『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝 作:ドラゴンネスト
「あ、ありがとうございます! うぅ~、よがっだよぉ~、ほんどによがったよぉ~」
ぐしぐしと嬉し泣きするシア。しかし、仲間のためにもグズグズしていられないと直ぐに立ち上がる。
「あ、あの、宜しくお願いします! そ、それで皆さんのことは何と呼べば……」
「ん? そう言えば名乗ってなかったか……俺はハジメ。南雲ハジメだ」
「……ユエ」
「オレは京矢、鳳凰寺京矢だ。で、あいつはオレの相棒のキシリュウジン」
「私はエンタープライズだ」
「京矢様のメイドのベルファストでございます」
「ハジメさんとユエちゃんと京矢さん、エンタープライズさんにベルファストさんですね」
5人の名前を何度か反芻し覚えるシア。そして、自分たちを見下ろしているキシリュウジンを見上げて、
「そ、それから……キ、キシリュウジンさんですね……さんで良いですよね!? 様じゃなくて?」
「ああ、様じゃ無くて大丈夫だから、安心しなって」
やはり、味方だと分かっても完全武装の巨人相手なのだから心底怖がっているシアであった。
しかし、ユエが不満顔で抗議する。
「……さんを付けろ。残念ウサギ」
「ふぇ!?」
ユエらしからぬ命令口調に戸惑うシアは、ユエの外見から年下と思っているらしく、ユエが吸血鬼族で遥に年上と知ると土下座する勢いで謝罪した。
どうもユエは、シアが気に食わないらしい。何故かは分からないが……。例え、ユエの視線がシアの体の一部を憎々しげに睨んでいたとしても、理由は定かではないのだ!
過去にベルファストやエンタープライズの体の一部の事も睨んでいたが、定かでは無いのだ!!!
「話が纏まったなら急いだ方がいいんじゃ無いのか? キシリュウジン、頼む」
京矢の言葉に頷いたキシリュウジンが掌を上に向けて片手を地面に下ろす。乗れと言う事なのだろう。
躊躇なく掌の上に乗り込む京矢とベルファストとエンタープライズ。
表情には出さずにいたがどこから見ても嬉しそうな様子で掌の上に乗るハジメとそれに続くユエ。
最後に恐る恐ると言った様子で掌の上に乗るシア。
全員が乗った事を確認するとキシリュウジンが立ち上がる。
「うおおおおおおおおおおお!」
「ひいいいいいいいいいいいい!?」
一度は夢見たが、決して叶うわけは無いと思っていた光景に心の底から歓喜の声を上げてしまうハジメと、キシリュウジンの掌の上という場所と高さに心底恐怖の声を上げるシア。
「一度でいいから体験してみたかったんだよな、こう言うの」
「何だったら次は肩にでも乗ってみるか?」
「マジか!? 乗って良いのか?」
「良いよな、キシリュウジン?」
京矢の言葉に良いと言うふうに頷くキシリュウジン。巨大ロボという浪漫が分かる男同士の会話が交わされるのだった。
自分の会得した神代の魔法でも作れないであろう巨大ロボ。それが今ハジメの目の前にあって掌の上に乗せてもらえている。肩にも乗せてもらえる。心底感動を浮かべていたのだった。
……流石にコックピットに入れてくれまでは言わなかったが。
なお、
「巨人が近付いて来るゾォ!!!」
「うわああぁぁ!」
近づいて来るキシリュウジンに絶賛混乱中の帝国の皆さんであった。
ハウリア族を追いかけて居て化け物としか思えない巨人と出会った彼らの心境は如何に。
「あ、あの。助けてもらうのに必死で、つい流してしまったのですが……このキシリュウジン……さん? 何なのでしょう? それに、ユエさん魔法使いましたよね? ここでは使えないはずなのに……」
そもそも、そんな巨人の存在など今まで聞いたこともないだろう。
「あ~、それは道中で、こいつがな」
