『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝 作:ドラゴンネスト
「やほ~、はじめまして~、皆大好きミレディ・ライセンだよぉ~」
凶悪な装備と全身甲冑に身を固めた眼光鋭い巨体ゴーレムから、やたらと軽い挨拶をされた。
何を言っているか分からないだろうが、ハジメにもわからない。頭がどうにかなる前に現実逃避しそうだった。
ユエとシアも、包囲されているということも忘れてポカンと口を開けている。
京矢もガイソーグに変身しようとしたタイミングでリアクションに困っている。
エンタープライズとベルファストもまたポカーンとフリーズしていた。……この二人のこの姿は結構レアかもしれない。
そんな硬直する一行に、巨体ゴーレムは不機嫌そうな声を出した。声質は女性のものだ。
「あのねぇ~、挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ? 全く、これだから最近の若者は……もっと常識的になりたまえよ」
「……幻聴じゃなかったんだな」
実にイラっとする話し方である。
しかも、巨体ゴーレムは、燃え盛る右手と刺付き鉄球を付けた左手を肩まで待ち上げると、やたらと人間臭い動きで「やれやれだぜ」と言う様に肩を竦める仕草までした。
普通にイラっとする京矢達。道中散々見てきたウザイ文を彷彿とさせる。〝ミレディ・ライセン〟と名乗っていることから本人である可能性もあるが、彼女は既に死んでいるはずであるし、人間だったはずだ。
京矢からの探りを入れてくれと言う視線を受けてハジメは取り敢えず、その辺りのことを探ってみる事にした。
内心、コミュ力高い京矢の方が向いてないかと思わないこともないが。
「そいつは、悪かったな。だが、ミレディ・ライセンは人間で故人のはずだろ? まして、自我を持つゴーレム何て聞いたことないんでな……目論見通り驚いてやったんだから許せ。そして、お前が何者か説明しろ。簡潔にな」
「あれぇ~、こんな状況なのに物凄く偉そうなんですけど、こいつぅ」
全く探りになってなかった。むしろド直球に聞きに行った。
流石に、この反応は予想外だったのかミレディを名乗る巨体ゴーレムは若干戸惑ったような様子を見せる。が、直ぐに持ち直して、人間なら絶対にニヤニヤしているであろうと容易に想像付くような声音でハジメ達に話しかけた。
「ん~? ミレディさんは初めからゴーレムさんですよぉ~。何を持って人間だなんて……」
「オスカーの手記にお前のことも少し書いてあった。きちんと人間の女として出てきてたぞ?」
「ああ。精巧な
京矢がミレディの言葉を否定する。専門家が専門分野で間違える訳が無いと言うある種の能力への信頼だ。
「というか阿呆な問答をする気はない。簡潔にと言っただろう。どうせ立ち塞がる気なんだろうから、やることは変わらん。お前をスクラップにして先に進む。だから、その前にガタガタ騒いでないで、吐くもん吐け」
「お、おおう。久しぶりの会話に内心、狂喜乱舞している私に何たる言い様。っていうかオスカーって言った? もしかして、オーちゃんの迷宮の攻略者?」
「ああ、オスカー・オルクスの迷宮なら攻略した。というか質問しているのはこちらだ。答える気がないなら、戦闘に入るぞ? 別にどうしても知りたい事ってわけじゃない。俺達の目的は神代魔法だけだからな」
「つー訳だ。戦闘前に久しぶりの会話を楽しみたいなら、サクサク答えろ」
ハジメがドンナーを巨体ゴーレムに向け、京矢がガイソーケンを構える。それに合わせて戦闘態勢に入るエンタープライズとベルファスト。
ユエはすまし顔だが、シアの方は「うわ~、ブレないなぁ~」と感心半分呆れ半分でハジメ達を見ていた。
「……神代魔法ねぇ、それってやっぱり、神殺しのためかな? あのクソ野郎共を滅殺してくれるのかな? オーちゃんの迷宮攻略者なら事情は理解してるよね?」
「あの悪霊擬きを始末しろって言うなら、オレ達の目的には始末する必要はあるな。封印で良いなら、永遠に退屈な場所に送ってやるところだがな」
「ん~、君の言う封印がどんなのかは知らないけど、やめておいた方が良いかな? あのクソ野郎にも空間魔法は有るから」
「成る程。流石に異空間を閉じるのに百年掛かるから、空間魔法とやらで不安定な所に干渉されたら拙いか」
結構エヒト退治に乗り気な京矢はミレディの言葉は参考になると頷いている。完全に空間を閉じさえして仕舞えば良いが、それでも不安定な期間が百年も有れば出るのは容易い事だろう。
手持ちの封印系対神武器は通用しないと考える。
「おい、質問しているのはこちらだと言ったはずだ。先にこちらの質問にも答えろ」
