『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝   作:ドラゴンネスト

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「で、どうするんだ、アンタ?」

 

根本的にハジメと同じく敵に対する容赦はないが、敵にも助かるチャンスは与える程度の情けはある。

それは彼がハジメと違い、変わる事なく奈落を生き抜いたが故の物だろうか。

 

倒れ伏す熊の亜人に余裕を見せる様に京矢は背中に背負う鎧の魔剣と腰に挿していた斬鉄剣を取り、それをベルファストに渡す。

流石に向こうがまだ戦うのならば、真剣を使うのは殺傷力が高過ぎる。

 

「預かっててくれ、腕試しには必要無いからな」

 

「畏まりました、京矢様」

 

優雅と言える仕草で一礼し、京矢から鎧の魔剣と斬鉄剣を受け取りベルファストは後ろに下がる。

 

好き好んで敵を増やしたい訳ではない此処で相手が自分達が敵対してはならない強者と言うのを認めればそれで良い。

だが、これで認めないのならそれなりに、かつ、無傷で勝利する必要がある。斬鉄剣や鎧の魔剣では流石に殺傷力が高いので使わない事にしたのだが。

 

だが、その熊の亜人は京矢の期待には応えてくれなかった様だ。

 

目の前の人間は自分に背中を向けたまま目の前で武器を手放した。熊の亜人はその事に屈辱を感じていた。

 

「巫山戯るなぁ!!!」

 

「エンタープライズ、こいつも頼む」

 

「分かった」

 

怒りで顔を真っ赤にして叫ぶ熊の亜人を意に介さずに京矢は更に魔剣目録をエンタープライズに渡している。

 

「ん? おいおい、そんなに怒るなよ。ちゃーんと、武器は使うからな」

 

内心で仕方ないと思いながら、今気付いたとばかりに激怒している熊の亜人にそう言って京矢は四次元ポケットの中からそれを取り出す。

 

『はぁ……?』

 

京矢が取り出した武器(?)を見た瞬間、京矢以外の全員の心が一つになった。

 

彼が取り出したのは何の変哲も無い木の枝だったのだから。

 

「中々良い枝振りだろ? 後で木刀でも作ろうかと思って拾ったんだよ」

 

「おいおい、幾ら何でもふざけ過ぎだろ、それは……」

 

それをハジメに見せながら京矢はそう言う。そこそこな太さと長さの枝を途中で拾っていたのはハジメも知っていたが、流石にこんな時にそんな物を取り出すとは思わなかった。

 

「巫山戯るなぁ!!! 人間族の餓鬼がぁ!!!」

 

その京矢の行動で完全にキレた熊の亜人だった。

耐久力と腕力に秀でた熊人族の中でも最も強く種族の代表に選ばれた己が此処まで侮辱された事に怒りが限界を超えたのだ。

 

先ほどの比では無い拳が京矢へと向かって放たれる。

怒りに支配されて振るわれた拳に当たるほど京矢は未熟では無い。

そんな事はハジメもよく分かっているので、当然避けるのだろうと考えていた。だが、

 

「お、おいっ!」

 

京矢はハジメの予想を裏切り、手の中にある枝を盾にする様に京矢は熊の亜人の拳を正面から受け止めようとする。

 

流石にそれは誰もが驚く。

彼に敵意を向けていた者達は巫山戯た行いの報いを受けろと彼の末路を想像する。

ハジメ達も京矢の無謀な行動に驚愕する。特に熊の亜人の力を知っているシアを始めましたハウリア族はその惨劇を想像してしまい思わず目を伏せる。

例外はディノミーゴ位だろう。

 

 

だが、

 

 

「なっ!」

 

次の瞬間、怒りに染められていた熊の亜人の頭が冷や水をかけられた様に冷えて行く。

全力さえも超えていた己の拳が木の枝一つ折れずに受け止められていたのだ。

 

手に当たる感触は簡単にへし折れる木の感触ではない、鉄でも殴ったかの様な痛みがある。

それを受け止めている京矢は微動だにせずそれを受け止めて居た。

 

「剣掌っ」

 

受け止めていた枝から放たれた気刃が熊の亜人を吹き飛ばす。振り抜かれた枝から放たれた気刃は熊の亜人の体を壁に叩きつけたのだった。

 

