『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝 作:ドラゴンネスト
仮面ライダーバールクスの力でモンスターの一体を殴り倒し、サーベルで切り裂く。
ここに居るのは明らかに勇者である光輝やそれを上回るステータスを持つ京矢でも生身であったら即死するであろう力を持った危険なモンスターばかりだ。
だが、そんな相手でもグランドジオウならば簡単に切り抜けられるだろう。そのグランドジオウを圧倒出来るバールクスのスペックを持ってすれば倒せないモノではない。基本フォームとはいえジオウの召喚した平成主役ライダー達を無傷で倒したのは伊達ではない。
「化け物揃いだな、此処は」
ハジメが残してくれたメッセージから魔物の肉を喰らい神水で毒素を癒して餓死と脱水症状を防ぎながらステータスを上げつつも、先行して居るであろうハジメの痕跡を追跡する。
バールクスのスペック頼りのゴリ押しで恐らくは最短ルートでの追跡ができて居るだろうが、その力押しもいつまで続くか分からない。
石化の魔眼を持つ魔物をロボライダーのウォッチの力で頭ごと吹き飛ばしてバールクスは溜息を吐く。
「ホント、死ぬんじゃねえぞ、南雲」
先行しているであろうハジメの痕跡を追いながらバールクスは魔物を警戒する事なく直進して行く。
此処の魔物が相手でもバールクスに変身しているならば警戒するのは石化の様な即死のダメージだけだ。
更にステータスが上がって行けばそのうちにバールクスの力に頼らなくても勝てる様にはなるだろう。
襲いかかってきたウサギの魔物の首を斬り落とすと血抜きがてら引きずりながら先を進んでいく。
基本的にバールクスの力での無双。
ライドウォッチという制限はあるもののその他の中には平成で活躍した最強と名高い昭和ライダーである『仮面ライダーBLACK RX』の力がある。
普通の人間やこの世界の兵士や騎士、将来的にはどうなるか分からないが召喚されたクラスメイト達でさえ現時点では脅威でしか無い奈落の魔物達でもバールクスになった京矢の敵では無い。
だが、そんな状況は彼の心に僅かながらの焦りを生む。
「いっそ、このウォッチを押したら奇跡でも起こってくれれば助かるんだけどな」
そんな焦りからか、何気なくRXのウォッチを、世紀王のウォッチを押した。
『RX!』
その瞬間、バールクスを狙っていたであろう魔物達の気配が消えた。
はっきり言おう、奈落の魔物達以上の化け物であるゴルゴムの支配者候補の進化した姿であるRXの力を宿したウォッチを起動させた瞬間、ウォッチから漏れたRXの力が魔物達に感じさせたのだ。
『自分達よりも恐ろしい怪物がいる』
と。
「力は感じるけど、オレには資格はない、ってか?」
そんな事に気付かずジクウドライバーに装填しても反応無しのRXウォッチに落胆して腕の定位置に戻す。
「ハジメ……どうかした?」
五十層で出会った彼の相棒の吸血姫『ユエ』がハジメに問い掛ける。
ハジメは次の階層に挑む前の装備の点検と補充をしていた。
先程から煩いほどに魔物達が必死に逃げ回っているのが目に付いている。
熊の魔物など親らしい個体が子供らしい個体を守る様に抱きしめながらガタガタと隠れながら震えていた。最早憐れみさえ感じてしまうほどだ。
「いや……今、何か変な音が聞こえたと思ってな……」
魔物達が逃げ回る足音で小さな音など聞こえ無かったが、音が僅かに止んだ瞬間、一瞬だけ金属音が聞こえたのだ。
こんな所に金属の鎧を着込んだ者が居るとすれば、それは魔物では無い。
それが人間か魔人かは分からないがこんな所にいる様な相手だ、警戒するに越したことはない。
-ガシャン……-
「「っ!?」」
「……ハジメ」
「ああ……」
今度ははっきりと金属音が聞こえた。音の聞こえた方向に注意を向けて戦闘態勢を取る。そちらの方へここで作り出した相棒の銃『ドンナー』を向ける。
(ここの魔物達が逃げて居るのは、コイツからか?)
