『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝 作:ドラゴンネスト
遠くに町が見える。周囲を堀と柵で囲まれた小規模な町だ。
街道に面した場所に木製の門があり、その傍には小屋もある。おそらく門番の詰所だろう。
小規模といっても、門番を配置する程度の規模はあるようだ。
「久しぶりに買い物ができるな」
「いや、お前が何を買うってんだよ?」
「調味料とか、香辛料とかだな」
そろそろ元の世界で用意していた調味料とか香辛料も底をつきそうだと、そんな会話を交わしながら、それなりに充実した買い物が出来そうだと京矢もハジメも頬を緩めていた。
「……機嫌がいいのなら、いい加減、この首輪取ってくれませんか?」
街の方を見て微笑むハジメに、シアが憮然とした様子で頼み込む。
シアの首にはめられている黒を基調とした首輪は、小さな水晶のようなものも目立たないが付けられている、かなりしっかりした作りのもので、シアの失言の罰としてハジメが無理やり取り付けたものだ。
何故か外れないため、シアが外してくれるよう頼んでいるのだがハジメはスルーしている。
京矢の方にも頼んで見たのだが、京矢からも全力でスルーされている。
そろそろ、町の方からも彼等を視認できそうなので、魔力駆動二輪を〝宝物庫〟にしまい、徒歩に切り替える京矢達。
流石に、この世界には存在しない漆黒のバイクで乗り付けては大騒ぎになるだろう。
道中、シアがまだブチブチと文句を垂れていたが、やはり全員がスルーして遂に町の門までたどり着いた。
案の定、門の脇の小屋は門番の詰所だったらしく、武装した男が出てきた。格好は、革鎧に長剣を腰に身につけているだけで、兵士というより冒険者に見える。その冒険者風の男が京矢達を呼び止めた。
「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」
規定通りの質問なのだろう。どことなくやる気なさげである。
一行を代表してハジメは、門番の質問に答えながらステータスプレートを取り出した。
「食料の補給がメインだ。旅の途中でな」
ふ~んと気のない声で相槌を打ちながら門番の男がハジメのステータスプレートをチェックする。そして、目を瞬かせた。ちょっと遠くにかざしてみたり、自分の目を揉みほぐしたりしている。
その門番の様子をみて、ハジメは「あっ、ヤベ、隠蔽すんの忘れてた」と内心冷や汗を流した。
ステータスプレートには、ステータスの数値と技能欄を隠蔽する機能があるのだ。
冒険者や傭兵においては、戦闘能力の情報漏洩は致命傷になりかねないからである。ハジメは、咄嗟に誤魔化すため、嘘八百を並べ立てた。
「ちょっと前に、魔物に襲われてな、その時に壊れたみたいなんだよ」
「こ、壊れた? いや、しかし……」
困惑する門番。無理もないだろう。何せ、ハジメのステータスプレートにはレベル表示がなく、ステータスの数値も技能欄の表示もめちゃくちゃだからだ。
ステータスプレートの紛失は時々聞くが、壊れた(表示がバグるという意味で)という話は聞いたことがない。なので普通なら一笑に付すところだが、現実的にありえない表示がされているのだから、どう判断すべきかわからないのだ。
ハジメは、いかにも困った困ったという風に肩を竦めて追い討ちをかける。
「壊れてなきゃ、そんな表示おかしいだろ? まるで俺が化物みたいじゃないか。門番さん、俺がそんな指先一つで町を滅ぼせるような化物に見えるか?」
横でハジメの言い分に笑いを堪えている京矢に『この野郎』と思いつつ、両手を広げておどける様な仕草をするハジメに、門番は苦笑いをする。
ステータスプレートの表示が正しければ、文字通り魔王や勇者すら軽く凌駕する化物ということになるのだ。例え聞いたことがなくてもプレートが壊れたと考える方がまともである。
実はハジメが本当に化物だと知ったら、きっと、この門番は卒倒するに違いない。
いけしゃあしゃあと嘘をつくハジメに、ユエとシアは呆れた表情を向けている。
「はは、いや、見えないよ。表示がバグるなんて聞いたことがないが、まぁ、何事も初めてというのはあるしな……そっちの五人は……」
「ああ、実はオレ達二人以外はさっき言った魔物の襲撃で失くしちまってな」
京矢達にもステータスプレートの提示を求める門番に苦笑しながらそう言って京矢は自分のプレートを渡す。
