『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝 作:ドラゴンネスト
「ユエさん! 扉は!?」
「ん……やっぱり封印されてる」
「あぅ、やっぱりですかっ!」
「予想はしていましたが」
見るからに怪しい祭壇と扉なのだ。封印は想定内。だからこそ、最初は面倒な殲滅戦を選択したのだ。扉の封印を落ち着いて解くために。
シアとベルファストは、案の定の結果に文句を垂れつつも、階段を上ってきた騎士を弾き飛ばす。
後方の騎士達はエンタープライズが艦載機で吹き飛ばしているので登ってきた数は然程多く無いが、再構築される為的な数は一向に減らない。
「南雲、錬成で扉に穴は開けられないか?」
「いや、封印の解除はユエに任せる。錬成で突破するのは時間がかかりそうだ」
「なら」
『バールクス! ターイムブレーク!』
素早くベルトを操作し、後方に迫る騎士達に回し蹴りのタイムブレークを撃ち込む。前方に迫っていた騎士達は憐れにも跡形もなく粉砕され、その後ろにいた騎士達は粉砕されている。一番軽傷なのは体を真っ二つにされるだけで済んだ騎士達だろう。それよも後方にいた騎士達は必殺技の衝撃で吹き飛ばされている。
暫くの時間稼ぎに成功すると、殿を務めていたバールクスとハジメがシアの隣に並び立った。
バールクスの言葉に返したハジメの言う通り、錬成で強引に扉を突破することは、もしかすると可能かもしれないが、この領域では途轍もない魔力を消費して、多大な時間がかかることだろう。
それなら、せっかく如何にもな祭壇と黄色の水晶なんて物が置かれているのだから、正規の手順で封印を破る方がきっと早い。ハジメはそう判断して、戦闘では燃費の悪いユエに封印の解除役を任せる。
「ん……任せて」
ユエは、ハジメの言葉に二つ返事で了承し祭壇に置かれている黄色の水晶を手に取った。
その水晶は、正双四角錐をしており、よくみれば幾つもの小さな立体ブロックが組み合わさって出来ているようだ。
ユエは背後の扉を振り返る。
其処には三つの窪みがあった。ユエは、少し考える素振りを見せると、正双四角錐を分解し始めた。分解し、各ブロックを組み立て直すことで、扉の窪みにハマる新たな立方体を作ろうと考えたのだ。
「指揮官、此処まで奴の煽りが見えないのが気になるんだが……」
「多分、そろそろ出てくるんじゃ無いのか? コレまでのパターンとか考えると此処で出て来そうだし」
バールクスとエンタープライズの会話を聞きながら結晶を分解しながら、ユエは、扉の窪みを観察する。
そして、よく観察しなければ見つからないくらい薄く文字が彫ってあることに気がついた。
〝とっけるかなぁ~、とっけるかなぁ~〟
〝早くしないと死んじゃうよぉ~〟
〝まぁ、解けなくても仕方ないよぉ! 私と違って君は凡人なんだから!〟
〝大丈夫! 頭が悪くても生きて……いけないねぇ! ざんねぇ~ん! プギャアー!〟
そこに有るのは、バールクスの予想通り何時ものウザイ文だった。
こんな状況なだけにめちゃくちゃイラっとするユエ。いつも以上に無表情となり、扉を殴りつけたい衝動を堪えながらパズルの解読に集中する。
何となく背後から殺気が漏れているのに気が付いたバールクス達は何があったのか大体悟ったので、触らぬ神に祟り無しとばかりに目の前のゴーレム騎士達との対応に集中する事にした。
「こいつら、凍らせれば再生しなくなるんじゃねえか?」
「それはミレディも考えてるだろうけど……出来るのか?」
「一度変身を解く必要があるけどな」
「だったら、奥の手にしておいてくれ。切り札になるかも知れねえからな」
「分かった」
時間稼ぎになりそうな手段は、手札的に有るのだが、それはバールクスの姿では使えない。
これだけ敵が踏み荒らしているのに罠が何一つ発動しないのはゴーレム騎士達は何らかの方法で無効にしているのだろう。腹立たしい事に。
雑談かわしながらゴーレム騎士達を弾き飛ばしていくバールクスとハジメ。
終始余裕の彼ら二人を含む四人と違い、最初は際限の無さに焦りを浮かべていたシアもバールクス達が余裕を失わず冷静である様子を見て、落ち着きを取り戻していた。
