ゼロの使い魔 桜の亡霊   作:十和田 真歩

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「ルビ」の機能を最近知りました。

けど覚えられないんです……

使いこなせたらすごく便利なんだろうなと思います。

でも覚えられないんです……


第三話 亡霊と相棒?

「うわぁ!!」

 

 ギーシュは医務室で飛び起きた。

 目覚めた彼がまずしたのは、自分の胸に手を当てることだった。

 手が伝えてくるのは、ドクンドクンと拍を打つ心臓の感覚。

 

「生きてる……」

 

 ギーシュはこれまでにないほど、生を噛み締めていた。

 頭の冷えた彼は、先程までの自分の行いを猛省。

 二股をしたつもりはさらさらないが、無関係な人に八つ当たりをするのは愚かな行為だと言わざるを得なかった。それになにより、美しくない。

 

「杖も使っていなかった。ということは先住魔法?やれやれ、とんでもない相手に喧嘩を売ったもんだ……」

 

 幽々子の持つ負の力に触れたギーシュは、ますます幽々子への畏怖を感じることとなった。

 

「しっかり謝らないとな……

 あぁ、ケティとモンモランシーにもか……」

 

 強敵との戦闘によって、人として成長できた薔薇であった。

 

 

 

@@@@@@@@

 

 

 

 自分の使い魔と喧嘩をしてしまったルイズ。

 自分の起こした癇癪が悪いとは思いつつも、「雨降って地固まるとも言うわよね」と、気持ちを入れ替えていたルイズ。しかし、ルイズは仲直りの機会を逃してしまった。

 

 

 やたらと騒がしい学内。耳を澄ますと、どうやらどこぞの貴族とどこぞの使い魔が決闘をするらしい。なるほど、それは面白そうだ。

 

 なになに、貴族というのはギーシュのようだ。まったく、使い魔も相手が悪い。それで使い魔は──「ルイズの使い魔」?

 

 飛ぶように現場に急行したルイズ。

 よからぬ魔法(?)を止めることに一度は成功したものの、幽々子は禁忌と思わしき魔法を行使してしまった。

 

 使い魔のしたことは主人の功績。

 使い魔のしたことは主人の責任。

 

 自分の使役する、禁忌を犯した使い魔。

 「さっきはごめんね」などと切り出すような空気ではなかった。

 

 ルイズの部屋には重い空気が漂っていた。

 

「ねえ、ルイズ」

 

 沈黙を破ったのは幽々子だった。

 

「なによ」

 

「私を使い魔として使役するなら、知っておいてほしいことがあるの」

 

 そんなの先に言っておけよと思ったルイズだが、それを言ってしまえば話がそれてしまう。ルイズにしては珍しく、言葉を呑み込んだ。

 

「私の能力はあんなものじゃなくてねぇ。もっとこう……おもいっきり禁忌と言うか──」

 

 ルイズはめまいがした。この使い魔、禁忌を別にどうと思っていないらしい。

 

「あ、あんたってやつは〜!!」

 

「ル、ルイズ?」

 

 ルイズは幽々子の言葉を遮って叫んだ。

 

「自分が何したのかわかってるの!?」

 

「えっ?いや、そうじゃなくて──」

 

 ルイズの説教は貴族の「誇りとは」から始まり、歴史、魔法のいろいろなど、高密度な内容が朝まで続いた。

 

 しかし、ルイズの恐れていたような事態になることはなかった。教師陣からのお咎めは無く、逆になにか勘繰ってしまうほどであり、裏では教師陣の苦悩があるのだが、そのことをルイズが知ることはないだろう。

 とはいえ、ルイズ達の悪評は学園中に広まっており、ルイズはイメージ戦略に頭を悩ませることになる。

 

 どっぷりと説教をし、軽く睡眠をとったルイズ。

 眠り足りないと感じつつ、冴えない脳を使い先日の出来事を思い起こす。

 

 考えてみれば、別行動をとってしまった原因は自分にあり、幽々子は自分なりの正義(?)で決闘を受け、しかもギーシュに打ち勝ってみせたのだ。

 禁忌を犯したのはいただけないが、自分を棚に上げて説教したのはルイズである。ちょっと謝るくらいするべきかと思ったが、なんとなく恥ずかしくてできなかった。

 

 悩んだルイズは、勝利の褒美をプレゼントすることで、自分の非を打ち消すことにした。

 

 

 

「というわけでサイギョージ。今日は買い物に出かけるわよ」

 

 虚無の曜日。それはハルケギニアにおける休日のこと。

 多くの民が羽目を外し、悠々自適に過ごすこの日は、トリステイン魔法学院の生徒にとっても待ち遠しいものだ。

 

