ゼロの使い魔 桜の亡霊   作:十和田 真歩

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1話です。サクサクと進めていきたい。
が、どうしても解説が入って長くなってしまう。うーむ難しい。
長い1話と短い1話どっちが良いんでしょうか。


第一話 ゼロと亡霊

「私は──」

 

 ──死んだはずだ。

 

 しかしどうだろう。

 目の前には見慣れぬ部屋が広がっている。

 

 親友が助けてくれたのだろうかとも考えたが、きっと違うだろうということはわかった。

 幽々子は冥界の住人であるが、ここはどう考えても冥界ではない。窓の外には青い空と緑の大地が広がっていたのだ。

 頭を回転させるも、結局答えは見つからなかった。

 

 歩く気にもなれなかった彼女は、もうしばらくゆっくりすることにした。見慣れぬうつし世の景色がなんとも美しい。

 

 そこへ、医務室のドアを開ける者が現れた。

 桃色の髪が特徴の少女である。

 

「!

 目が覚めたのね!」

 

 少女とは、ルイズのことだ。

 事情を何も知らず、生命と触れ合うことも滅多にない幽々子は、とりあえず友好的に自己紹介をすることにした。

 

「え、ええ……

 私は西行寺幽々子。あなた、ここがどこなのかわかる?」

 

「サイギョージ?変な名前ね。

 私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。ルイズでいいわ」

 

(ルイズなんとかエール……ルイズね)

 失礼な言葉には目をつむり、寝起きの頭に名前をなんとか覚えさせる。

 

「ここはトリステイン魔法学院の医務室よ。サイギョージ。

 あなたは私が召喚した使い魔で、私が主人。ヴァリエール公爵家に仕えるなんて、とても名誉なことなのよ」

 

 一気にまくしたてるルイズだが、話の節々に聞き捨てならない単語がいくつもあった。

 

(召喚?私は召喚されたの?)

 

 ──なるほど。他者による召喚であれば、私の魂を引っ張り出すことができるのかもしれない。

 とはいえ、一度死んだこの身を呼び出すとは、なかなかのものだ。みかけによらず、大魔法使いなのかもしれない。

 

 それにしても、親友である紫はみすみす幽々子を死なせるような妖怪ではないのだが……

 もしかしたら、こうなることをわかっていたのだろうか。となると、紫は私に何をさせようというのか。

 

「胡散臭すぎるのも問題よね」

 

「?なんのこと?

 あなたったら、首から血を流して死にかけていたのよ?一体何があったんだか。契約したら、治ったのよね」

 

 首から出血……

 何ということだ。この少女に私は救われたらしい。

 

 そもそも、亡霊である幽々子は、自分が血を流していたという事実に驚かされる。

 胸に手を当ててみるが、心臓は動いていなかった。しかし、呼吸はするし、まるで生きているような感覚がある。

 亡霊なのに、肉体がある。受肉したのに、死んでいる。死んでいるのに、生きている。まったくもってちぐはぐだ。

 

(……わからないことだらけね)

 

「で、サイギョージは私の使い魔というわけなのだけれど……」

 

 ルイズが言うには、使い魔の仕事は3つあるらしい。

 生活の補助と護衛。要はパシリということだった。

 

 幽々子としては、封印の件もあり、ルイズに召喚されたことを悪いことには思っていなかった。

 それどころか、こちらで一度命を救われたというのだからなおさらである。

 

 せいぜい100年。このルイズという少女のために費やすのも悪くない。

 そういう風に考えた幽々子は、使い魔ということに関して文句を言わなかった。

 

 ルイズは幽々子の貧弱そうな体──ルイズが言えた立場ではないが──を見て、

 

「……あなた戦えるの?」

 

 と、一抹の不安をつぶやいた。

 

 幽々子としても本当のことを言うべきか悩んだが、

 

「ほどほどにはね。普通の相手なら、負けないと思うわ」

 

 お茶を濁すことにした。

 実は、彼女の能力は、相手が生きてさえいれば、敵なしなのだ。

 結末さえ気にしなければ、負けることは無い。

 

