コロナが悪いよコロナが~
あと、シエスタ(学院で働いているメイドの1人)はちゃんと生きています。
原作では主人公のことをルイズから寝取ろうとするのですが、ここでは登場するかわからないです。
学院にある宝物庫へ続く廊下を歩く人物がいた。
緑の髪が特徴の女性【ロングビル】であった。彼女は学院長オールド・オスマンの秘書として雇われており、オスマンからのセクハラにため息を吐く日々を送っている。
能力の高さと23歳という若さから、学院内で彼女に好意を向ける存在もちらほらといる。
──というのは表向きの話。
裏の顔は女泥棒。土くれのフーケとは、彼女の異名である。
ルイズの言う、没落貴族の成れの果てとは、まさに彼女のことを指すだろう。
彼女が学院に近づいたのは、学院の宝物庫に保管されているという『破壊の杖』が目的であった。オスマンにセクハラされるためでは決してない。
宝物庫にたどり着いたロングビルは、迷わず堂々と解錠の魔法を唱える。しかし扉が開くことはなかった。
土系統の中でもそこそこ上位の腕を持つ彼女であるが、この宝物庫を作り上げた人物は、彼女以上の技術力を持っていたということになる。そこいら貴族の金庫とはわけが違うらしい。
舌打ちをするロングビル。
今回の盗みは時間がかかりすぎている。わざわざ秘書などという仕事に就き、セクハラされる毎日。されど盗みに進展はない。
どうにかして、現状を打開しなくてはならない。
ふとロングビルの頭に浮かんだのは、桃色の髪が特徴の一組の主従だった。
@@@@@@@@
どかーんという音が中庭に木霊する。
ルイズは魔法の自主練習に挑んでいた。唱えているのは、先週"運悪く"失敗してしまった錬金の魔法。どうやら今日も、運が悪いようである。
「お嬢ちゃんのその魔法、見たことある気がするんだ。ここまで出てるんだがよ」
ルイズの魔法を見たデルフリンガーがそんなことを言った。ルイズの放つ魔法は、何かがおかしい──
違和感を覚えるのは幽々子だけではなかったのだ。
その発言に、なにか核心に迫ることを知っているのかと期待した二人だったのだが、デルフリンガーは「忘れちまった」らしく、肩を落とす羽目になった。
「もの忘れする剣ねえ」
「うるせぇ!こちとら何千年も前から剣をやってんだ!」
「はいはい」
デルフの言うことをルイズは信じないことにしたようだ。
二人は知らないし、デルフリンガーも忘れているのだがこの剣、言っていることは本当である。
しかも、かつて始祖ブリミルの使い魔であり幽々子に刻まれたものと同じルーンをもったガンダールヴ、その人の使用した剣である。神話にも登場する偉大な剣なのだ。
だが残念なことに、その事実を本剣(?)が忘れているせいで力を発揮できないのだ。思い出さない限り、デルフはサビのついたお喋りする剣でしかない。
幽々子も、結構すごい剣なのだと薄々勘付いているのだが、『答え』にたどり着くにはいかんせん情報が足りなすぎていた。
「私が思うに」
食堂で夕食をとる二人。
以前から奇異の目で見られていたルイズと幽々子であるが、決闘騒ぎ以来、より周囲からの注目を集めようになった。ちょくちょく視線を感じるルイズであるが、満更でもないようである。
幽々子はまったく気にしていないようで、相変わらず見事な食べっぷりである。それを眺めながらルイズが切り出した。
「もうちょっとだと思うの」
その言葉に幽々子は、「今日のデザートは何かしら?」と心から発言した。
使い魔の食い意地に半ば呆れながら、ルイズは話を進める。
「魔法よ魔法。サイギョージを召喚できたし、契約もできた。変な剣も買ったし、来てるのよ、流れが」
ルイズは楽観的に語る。
悲観的だったいままでを思うと、ずいぶんな成長であると言えよう。
「確かに、私を召喚したというのは、明らかに普通じゃないわね」
亡霊だったこの身を、受肉させてまで召喚してみせたのだ。一言に幸運などとは片付けられないだろう。幽々子にだって、自分がちょっと特殊な存在だという自覚はある。
「でしょ」
「ええ」
概ね間違ってないだろうと思った幽々子は、ルイズの自信を否定しなかった。何より、メイドが持ってきた今日のデザートに比べ些細な問題でしかなかったのだ。
使い魔の同意(?)を得られ俄然やる気を出したルイズは、その日の夜も中庭で魔法の練習をすることにした。
もし失敗すれば近所迷惑もいいとこであるが、失敗しなければいいだけの話なのだ。
ドゴーン────