「少しは時間はかかりそうだからな」
ハジメの言葉にそう返しながらキシリュウジンに急いで貰っていた。悪路などキシリュウジンの巨体には小石が落ちている程度のものだ。
その常識を超えた高さと歩く振動にシアがハジメに抱き付いて「きゃぁああ~!」と悲鳴を上げた。
後ろにあるのはキシリュウジンの胸部のティラノサウルスの頭がこちらをみているし、前は空しか見えない。
その光景に目を瞑ってハジメにしがみついて居たが、しばらくして慣れてきたのか次第にその景色に興奮してきたようだ。
ハジメは道中で言えが魔法を使える理由、ハジメの武器がアーティファクトのみたいな物だと簡潔に説明した。
すると、シアは目を見開いて驚愕を表にした。
……だが、京矢のことについての説明はされて居ない。そう、一切、だ。
まあ、キシリュウジンもガチャ由来の品だとは想像できるし。
「ってな感じで二度目の戦いじゃキシリュウジンで風達の魔神に味方して一緒に戦ったんだぜ」
だが、ハジメは疑問に思う。
京矢から聞かされるキシリュウジンの活躍はセフィーロでの二度目の戦いだけだ。
恐らくは一度目の戦いの決戦の時期に使ったとは思うが、京矢はそれを話したがらない。
いつかは聞いてみたいとは思うが、それは飽くまで魔法騎士の従姉妹達にも関係するので帰ってからになるだろう。
「え、それじゃあ、皆さんも魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると……」
「オレは使う必要も無いから分からないし、エンタープライズとベルファストは使えないけど、ハジメ達はそうなるな」
「ああ。って言うよりも、魔力も使わないで身体能力の強化ができたり、剣から衝撃波使ったりお前って本当に人間か疑うぜ」
「……ん、疑問」
「おいおい、その言い方は酷いぜ、お二人さん」
しばらく呆然としていたシアだったが、突然、何かを堪える様にハジメの肩に顔を埋めた。そして、何故か泣きべそをかき始めた。
「……いきなり何だ? 騒いだり落ち込んだり泣きべそかいたり……情緒不安定なヤツだな」
「……手遅れ?」
「可哀想に」
「手遅れって何ですか! 手遅れって! 私は至って正常です! だから、哀れなものを見るような目で見ないでください!!! ……ただ、一人じゃなかったんだなっと思ったら……何だか嬉しくなってしまって……」
「「「「「…………」」」」」
どうやら魔物と同じ性質や能力を有するという事、この世界で自分があまりに特異な存在である事に孤独を感じていたようだ。
家族だと言って十六年もの間危険を背負ってくれた一族、シアのために故郷である樹海までも捨てて共にいてくれる家族、きっと多くの愛情を感じていたはずだ。それでも、いや、だからこそ、〝他とは異なる自分〟に余計孤独を感じていたのかもしれない。
シアの言葉に、ユエは思うところがあるのか考え込むように押し黙ってしまった。いつもの無表情がより色を失っている様に見える。ハジメには何となく、今ユエが感じているものが分かった。おそらく、ユエは自分とシアの境遇を重ねているのではないだろうか。共に、魔力の直接操作や固有魔法という異質な力を持ち、その時代において〝同胞〟というべき存在は居なかった。
だが、ユエとシアでは決定的な違いがある。
ユエには愛してくれる家族が居なかったのに対して、シアにはいるということだ。
それがユエに、嫉妬とまではいかないまでも複雑な心情を抱かせているのだろう。しかも、シアから見れば、結局、その〝同胞〟とすら出会うことができたのだ。中々に恵まれた境遇とも言える。
そんなユエの頭をハジメはポンポンと撫でた。