「ふぅん。ならいいけど」

 

 ルイズもルイズで、期待はしていなかった。何よりも、召喚がうまくいったと言う事実だけで満足していた。今のところは。

 

 

 

 ところで、とルイズは切り出した。

 

「この後の授業で使い魔を連れて行かなきゃなんないのよね。サイギョージ、あなた動ける?」

 

「ええ。おかげで体の調子はかなりいいわ」

 

 ルイズの問に元気に答える幽々子。

 寝ている間に着替えさせられたのだろう。ルイズと同じデザインの服は着物と違って動きやすい。

 着ていたはずの着物は血まみれだったこともあり洗濯中だそうだ。

 

「そう。じゃあまずは朝食に行きましょう」

 

 ルイズは幽々子を連れて医務室を後にする……が、扉を開けた目の前で待っていたのは褐色の肌と赤毛が特徴のある少女だった。

 

「……なんの用よキュルケ」

 

 ルイズは嫌悪感をむき出しにしてキュルケに向き合う。

 

「あら。ルイズったら召喚がうまくいってあほヅラでもしてるかと思ったのだけれど」

 

 ルイズに比べて余裕そうなキュルケ。

 ルイズとキュルケは犬猿の仲であり、その因縁の深さはなかなかである。ルイズとしては、胸の大きさと言うコンプレックスを抱いており、豊満なキュルケの胸を今もにらんでいる。

 

 もし幽々子の胸が大きければ※、ルイズはもっと冷たく接していたかもしれない。

 

 

※※※※注意※※※※

この作品の幽々子様は胸が『控えめ』です!!

おっきいのがお好きな方には申し訳ない!

容姿は原作絵準拠です!

※※※※※※※※※※※※

 

 

「あら、あなたがルイズが召喚した使い魔ね?私は【キュルケ・ツェルプストー】。2つ名は『微熱』。隣国【ゲルマニア】からの留学生よ」

 

 ルイズをいなし、幽々子に自己紹介をするキュルケ。

 

「私は西行寺幽々子。よろしくね」

 

「怪我はもう大丈夫なの?ミス・サイギョージ」

 

「ええ、おかげさまで」

 

 キュルケも、召喚の儀で蝶を纏った幽々子の姿に目を奪われた一人だった。

 無事だと聞いて安心した様子のキュルケは、背後から現れたトカゲ(?)を指差した。

 

「紹介するわ。この子が私の使い魔!サラマンダーの【フレイム】よ!」

 

「キュルキュル!」

 

 尻尾から炎が出ている1mほどのトカゲを見て、幽々子はここが異世界なのだとはっきりと認識した。

 神やら吸血鬼やら妖精やらがぽこじゃかいた幻想郷であるが、このようなモンスターは存在していなかった。まあ、探せばいそうなものだが。

 

 それが目的だったのか、ひとしきりに自分の使い魔を自慢したキュルケは満足し、手をひらひらと振りながら去っていった。

 

「ぐぬぬ……」

 

 ルイズは悔しそうにしていた。

 ちらりと幽々子を見る。

 

 喋るし、人だし、美人だけどふわふわとしてて、まるで……?

 

(今浮いてなかった……?)

 

 ともかく動物とのスキンシップ。自分の使い魔とは、そう言うことはできなさそうである。

 幽々子に対し不満があるわけではないが、スキンシップを使い魔に期待していたこともあり、少し悲しいルイズであった。

 

 ルイズの心を知ってか知らずか、幽々子は苦笑いを浮かべた。

 

 

 

@@@@@@@@@

 

 

 

 幽々子が連れてこられたのは食堂だった。

 入り口には『アルヴィーズの食堂』と書いてある。アルヴィーズとはなんのことだろう。

 

 ルイズが席に着き、幽々子を隣に座るよう促した。

 

 ルイズをはじめとして、この学院にいる生徒は全員が貴族──というより、この学院は貴族教育こそ主目的──である。そしてルイズは公爵令嬢であり、その格は最高位だ。

 もし同年代の男の使い魔でも召喚していたとすれば、ルイズは「使い魔ごときを同じ席に座らせてなるものか」とでも言って床で食事をさせたことだろう。

 