 しかしこの学院は、気軽に遊びに行ける街が周囲にない。そのため、遊びに出かけようと思ったら、事前にそのつもりで行動しなければならない。

 

「買い物?それは楽しみね」

 

 ショッピングとは何世紀ぶりだろうかと心を踊らせたが、学院の周囲に何も無いことを思い出した。

 

「まさかだけど、歩くのかしら?」

 

「そんなわけないじゃない。中央までどれだけあると思ってんのよ。

 馬で行くのよ馬で。それでも何時間かかかるけど」

 

 なるほど、貴族令嬢ならば馬車くらい普通に使うようである。と思った矢先、現れたのは一頭の馬。

 

 ルイズと幽々子を乗せ、馬は走り出す。幽々子の放つ死の気配を敏感に感じ取った馬は終始怯えていた。

 

 

 

 

 トリステイン城下町についたルイズと幽々子は、王国一だという大通りを歩いていた。

 大通りと言えども、その幅はせいぜい10メートル※にも満たないほどであるが、幽々子のいた幻想郷と比べれば圧倒的に広い。

異文化を楽しむ幽々子の足取りは軽い。

 

※ゼロの使い魔にて使われる単位は独自のものですが、ここでは基本的にメートル法やsi単位を使用します。

 

「サイギョージ。ちゃんと財布は持ってるわよね?」

 

 主人の荷物は使い魔が持つものだと言うルイズは、幽々子に財布など諸々の荷物を持たせていた。

 

「ええもちろん。そもそも、貴族の財布を盗もうとする人なんているのかしら」

 

「いるに決まってるでしょ。魔法使えるやつだって、平民の中にはいるんだから」

 

 ルイズのその言葉に、魔法使いは貴族ではないのかと疑問を抱いた幽々子。

 

「貴族がメイジなのであって、メイジだから貴族ではないの。間違えないでちょうだいね。

 没落貴族も少なくないし、そんなやつほどろくなやつじゃないから犯罪に手を染めるのよ」

 

「ふうん」

 

 この世界の魔法使いが絶対であるというのは、少しばかり複雑な事情があるようだ。

 幽々子は頭を切り替え、ショッピングを楽しむことにした。

 

「うーん、私の着慣れたようなのは無さそうねぇ」

 

「あの変な服?ひらひらしてるのはいいけど、着替えにくいわね。あと、可愛いというより綺麗って感じでサイギョージにはぴったりね」

 

「期待はしてなかったのだけれど、ちょっと残念ね」

 

「まあいいじゃない。その制服も似合ってるわよ。

 さて、と」

 

 本題は剣なのよと言いつつ幽々子を連れたルイズがやってきたのは、大通りから少しそれた武器屋だった。

 

 

 

@@@@@@@@

 

 

 

 寂れた店内で、店主である男性はタバコをふかしながら、めったに来ない客を待っていた。

 その、めったに来ない客が来たからと言って、彼が真面目に動くようなことはなく、とりあえず適当に掛け声をかけた。

 

「らっしゃーい」

 

 きしむドアを開けて入ってきたのは、店主が予想していた人物像とは大きく違っていた。

 

「どうせならいい剣がいいわよね」

 

「言っとくけど私は剣はあんまり得意じゃないわよ?やってはいたのだけれど……」

 

「いいのよ飾りでも。従者が剣を持っていないなんて印象が悪いの。

 そもそも私もわかんないし」

 

 安物の剣を物色する客二人は、姉妹なのか、そろって桃色のきれいな髪をしており、来ている服はトリステイン魔法学院のもの。つまるところ、店主から見て二人が貴族(少なくともその関係者)であることは確定であった。

 なにかの罪に問われたのかと一瞬寒気を感じていたが、どうやらそうではないらしい。

 

 棚の影に消えていった二人を見て、彼はほくそ笑んだ。

 

「こりゃカモがネギを抱えてやってきたわい。どこのボンボンかしらんが、もらえるだけもらってやるわ」

 

 店主は裏の倉庫から、見た目のイイ剣をいくつか見繕うと、ウキウキで二人のもとへ向かった。

 

「やっぱりレイピアかしらね。軽いし」

 

「へえへえお客様。こちらの剣なんてどうですかい」

 

 店主が持ってきた剣は宝石が散りばめられた大剣だった。とてもじゃないが持てそうにない。

 

「へえへえ。じゃあこっちはどうですかい」

 

 店主が出してきたのは、いかにも貴族が好みそうなレイピアだった。店主が言うには、近頃の流行りはこれらしい。

 

