『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝 作:ドラゴンネスト
さて、京矢とエンタープライズがそんな会話を交わして居た頃、樹海に到着するまでまだ少し時間がかかる。特段隠すことでもないので、暇つぶしにいいだろうと、ハジメとユエがシアにこれまでの経緯を語り始めた。
結果……
「うぇ、ぐすっ……ひどい、ひどすぎまずぅ~、ハジメさんもユエさんもがわいぞうですぅ~。そ、それ比べたら、私はなんでめぐまれて……うぅ~、自分がなざけないですぅ~」
号泣した。
滂沱の涙を流しながら「私は、甘ちゃんですぅ」とか「もう、弱音は吐かないですぅ」と呟いている。そして、さり気なく、ハジメの外套で顔を拭いている。
どうやら、自分は大変な境遇だと思っていたら、ハジメとユエが自分以上に大変な思いをしていたことを知り、不幸顔していた自分が情けなくなったらしい。
……なお、京矢のことも本人から聞いた範囲で話して居たが、彼の場合は奈落でもほぼ楽勝のペースで突き進んで居た為に涙が流れるほどでは無かったのだろう。
しばらくメソメソしていたシアだが、突如、決然とした表情でガバッと顔を上げると拳を握り元気よく宣言した。
「ハジメさん! ユエさん! 京矢さん! エンタープライズさん! ベルファストさん! 私、決めました! これからは、このシア・ハウリアが陰に日向に皆さんを助けて差し上げます! 遠慮なんて必要ありませんよ。私たちは数少ない同類で仲間。共に苦難を乗り越え、望みを果たしましょう!」
「現在進行形で守られているのに何を言っているんだ?」
エンタープライズの冷ややかな言葉が突き刺さった。
「ダイヘドアだったか? あの程度から逃げ回る程度の力しかないんじゃオレ達の旅には同行出来ねえだろ」
「完全に足手まといだろうが」
「……さり気なく『仲間みたい』から『仲間』に格上げしている……厚皮ウサギ」
エンタープライズの言葉が冷水になった所に京矢、ハジメ、ユエの言葉が追い打ちとなる。
「な、何て冷たい目で見るんですか……心にヒビが入りそう……というかいい加減、ちゃんと名前を呼んで下さいよぉ」
意気込みに反して、冷めた反応を返され若干動揺するシア。そんな彼女に追い討ちがかかる。
「……ってか、アンタは単に旅の仲間が欲しいだけだろ?」
「!?」
京矢の指摘にシアの体がビクッと跳ね上がる。
「なるほど、一族の安全が一先ず確保できたら、お前、アイツ等から離れる気なんだろ? そこにうまい具合に〝同類〟の俺らが現れたから、これ幸いに一緒に行くってか? そんな珍しい髪色の兎人族なんて、一人旅出来るとは思えないしな」
「アンタの存在自身が一族には迷惑が掛かるし、一族の気質的に一人で飛び出したら全員が探しに来てしまうだろうから、旅の道連れが必要って訳か」
「……あの、それは、それだけでは……私は本当に皆さんを……」
図星だったのか、しどろもどろになるシア。
実は、シアは既に決意していた。何としてでも京矢達の協力を得て一族の安全を確保したら、自らは家族の元を離れると。
自分がいる限り、一族は常に危険にさらされる。今回も多くの家族を失った。次は、本当に全滅するかもしれない。それだけは、シアには耐えられそうになかった。もちろん、その考えが一族の意に反する、ある意味裏切りとも言える行為だとは分かっている。だが“それでも”と決めたのだ。
最悪、一人でも旅に出るつもりだったが、それでは心配性の家族は追ってくる可能性が高い。
しかし、圧倒的強者である京矢達に恩返しも含めて着いて行くと言えば、割りかし容易に一族を説得できて離れられると考えたのだ。
見た目の言動に反してシアは、今この瞬間も〝必死〟なのである。
もちろん、シア自身がハジメ達に強い興味を惹かれているというのも事実だ。ハジメの言う通り〝同類〟であるハジメ達に、シアは理屈を超えた強い仲間意識を感じていた。
一族のことも考えると、まさに、シアにとってハジメ達との出会いは〝運命的〟だったのだ。