「……」
「まあ、そうよね」
「かー!!今までできなかったことがそんな簡単にできるようになるわけがねぇってこった!」
失敗した。失敗した失敗した失敗した。
おそらく、ルイズ以外の誰もが予想した通りの結果であった。
なぜ失敗するのか。幽々子とデルフは主人そっちのけで議論する。
対しておもしろくないルイズ。自分の心をチクチクと刺す二人の従者に、怒りのボルテージが上昇する。
「あんたたち勝手なこと言ってんじゃないわよ!!」
ルイズはそう言いながらファイアーの魔法を唱えた。ちょっと強い火を発生させる魔法だ。
実に3日くらいぶりの、思いのこもった一撃である。
当然、火の玉など現れず、ルイズの魔法は幽々子の背後にあった壁を爆発させた。
大きな亀裂の入った壁。
震えた声で「芸術的な模様ね」と幽々子。彼女にとっては、久しぶりに死を感じた瞬間であった。
ルイズは今度は成功するかもしれない魔法を唱えようとするが、幸か不幸か失敗記録が更新されることはなかった。
「な、何よあれ……」
巨大な像が、ルイズの視界を覆い尽くしていた。
突如現れた20メートルほどのその巨像は動いていた。魔法によって生成されたゴーレムのようだ。それも、ギーシュなどとは比べ物にならない実力者によるもの。
大きすぎるゴーレムの動きは一見ゆっくりに見えるが、それは錯覚。ヒビの入った壁を殴りつけ、ばらばらと飛び散る破片は、その一撃の重みを表している。
壁にできた大きな穴に、ゴーレムの肩から腕をつたい何者かが学院に入りむ様子が見えた。
避難してその様子を眺めることしかできない幽々子とルイズ。目的は、自分たちではないようだ。
「泥棒ねぇ。ずいぶんといい度胸してるじゃない」
幽々子は相変わらず日和見的だ。
対してルイズは、壁を壊したのは自分であるという事実をじわじわと自覚し始めており、「とんでもないことをやってしまった」と気が気でなかった。
何か細長いモノを担いで穴から出てきた泥棒は、ゴーレムをつかいあっという間に城壁を越えてしまった。すばらしい手際である。
ゴーレムはその場で崩れ落ち、学院に残ったのは土の塊と、泥棒『土くれのフーケ』の犯行声明だけであった。
♨♨♨♨♨♨♨♨
翌日。
職員会議は大いに荒れていた。
トリステイン王国の誇る魔術学院の宝物庫が、真正面から破られたのだ。しかも、『破壊の杖』が奪われたというのだから大問題である。
概ね、昨夜の警備当番であったシュヴルーズを責める流れであった。
とはいえ相手は宝物庫を破るだけでなく巨大なゴーレムを操る実力者。防ぐことは難しかっただろう。
しかし、シュヴルーズには責められうる理由があった。あろうことか、警備を怠っていたのだ。具体的には、寝ていた。むしろ責められないほうがおかしいと言える。
「これこれ、そんなに責めるでない」
大盛り上がりを見せる中、学院長のオスマンが会議室に現れた。
「確かに当番のシュヴルーズの責任は重いかもしれん。が、この場に当番の仕事をしっかりとこなしている者がおるのかの」
実はこの警備当番、サボるのは当たり前というのが職員たちの認識だった。自分のことを棚にあげた教員のみが、シュヴルーズに非難の声を向けていた。
いや、そんな彼らもまた、後ろめたさを感じていたのだが、誰かが責任を取らねばならないのだから、当番だった者を責めるしかないのだ。
「今回の件はワシら全員の責任じゃ。まさか宝物庫の魔法が突破されるとは思わんかったわい」
連帯責任であると。
はっきり言って学院長の監督不行き届きと言えるが、オスマンも保守を忘れない。
「さて、犯行を見ていたと言うのは誰かね?」
「ルイズ、キュルケ、タバサの3名です」
オスマンの問いにコルベールが答え、扉の外で待機していた3人を呼んだ。
「ふむ、君たちか。ではその時の話をしてくれるかの」
学院長に促され、教師たちの前で説明を始めるルイズ達。
巨大なゴーレムが出現し壁を壊したこと、怪しげなメイジが細長いものを持っていったこと、そして城壁を越えたゴーレムが崩れ去りフーケと思わしき者はさっぱり消え去っていたことを説明した。
「なるほどのう。手掛かりはないと」
オスマンは頭をポリポリとかきながら、唸る。
話を聞く限り宝物庫の壁を破壊したのはゴーレムであるのは間違い無いらしい。
しかし、宝物庫にかけられていた魔法は、大質量をぶつけられた程度で突破されるほどやわでは無い。何か、別の力が加わったはずであるが……