「なんだか、ちょっと嬉しいです」
「あぁ?」
一体、ゴーレム騎士を叩き潰し蹴り飛ばしながら、シアがポツリとこぼした。
「ほんの少し前まで、逃げる事しか出来なかった私が、こうしてハジメさん達と肩を並べて戦えていることが……とても嬉しいです」
「……ホント物好きなやつだな」
「えへへ、私、この迷宮を攻略したらハジメさんといちゃいちゃするんだ! ですぅ」
「おい、こら。何脈絡なく、あからさまな死亡フラグ立ててんだよ。悲劇のヒロイン役は、お前には荷が重いから止めとけ。それと、ネタを知っている事についてはつっこまないからな?」
「それは、『絶対に死なせないぜマイハニー☆』という意味ですね? ハジメさんったら、もうっ!」
「意訳し過ぎだろ! 最近、お前のポジティブ思考が若干怖いんだが……下手な発言できねぇな……」
「へっ、オレ迷宮攻略したら……うん、告白しようにも相手がな……」
「いや、お前もやるなよ!?」
「じゃあ、アイルビー……」
「そりゃ死ぬときの台詞だろうが!?」
そんな雑談をしながら騎士達を退け続けて数分。シアとハジメの2人がイチャつく雰囲気にならない様にでもしている様なバールクスの言動に妙に納得のいかない様子のシア達の間に、ぬぅ~と影が現れた。ユエだ。
「……いちゃいちゃの邪魔、ナイス」
「おう」
「いや、そんなのを狙ってたのかよ!?」
「ええ~、そんな事狙ってたんですか~!? 酷いですぅ~、京矢さ~ん!」
「お前もう黙ってろよ……」
若干、疲れた表情でシアを横目に見るハジメに、ユエはバールクスに無表情ながら良くやったと言う様にサムズアップを向ける。
しかし、そんな状況でもないと思い直し、今度は少し得意気に任務達成を伝えた。
「……開いた」
「早かったな、流石ユエ」
「よっしゃ、殿はオレ達に任せろ! 行くぜ、エンタープライズ!」
「了解だ、指揮官!」
ユエの言った通り封印が解かれて扉が開いているのが確認できた。
奥は特になにもない部屋になっているようだ。ハジメがユエとシアを伴って奥の部屋に向かって後退する。封印の扉を閉めればゴーレム騎士達の襲撃も阻めるだろう。
その姿を確認して、素早くロボライダーアーマーへと変身するとバールクスは必殺技を発動し、エンタープライズも艦載機を青い炎の鷲に変化させる。
『フィニッシュターイム! ロボ! ターイムブレーク!』
ロボライダーアーマーの装甲が開きそこから大量のマイクロミサイルが出現し空中に砲台が現れる。更に両手にボルテックシューターが現れ、バールクス ロボライダーアーマーがボルテックシューターのトリガーを弾くとアーマーからマイクロミサイルが、砲台からの砲撃が一斉に撃ち出される。
とても人間サイズのロボライダーアーマーからの攻撃とは思えない一斉砲撃が、エンタープライズの艦載機の攻撃を受けた直後のゴーレム騎士達を蹂躙していく。
その姿は正に人型の要塞。無慈悲な殺戮要塞の如き圧倒的な火力が罠の有無も関係なく粉々に破壊していった。
置き土産とばかりに全力砲撃をお見舞いするとベルトを外し変身を解除する。ロボライダーアーマーの重量を考えると扉が閉まる前にゴーレム騎士達に追い付かれると判断したのだ。
京矢、エンタープライズ、ベルファストの順に扉の奥に飛び込むと、その隙にスタンバイしていたユエとシアが扉を閉めた。
部屋の中は、遠目に確認した通り何もない四角い部屋だった。
てっきり、ミレディ・ライセンの部屋とまではいかなくとも、何かしらの手掛かりがあるのでは? と考えていたので少し拍子抜けする。
安全かと思ってハジメもバルカンへの変身を解除する。
「これは、あれか? これみよがしに封印しておいて、実は何もありませんでしたっていうオチか?」
「ミレディの性格を考えるとそれも有りそうだよな。敢えてこれみよがしな封印を目の前にしたらゴールと思うだろうし」
「……ありえる」
「うぅ、ミレディめぇ。何処までもバカにしてぇ!」
「どこまでもふざけた奴だ……」
「全くです」
一同が一番あり得る可能性にガックリしていると、突如もううんざりする程聞いているあの音が響き渡った。
ガコン!