「別に、責めているわけじゃない。だがな、変な期待はするな。俺達の目的は七大迷宮の攻略なんだ」
「そう言うことだ。その必死さと気持ちは買うけど、迷宮の奥は地獄だ。悪いが、アンタじゃ足を踏み入れた瞬間が人生の終わりだから、同行を許すつもりはねえよ」
京矢の言葉にバールクスに変身して楽勝ペースで進んだお前が言うのかと言う視線を向けるハジメ。
まあ、迷宮を作ったオスカー・オルクスもラスボスの力を持って踏み込んでくる奴がいるとは想定して居なかったのだろう。
いくら奈落とはいえその辺の魔物がグランドジオウと同レベルなわけは無いのだから。……寧ろ、奈落の底とはいえそんな魔物ばかりならば世界はすでに滅んでいる。
そんな迷宮を作った者の想定の斜め上を疾走して、最終局面で複製RXを相手に始めて苦戦した京矢はさておき、ハジメと京矢の全く容赦ない言葉にシアは落ち込んだように黙り込んでしまった。
同じ魔導二輪に乗るハジメもユエも特に気にした様子がないあたりが、更に追い討ちをかける。
シアは、それからの道中、大人しく二輪の座席に座りながら、何かを考え込むように難しい表情をしていた。
それから数時間して、遂に一行は【ハルツィナ樹海】と平原の境界に到着した。
樹海の外から見る限り、ただの鬱蒼とした森にしか見えないのだが、一度中に入ると直ぐさま霧に覆われるらしい。
京矢の想定していたキシリュウジンを使っての木々をなぎ倒しながらの手段でも無ければ、案内人無しではここの迷宮にたどり着くことは出来なかっただろう。
……うん、解放者達でも仮面ライダーバールクスやキシリュウジンなんて品物は間違い無く想定外だっただろう。…………そんな物が想定出来ていればエヒトにも負けていない。
「それでは、ハジメ殿、ユエ殿、京矢殿、エンタープライズ殿、ベルファスト殿。中に入ったら決して我らから離れないで下さい。皆さんを中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。それと、行き先は森の深部、大樹の下で宜しいのですな?」
「ああ、聞いた限りじゃあ、そこが本当の迷宮と関係してそうだからな」
カムが、ハジメに対して樹海での注意と行き先の確認をする。カムが言った“大樹”とは、【ハルツィナ樹海】の最深部にある巨大な1本樹木で、亜人たちには“大樹ウーア・アルト”と呼ばれており、神聖な場所として滅多に近づくものはいないらしい。峡谷脱出時にカムから聞いた話だ。
当初、ハジメは【ハルツィナ樹海】そのものが大迷宮かと思っていたのだが、よく考えれば、それなら奈落の底の魔物と同レベルの魔物が彷徨いている魔境ということになり、とても亜人たちが住める場所ではなくなってしまう。
なので、【オルクス大迷宮】のように真の迷宮の入口が何処かにあるのだろうと推測した。そして、カムから聞いた“大樹”が怪しいと踏んだのである。
カムは、ハジメの言葉に頷くと、周囲の兎人族に合図をしてハジメたちの周りを固めた。
「ハジメ殿、できる限り気配は消してもらえますかな。大樹は、神聖な場所とされておりますから、あまり近づくものはおりませんが、特別禁止されているわけでもないので、フェアベルゲンや、他の集落の者たちと遭遇してしまうかもしれません。我々は、お尋ね者なので見つかると厄介です。……それと」
そこまで言った後……京矢の、正確には彼が兎人族の子供達を背中に乗せている紫色のティラノサウルスに視線を向けて、
「そ、その方は本当に安全なんですよね?」
「安全だぜ」
「食べたりしないですよね?」
「そんな事はしないディノ」
カム達の目からは強そうな魔物にしか見えない騎士竜ディノミーゴに歩くのは大変だろうと子供達を乗せてあげていた京矢だった。
厳つい外見に似合わないフレンドリーな人語を解する魔物っぽい何かに既に驚くのにも疲れて、安全なら良いかと達観したカム達であった。
なお、ディノミーゴは子供達からは懐かれている。
気を取り直してハジメは〝気配遮断〟を使う。ユエも、奈落で培った方法で気配を薄くした。
