の、殺意や怨念その他諸々が込められた呪詛の言葉を背で受け止めるオレ。

 ……に、

 

「ん」

 

「「「ひゅウー!」」」

『『『あ゛あぁああ゛あぁ゛ぁあ!!』』』

 

 対面に座っていた小大サンが「あーん」したことにより、歓声と悲鳴が同時に発せられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 隣に小大サンを添え、オレは廊下に居た。

 いつの間にか食堂から移動している辺り、またもや記憶が抜け落ちた様である。

 

「おやおやぁ? もうすぐ授業だけど良いのかい弘原海。……まぁ体育祭前に彼女を作る余裕があるんだから大丈夫なのかな?!」

 

 通りがかりの物間クンからの言葉を受け流しつつ、オレは隣の小大サンへと視線を向けた。

 黒髪のセミロング。整った顔立ちの正しく美少女は、言葉を発する訳でもなく、その見ていると吸い込まれそうな黒い瞳で此方を見つめ返している。

 ……オレは彼女から目を反らすことなく、『個性』を発動。

 

「ん」

 

 

 

 *小大 唯:性欲 120/100*

 *感度「超高」*

 *状態「発情」*

 

 

 

 

 仰け反った。顔を覆って仰け反った。

 サンでシャインな芸人何某もかくやと言う程、最早頭と両足での3点ブリッジである。いっそ叫んでやろうか。

 

(……意味が分からなすぎるッ! 雄英高校(最高峰)御用達の研究機関に然るべき成分調査までしてもらった上で、実際に効果も確認したというのに……ッ!)

 

 クラスメートを無断で人体実験紛いに付き合わせたことに対して後ろめたさだとか、全て吹き飛ぶレベルの理解不能さである。

 

 周囲からは何かと囃し立てられたり妬まれたりしているが、オレはそもそも小大サンに告白した覚えはない。

 それにはっきり言って、個性で幾らでも美人(♀)になれると言っても、元のオレは完全に不細工の部類に属する人間だ。敵襲撃事件こそあったが、小大サンとは良くも悪くもクラスメートの間柄と言える。……それがたかだか香水のプレゼント1つ送った程度で恋仲に発展するだろうか? 

 いいや否。ならば必然的に導き出される答えは1つ。

 

(狙われている……? 狙われているのか……!?)

 

 –––いや、ね? そりゃあ小大サンの様な超絶美少女と恋人関係になれれば間違いなく勝ち組の仲間入りを果たせるだろう。

 

 

 

 *小大 唯:性欲 120/100*

 *感度「超高」*

 *状態「発情」*

 

 

 

 だがしかし、オレに付き纏うエロステータスの視覚化(コイツ)が現実へと引き戻す。

 性欲(エロ)に引っ張られ忘れがちだが、臨界点突破と言うのは全くもって笑えないことだ。考えてみて欲しい。これが例えば他の欲求だったら? 例えば、そう、食欲。

 

 食欲の臨界点突破–––即ち、空腹を超えた飢餓。

 歴史の授業でも時折ふれる、『飢饉』による惨劇。人間同士の共食いは、文字通り地獄そのものの筈だ。

 

 さて、これを踏まえた上で考えよう。

 小大サンと付き合い、なんかいい感じとなり()()()()()()場合のことを。

 

(こ……、殺されるッ!)

 

 思わず身震いを起こし、隣の彼女から距離を取る。サキュバスなのに腹上死の未来待った無しだ。

 

 君のことで頭がいっぱい。主に恐怖で。記憶が飛ぶ程には。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小大サン、別れましょう」

 

 放課後、帰路。

 オレが暮らすアパートと小大サンの家とは同じ方向らしく、2人並んで歩いていると、その途中名前も知らない公園に差し掛かったオレは、そこで意を決して彼女へと告げた。

 何の脈絡もなく放たれた別れ話に 、小大サンは一瞬動きを止めると。

 

「ん。え、んっ?」

 

 ……まぁ、普段から表情に変化が見られない上、「ん」と「ね」の一言か、本当に時々「(単語)」を呟く程度の彼女の慌てた様子はなかなかにレアである。

 

「ああいえ、突然スイマセン。実はですね、えぇっと……」

 

