『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝 作:ドラゴンネスト
5日目、
ハジメとの交代の為に京矢達は彼と合流したのだが、
「ボス。お題の魔物、きっちり狩って来やしたぜ?」
「へー、中々良い仕上がりになってるな」
口調も雰囲気も変わっているカムを一瞥し、京矢は基礎はしっかりとできていると感心する。
カム達は、この樹海に生息する魔物の中でも上位に位置する魔物の牙やら爪やらをバラバラと取り出したのだから、十分に力は会得しているだろう。
5日では予想以上の仕上がりだ。
そこまではハジメの手腕に感心していた。…………そこまでは、だ。
「……俺は一体でいいと言ったと思うんだが……」
そのハジメの言葉に何故か嫌な予感を覚える京矢。
ハジメの課した訓練卒業の課題は上位の魔物を一チーム一体狩ってくることだ。しかし、眼前の剥ぎ取られた魔物の部位を見る限り、優に十体分はある。
ハジメの疑問に対し、カム達は不敵な笑みを持って答えた。
「ええ、そうなんですがね? 殺っている途中でお仲間がわらわら出てきやして……生意気にも殺意を向けてきやがったので丁重にお出迎えしてやったんですよ。なぁ? みんな?」
「そうなんですよ、ボス。こいつら魔物の分際で生意気な奴らでした」
「きっちり落とし前はつけましたよ。一体たりとも逃してませんぜ?」
「ウザイ奴らだったけど……いい声で鳴いたわね、ふふ」
「見せしめに晒しとけばよかったか……」
「まぁ、バラバラに刻んでやったんだ、それで良しとしとこうぜ?」
不穏な発言のオンパレードだった。最早全員、元の温和で平和的な兎人族の面影が微塵もない。
ギラついた目と不敵な笑みを浮かべたままハジメに物騒な戦闘報告をする。
「なあ、南雲」
「うん、完全にやり過ぎたな、コレ」
「ああ、完全なやり過ぎだな、これは」
ニタァと笑いながらナイフを舐めたり、ヒャハハと笑いながら刈り取った魔物の尻尾を振り回している姿には、最早温和と言われた種族の面影などない。
なお、シアはユエが見ているそうなので心配はいらないだろう。
半ば現実逃避気味に京矢が用意した隠れ家の下地の説明をしつつ、後の仕上げを専門家のハジメに任せる旨を伝える。
「何でここまで変貌したんだよ……?」
「ああ、それはな……」
全員がヒャッハーと叫んで暴れまわりそうな集団と化した彼らを眺めながら京矢は思う。
ガイアメモリを選ばなくて良かった、と。
遠い目をしたハジメから京矢は全てのきっかけである訓練二日目の話を聞く。
何でも兎人族の其の性質故か、魔物一匹殺すたびに変なドラマが始まったそうだ。
曰く、ハウリア族の男が絶命させた魔物に縋り付く。まるで互いに譲れぬ信念の果て親友を殺した男のように。
曰く、魔物の首を裂いた小太刀を両手で握り、わなわな震えるハウリア族の女。まるで狂愛の果て、愛した人をその手で殺めた女のようだ。
曰く、瀕死の魔物が、最後の力で己を殺した相手に一矢報いる。体当たりによって吹き飛ばされたカムが、倒れながら自嘲気味に「ふっ、これが刃を向けた私への罰というわけか……当然の結果だな……」と呟く。
そして、その度に始まるその訳の分からないドラマと言う三文芝居に遂にキレるハジメ。
終いには実は戦闘訓練中毎回足元のお花やら虫やらに気を付けていたと言うことに完全に激怒し、地球では俗にハー○マン式と言うとか言わないとか言う手段で訓練を施したそうだ。
「まあ、それなら仕方ねえな」
「分かってくれるか?」
「ああ」
「それにしても、どうしよう、コレ?」
「どうしようもねえだろう。オレの方で、精神面の修行を中心にやらせる」