当然ながらハジメの失敗を見ていたのでステータスは隠蔽済みだ。
「天職は……剣聖!? 何なんだよ、この天職は!?」
「おう、珍しい天職だろ? オレは自由気ままに旅をするのが好きなんでな。内緒にしててくれよ、珍しい天職が原因で仕えろとか言ってくる貴族とか鬱陶しいから」
「あ、ああ」
「こっちの兎人族は……わかるだろ?」
京矢の天職だけは隠しようがないので珍しい天職だけど貴族に仕えるのが面倒だから自由気ままに旅をしていると言う説明で誤魔化されたのかは定かではないが、シアの事は簡単に納得してくれた。
もう、バグ表記疑惑のステータスとかレアな天職とかで門番の人の頭は混乱寸前だった。
そんな中女性陣に視線を向ける。そして硬直した。みるみると顔を真っ赤に染め上げると、ボーと焦点の合わない目で彼女達を交互に見ている。
ユエは言わずもがな、精巧なビスクドールと見紛う程の美少女だ。そして、シアも喋らなければ神秘性溢れる美少女である。
ベルファストとエンタープライズも文句無く美女だ。
つまり、門番の男は彼女達に見惚れて正気を失っているのだ。
なるほどと頷いてステータスプレートをハジメと京矢に返す。
「それにしても随分な綺麗どころを手に入れたな。白髪の兎人族なんて相当レアなんじゃないか? メイドを連れて旅してるって、あんた等って意外に金持ち?」
未だチラチラと彼女達を見ながら、羨望と嫉妬の入り交じった表情で門番がハジメ達に尋ねる。
ハジメは肩をすくめるだけ、京矢も意味深な笑みを浮かべるだけで何も答えなかった。
「まぁいい。通っていいぞ」
「ああ、どうも。おっと、そうだ。素材の換金場所って何処にある?」
「あん? それなら、中央の道を真っ直ぐ行けば冒険者ギルドがある。店に直接持ち込むなら、ギルドで場所を聞け。簡単な町の地図をくれるから」
「おぉ、そいつは親切だな。ありがとよ」
「助かるぜ、ありがとさん」
町に入る一行、最後に一礼して行くベルファストに鼻の下を伸ばしながら門番は彼等を手を振って見送った。
門のところで確認したがこの町の名前はブルックというらしい。
町中は、それなりに活気があった。かつて見たオルクス近郊の町ホルアドほどではないが露店も結構出ており、呼び込みの声や、白熱した値切り交渉の喧騒が聞こえてくる。
「よっしゃ、さっさと換金して買い物でもしようぜ、屋台や露天とかも見て見たいしな」
「おっ、それも良さそうだな」
「京矢様、ハジメ様、不要な間食は看破できませんが」
こう言う騒がしさは訳もなく気分を高揚させてくれる。ハジメと京矢だけでなく、ユエもエンタープライズも楽しそうだ。ベルファストだけは目に見えて気分が高揚している様子は無い。
だが、そんな中シアだけは先程からぷるぷると震えて、涙目でハジメを睨んでいた。
怒鳴ることもなく、ただジッと涙目で見てくるので、流石に気になって溜息を吐くハジメ。楽しい気分に水を差しやがって、と内心文句を言いながらシアに視線を合わせる。
「どうしたんだ? せっかくの町なのに、そんな上から超重量の岩盤を落とされて必死に支えるゴリラ型の魔物みたいな顔して」
「誰がゴリラですかっ! ていうかどんな倒し方しているんですか! ハジメさんなら一撃でしょうに! 何か想像するだけで可哀想じゃないですか!」
「……脇とかツンツンしてやったら涙目になってた」
「まさかの追い討ち!? 酷すぎる!」
「いや、鳳凰寺程じゃ無いぜ。あいつは何処まで耐えられるか試してやるよ? とか言って剣で
「もっと酷い!? ってそうじゃないですぅ!」
怒って、ツッコミを入れてと大忙しのシア。手をばたつかせて体全体で「私、不満ですぅ!」と訴えている。
ちなみに、ゴリラ型の魔物のエピソードは圧縮錬成の実験台にした時の話だ。序でとばかりに京矢も重力を増加させる剣の実験をしていたりしたが、決して虐めて楽しんでいたわけではない。ユエはやたらとツンツンしていたが。
なお、この魔物が〝豪腕〟の固有魔法持ちである。
「これです! この首輪! これのせいで奴隷と勘違いされたじゃないですか! ハジメさん、わかっていて付けたんですね! うぅ、酷いですよぉ~、私達、仲間じゃなかったんですかぁ~」
「いや、むしろ無い方が危険だろ?」
「え?」
ショックな様子のシアに京矢が「何言ってんだ、コイツ」と言わんばかりの様子で告げると目を点にする。
「奴隷でも無い亜人族の人気種族が街の真ん中を堂々と歩いてたら、人攫いの嵐だろうが」