それに、破壊の杖は貴重な魔法道具ではあるが、使い方のわからない骨董品。もっとおいしい宝物には目もくれないフーケのやりかたにも疑問が残った。
「……はて、そういえばミス・ロングビルがおらんようじゃが」
「それが、朝から誰も見ていないと」
「この非常時に、どこに行くと言うんじゃ」
「ええ、まったくです」
オスマンとコルベールがそんな話をしていると、会議室の扉を開ける者がいた。ロングビルである。少し髪が乱れており、急いでいた様子が見て取れた。
「おや、ミス・ロングビル、今までどこに行っておったんじゃ」
「失礼しました。朝から調査をしておりましたので」
「調査?」
「怪盗フーケの跡を追っておりました。なんとか住処を突き止めることができましたので、ひとまず報告のため帰還しました」
「おお!フーケの住処とは、これは大手柄じゃな」
「朝起きてみたら宝物庫があの有様で、急いで調査を開始しました。遠くには行っていないと思いましたので、近所の農民に聞き込みを行いました」
ロングビルによると、学院から程々の場所にある森の中に怪しげな廃墟があり、そこがフーケの拠点だろうという話だ。
「では、捜索隊を編成する!我こそはと言うものはおるかの?」
学院長による捜索隊の募集に名乗りを上げたのは、気高い少女達であった。
教師たちは誰も名乗り出なかった。
名乗り出たのは目撃者であったルイズ、キュルケそしてタバサの3人。
ルイズは宝物庫破りの一端を担ってしまった責任感から。キュルケは「ルイズには負けられない」から。そしてタバサは「そんな二人が心配」を理由にしていた。
生徒を向かわせることに対して多少の異議が唱えられたが、ルイズとキュルケは名家の娘であり、戦力として申し分ないだろうということ。タバサは武勇を上げた者に与えられる『シュヴァリエ』の称号を持っていることから戦闘力が高いことは保証されている。
以上の理由により、捜索隊は彼女らに案内役のロングビルを加えた4名に決まった。
案内役を指示されたロングビルは、それを快く受け入れた。
♨♨♨♨♨♨♨♨
討伐に名乗り出たルイズ達は、馬車に揺られフーケの拠点へと向かっていた。
ルイズは緊張で固まっており、キュルケはそんなルイズをからかっている。青髪の少女タバサは、1人で読書の世界に浸っていた。
幽々子は馬車の御者をしているロングビルを観察しながら、かつての親友に思いを馳せていた。
親友の紫は、ある意味泥棒と言っても差し障りない存在であった。
紫の『境界を操る程度の能力』は犯罪者にはぴったりな能力で、ノゾキを生き甲斐にし、人間を誘拐することも少なくなかった。
紫は非常に頭のキレのいい妖怪だ。すべての事柄を掌の上で行い、他者を弄ぶ。目的のためには、あえて負けを演出することもある。
ではこのロングビルは、どこまで考えているのだろうか。
なんたらの杖を盗んでおきながら、なぜこうして私達を引き連れているのか。紫が黒幕なら、どうするだろうか。紫なら──
対してロングビルあらためフーケ。
学院からルイズらを連れ出したのはいいが、ルイズの使い魔からやたらと視線を感じており、気が気でなかった。
「ミス・サイギョージ。私の顔に何か?」
「いいえ?特に何も。眺めていただけですのよ」
幽々子はそう言った。堂々と、フーケのことを眺めている。とても夕食のことを考えているようには見えない。
フーケは表面には出さずとも、内心では最悪の気分だった。
(ちっ!こいつ感づいてやがる!)
前々から面倒くさそうな奴だとは感じていたが、まさかそれを自分が思い知らされる羽目になるとは思っていなかった。学院のボンクラ達のせいで平和ボケしていたのかもしれないと反省する。
フーケはルイズをちらりと確認する。
「なによルイズ~緊張してるの?」
「ううううるさいわね!」
「…………」
キュルケとルイズはこちらを気にしている様子はない。タバサも、消音の魔法を使ってまで読書に集中しているようだ。
気づいているのはサイギョージだけらしい。
(今のうちに仕留めるか……?いや……)
タバサ以上に、このサイギョージという人間は魔法の腕が未知数なのだ。ギーシュを完封することができる以上の情報がない。軽々しく計画に組み込むのは早計だったと思わざるをえなかった。
(仕方ねぇ。泳がせてくれるなら、存分に泳いでやろうじゃねぇか!)
そんなフーケを、幽々子はただじっと見つめ続けていた。
最低でもアニメ1期ぶんは書いていきたい。