日本という豊かな国で何の苦労もなく親の愛情をしっかり受けて育ったハジメには、〝同胞〟がいないばかりか、特異な存在として女王という孤高の存在に祭り上げられたユエの孤独を、本当の意味では理解できない。
京矢も転生者と異質な存在だが、前世の記憶はない上に直葉と言う同類と言うべき存在とは比較的早く出会えた。
ガチャを通じてだが同類は呼び出せるし、家族にも恵まれて居た。
それ故、かけるべき言葉も持ち合わせなかった。出来る事は、〝今は〟一人でないことを示す事だけであり、それはハジメに任せるべき役目と考えて邪魔にならないように離れる。
すっかり変わってしまったハジメだが、身内にかける優しさはある。
あるいは、ユエと出会っていなければ、京矢と再開しなければ、それすら失っていたかもしれないが。ユエはハジメが外道に落ちるか否かの最後の防波堤と言える。
ユエがいるからこそ、ハジメは人間性を保っていられるのだ。その証拠に、ハジメはシアとの約束も守る気だ。樹海を案内させたらハウリア族を狙う帝国兵への対策もする気である。
ハジメがその気ならば京矢も存分に力を貸す気だ。
「そいつはお前の役目だぜ、相棒」
「当たり前だ、誰にも譲る気はねえよ、相棒」
そんなハジメと京矢の気持ちが伝わったのか、ユエは無意識に入っていた体の力を抜いて、より一層ハジメに背を預けた。まるで甘えるように。
「あの~、私のこと忘れてませんか? ここは『大変だったね。もう一人じゃないよ。傍にいてあげるから』とか言って慰めるところでは? 私、コロっと堕ちゃいますよ? チョロインですよ? なのに、せっかくのチャンスをスルーして、何でいきなり二人の世界を作って、理解してるって顔しているんですか! 寂しいです! 私も仲間に入れて下さい! 大体、お二人は……」
「「黙れ残念ウサギ」」
「いや、空気読めよ、残念ウサギ」
「少しは空気を読んだらどうだ?」
「此処は黙っているべきところですよ」
「……はい……ぐすっ……」
泣きべそかいていたシアが、いきなり耳元で騒ぎ始めたので、思わず怒鳴り返すハジメとユエ。冷静に注意する京矢とエンタープライズとベルファスト。
だが、泣いている女の子を放置して二人の世界を作っているのも十分酷い話であるが、その辺は京矢達三人もスルーしているのも酷いと言えば酷い。
しかも、その上、逆ギレされて怒鳴られてと、何とも不憫なシアであった。
ただ、シアの売りはその打たれ強さ。内心では既に「まずは名前を呼ばせますよぉ~せっかく見つけたお仲間です。逃しませんからねぇ~!」と新たな目標に向けて闘志を燃やしていた。
しばらく、シアが騒いでハジメかユエに怒鳴られるか、京矢かエンタープライズかベルファストに注意されるという事を繰り返していると、遠くで魔物の咆哮が聞こえた。
どうやら相当な数の魔物が騒いでいるようだ。
「! ハジメさん! もう直ぐ皆がいる場所です! あの魔物の声……ち、近いです! 父様達がいる場所に近いです!」
「だぁ~、耳元で怒鳴るな! 聞こえてるわ! 鳳凰寺、頼むっ!」
「ああ! お前等、全員何処かにしっかり掴まってろよ! キシリュウジン、急いでくれ!」
京矢がキシリュウジンにそう指示を出すとその言葉に応えるように頷きキシリュウジンの動きが早くなる。それに合わせて掌に乗っているせいか上下の揺れも激しくなっていく。
そうして走る事一分、最後の(一応)大岩を蹴り砕き進んだ先には今まさに魔物の群れに襲われそうになっている数十人の兎人族が………………………この世の終わりのような顔で絶叫して居た。
間違い無く地響きを立てて岩を蹴り砕いて現れたキシリュウジンに驚いたのだろう。
これだけは言える。一度はキシリュウジンで魔人族のど真ん中に乗り込もうかとも考えた京矢の考えが現実のものにならなくて良かったかもしれない。