そんな人気は嬉しく無いだろうが兎人族は高額で取引される奴隷だ。だから、帝国が軍隊を率いてキシリュウジンに驚いて逃げるまで長々と出て来るのを待つまでしたのだ。
一人でも捕まえれば待つ間の物資の消費は補え、大半を捕まえられれば利益に繋がる。そう判断されたからだろう。
そもそも、助けられたのだって奴隷として捕らえようとしていた帝国からだと言うのを忘れているのだろうかと京矢も疑問に思うほどだ。
人攫いに襲われたとしても奴隷という所有物を狙ったのならば人攫いの上に窃盗の現行犯で多少乱暴な手段での対応の理由にもなる。
「まして、お前は白髪の兎人族で物珍しい上、容姿もスタイルも抜群。断言するが、誰かの奴隷だと示してなかったら、町に入って十分も経たず目をつけられるぞ。後は、絶え間無い人攫いの嵐だろうよ。面倒……ってなにクネクネしてるんだ?」
京矢の言葉に続けて言い訳あるなら言ってみろやゴラァ! という感じでハジメを睨んでいたシアだが、話を聞いている内に照れたように頬を赤らめイヤンイヤンし始めた。ユエが冷めた表情でシアを見ている。
更に調子に乗って話を盛るシアの頬に、ユエの黄金の右ストレートが突き刺さり可愛げの欠片もない悲鳴を上げて倒れるシア。
身体強化していなかったので、別の意味で赤くなった頬をさすりながら起き上がる。
「まあ、面倒ごとを避けるため、身を守る為の物になるんだから、我慢してくれ、なあ南雲?」
「ああ。人間族のテリトリーでは、むしろ奴隷という身分がお前を守っているんだよ。それ無しじゃあ、トラブルホイホイだからな、お前は」
「それは……わかりますけど……」
京矢とハジメの言い分もわかる。
だがやはり、納得し難いようで不満そうな表情のシア。仲間というものに強い憧れを持っていただけに、そう簡単に割り切れないのだろう。そんなシアに、今度はユエが声をかけた。
「……有象無象の評価なんてどうでもいい」
「ユエさん?」
「……大切な事は、大切な人が知っていてくれれば十分。……違う?」
「………………そう、そうですね。そうですよね」
「……ん、不本意だけど……シアは私が認めた相手……小さい事気にしちゃダメ」
「……ユエさん……えへへ。ありがとうございますぅ」
かつて大衆の声を聞き、大衆のために力を振るった吸血姫。
裏切りの果てに至った新たな答えは、例え言葉少なでも確かな重みがあった。
だからこそ、その言葉はシアの心にストンと落ちる。自分がハジメとユエの大切な仲間であるということは、ハウリア族のみなも、ハジメやユエも分かっている。いらぬトラブルを招き寄せてまで万人に理解してもらう必要はない。もちろん、それが出来るならそれに越したことはないが……。
じゃれあっている三人を邪魔しないように京矢は先言ってるぞ、と言って冒険者ギルドを探そうと先行する。
「指揮官、彼らは放っておいて良いのか?」
「まっ、下手に首を突っ込んで馬に蹴られたくはねえからな」
あの、ただの首輪ではなく、かなりの技術と素材を使って作られた通信用のアーティファクトである事の説明をしている三人を横目で見ながらエンタープライズの言葉にそう答える。
「私も同じ物を南雲様にお願いした方が良いでしょうか?」
「いや、別の意味でトラブルになりそうだから遠慮してくれ」
真剣にシアの首輪と同じ物。愛用の鎖付きチョーカーのデザインで作ってもらおうと考えているベルファストには多少頭を悩ませてしまうが。
シアが人攫いを避ける為に首輪を着けているのに対して、ベルファストから外させたのは売買交渉を避ける為だ。
京矢達がメインストリートを歩いて行き、一本の大剣が書かれた看板を発見する。
後ろでは美しい曲線を描いて飛来したユエの蹴りが後頭部に決まり、奇怪な悲鳴を上げながら倒れるシアにユエから、冷ややかな声がかけられていた。
近接戦苦手だったんじゃ……と言いたくなるくらい見事なハイキックを披露するユエに、シアは涙目で謝っていた。
ハジメ達と合流すると鎧の魔剣を背負った明らかに分かりやすい戦士スタイルの京矢が一行を代表して先頭で重厚そうな扉を開いて中に足を踏み入れた。
赤城(アズールレーン)はどちらのヒロインに
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京矢
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ハジメ