 しかし幽々子は、ルイズが初めて命を救った存在であり、そんな人物に床で食事をさせることなどルイズの貴族倫理が許さなかった。

 

 幽々子は幽々子で、ルイズのそんな心境などどうでもよかった。目の前の料理に比べれば。

 妖夢※が作った料理ばかり食べていた幽々子は、目の前の料理に目を輝かせていた。

 

※※※※

魂魄妖夢

幽々子の幻想郷での従者であり、半人半霊の少女。いじられキャラ。かわいい。

※※※※

 

 生徒たちが祈りを唱和し、食べ始める。

 こちらにも神はいるのだなと、ちょっと気になった幽々子だったが、そんなどうでもいいことはスープの味に吹き飛ばされてしまった。

 

 次々と料理を口に運ぶ幽々子。

 とても美味しそうに食べるその姿は、ルイズの目から見ても心温まるものだった。

 

 ひと通り味わい、自分の分を平らげた幽々子。

 ふと周りを見ると、ほとんどの生徒が料理を残していた。

 ルイズの残していたパンを分けてもらいながら、この食堂についていくつか質問を投げた。

 

「朝からずいぶんと豪華なのね」

 

「まあね」

 

「昼もこの調子なの?」

 

「昼食はもう少したくさん出るわよ」

 

「なんでみんな全部食べないのかしら?」

 

「そもそも量が多いのよ。食べきれないわよ、こんなの。

 ……それにあなたが大食いなのよ」

 

「そうかしら」

 

 生徒がまばらになり、下げられていく料理たち。

 幽々子は、廃棄されるであろう料理たちを、うらめしそうに眺めていた。

 

 早くも、価値観の違いにショックを受けた幽々子であった。

 

 

 

@@@@@@@@

 

 

 

 ルイズに連れられ階段式の教室に入ると、中にいた生徒たちが一斉にルイズとその使い魔を見た。

 一拍置いて、クスクスと笑いが起きた。

 

(気持ちのいいものではないわね)

 

 幽々子は居心地の悪さを感じたが、ルイズはあまり気にしていない様子だったので、自分も気にしないことにした。

 

 

 

 教室にはたくさんの使い魔がいた。

 カラスやフクロウ、中には目玉の妖怪(?)やドラゴンすらいる。

 

(やっぱり異質よね、私)

 

 場違い感を覚える幽々子。

 

 心なしか疎外感すら感じていたが、気のせいでは無いようだ。

 

 自由にしている使い魔が、明らかに幽々子のことを避けていた。

 ルイズは、(動物に嫌われる体質なのかな?)と深くは考えなかったが、幽々子には心当たりがあるというか、ないというか。彼女には心の臓が無いのだった。

 

 亡霊とは、負の存在であり、場合によっては不幸を振りまく。亡霊の持つ雰囲気を、ここにいる使い魔たちは感じることができるようだった。

 

(正体がバレるのも時間の問題なのかしら?)

 

 幽々子は亡霊であることを極力隠す方針でいるのだが、変更する可能性が出てきてしまった。

 

「そういえばサイギョージ。あなたって【メイジ】?召喚したとき、光る蝶がいたけど」

 

 ふとルイズはそんな質問を投げた。

 首を傾げた幽々子を見て、メイジとは、魔法を使える人のことを指すのだと説明する。

 

「魔法は使えないわ。それとこの蝶は──」

 

 そう言いながら、幽々子は指先に蝶を発生させる。杖を使わず詠唱することなく姿を表したそれに、ルイズは驚いた。

 

「この蝶は魔法とは違うものなの。言わば、私の使い魔みたいなものね」

 

「ふうん。……ほとんどメイジみたいなものじゃない」

 

 ほんの少し機嫌を悪くしたルイズだったが、その理由がわからない幽々子だった。

 

「はい皆さん席について。授業を始めますよぉ〜」

 

