『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝   作:ドラゴンネスト

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真っ先に声をかけてきたのは、濃紺の短髪にウサミミを生やした初老の男性だった。

はっきりいってウサミミのおっさんとか誰得である。シュールな光景に微妙な気分になっていると、その間に、シアと父様と呼ばれた兎人族は話が終わったようで、互いの無事を喜んだ後、ハジメと京矢の方へ向き直った。

 

「ハジメ殿と京矢殿で宜しいか? 私は、カム。シアの父にしてハウリアの族長をしております。この度はシアのみならず我が一族の窮地をお助け頂き、何とお礼を言えばいいか。しかも、脱出まで助力くださるとか……父として、族長として深く感謝致します」

 

そう言って、カムと名乗ったハウリア族の族長は深々と頭を下げた。後ろには同じように頭を下げるハウリア族一同がいる。

 

「まぁ、礼は受け取っておく。だが、樹海の案内と引き換えなんだ。それは忘れるなよ? それより、随分あっさり信用するんだな。亜人は人間族にはいい感情を持っていないだろうに……」

 

「そうだな。警戒くらいはされるだろうとは思ってたけど」

 

シアの存在で忘れそうになるが、亜人族は被差別種族である。

実際、峡谷に追い詰められたのも人間族のせいだ。

にもかかわらず、同じ人間族である京矢とハジメに頭を下げ、しかも京矢達の助力を受け入れるという。

それしか方法がないとは言え、あまりにあっさりしているというか、嫌悪感のようなものが全く見えないことに疑問を抱く京矢とハジメ。

 

カムは、それに苦笑いで返した。

 

「シアが信頼する相手です。ならば我らも信頼しなくてどうします。我らは家族なのですから……」

 

そこまで行った後、「それに……」と付け加え……

 

「あんな巨人を見た後ですからね……」

 

人知を超えた巨人であるキシリュウジンを見た後では最早恐怖心も麻痺しているらしい。

その言葉に思わず目を逸す京矢であった。

まあ、1人の女の子のために一族ごと故郷を出て行くくらいだから情の深い一族だとは思っていたが、初対面の人間族相手にあっさり信頼を向けるとは警戒心が薄すぎる。というか人がいいにも程があるというものだろう。

 

「えへへ、大丈夫ですよ、父様。ハジメさんと京矢さんは、女の子に対して容赦ないし、対価がないと動かないし、人を平気で囮にするような酷い人ですけど、約束を利用したり、希望を踏み躙る様な外道じゃないです! ちゃんと私たちを守ってくれますよ!」

 

 

「はっはっは、そうかそうか。つまり照れ屋な人なんだな。それなら安心だ」

 

シアとカムの言葉に周りの兎人族たちも「なるほど、照れ屋なのか」と生暖かい眼差しで京矢とハジメを見ながら、うんうんと頷いている。

 

ハジメは額に青筋を浮かべドンナーを抜きかけるが、意外なところから追撃がかかる。

 

「……ん、ハジメは(ベッドの上では)照れ屋」

 

「ユエ!?」

 

「へぇー、そうだったのか、南雲」

 

「そうだったんですね、南雲様」

 

ユエの言葉にニヤニヤとした顔で追撃を入れる京矢とベルファスト。エンタープライズは顔を真っ赤にしてハジメから視線を逸らしている。

 

まさかの口撃に口元を引きつらせるハジメやニヤニヤと笑う京矢だったが、何時までもグズグズしていては魔物が集まってきて面倒になるので、堪えて出発を促した。

 

一行は、ライセン大峡谷の出口目指して歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウサミミの集団を引き連れて渓谷を行く一同。

 

 

当然、キシリュウジンも居なくなり、数多の魔物が絶好の獲物だとこぞって襲ってくるのだが、ただの一匹もそれが成功したものはいなかった。

例外なく、兎人族に触れることすら叶わず、接近した時点で閃光が飛び、斬撃が飛び頭部を粉砕されるか切り裂かれるからである。

 

乾いた破裂音と共に閃光が走り、音も置き去りにした斬撃が飛び、気がつけばライセン大峡谷の凶悪な魔物が為すすべなく絶命していく光景に、兎人族達は唖然として、次いで、それを成し遂げている人物であるハジメと京矢に対して畏敬の念を向けていた。

 

もっとも、小さな子供達は総じて、そのつぶらな瞳をキラキラさせて圧倒的な力を振るうハジメと京矢をヒーローだとでも言うように見つめている。

 

「ふふふ、ハジメさん。チビッコたちが見つめていますよ~。ハジメさんも手でも振ってあげたらどうですか?」

 

子供に純粋な眼差しを向けられて若干居心地が悪そうなハジメに、シアが手を振っている京矢を指差して実にウザイ表情で「うりうり~」とちょっかいを掛ける。

 

額に青筋を浮かべたハジメは、取り敢えず無言で発砲した。

 

ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!