「どうよ、オレの気功術?」

 

ハジメは改めて思う。こいつが味方でよかった、と。

 

「まっ、オレもまだまだだけどな」

 

謙遜で言っているのか本気で言っているのか定かではないがハジメは思う。何処の世界に木の枝であんな真似が出来る未熟者がいるのか、と。

 

「……異世界と言うのは恐ろしい所なのか……」

 

京矢の発言を100%受け入れてしまっていたアルレリックが呆然と呟くが、それを訂正する者は居なかった。

 

「で? アンタらはどうする?」

 

誰もが言葉を失っている中、京矢の問いかけに長老全員が首を横に振るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京矢が熊の亜人を吹き飛ばした後、アルフレリックの執り成しと、京矢の力を見せつけた事でその後の蹂躙劇は回避された。

それを計算した上で、穏便な形で敵意……と言うよりも亜人族側の戦意をへし折った訳だ。

 

熊の亜人は骨も内臓も致命傷を負って居ないと言う意味では無事な筈なので、命もその後の戦士としての人生も取り止めている事だろう。

高価な回復薬でも使えば早期の復帰は可能だろうが、精神の方は分からない。あそこまで戦士としての矜恃(プライド)をボロボロにされれば暫くは立ち直れないだろう。

 

最大限の穏便な手段で対処した訳だ。後のことは知った事ではない。寧ろ、次に繋がる命が五体満足で残っただけ有難いと思ってもらいたい。

 

現在、当代の長老衆である虎人族のゼル、翼人族のマオ、狐人族のルア、土人族(俗に言うドワーフ)のグゼ、そして森人族のアルフレリックが、ハジメと京矢と向かい合って座っていた。

ハジメの傍らにはユエとカム、シアが座り、京矢の後ろにエンタープライズとベルファストが立ち、その後ろにディノミーゴに守られる形でハウリア族が固まって座っている。

 

「ん~、確かにオルクスの紋章だねぇ。実力もあんな強そうな魔物を従えてる上にさっき見た通り。僕は彼を資格者と認めるよ」

 

「俺は認めんぞ!」

 

糸のように細めた目の狐の耳と尻尾を持った狐の亜人、狐人族の長老ルアがそう発言すると、吐き捨てるように虎人族のゼルが言う。

 

そんな会話が交わされながらも、長老衆の表情はアルフレリックを除いて緊張感で強ばっていた。

戦闘力では一,二を争う程の手練だった熊の亜人(名前はジン)が手も足も出ず瞬殺されたのであるから無理もない。

 

「で? あんた達は俺等をどうしたいんだ? 俺は大樹の下へ行きたいだけで、邪魔しなければ敵対することもないんだが……亜人族(・・・)としての意思を統一してくれないと、いざって時、何処までやっていいかわからないのは不味いだろう? あんた達的に。殺し合いの最中、敵味方の区別に配慮する程、俺はお人好しじゃないぞ」

 

ハジメの言葉に、身を強ばらせる長老衆。言外に、亜人族全体との戦争も辞さないという意志が込められていることに気がついたのだろう。

 

「こちらの仲間をあんな目に合わせておいて、第一声がそれか……それで友好的になれるとでも?」

 

グゼが苦虫を噛み潰したような表情で呻くように呟いた。

 

「おいおい、オレは手加減したぜ。命も無事で、骨も折らない、内臓へのダメージも最小限に、此処まで丁寧にやって文句は言われたくないな」

 

そう言った後横目でハジメを見ながら、

 

「こいつが相手だったら、今頃再起不能じゃ無いか?」

 

「お前が甘いだけだろ?」

 

「殺る時は殺るよ。今回は宜しくと握手までしてくれた相手なんだ、命を奪う様な相手でもないし、再起不能にする必要はないだろ?」

 

そして、長老達へと視線を向け直し、

 

「それに最初の握手で実力差が見えなかったんだ。それで心が折れても自業自得だろ?」

 

「き、貴様! ジンはな! ジンは、いつも国のことを思って!」

 

「初手で実力差を把握出来ないのは奴の未熟さ、理解した所で受け入れられないのは当人の度量の責任だ」

 

「そ、それは! しかし!」

 

「こっちに非はない。寧ろ、あそこまで加減したやったんだ。長老ってのは罪科の判断も下すんだろ? なら、そこのところ、長老のあんたがはき違えんなよ?」

 