京矢も気配を薄くしていく。
ベルファストとエンタープライズも気配を薄くする程度のことはできる。
「ッ!? これは、また……ハジメ殿、できればユエ殿達くらいにしてもらえますかな?」
「ん? ……こんなもんか?」
「はい、結構です。さっきのレベルで気配を殺されては、我々でも見失いかねませんからな。いや、全く、流石ですな!」
元々、兎人族は全体的にスペックが低い分、聴覚による索敵や気配を断つ隠密行動に秀でている。
地上にいながら、奈落で鍛えたユエやセフィーロでの戦いで必要になって身に付けた京矢と同レベルと言えば、その優秀さが分かるだろうか。達人級といえる。
しかし、ハジメの〝気配遮断〟は更にその上を行く。普通の場所なら、一度認識すればそうそう見失うことはないが、樹海の中では、兎人族の索敵能力を以てしても見失いかねないハイレベルなものだった。
カムは、人間族でありながら自分達の唯一の強みを凌駕され、もはや苦笑いだ。
隣では、何故かユエが自慢げに胸を張っている。京矢は苦笑を浮かべている。シアは、どこか複雑そうだった。ハジメの言う実力差を改めて示されたせいだろう。
「それでは、行きましょうか」
カムの号令と共に準備を整えた一行は、カムとシアを先頭に樹海へと踏み込んだ。
しばらく、道ならぬ道を突き進む。直ぐに濃い霧が発生し視界を塞いでくる。しかし、カムの足取りに迷いは全くなかった。
現在位置も方角も完全に把握しているようだ。理由は分かっていないが、亜人族は、亜人族であるというだけで、樹海の中でも正確に現在地も方角も把握できるらしい。
順調に進んでいると、突然カム達が立ち止まり、周囲を警戒し始めた。魔物の気配だ。
当然、京矢達も感知している。どうやら複数匹の魔物に囲まれているようだ。樹海に入るに当たって、ハジメが貸し与えたナイフ類を構える兎人族達。彼等は本来なら、その優秀な隠密能力で逃走を図るのだそうだが、今回はそういうわけには行かない。皆、一様に緊張の表情を浮かべている。
ハジメが動こうとした瞬間、京矢が手を上げて彼の行動を征する。下手に戦えば他の種族に気付かれる恐れがある。
『RX!』
奈落に習ってRXライドウォッチを起動させる。それによって一定の力を持たない魔物達は迷わず逃げ出していくだろう。
ライドウォッチからの力によって魔物達の動きが止まる。そして、視力の良い者はディノミーゴを確認してしまう。
明らかにとんでもない気配と見るからに強そうなディノミーゴ。魔物達は迷わず本能に従って逃げ出して行く。
「京矢殿、今のは……」
「ああ。オレの知ってる、最強の英雄の力だ」
魔物達が必死に逃げていく様にカムが唖然とした様に問い掛ける。
魔物が獲物を襲うのでもなく逃げ出して行くのだから驚きも一入だろう。
そんな中に返って来た言葉に、そんな京矢が最強と言う英雄が何者なのかと言う疑問が湧いてしまった。
なお、その英雄は勇者(笑)を指先一つで倒せる世紀王を超えた英雄です。
その言葉に、カムは乾いた笑いを浮かべる。ハジメから促されて、先導を再開した。
その後も、ちょくちょく魔物に襲われたが、ハジメと京矢とユエが静かに片付けるかRXライドウォッチの力で追い払う。
樹海の魔物は、一般的には相当厄介なものとして認識されているのだが、何の問題もなかった。
しかし、樹海に入って数時間が過ぎた頃、今までにない無数の気配に囲まれ、京矢達は歩みを止める。
数も殺気も、連携の練度も、今までの魔物とは比べ物にならない。カム達は忙しなくウサミミを動かし索敵をしている。
そして、何かを掴んだのか苦虫を噛み潰したような表情を見せた。シアに至っては、その顔を青ざめさせている。
京矢もハジメも相手の正体に気がつき、面倒そうな表情になった。
その相手の正体は……
「お前達……何故人間といる! 種族と族名を名乗…………ってなんだその魔物は!?」
ディノミーゴを見て驚いている虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人だった。