魔物達の本能に恐怖と逃走を叩きつけている化け物がこっちに向かってきて居る。
そう考えると自然と冷や汗が流れ、心臓の鼓動が早まる。
魔物の肉と神水で肉体の破壊と再生を繰り返して跳ね上がったハジメのステータスでも、そこまでの域には到達していない。だが、そんな化け物が向こうから向かってきて居る。その事実に一瞬の油断も無く金属音の聞こえてくる先を注視していた。
二人の警戒を他所に、金属音が更に近づいてくる。
最初に手が見えた。そして体が見える、剣を持った二足歩行の人型。その姿や仕草から魔物では無さそうだ。
二足歩行のそれはゆっくりと全身を見せる。
その相手を睨みつけながら、此方へと振り向いた瞬間にぶっ放してやろうと思うと自然と引き金に力が篭る。
最初に見えたのは黒いボディだ。
次に、横顔が見えた瞬間爛々と輝く真っ赤な複眼が見えた。
そして、目の前のそれが此方へと振り向いた瞬間、
「はぁ?」
気が抜けた。
「ラ、ライダー?」
「ハジメ?」
呆けた様に妙な事を口走ってしまった相棒に困惑の声を上げるユエ。この世界の文字ではなくハジメ達の世界の文字なのだからユエには分からなくても無理はない。
はっきり言おう、警戒していた相手の顔面にデカデカと赤く光る自己主張の強い『ライダー』の文字が有ったのだから、呆けてしまうのも無理はないだろう。
「ん? おっ、なんか色々と変わってるけど、その声は南雲か?」
しかも、警戒していた相手から聞き覚えのある声でフレンドリーな言葉が飛んできたのだから、思いっきりズッコケテしまいそうになる。
「お前の方が変わりすぎだろうが、鳳凰寺!?」
うん、人の面影が二足歩行の人型でしかない黒いボディに真っ赤なライダーな複眼の姿なのだから、そのリアクションも最もだろう。
ユエ以外どうでも良いと思っていた中でただ一人だけ再会できれば味方になれるかと思っていた相手がそんな姿になればそう言いたくなるだろう。
「おっ、悪いな、流石にこれじゃ分からないか?」
そう言ってジクウドライバーを外すとバールクスへの変身が解除される。
記憶の中と寸分違わぬ京矢の姿がそこには有った。
「もしかして……ハジメを助けようとして一緒に落ちた人?」
「おう、そっちの子は初対面だな。鳳凰寺京矢だ」
朗らかに相棒の吸血姫に自己紹介する京矢に色々と問い詰めようと思うハジメだった。
「まっ、話もあるだろうが、取り敢えずロクな物食ってないだろう? 口直し程度なら食い物もあるぜ」
そう言って制服の内側の四次元ポケットの中からカップラーメンを取り出してハジメに投げ渡すと同様にカセットコンロとペットボトルの水とヤカンを取り出す。
テキパキとお湯を沸かしている姿を眺めながら、色々とその行動にはツッコミどころしか無いがまずは久し振りの元の世界の食事の味を堪能する事にしたハジメだった。
嗅覚を存分に刺激するその匂いだけで空腹を感じ唾を飲み込むと、最早我慢出来ずに一心不乱に目の前のラーメンを啜る。
今までの食事が神水が旨く感じるほど不味い魔物の肉だけだった為に久し振りのカップラーメンは極上の美味に感じてしまった。
「まっ、一人だけなら一週間食えるほどの量は有るんだ、遠慮しないで喰ってくれよ。チョコも有るぜ」
紙コップの水を飲みながらその言葉を聞いて奪い取る様に京矢から差し出された板チョコを受け取って食べている。見ればユエも初めて食べる異世界の物の味に目を輝かせていた。
数分後、
「まず最初に言っとくぜ。……オレ達をここに突き落とした犯人は檜山で、その檜山は結果的にオレが道連れにして…………最後は此処の魔物に食われて死んだ」
「……そうか」
カップラーメンとチョコの味に満足していたところに聞かされた京矢の言葉には驚いたもののそんな返事がハジメからは帰って来た。
どうやって京矢が檜山を道連れにしたのかは気になるが、そんな事よりも今は優先的に聞くべき事がある。
「……そんな事より、お前の使ってたそのベルトは何だ? あの、変身ヒーローみたいなのは?」
「あー、あれはな。ガチの変身ヒーローのヴィランで、オレが使ったのはそのヒーローとヴィランの共通の変身アイテムって所だな」
「マジか!?」
「マジだ」
なんでお前がそんな物を持ってるんだ!?というツッコミを放置して驚愕してしまうハジメ。
「しかも、主人公が最強の力を発揮しても負けたほどの、劇場版のラスボスってとこだな」
だから、なんでお前がラスボスのダークヒーローの変身アイテムなんて物を持ってるんだ、オレも欲しいぞ、と言うツッコミと欲求を飲み込む。
「しかも、オレがこっちの世界に来た時に持ってたガイソーケンも前の世界から持ってたんだぜ」
最早、次々に聞かされるカミングアウトにツッコミが追いつかない。
「まっ、詳しい説明はもっと落ち着ける場所に行ってからするとして、過去四回、オレは似た様なことに巻き込まれた経験が有るんだな、これが」
「は、はぁ?」
「しかも、小学校の時の二回の事件なんて一歩間違えたら地球滅んでたな」
主にジュエルシードとか闇の書とか。
そう言って笑う京矢に対してハジメは思う。笑い事じゃねえ、と。
何気に地球の危機を二回も救う手助けをしていたと言う友人に対する疑問が次から次へと湧いてくる思いのハジメだった。
「序でに後の二回はセフィーロって世界の救世主にオレの従姉妹を含む三人が選ばれて、それに巻き込まれたオレが陰ながら正体隠して手助けしたんだけどな」
簡単に語られる異世界セフィーロでの冒険譚とそこで出会った者達の事。最後の戦いの際にガイソーグの鎧が破損して従姉妹とその仲間達に正体はバレたが、と付け加える。
「え? なに、お前、巨大ロボまで持ってんのかよ!? 後で見せてくれ!」
「おう、良いぞ、減るもんじゃないし」
「本当だぞ、約束だからな!」
帰還方法の確保の手段として魔人領への襲撃の手段に使おうとしたのだから、京矢的にはキシリュウジンを見せても問題はない。
既にこの時点でハジメの中から警戒心がかなり消えていたりする。
「まっ、この際だから白状すると。だから、オレはイシュタルとか言うジジイ共のことは最初から信用してなかった。隙を見て一人で帰還方法を探すつもりだったんだよ、バカ二人と変態どもを置いて全員を元の世界に連れ帰るためにな。」
何で変身ヒーローの変身アイテムの本物やら巨大ロボを持っているのかという説明はされてないが、この時点で目の前の友人の非常識さはよく分かった。
「……まだ肝心の、お前がどうしてそんな力を持っているのか? って質問には答えてないが、先に聞いとく。……鳳凰寺、お前はオレの味方か?」
「へへっ、一応お前が敵にならない限りはダチの味方だぜ」
これ以上聞いたらパンクしそうな事実に頭を抱えたくなったが、記憶の中と変わらない友人の姿に頭を更に頭を抱えたくなった。
ただ一つ分かることはある。目の前の相手は一番信用できる友人であり、その友人はこの非常識に巻き込まれる前から非常識であったという事だ。