『!?』
仕掛けが作動する音と共に部屋全体がガタンッと揺れ動いた。
そして、京矢達の体に横向きのGがかかる。
「っ!? 何だ!? この部屋自体が移動してるのか!?」
「……そうみたッ!?」
「うきゃ!?」
「口を開くな、舌を噛むぞ!」
ハジメが推測を口にすると同時に、今度は真上からGがかかる。急激な変化に、ユエが舌を噛んだのか涙目で口を抑えてぷるぷるしている。シアは、転倒してカエルのようなポーズで這いつくばっている。
膝立ちの体制で衝撃に耐えながら喋るなと忠告する京矢。
部屋は、その後も何度か方向を変えて移動しているようで、約四十秒程してから慣性の法則を完全に無視するようにピタリと止まった。
ハジメは途中からスパイクを地面に立てて体を固定していたので急停止による衝撃にも耐えたが、シアは耐えられずゴロゴロと転がり部屋の壁に後頭部を強打した。方向転換する度に、あっちへゴロゴロ、そっちへゴロゴロと悲鳴を上げながら転がり続けていたので顔色が悪い。相当酔ったようだ。後頭部の激痛と酔いで完全にダウンしている。
ちなみに、ユエは、最初の方でハジメの体に抱きついていたので問題ない。
京矢、エンタープライズ、ベルファストの3人は揺れは応えたが転がった様子もなく耐えていた。
「京矢様、何かものすごく嫌な予感がするのですが」
「奇遇だな、私もだ」
「だろうな、オレもそう思う」
ハジメがスパイクを解除して立ち上がったのを確認すると、周囲を観察するが特に変化はない。
先ほどの移動を考えると、入ってきた時の扉を開ければ別の場所ということだろう。
物凄く嫌な予感がするが開かなければ先に進まない。
「さて、何が出るかな?」
「……操ってたヤツ?」
「その可能性もあるな。ミレディは死んでいるはずだし……一体誰が、あのゴーレム騎士を動かしていたんだか」
「コントロール装置の中核みたいな奴じゃ無いのか?」
「あり得るな」
「……何が出ても大丈夫。ハジメは私が守る……ついでにシアも」
「聞こえてますよぉ~うっぷ」
ボス戦かと気合を入れ直すが、すっかり四つん這いで這ってくるシアは酔っている様子で今にもリバースしそうだ。シアが根性でハジメ達の傍までやって来て、期待した目と青白い顔でハジメを見上げる。ハジメはそっと、視線を逸らして扉へと向き直った。背後で「そんなっ! うぇっぷ」という声が聞こえるがスルーする。
「準備は良いな?」
京矢の言葉に頷くシアを除く一同。扉の先は、ミレディの住処か、ゴーレム操者か、あるいは別の罠か……京矢は「何でも来い」と不敵な笑みを浮かべて扉を開いた。
そこには……
「……何か見覚えないか? この部屋」
「……物凄くある。特にあの石板」
「ここ、入り口じゃね?」
扉を開けた先は、別の部屋に繋がっていた。その部屋は中央に石板が立っており左側に通路がある。
見覚えがあるはずだ。なぜなら、その部屋は、
「ええ、最初の部屋……の様ですね?」
ベルファストが、思っていても口に出したくなかった事を言ってしまう。
だが、確かに、ベルファストの言う通り最初に入ったウザイ文が彫り込まれた石板のある部屋だった。
よく似た部屋ではない。それは、扉を開いて数秒後に元の部屋の床に浮き出た文字が証明していた。
〝ねぇ、今、どんな気持ち?〟
〝苦労して進んだのに、行き着いた先がスタート地点と知った時って、どんな気持ち?〟
〝ねぇ、ねぇ、どんな気持ち? どんな気持ちなの? ねぇ、ねぇ〟
『…………』
京矢達の顔から表情がストンと抜け落ちる。
能面という言葉がピッタリと当てはまる表情だ。全員が微動だにせず無言で文字を見つめている。すると、更に文字が浮き出始めた。
〝あっ、言い忘れてたけど、この迷宮は一定時間ごとに変化します〟
〝いつでも、新鮮な気持ちで迷宮を楽しんでもらおうというミレディちゃんの心遣いです〟
〝嬉しい? 嬉しいよね? お礼なんていいよぉ! 好きでやってるだけだからぁ!〟
〝ちなみに、常に変化するのでマッピングは無駄です〟
〝ひょっとして作ちゃった? 苦労しちゃった? 残念! プギャァー〟
「は、ははは」
「フフフフ」
「フヒ、フヒヒヒ」
ハジメ、ユエ、シアの三者三様の壊れた笑い声が辺りに響く。
その後、迷宮全体に届けと言わんばかりの絶叫が響き渡ったのは言うまでもない。
「……ミレディの不思議のダンジョン?」
京矢の的を得まくった呟きにハジメが彩度の絶叫をしたのだった。
ゲームなら良いが実際に体験すると禄でも無いダンジョンだ。あのゲームの主人公達も毎回こんな心境だったんだろうと思う。寧ろ、ミレディの様な煽りがない分良心的とさえ言えるだろう。
最初の通路を抜けて、ミレディの言葉通り、前に見たのとは大幅に変わった階段や回廊の位置、構造に更にハジメ達が怨嗟の声を上げたのも言うまでもないことだ。
「鳳凰寺!? キシリュウジン出せ! ダンジョンごとぶち壊してやれ!」
「い、いや、それだと試練成り立たないだろ?」
キシリュウジンでダンジョンごとぶち壊して進もうしたり、無言のままに手榴弾を作り始めたりしたハジメを宥めて、何とかハジメ達3人の精神を立て直し、再び迷宮攻略に乗り出した京矢達。
しかし、やはり順風満帆とは行かず、特にシアが地味なトラップ(金たらい、トリモチ、変な匂いのする液体ぶっかけetc)の尽くにはまり、精神的にヤバくない? というほどキレッキレッになったりと、厄介な事に変わりはなかった。
そうして、冒頭の光景に繋がるわけである。
赤城(アズールレーン)はどちらのヒロインに
-
京矢
-
ハジメ