『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝 作:ドラゴンネスト
無理矢理出入り口を切り捨てて押し入るのは最後の手段としていてもそれを辞さない覚悟の京矢と、それを止める気のない、寧ろ後押しする意思しかないハジメとユエが石造りの住居に入って最初に感じたのは全体的に白い石灰のような手触りだった。
清潔感のあるエントランスには暖かみのある高級が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。薄暗い所に長く居た京矢達には少し眩しいくらいだ。
そこは3階建てらしく上まで吹き抜けになっている。
取り敢えず一回から見て回る一同。
暖炉や柔らかな絨毯、ソファーのあるリビングらしき場所に台所、トイレを発見した。
どれも長年放置されて居たような気配はない。人の気配はないが、旅行から住人が帰った家と例えるのが妥当だろう。
実は此処までは京矢にバスローブを渡された際に風呂のある場所と教えられたのだから知って居たりする。
「改めて見ると、どう言う方法かは知らないけど、管理維持だけはされてるん様子だな」
「ああ。今からでも問題なく住めそうだな」
「……ん」
「ところで、前にガチャで手に入れたプロジェクターと仮面ライダーのDVDが有るけど、後で見るか?」
ジュエルシードか闇の書かセフィーロの時の戦い、その何れなのかは説明されて居ないが、戦いの末に手にしたガチャ券で手に入れた一品である。
「おっ、お前がくれたのが出て来るやつか?」
内心仮面ライダーと言う別の世界の特撮には興味もあるし、どんなことが出来るのか参考までに見ておこうと考えたハジメだったが、
「あれも含めて全部で20作品、映画もあるぜ」
「マジか!?」
この世界に仮面ライダーという作品は存在して居ない。その為にこれが仮面ライダーシリーズに触れる初めての経験だが、見事にハマったハジメだった。
具体的に言うと自分の技術で再現可能な武器を作るレベルには。
南雲ハジメの武器にライダーウェポンの一部が追加された瞬間であった。
後の休息、テーブルクロスから召喚した米を使った夕飯と仮面ライダーシリーズの視聴を決めた一行は、先に進む。
次に有ったのは京矢に場所を教えられた風呂。一回の安全確保を終えてからガイソーケンを片手にのんびりと入浴して居た京矢のお陰で安全だと分かったのは助かった。
「用心はしてたけど、ラスボス倒した後は合格って事で罠も無いとは思ったんだよな」
と言うのが京矢の弁だ。念の為にと其処の安全確認も兼ねて先に一風呂入っていた。
そんな訳である程度簡単にだが探索を終えていた一階部分を再調査を終えて次に向かうのは二階である。
二階で発見したのは書斎と工房らしき部屋。だが、封印が施されているらしく入る事はできなかった。扉や壁を切って入るのは最後の手段なので今は他を探索するのを優先する。
そして、既にある程度把握していた一階部分、殆ど探索できなかった二階部分の探索を終えて四人が足を踏み入れたのは三階部分。
入ってすぐに分かった事だが三階は一部屋しかないようだ。京矢が奥の扉を微かに開けて安全を確認する様に中の様子を伺い、後ろに居たハジメとユエに安全だと言うサインを送る。
三人揃った所で扉を完全に開放し、中に入るとそこには直径8メートル程の今まで見た事もないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央に刻まれて居た。
その繊細さは正に芸術品と言っていい程に見事な幾何学模様だ。
だが、それよりも注目すべきなのは、その魔法陣の向こう側にある豪華な椅子に座った人影だ。
その人影は骸だった。椅子に座ったまま命を落としてからどれだけの月日が流れるまで彼の前に現れた者がいなかったと物語る様に白骨と化していた。
黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織った姿に薄汚れた様子はなく、お化け屋敷のオプジェを想像させる。
京矢はアンデッド系のモンスターの可能性も警戒して居たが、それもなさそうで剣を下ろした。
その骸は椅子にもたれかかりながら俯いている。その姿勢のまま朽ちていったのだろう。魔法陣しかない部屋で骸となった者は何を思って居たのか。苦しんだ様子もなく安らかに逝った様子を思わせる姿から意図があってこの場を最後の眠りの場所に選んだのだろう。