 扉を開け教室に入ってきたのは、紫のローブに身を包んだふくよかな中年女性だった。

 ルイズが耳打ちをし、【シュヴルーズ】と言う先生なのだと教えてくれた。

 

 先生は教壇に上がると教室を見回した。じっくりと全員の顔を眺め、にっこりと微笑んだ。

 

「使い魔召喚は大成功のようですね。こうして春の新学期に様々な使い魔を見るのが、私の教師としての楽しみの一つなのですよ」

 

 若手を眺めることの楽しさを語るシュヴルーズ。理解を示す生徒はあまりいないようだ。

 一通り話したところで、シュヴルーズはルイズの使い魔である幽々子と目があった。

 

「おや。変わった使い魔を召喚したのですね、ミス・ヴァリエール」

 

 直後、教室が沸いた。

 

「ゼロのルイズ!召喚できないからって、まさか人を連れてくるなんて!」

 

 その言葉には毒はなくともトゲがあった。ルイズが立ち上がり怒鳴り返す。

 

「違うわ!きちんと召喚したもの!」

 

「嘘つくなよ!サモン・サーヴァントができなかっただけじゃないのか?」

 

 ううむと唸る幽々子。賑やかなのは嫌いでは無いが、これは気分の良いものでは無い。

 主人が馬鹿にされているのもそうだし、自分が蚊帳の外にされているのも気に食わない。

 しかしルイズがこういった場をどう乗り越えるかにも興味があった幽々子は、とりあえず静観することにした。長生きの秘訣は、無闇に首を突っ込まず、突っ込むときはとことんに、である。

 

「ミセス・シュヴルーズ!かぜっぴきの【マリコルヌ】が私を侮辱したわ!」

 

 ルイズが机を叩きながら小太りの少年マリコルヌに指を突きつける。さながら逆転だらけの法廷だ。

 

「かぜっぴき!?俺は風上のマリコルヌだ!」

 

 白熱する議論にまったをかけたのは裁判長もとい先生のシュヴルーズだった。

 

「二人とも。みっともない口論はやめなさい。

 お友達をゼロだのかぜっぴきだの呼んではいけませんよ。分かりましたか?」

 

「ミセス・シュヴルーズ。僕のかぜっぴきは中傷ですが、ルイズのゼロは事実です」

 

 マリコルヌの言葉に、せっかく静まりかえった教室にくすくすと笑いが漏れた。シュヴルーズが再び注意することでその場は収まるが、ルイズは負けたような気がしてピリピリしていた。

 

 

 

「はぁ。さ、授業を始めますよ」

 

 それから始まった授業は、幽々子にとっても興味深い内容だった。

 まず魔法の基礎教育。魔法は、火水風土の四大系統に『虚無』を合わせた全部で五つの系統に分類されるとのことだ。

 では自分の能力はどの系統かと考えた幽々子であったが、まごうことなき虚無だろうと推測した。しかし、虚無の魔法は現在失われた技術であるらしく、使われたという記録は神話の中の出来事にしかないようだ。

 

 五つの系統の中でも、土は最も社会の根幹をなす系統であるらしい。土系統の魔法は万物の組成を司る重要な魔法なのだという。

 土系統の魔法が無ければ希少金属を造ることはおろか、加工する事も出来ない。建設や農作業など、とにかく土系統の魔法が大事なのだとよくわかった。

 ちなみにシュヴルーズは土の系統を専門としているメイジのようである。

 

 「聞くより見てみましょう」と言ったシュヴルーズは、机の上に置かれた石ころをあっさりと金属に変えて見せた。

 

 「ゴ、ゴ、それはゴールドですか!?ミセスシュヴルーズ!」

 

 机の上に現れた黄金色の金属を見て、キュルケが身を乗り出し質問する。

 

「違います。ただの真鍮ですよ。ゴールドを生み出せれるのはもっと実力のあるクラスのメイジだけです」

 

 わざとじゃないにしても、自分の力不足を指摘されたようでほんの少し傷ついたシュヴルーズ。

 気分転換として生徒にやらせてみることにした。

 

「では、誰かにこの魔法をしてもらいましょう。うーん……ミス・ヴァリエール、どうですか?」

 

