『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝 作:ドラゴンネスト
他の仲間と同様に新たな兵士が頭部を撃ち抜かれて崩れ落ちた。それを見ることもなくまた別の兵士が切り捨てられる。
血飛沫が舞い、それを頭から被った生き残りの一人の兵士が、力を失ったように、その場にへたり込む。
無理もない。ほんの一瞬で仲間が殲滅されたのである。
彼等が所属して居たのは決して弱い部隊ではない。むしろ、上位に勘定しても文句が出ないくらいには精鋭だ。……まあ、そんな部隊にも下位の者達は出るし、素行の悪い者も湧く。
最悪死んだところで問題ないと判断されて残されたとは言え、そんな精鋭の中の灰汁の部分とは言え、彼ら5人の兵士は他の部隊ならば十分に上位の実力は有った。
それ故に、その兵士は悪い夢でも見ているのでは? と呆然としながら視線を彷徨わせた。
「うん、やっぱり、人間相手だったら〝纏雷〟はいらないな。通常弾と炸薬だけで十分だ。燃焼石ってホント便利だわ」
「通常弾だけで十分なら、手榴弾も人間相手にはオーバーキルになりそうだな。……街中じゃゴム弾にしとけよ」
「分かってるよ」
兵士がビクッと体を震わせて怯えをたっぷり含んだ瞳を京矢とハジメに向けた。
ハジメはドンナーで肩をトントンと叩きながら、京矢は剣を無造作に持ちながら、ゆっくりと兵士に歩み寄る。
黒いコートを靡かせて死を振り撒き歩み寄るハジメと、銀色の甲冑に身を包む京矢のその姿は、さながら死神だ。
少なくとも生き残りの兵士には、そうとしか見えなかった。
「ひぃ、く、来るなぁ! い、嫌だ。し、死にたくない。だ、誰か! 助けてくれ!」
命乞いをしながら這いずるように後退る兵士。その顔は恐怖に歪み、股間からは液体が漏れてしまっている。
京矢は冷めた目でそれを見下ろしながら、動いたら切るという様に剣を鼻先に突き付ける。
「ひぃ! た、頼む! 殺さないでくれ! な、何でもするから! 頼む!」
「そうか? なら、教えてくれねえか? 他の兎人族がどうなったか? 結構な数がいたんだろ? 全部それは帝国に移送済みか?」
ハジメが質問したのは、百人以上居たはずの兎人族の移送にはそれなりに時間がかかるだろうから、まだ近くにいて道中でかち合うようなら序でに助けてもいいと思ったからだ。帝国まで移送済みなら、わざわざ助けに行くつもりは毛頭なかったが。
「……は、話せば殺さないか?」
「ああ、話してくれるなら殺さねえよ、《オレは》な。……別に言いたくないなら良いんだぜ。別に欲しい情報じゃないんだからな」
「ま、待ってくれ! 話す! 話すから! ……多分、全部移送済みだと思う。人数は絞ったから……」
〝人数を絞った〟それは、つまり老人など売れそうにない兎人族は殺したということだろう。兵士の言葉に、怒りを覚える京矢。
突きつけられた剣を握る手に力が加わり、京矢の目に殺気が宿った事を気付くと慌てて兵士は叫ぶ。
「待て! 待ってくれ! 他にも何でも話すから! 帝国のでも何でも! だから!」
京矢の殺意に気がついた兵士が再び必死に命乞いする。しかし、その返答は……
「ああ、殺さねえから安心しな」
剣を下ろして兵士から離れる京矢の後ろ姿に安堵した瞬間、
ドパンッ!