 少なくとも此方は付き合っているつもりはないのに、別れ話とは、何だか変な気分だ。

 

「なんと言いますか。あの香水はあの、本当に深い意味はなくてただのプレゼントでして、ハイ。いやプレゼントに香水ってのも変だとは自分でも思うんスけど……、だからなんと言うか、その気はなかったというか。いえ小大サンは美人だと思いますけど、だからこそ自分とは釣り合わないというかなんというか–––」

 

 あの香水は()()()()()()()()()効果があり、敵襲撃事件で恐怖を覚えたであろう小大サンの為に用意したもの。それがオレの思い付いたシナリオである。

 まぁ……嘘は言ってない……、かな。うん。

 

「…………ん」

「……勘違いさせてしまって、スイマセンでした」

「…………ん」

 

 オレの言葉に、僅かな間を入れつつ、小さく呟く小大サンを見て、彼女はオレが思っている様な邪な気持ちなどなかったのではないか? と、思わなくもない。

 

 ……しかし悲しいかな。弘原海 ありすと言う『元・無個性』の人間は十余年の人生の中で歪みながら育って来た。何も周囲からの影響や環境だけの所為にするつもりはないが、それでも染み付いた他者に対する条件反射的な警戒から、好意と言うものを素直に受け取ることが出来ない。

 

「–––あの、でも。これからもまぁクラスメート(友達)として仲良くやっていければなぁ、と思っていたり……」

 

 必殺・これからも良い友達でいましょう発動である。

 これさえ言っておけば何とかなる筈だ。

 

「–––ん!」

 

 先程と比べ、小大サンの声には、少しばかり活力が満ちた気がした。オレの必殺技は功を奏したらしく、思わずほっと胸を撫で下ろす。

 いやぁ〜、一時はどうなることかと思えたが無事解決出来て何よりだ。まだB組に対しての事情説明が残っているものの、大元が解決出来たのだから、そう慌てる必要もないだろう。

 

 そんなことを考えていると、すっと缶ジュースが隣から差し出された。

 

「ん」

「え、あ。良いんですか?」

 

 どうやら、公園内にあった自販機からわざわざ購入してくれたらしい。女子に奢らせてしまったなぁ、と苦笑しつつも、こういった好意を無下にするのもまた失礼であると小大サンから素直に受け取る。

 

 プルタブを開け、一口。

 

「スイマセン奢ってもらって。今度何かお礼に–––」

「–––“解除”」

 

 へ? と、聞きなれない言葉にオレの口から間の抜けた声。

 同時に現れる、淡い色をした立方体の……これは、クッション? 

 ……どうして突然クッションが目の前に? 

 

「“解除”」

 

 合掌の様に両掌を合わせた小大サンがまたもや呟き、今度は彼女の傍に–––キャリーケース? 

 

『個性 サイズ』。それが小大サンの個性であり、内容は、生物を除いたあらゆる物体の大きさの変換。液体の様に明確な形状を持っていなかったり、極端に巨大だったり極小でない限りは、彼女は大きくも小さくも出来る。

 

 のは、知っているが。……だからと言って何故それを今やるのだろう。それに、クッションとキャリーケースには一体何の意味が? 

 

「あの、小大サン? 一体どうし–––」

 

 –––ましたか。

 そう言おうとして、言おうとしたオレの体に、異変が訪れた。

 

「え–––。()れ? な、に。ねむ……く–––」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポゾッ。

 独特な音を立て、その体躯がクッションに優しく受け止められた。

 

「ん」

 

 動かないことを–––()が十分に効いたことを確認した彼女は、人の目に着かない内に素早くキャリーケースに少年を詰め込んでいく。

 丁寧に丁寧に、しかし恐るべき速度で。

 

「ん」

 

 きゃらきゃら。

 ……音を立てながら、小大 唯は帰路へ着く。




※小大さんがやったこと。

1.缶ジュースを(見えない様にしながら)個性で大きくする。
2.大きくした状態で穴を開け、そこから睡眠薬投入。
3.個性を解除。穴も一緒に小さくなる。
4.>>バレない<<

1話から3話のアンケートでの質問です。「んほぉ゛♡‼︎」と言わせるのは誰が良いと思いますか?

  • 小大 唯
  • 主人公

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