「剣に流行りなんてあるのね」

 

「最近【土くれのフーケ】とかいう盗賊が貴族様の館を荒らしてまして。そんで、貴族様の間で下僕に剣を持たせるのが流行ってるって訳です」

 

「ふーん。サイギョージはこれでいい?」

 

「そうねぇ。どれか選べってなったらこれか、もうすこし質素なやつがいいかしらね」

 

「そうですかい。いま持ってきますんで待っといてくだせい」

 

 店主が裏に行くと、幽々子は不思議な声を聞いた。

 

「おい、おい」

 

 二人は振り返ってみるが、誰もいない。

 

「ここだここ!おめーの目は節穴か!」

 

 ずらりとならぶ剣の中に、つばの部分がかたかた揺れているものがあった。なんと、剣が喋っていたのだ。

 

「あら、付喪神。こっちにもいるのね」

 

 道具が喋るというのは、幽々子も見たことがある。愛が長い間注がれたり、持ち主の強い意思が乗り移ったりして生まれる付喪神。

 それがこうして売られているという事実に幽々子は驚いた。

 

「ツクモガミ?なによそれ。これはインテリジェンスソードよ」

 

 ルイズが訂正する。これは付喪神ではなかったらしい。

 

「やいデル公!お客様にちょっかいかけるなっていつも言ってるだろう!溶かしちまうぞ!」

 

 裏から戻ってきた店主がデル公に向かって怒鳴りつける。

 

「そりゃあいい!そろそろ飽きてきた頃だ!それにこんなさびれた店に埋まるくらいなら溶かされたほうがマシってもんだ!」

 

 口論を続ける二人(?)の裏で、ルイズと幽々子は真剣にデル公の購入を考えていた。

 

「どうせ使わないし、喋ってくれたほうが楽しくていいわねぇ」

 

「そう?でも錆がひどいわよ」

 

「砥げばいいんじゃないのかしら?ごめんなさい詳しくないのだけれど」

 

「じゃあ、とりあえず持ってみたら?」

 

「そうねぇ」

 

 口論を続けるデル公を手に取る幽々子。軽く振ってみるが、剣を使ったことのない割には、しっくりとくるものだった。

 

「…………こりゃおでれーた。おめえ、『使い手』か」

 

 握られるやいなや、黙り込んだデル公がそう言った。

 

「使い手?」

 

「おうおうおう。しかもおめえ、人間じゃねえな?不吉な香りがぷんぷんしやがる。

 いや、人間ではあるのか……?どうなってやがる……」

 

 へえ、と感心する幽々子。ついに、この世界で自身の存在を見破る存在が出てきた。いつかバレると思っていたが、まさかそれが剣とは思わなかった。

 

「こりゃあおったまげた。こりゃあまるで……」

 

 核心には至っていないようだ。亡霊であることは別にバレてしまってもいいのだが、ここではないだろう。

 

「もしもしデル公さん」

 

「いや、そんなことが……ん?

 やい!誰がデル公だ!俺は【デルフリンガー】様だ!」

 

「……ルイズ、これにしたいわ」

 

 ルイズとしてはもうすこしきらびやかなものを想定していたのだが、幽々子が欲しいというのだからそれでもいいかと考えた。

 

「……まあいいわ。いくら?」

 

「そいつなら新金貨100枚で結構さ」

 

「……安いわね」

 

 そう言うルイズだが、実を言うと想定していたよりもずっと高かった。この様子じゃ、さっきのレイピアなどいくらするのだろうか。

 使い魔もいる手前、「まさかこんなに高かったなんて」と言うわけには行かず、見栄をはることにした。

 

「厄介払いみたいなもんさ」

 

「じゃあ手形でいいかしら?新金貨100枚なんて重すぎて持ってきてないのよね」

 

「へいへいわかりやした。まあむしろこっちも安心さ。

 ……へえ!ヴァリエール公爵のご令嬢でしたか!こりゃどうも!」

 

 ヴァリエールの名前が刻まれた手形を見た店主は驚き、もっとふったくってやればよかったと内心でため息をはいた。

 

「縁があればまた来るかもしれないわね。

 それじゃサイギョージ、行くわよ」

 

「よろしくね?デルフリンガー」

 

「ああ!よろしくたのむぜ!相棒!」

 

 そうして、武器屋をあとにしたルイズと幽々子は、ちょっと陽気な剣一振りと共にショッピングを楽しんだ。

 学院に戻る頃には、日が変わる寸前になっていた。

 




幽々子様といえばもっとマイペースなのかな?
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