「え?私?」

 

 ふと舞い降りた汚名返上のチャンス。先ほど使い魔に見られてしまった失態のぶん、ここでさくっと取り返しておきたい。

 

「そうです。ここにある石ころを、望む金属に変えてみてください」

 

 しかしそれに異を唱える者がいた。キュルケである。

 

「先生」

 

「はい?」

 

「やめといた方が、良いのではと、思うんですが……」

 

「なぜです?」

 

「みんなの使い魔が危険にさらされます」

 

 キュルケがはっきりそう述べる。すると教室にいたほとんどの生徒がそれに頷いた。

 

「危険……?」

 

 先生は納得していないようだ。キュルケは仕方なく、ルイズを説得することにした。

 

「やめて。ねぇ、ルイズ」

 

 いつにもまして真剣な顔で言うキュルケだが、ルイズは強い意志でもってそれを跳ね除ける。

 

「やります」

 

 誰もがやめてくれと祈る中、ずかずかと教壇に向かったルイズ。緊張した顔で、ルイズは杖を構えた。

 シュヴルーズは何も疑っていない。

 幽々子の視界の隅で、青髪の少女が教室から抜け出すのが見えた。

 

「錬金したいものを、強く思い浮かべるのです」

 

 ルイズが杖を振った、その直後。

 破裂音。そして爆風が教室をなぎ払った。

 

 

 

@@@@@@

 

 

 

 未来の読めていた生徒たちは、近くにいた者を除いて無傷だった。吹き飛ばされてしまった使い魔もいたようだが、命に別状はないらしい。

 そして物理的なダメージを負わないはずの幽々子であるが、その性質に甘んじて何の備えもしていなかったため服がズタボロになってしまった。

 しかもおかしなことに、飛んできた瓦礫によって肌には切り傷やアザができており、その爆発の強さを痛々しく物語っている。

 

 久方ぶりの怪我という経験に驚いていると、今にも泣きそうなルイズと目があった。

 

「…………」

 

「……なにか言いなさいよ」

 

 ルイズは不機嫌そうに、そうつぶやいた。

 

「使い魔を召喚できても、普通の魔法はできないなんて……」

 

 ルイズは、自分の力不足をたいそう嘆いていた。

 今回ばかりは、自信があったのだ。

 命を救い、調子に乗った勢いで何もかもがうまく行くと思っていた。

 

 しかし、魔法は使えなかった。

 杖は、ルイズの願いに応えなかった。

 注ぎ込んだ魔力は、爆発という形で飛散した。

 

「爆発はするんでしょう?魔力はあるんだから、やり方次第じゃないのかしら?」

 

 幽々子のその言葉に、ルイズは激昂した。

 

「あなたは何も知らないじゃない!私だって頑張ってきたのよ!

 でもできなかった!貴族の象徴である魔法ができないのよ!私には!!」

 

 ルイズの言葉に、幽々子は自分の発した言葉を後悔した。

 幽々子は亡霊だ。寿命に悩むことはなく、食事をしなくたって死ぬことはない。身体能力は衰えず、どんな生活をしようと、肌が荒れることもない。

 長い時を過ごした彼女は、すべての問題は時間が解決する、と、楽観的な思考をしていた。

 

 しかし、相手は人間なのだ。

 

 時間は有限であり、それは化け物の類からするととても短い。ルイズにとって魔法とは、一刻を争う死活問題であった。使い魔召喚もうまくいったからいいものの、退学の危機だったのだ。

 

 配慮の足りない自分の発言を謝るも、ルイズの機嫌が直る様子はなかった。

 

「あとはサイギョージがやっておきなさい!」

 

 ルイズはそう言うやいなや、教室を出ていってしまった。

 

「まったく……私もまだまだね。妖夢とは違うというのに……」

 

 千年以上生きて(死んで)来たというのにこの体たらく。人を相手にすることの難しさを思い知った幽々子だった。

 

 なお、教室の片付けを言い渡されていたのだが、ルイズがどこかに行ってしまったため幽々子が一人で掃除した。

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