「……怪しい……どうする?」
ユエもこの骸に疑問を持ったようだ。
おそらく反逆者と呼ばれた者達の一人なのだろうが、苦しむ事なく座ったまま果てたその姿は、誰かを待っているように見える。
「まぁ、地上への道を調べるには、この部屋が鍵なんだろうしな。オレの錬成も受け付けない書庫と工房の封印……調べるしかないだろう」
「だな。オレの剣は試してないが、お前の錬成が聞かない時点で多分ダメそうだからな。オレはどうする?」
「ユエとそこで待っててくれ。何かあったら頼む」
「いや、それなら剣士のオレよりお前が待ってた方が良いんじゃないか?」
魔法と錬成が使える二人の方が剣士の自分よりも良いだろうと判断する。
「鳳凰寺、大丈夫なのか?」
「何かあったら、お前達二人の方が対応しやすいだろ? 念の為にブレイドに変身していく」
そう言ってブレイドに変身して魔法陣の前に立つ。
「そうか……気を付けろよ」
「おう」
ハジメの言葉にそう返すとブレイドに変身した京矢は魔法陣に向けて踏み出した。
そして、京矢が魔法陣の中央に踏み込んだ瞬間、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げた。
眩しさに目を閉じる京矢。直後、ブレイドのシステムの守りを意に介さず何かが頭の中に侵入し、まるで走馬灯の様に奈落に落ちてからのことが駆け巡った。
(記憶を探ってるのか?)
目的が分からないままされるがままにされて居た京矢だったが、光が収まり、目を開けた京矢の目の前には黒衣の青年が立って居た。
魔法陣が淡く輝き、部屋を神秘的な光が満たす。
中央に立つ京矢の眼前に立つ青年は、よく見れば後ろの骸と同じローブを着ていた。
「試練を乗り越えよく辿り着いた。私の名は『オスカー・オルクス』。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えば分かるかな?」
話し始めた彼はオスカー・オルクスと名乗った。此処【オルクス大迷宮】の創造者の様だ。
その事に驚きながら彼の話に耳を傾ける。
「ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」
そうして始まったオスカーの話は京矢達地球組が聖教教会で教わった歴史やユエに聞かされた反逆者の話とは大きく異なった驚くべき物だった。
それは狂った神とその子孫達の戦いの物語。
神代の少し前の時代、世界は争いで満たされていた。
人と魔人、様々な亜人達が絶えず戦争を続けていた。
争う理由は様々だ。領土拡大、種族的価値観、支配欲、他にも色々あるが、その理由は『神敵』だから。
今よりもずっと種族も国も細かく分かれていた時代、それぞれの種族、国がそれぞれに神を祀っていた。その神からの神託で人々は争い続けていたのだ。
だが、そんな何百年と続く争いの歴史に終止符を討たんとする者達が現れた。
当時、『解放者』と呼ばれた集団である。
彼らには共通する繋がりがあった。それは全員が神代から続く神々の直系の子孫であったということだ。
そのためか『解放者』のリーダーは、ある時偶然にも神々の真意を知ってしまった。何と神々は、人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していたのだ。『解放者』のリーダーは、神々が裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていることに耐えられなくなり志を同じくするものを集めたのだ。
彼等は、『神域』と呼ばれる神々がいると言われている場所を突き止めた。
『解放者』のメンバーでも先祖返りと言われる強力な力を持った7人を中心に、彼等は神々に戦いを挑んだ。
しかし、その目論見は戦う前に破綻してしまう。
何と、神は人々を巧みに操り、『解放者』達を世界に破滅をもたらそうとする神敵であると認識させて人々自身に相手をさせたのである。
その過程にも紆余曲折はあったのだが、結局、守るべき人々に力を振るう訳にもいかず、神の恩恵も忘れて世界を滅ぼさんと神に仇なした『反逆者』のレッテルを貼られ『解放者』達は討たれていった。
最後まで残ったのは中心の7人だけだった。