一発の銃弾が撃たれるのだった。
「……南雲がどうするかは知らねえけどな」
事切れた兵士にそう告げると身に纏っていた鎧が剣に戻るとハジメの隣まで歩き、
「悪いな、お前にやらせて」
「気にするな」
そんな会話を交わす。
残された帝国兵達の死体は簡易な墓を作って埋めておき、墓標がわりに彼らの武器を刺す。
「……流石にそんな凄い武器をツルハシがわりに使うのはどうかと思うぞ」
「そうか?」
流石に魔剣目録開いて穴を掘るのに使えそうな力を持った魔剣、聖剣を引っ張り出すのはどうかと思うハジメであった。
アーティファクトを作れる様になってから京矢の魔剣目録の中身の価値を前以上に理解できる様になってから余計にそう思う。
間違い無くどの剣もトータスの基準では国宝なんて生温い品だ。天之川の聖剣がガラクタに見える、と言えば分かりやすいだろう。
後には五つの墓と血の跡だけが残されると隠れさせていた兎人族達とその護衛のエンタープライズを呼ぶ。
ハジメは、無傷の馬車や馬のところへ行き、兎人族達を手招きする。
樹海まで徒歩で半日くらいかかりそうなので、せっかくの馬と馬車を有効活用しようというわけだ。
キシリュウジンを移動手段に使った為、先ほどは使わなかった魔力駆動二輪を〝宝物庫〟から取り出し馬車に連結させる。
馬に乗る者と分けて一行は樹海へと進路をとった。
後にはただ、最後の情けと京矢が作った墓と彼等が零した血だまり、その前にコブラーゴ達が作った斬撃の跡だけが残された。
さて、ハジメ一行が立ち去ってから入れ違いでその場に現れる者達があった。
幸か不幸かキシリュウジンを見て最初に報告に走った小隊長以下一部の兵士達は王国に召喚された勇者達を見極めるために出向いた皇帝の一団と遭遇、そのまま直接報告する事になった訳だ。
突如現れた鎧の巨人。絵の得意な物に兵士達の証言から聞いた巨人の絵姿を絵にした結果、皇帝ガハルド・D・ヘルシャーが直々に峡谷に向かうと言い出した。
なんともフットワークの軽い皇帝ではあるが、鎧の巨人の報告を聞いた時には子供の様に目を輝かせていた。
一同は期間予定を変更して峡谷に向かう事となった。
その後はまた別の兵士達が合流し、巨人は武術を使えると聞き、皇帝の興味が更に巨人に向き、
更に別の兵士達が合流した時には巨人はアーティファクトの黄金の剣を二本も持っていると聞き、更に突如姿を消したことから何らかの魔法まで操れると聞き…………皇帝の興味は最高潮に達してしまった。
峡谷から上半身が見えるほどの巨体に、その巨体と同等の魔物の首を武勲として首から下げ、身にはその魔物を加工したと思わしき紫の鎧を纏い、両肩と頭にはアーティファクトと思わしき金色の鎧と兜を身につけ攻城兵器並みの巨大な二本のアーティファクトの剣を片手で自在に操る巨人。
そこまで聞いてしまっては最早、興味を惹かれない理由がなかった。
自ら馬を駆って報告に来た小隊長から聞いた巨人の絵姿を見て馬を並べて峡谷まで走っていた。
「陛下、幾ら何でも危険です!」
「危険だと? そんな凄い者をこの目で確かめないでどうする? 考えてもみろ、その巨人を味方に出来ればあの勇者の何倍も頼りになるぞ」
そう言われて皇帝に同行していた部下が想像する。
一人を除いて興味の対象にならなかった勇者達よりも歴戦の勇士と思われる巨人の方が確かに頼りになる。
主人の手を離れてハイベリアを切り裂いたというアーティファクトの剣を携えた巨人が人達で魔人族の率いる魔物を蹂躙する様や万の軍勢を蹴散らす様を想像すると、その巨人が居れば勇者など必要ないとも思えてくる。
魔人族の味方だったとしても早い段階でその巨人について調べる必要があるだろう。
そう考えると、皇帝が直々に動くのは危険だが、調べないという選択肢はない。
そして、皇帝率いる一団が京矢達が立ち去った峡谷の入り口に辿り着いたのだが、見張りに残されていた兵士達の姿はなく五つの墓と血の跡だけが残されていた。
兎人族を追い詰めて此処に陣を張っていた巨人を発見したと聞いていたが……数で劣るとは言え兎人族に殺されるとは考え難い。ならば、
「その巨人は敵だったのか?」
「いえ、亜人の種族の一つなのかもしれません」
峡谷に逃げ込んだ兎人族を助ける為に入り口に待ち伏せしていた兵士達を殺したと考えることも出来る。
「もしかしたら、亜人の中には峡谷に自分たちの味方になる恐るべし巨人が居ることを知っている者が居るのかもしれません」
「だが、巨人が戦ったにしては痕跡が少ない気もするな。それに、墓を作るなど、随分と騎士道精神がある巨人だ」
そして掘り起こされた墓から見つかった京矢とハジメの戦闘の跡から、巨人は魔法さえも自在に操ると言う誤解までされたのだった。
そして、後に彼らが帝国に戻り峡谷の調査隊を編成する事になるのだが、それは特に京矢達に関係のない事だった。(巨人調査団が峡谷に着いたのは京矢達が此処の大迷宮に潜ったよりも後だし)
…………皇帝ガハルド・D・ヘルシャー。彼が件の巨人を目にする未来はそう遠くない未来である。