技術を下手に教えたら危険と、精神面の訓練を中心に鍛えようと誓う京矢であった。
そして、先ずは彼らに上下関係を叩き込む為にバーサークラビット達との戦闘に入る京矢であった。
6日目、この日から京矢担当の初日に入る。
「多少は力を付けたようだが、お前達の力は知っての通り、まだまだ未熟だ」
「はっ、はい! 京矢の兄貴!?」
叩きのめされて正座させられているカム達ハウリア族の一同。ベルファストを秘書の様に控えさせ、京矢は宣言する。
「此れからの5日、お前達の技と心を徹底的に鍛えてやる……覚悟は良いな?」
『サッ、サー、イエッサー!!!』
ハウリア族の悲鳴にも似た叫びが響き渡ったのだ。彼らに拒否権などない。力を得るか命を落とすかな修行のみだ。
……そこまでする気は無いが。
「先ずはこの言葉を心に刻み永遠に忘れるな! 偉大なるグランドマスターの言葉を! 『暮らしの中に修行あり』、それ即ち、生きること全てが修行であると!」
『サー! イエッサー!』
そして、十日後、
そろそろ、ハジメと京矢のハウリア族への訓練と隠れ家の建設も終わる頃だと、不機嫌そうなユエと上機嫌なシアは二人並んでハジメ達がいるであろう場所へ戻って来た。
ユエとシアがハジメ達のもとへ到着したとき、ハジメは腕を組んで近くの樹にもたれたまま瞑目しているところだった。
二人の気配に気が付いたのか、ハジメはゆっくり目を開けると二人の姿を視界に収める。
全く正反対の雰囲気を纏わせているユエとシアに訝しそうにしつつ、ハジメは片手を上げて声をかけた。
「よっ、二人共。勝負とやらは終わったのか?」
ハジメも、二人が何かを賭けて勝負していることは聞き及んでいる。シアのために超重量の大槌を用意したのは他ならぬハジメだ。
シアが、真剣な表情で、ユエに勝ちたい、武器が欲しいと頼み込んできたのは記憶に新しい。
ユエ自身も特に反対しなかったことから、何を賭けているのかまでは知らなかったし、聞いても教えてもらえなかったが、ユエの不利になることもないだろうと作ってやったのだ。
実際、ハジメは、ユエとシアが戦っても十中八九、ユエが勝つと考えていた。奈落の底でユエの実力は十二分に把握している。いくら魔力の直接操作が出来るといっても今まで平和に浸かってきたシアとは地力が違うのだ。
だがしかし、帰ってきた二人の表情を見るに、どうも自分の予想は外れたようだと内心驚愕するハジメ。そんなハジメにシアが上機嫌で話しかけた。
どうやら、無事シアはユエに勝利した様だ。
そもそも、シアがユエに勝てばシアを彼らの旅に同行させる事に賛同すると言うのが賭けだったのだが、その後は嫌そうな、不機嫌そうながらもユエの取りなしによるシアの動向に賛成する意見によって折れたハジメ。
「おっ、二人とも戻って来たのか?」
シアが「えへへ、うへへへ、くふふふ~」と同行を許されて上機嫌のシアが奇怪な笑い声を発しながら緩みっぱなしの頬に両手を当ててクネクネと身を捩らせてた時、京矢が戻って来た。
シアの先程までのハジメと問答した時の真剣な表情が嘘のように残念な姿に若干引き気味である。
「……キモイ」
見かねたユエがボソリと呟く。シアの優秀なウサミミは、その呟きをしっかりと捉えた。
「……ちょっ、キモイって何ですか! キモイって! 嬉しいんだからしょうがないじゃないですかぁ。何せ、ハジメさんの初デレですよ? 見ました? 最後の表情。私、思わず胸がキュンとなりましたよ~、これは私にメロメロになる日も遠くないですねぇ~」
「あるのか、そんな日?」
「ありますよぉ~、必ず~!」
「そんな事より、何があったんだ?」
「同行者が一人増えた」