世界を敵に回し、彼等は、もはや自分達では神を討つことはできないと判断した。そして、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。
試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って。
長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。
「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」
そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。
同時に、京矢の脳裏に何かが侵入してくる。ズキズキと痛むが、それがとある魔法を刷り込んでいたためと理解できたので大人しく耐えた。
やがて、痛みも収まり魔法陣の光も収まると京矢はゆっくり息を吐いた。
そして、バックルを外し変身を解除した京矢は魔法陣から出て、ハジメたちのいる場所に戻った。
「鳳凰寺……大丈夫か?」
「ああ、頭は痛いけど、魔法を伝える為って分かればしかないだろうな。それ以外は、問題ないな」
今は頭痛よりも考えるべき事がある。
「オレの予想通り、エヒトとかいうのはロクでもない野郎だったって事は分かったけど、南雲、今の話どう思う?」
「何かどえらい話聞いちまったって感じだな」
内心、過去二回有った地球危機と同レベルに、と思うがそこは口に出さないハジメだった。
「まっ、歴史なんて勝者や後の歴史家に好き勝手に出来るモンだからか、違ったとしても驚きはしないだろ?」
「それはそうだけどな」
最初からエヒトは胡散臭いと思っていた京矢に一切の動揺はない。
「……ん……どうするの?」
ユエがオスカーの話を聞いてどうするのかと尋ねる。
「うん? 別にどうもしないぞ? 元々、勝手に召喚して戦争しろとかいう神なんて迷惑としか思ってないからな。この世界がどうなろうと知ったことじゃないし。地上に出て帰る方法探して、故郷に帰る。それだけだ」
「いや、実際あの悪霊擬きの行動パターン考えると、この世界に飽きたらオレ達の地球に手を出してきそうだぞ」
京矢の言葉にハジメが絶句している。
「序でに、バカ勇者が勇者に選ばれたのもエヒトにとって都合のいい駒だからってのもあるか」
さらに告げられた言葉に妙に納得してしまうハジメだった。
「三度目の地球の危機を未然に防ぐために、元の世界に戻ったらエヒトが地球に手を出せない様にする為の方法を考えた方がいいな」
「最悪、帰ったら第三次世界大戦ってオチか?」
「もしくはミッドチルダ辺りに手を出してオレ達の事をネタに管理世界にしようとさせて、第一次次元大戦とかな」
二人の間で話し合われる人類滅亡のシナリオ(原因はエヒト)。
エヒトの存在は既に地球の危機になると言う状況を考えると頭を抱えたくなる。
「……ユエは気になるのか?」
ふと故の事が気になった。
ユエはこの世界の住人だ。故に、彼女が放っておけないというのなら、ハジメも色々考えなければならない。
オスカーの願いと同じく簡単に切って捨てられるほど、既にハジメにとって、ユエとの繋がりは軽くないのだ。そう思って尋ねたのだが、ユエは僅かな躊躇いもなくふるふると首を振った。
「私の居場所はここ……他は知らない」
そう言って、ハジメに寄り添いその手を取る。ギュッと握られた手が本心であることを如実に語る。ユエは、過去、自分の国のために己の全てを捧げてきた。それを信頼していた者たちに裏切られ、誰も助けてはくれなかった。ユエにとって、長い幽閉の中で既にこの世界は牢獄だったのだ。
その牢獄から救い出してくれたのはハジメだ。だからこそハジメの隣こそがユエの全てなのである。
「……そうかい」
「おー、おー、お熱いねー。それに、最悪直接叩き斬る事が出来れば、エヒトの問題は先送り出来るからな」
京矢はそこで結論づける。
少なくともその方法ならば暫くは何とかなるだろう。
「オレの目的は一つ増えたな。エヒトに一太刀叩き斬って異次元にでも封印して、バカ勇者達を置いて帰る、それだけだ」
エヒトをトータスにも地球にも干渉できない、退屈と言う不死殺しの毒まみれの場所に封印する。と、京矢の魔剣目録にはそう言う力のある剣があるのだ。それらを用いて確実にエヒトを封印する。そう心に誓うのだった。