おそらくグゼはジンと仲が良かったのではないだろう。その為、頭では京矢の言う通りだと分かっていても心が納得しないのだろう。

だが、そんな心情を汲み取ってやるほど、京矢は暇ではない。

 

「グゼ、気持ちはわかるが、そのくらいにしておけ。彼の言い分は正論だ」

 

アルフレリックの諌めの言葉に、立ち上がりかけたグゼは表情を歪めてドスンッと音を立てながら座り込んだ。そのまま、むっつりと黙り込む。

 

翼人族のマオ、虎人族のゼルも相当思うところはあるようだが、最後には同意を示した。

彼等長老達を代表して、アルフレリックがハジメに伝える。

 

「南雲ハジメ、鳳凰寺京矢。我らフェアベルゲンの長老衆は、お前さん達を口伝の資格者として認める。故に、お前さん達と敵対はしないというのが総意だ……可能な限り、末端の者にも手を出さないように伝える。……しかし……」

 

「絶対じゃない……か?」

 

「ああ。知っての通り、亜人族は人間族をよく思っていない。正直、憎んでいるとも言える。血気盛んな者達は、長老会議の通達を無視する可能性を否定できない。特に、今回再起不能にされたジンの種族、熊人族の怒りは抑えきれない可能性が高い。アイツは人望があったからな……」

 

「それで?」

 

アルフレリックの話しを聞いてもハジメの顔色は変わらない。すべきことをしただけであり、すべきことをするだけだという意志が、その瞳から見て取れる。アルフレリックは、その意志を理解した上で、長老として同じく意志の宿った瞳を向ける。

 

「お前さん達を襲った者達を殺さないで欲しい」

 

「……殺意を向けてくる相手に手加減しろと?」

 

「そうだ。お前さん達の実力なら可能だろう?」

 

「鳳凰寺に負けたあの熊野郎が手練だというなら、可能か否かで言えばオレ達でも可能だろうな。だが、殺し合いで手加減をするつもりはない。あんたの気持ちはわかるけどな、そちらの事情は俺達にとって関係のないものだ。同胞を死なせたくないなら死ぬ気で止めてやれ」

 

「ちょっと待った、南雲」

 

奈落の底で培った、敵対者は殺すという価値観は根強くハジメの心に染み付いている。殺し合いでは何が起こるかわからないのだ。手加減などして、窮鼠猫を噛むように致命傷を喰らわないとは限らない。

また、変な情けをかけたら今度は調子に乗って陰湿な手段をとるかもしれない。

その為、ハジメがアルフレリックの頼みを聞くことはなかった。

だが、そんなハジメを京矢が止める。

 

そんな京矢を睨みつけるハジメと希望を持った様な視線を向けるアルフレリック。

 

「警告のために一人くらいは半殺しで生かして返した方が後が楽になるぜ」

 

「なるほど」

 

京矢の言葉にそれは盲点だったと感心するハジメと、ある意味ハジメより酷い言葉に開いた口が塞がらないアルフレリック。

 

「皆殺しにしたら恐怖が伝わらないだろ? 警告を込めて一人は生かして返せば、そこから伝わるだろ?」

 

「確かにな。確かに、そっちの方が後は楽になるか。やっぱり、お前は頼りになるな」

 

「へへ、そう褒めるなよ」

 

「取り敢えず、最低一人は生かして返すのは約束しとくよ」

 

そんな約束されても心底喜べない長老達であった。

そこで虎人族のゼルが口を挟んだ。

 

「ならば、我々は、大樹の下への案内を拒否させてもらう。口伝にも気に入らない相手を案内する必要はないとあるからな」

 

その言葉に、ハジメも京矢も訝しそうな表情をした。

元々、大樹への案内はハウリア族に任せるつもりで、フェアベルゲンの者の手を借りるつもりはなかった。

そのことは、彼等も知っているはずだ。

だが、ゼルの次の言葉で彼の真意が明らかになった。

 

「ハウリア族に案内してもらえるとは思わないことだ。そいつらは罪人。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。何があって同道していたのか知らんが、ここでお別れだ。忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている」

 

ゼルの言葉に、シアは泣きそうな表情で震え、カム達は一様に諦めたような表情をしている。

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