 

「あわわわわわわわっ!?」

 

炸薬量を減らし先端をゴム状の柔らかい魔物の革でコーティングしてある非致死性弾、ゴム弾が足元を連続して通過し、奇怪なタップダンスのようにワタワタと回避するシア。

道中何度も見られた光景に、シアの父カムは苦笑いを、ユエは呆れを乗せた眼差しを向ける。

 

「いっそ、本物のヒーローにでも変身するか?」

 

「あのなあ、そんなに気軽に使っていいもんじゃねえだろうが」

 

「分かってるよ、冗談だよ」

 

実際、二人とも本物のヒーローに変身するアイテムを持っているのだが、それはそれ。

ハジメも本物のヒーローに変身できるのは嬉しいが大勢のギャラリーの前でヒーローショー紛いの行動は恥ずかしいのだろう。

 

「はっはっは、シアは随分とハジメ殿を気に入ったのだな。そんなに懐いて……シアももうそんな年頃か。父様は少し寂しいよ。だが、ハジメ殿なら安心か……」

 

すぐ傍で娘が銃撃されたのに、気にした様子もなく目尻に涙を貯めて娘の門出を祝う父親のような表情をしているカム。

周りの兎人族たちも「たすけてぇ~」と悲鳴を上げていたシアに生暖かい眼差しを向けている。

 

「いや、お前ら。あの状況見て出てくる感想がそれか?」

 

「まあ、流石に他にあるだろ、慌てるとか?」

 

「…………ズレてる」

 

ユエの言う通り、どうやら兎人族は少し常識的にズレているというか、天然が入っている種族らしい。それが兎人族全体なのかハウリアの一族だけなのかは分からないが。

 

そうこうしている内に、一行は遂にライセン大峡谷から脱出できる場所にたどり着いた。

ハジメが〝遠見〟で見る限り、中々に立派な階段がある。岸壁に沿って壁を削って作ったのであろう階段は、五十メートルほど進む度に反対側に折り返すタイプのようだ。

階段のある岸壁の先には樹海も薄らと見える。

ライセン大峡谷の出口から、徒歩で半日くらいの場所が樹海になっているようだ。

 

……だが、階段には影響のない位置に深々と何かが叩き付けられたような跡がある。……二つも。

 

「コブラーゴ達がやったのって此処だったのか……」

 

「随分と派手にやったな……」

 

「いや、結構地味だと思うぜ。クレーターとかじゃない分」

 

ハジメと京矢が何となしに斬撃の跡を眺めながら話していると、シアが不安そうに話しかけてきた。

 

「帝国兵はまだいるでしょか?」

 

「ん? どうだろうな。もう全滅したと諦めて帰ってる可能性も高いが……」

 

「コブラーゴ達が飛んで来たのに驚いて逃げたりかもしれないぜ」

 

寧ろ、空飛ぶ魔物に簡単に追いすがる巨大生物二体を間近で見たら普通は逃げても不思議ではない。

 

「そ、その、もし、まだ帝国兵がいたら……ハジメさん……どうするのですか?」

 

「? どうするって何が?」

 

質問の意図がわからず首を傾げるハジメに、意を決したようにシアが尋ねる。

周囲の兎人族も聞きウサミミを立てているようだ。

 

「今まで倒した魔物と違って、相手は帝国兵……人間族です。ハジメさん達と同じ。……敵対できますか?」

 

「残念ウサギ、お前、未来が見えていたんじゃないのか?」

 

「はい、見ました。帝国兵と相対するハジメさん達を……」

 

「だったら……何が疑問なんだ?」

 

「疑問というより確認です。帝国兵から私たちを守るということは、人間族と敵対することと言っても過言じゃありません。同族と敵対しても本当にいいのかと……」

 

シアの言葉に周りの兎人族たちも神妙な顔付きでハジメ達を見ている。

小さな子供たちはよく分からないとった顔をしながらも不穏な空気を察してか大人たちとハジメたちを交互に忙しなく見ている。

 

しかし、ハジメは、そんなシリアスな雰囲気などまるで気にした様子もなくあっさり言ってのけた。

 

「それがどうかしたのか?」

 

「えっ?」

 

疑問顔を浮かべるシアにハジメは特に気負った様子もなく京矢と共に世間話でもするように話を続けた。

 

「だから、人間族と敵対することが何か問題なのかって言ってるんだ」

 

「そ、それは、だって同族じゃないですか……」

 

同族という点で京矢は思わず小さく笑いを浮かべてしまう。

 

「おいおい、お前らだって同族から追い出されてるだろ?」

 

「それは、まぁ、そうなんですが……」

 

「大体、根本が間違っている」

 

「根本?」

 

さらに首を捻るシア。周りの兎人族も疑問顔だ。

 

「いいか? オレは、お前等が樹海探索に便利だから雇った。んで、それまで死なれちゃ困るから守っているだけ。断じて、お前等に同情してとか、義侠心に駆られて助けているわけじゃない。まして、今後ずっと守ってやるつもりなんて毛頭ない。忘れたわけじゃないだろう?」

 

「うっ、はい……覚えてます……」

 

「だから、樹海案内の仕事が終わるまでは守る。自分のためにな。それを邪魔するヤツは魔物だろうが人間族だろうが関係ない。道を阻むものは敵、敵は殺す。それだけのことだ」

 

「そういう事だ。……それに、異世界人のオレ達にとったら同族って言えるかも怪しいからな」

 

「な、なるほど……」

 

最後の一言は聞こえないように呟いたのでハジメにしか聞こえてなかった様子だ。

そんな何ともハジメと京矢らしい考えに、苦笑いしながら納得するシア。

“未来視”で帝国と相対するハジメたちを見たといっても、未来というものは絶対ではないから実際はどうなるか分からない。

見えた未来の確度は高いが、万一、帝国側につかれては今度こそ死より辛い奴隷生活が待っている。表には出さないが“自分のせいで”という負い目があるシアは、どうしても確認せずにはいられなかったのだ。

 

「はっはっは、分かりやすくていいですな。樹海の案内はお任せくだされ」

 

カムが快活に笑う。下手に正義感を持ち出されるよりもギブ&テイクな関係の方が信用に値したのだろう。その表情に含むところは全くなかった。

 

「っと、南雲。敵対するとは言ったけどよ、流石に回避できるなら無駄な争いは回避した方が良いだろ?」

 

「そりゃそうだが、どうする気だ?」

 

「連中にも生き残る機会をプレゼントしてやろうってだけだ。オレ一人で先に行く、少し距離を開けてついて来てくれ」




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