『そんな事って酷いです~』と喚いているシアを他所にハジメに問いかけた京矢。
シアの表情に真剣な物が宿る。飽くまでユエが説得できるのはハジメのみだ。京矢についてはシアは自力で認めて貰うしかない。
「お前がオッケーならオレは反対しねえよ」
そんなシアの不安を他所に京矢は彼女の動向をアッサリと認めた。
「良いのか?」
「元々雫の頼みとは言え、白崎が同行するなら協力するつもりなんだ。シアちゃんだけ邪魔はしねえよ」
アッサリとし過ぎた京矢の態度に逆に疑問に思って問い掛けるハジメの言葉に京矢はそう返した。
元々雫から頼まれた香織の恋のサポートとして、彼女が旅に同行したいと言うのならば協力は惜しまないつもりだったのだ。
シアの動向についても協力こそしないが、一方的に邪魔をすると言う様な真似はしない。
少なくとも力不足な香織にファウストロープを改造したデバイス(正式名称未決定)を渡しはしたが、シアには何も渡していないのがその証拠だ。
「お前、本当に八重樫の頼みは素直に聞くよな?」
「ん? ああ、惚れた弱みって奴だな」
そんな風に騒いでいると(シアだけ)、霧をかき分けて数人のハウリア族が戻って来た。
シアは久しぶりに再会した家族に頬を綻ばせる。本格的に修行が始まる前、気持ちを打ち明けたときを最後として会っていなかったのだ。
たった十日間とはいえ、文字通り死に物狂いで行った修行は、日々の密度を途轍もなく濃いものとした。そのため、シアの体感的には、もう何ヶ月も会っていないような気がしたのだ。
早速、父親であるカムに話しかけようとするシア。報告したいことが山ほどあるのだ。
しかし、シアは話しかける寸前で、発しようとした言葉を呑み込んだ。カム達が発する雰囲気が何だかおかしいことに気がついたからだ。
歩み寄ってきたカムはシアを一瞥すると僅かに笑みを浮かべただけで、直ぐに視線を京矢達に戻した。そして……
「マスター京矢、マスターユエ、マスターハジメ! ただいま戻りました!!!」
背をまっすぐ伸ばし、理知的な空気を纏わせた何処か武道家な雰囲気のカムが礼と共に挨拶をする。
「マ、マスター? と、父様? 何だか口調が……というか雰囲気が……」
バーサーカーから武道家に雰囲気がクラスチェンジしたハウリア族の姿に何があったのかと思うハジメと、十日前とは違い過ぎるカム達の変わり様に唖然とするユエとシア。
「それで、首尾は?」
そんなハジメ達を他所に京矢はカム達に成果を促す。
「はっ!」
取り出されるのは三体のハイベリアの死体。
強力な打撃によって絶命した個体、
全身の骨を粉々にされた個体、
真っ二つにされた個体。
そんな彼らに良くやったと頷きながら宣言する。
「良いだろう、お前たち。その心に宿した獣の名を宿した拳を名乗る事をグランドマスターに変わり許可しよう」
『ありがとうございます、マスター京矢!』
そんな権限など無いのだが、そこは黙っておく。
「激獣ホッパー拳、カームバンティス」
背後に宿したのは紫のオーラを纏ったバッタのオーラを纏ったカムが構えを取りながら宣言する。それに続く様に他のハウリア族たちも、
「激獣スクイッド拳、ラナインフェリナ」
「激獣ファルコン拳、バルドフェルド」
「激獣ボンゴレ拳、ネアシュタットルム」
紫のオーラを纏って獣のオーラを背に構えともに宣言する兎人族の皆さん。
そんな姿に唖然とするハジメ達。
「……何とか此処まで引き戻したんだよ」
「これは良い反応って捉えるべきなのか?」
「……流石、ハジメと京矢……闇魔法も使わずに洗脳するなんて……凄い」
「ひ、ひ、ひ…………人の家族に、何してくれてんですかぁー!!!」
シアの絶叫が樹海の中に響き渡ったのだった。