「こいつぅ~こっちの彼と違ってホントに偉そうだなぁ~、まぁ、いいけどぉ~、えっと何だっけ……ああ、私の正体だったね。うぅ~ん」
「簡潔にな。オスカーみたいにダラダラした説明はいらないぞ」
「あはは、確かに、オーちゃんは話が長かったねぇ~、理屈屋だったしねぇ~」
「技術者ってのは大抵そんなモンだろうからな」
巨体ゴーレムは懐かしんでいるのか遠い目をするかのように天を仰いだ。本当に人間臭い動きをするゴーレムである。
ユエは相変わらず無表情で巨体ゴーレムを眺め、シアは周囲のゴーレム騎士達に気が気でないのかそわそわしていて、エンタープライズとベルファストは周囲のゴーレム騎士達が動いたら即座に攻撃できる様にしている。
「うん、要望通りに簡潔に言うとね。私は、確かにミレディ・ライセンだよ。ゴーレムの不思議は全て神代魔法で解決! もっと詳しく知りたければ見事、私を倒してみよ! って感じかな」
「結局、説明になってねぇ……」
「まあ、大体の答えにはなってるだろ? 目の前のゴーレムに入っているのが、ミレディ本人の魂かそのコピーかは別にして、この迷宮の最後の試練は解放者からのテストって理解すれば十分だ」
「ははは、君はなかなか飲み込みがはやいね~。それにさ、攻略する前に情報なんて貰えるわけないじゃん? 迷宮の意味ないでしょ?」
「そりゃそうだ」
今度は巨大なゴーレムの指でメッ! をするミレディ・ゴーレム。
中身がミレディ・ライセンというのは頂けないが、それを除けば愛嬌があるように思えてきた。
ケラケラと割とミレディ相手にも持ち前のコミュ力で馴染みつつある京矢を他所にユエが、「……中身だけが問題」とボソリと呟いていることからハジメと同じ感想のようだ。
そして、その中身について、結局ほとんど何もわからなかったに等しいが、ミレディ本人だというなら、残留思念などを定着させたものなのかもしれないと推測するハジメ。
ハジメは、確かクラスメイトの中村恵里が降霊術という残留思念を扱う天職を持っていたっけと朧げな記憶を掘り起こす。しかし、彼女の降霊術は、こんなにはっきりと意思を持った残留思念を残せるようなものではなかったはずだ。
つまり、その辺と、その故人の意思? なんかをゴーレムに定着させたのが神代魔法ということだろう。
「どっちにしても、此処の神代魔法は魂魄に関係するものか、重力系統を操作するものだろ? オレ達が欲しいモンじゃねえのは確かだ」
京矢の言葉が全てだった。目の前のゴーレムやら此処までのゴーレム達の重力を無視した動き。どう考えてもその二択だろう。
「ん~? 中々鋭いね? その推理は当たってるよ。ちなみに、私の神代魔法は別物だよぉ~、魂の定着の方はラーくんに手伝ってもらっただけだしぃ~」
「なら、重力系統か。悪く無いな」
妙に嬉しそうな笑みを浮かべる京矢にハジメは落胆した様子で反論する。
「だったら、ここには用がないんだがなぁ」
「何だよ、手に入れておけば便利じゃねえか?」
ハジメの目当てはあくまで世界を超えて故郷に帰ること。
重力だか知らないが、それを操れる神代魔法を手に入れても意味はない。そう思って言ったのだが、返ってきた京矢の答えはハジメの推測とは異なるものだった。
「此処までの来たのに帰るなんて勿体ないだろ? それに、他の迷宮攻略しなきゃ入れない迷宮もあるだろうし、重力なんて使い様によれば強力な攻撃魔法とか作れるんじゃねえか?」
「使い方?」
どう言う事だと思って疑問に思うハジメだが、
「ほら、エボルみたいに」
「っ!? そうか、エボルみたいに!?」
京矢の言葉にハジメの頭に浮かんだのは仮面ライダーエボルの姿。重力の魔法はブラックホールを作り出すことも可能だろう。
「ん~ん~、ミレディさんの神代魔法がそれだって言ってないんだけどな~?」
「じゃあ、お前の神代魔法は何なんだ?」
「ん~ん~、知りたい? そんなに知りたいのかなぁ?」
再びニヤついた声音で話しかけるミレディに、イラっとしつつ返答を待つハジメ。そんなハジメの肩を「落ち着け」と言って叩く京矢。
「知りたいならぁ~、その前に今度はこっちの質問に答えなよ」
最後の言葉だけ、いきなり声音が変わった。今までの軽薄な雰囲気がなりを潜め真剣さを帯びる。
その雰囲気の変化に少し驚く京矢達。表情には出さずにハジメが問い返す。
「なんだ?」
「目的は何? 何のために神代魔法を求める?」
嘘偽りは許さないという意思が込められた声音で、先程までのふざけた雰囲気など微塵もなく問いかけるミレディ。もしかすると、本来の彼女はこちらの方なのかもしれない。
思えば、彼女も大衆のために神に挑んだ者。自らが託した魔法で何を為す気なのか知らないわけにはいかないのだろう。オスカーが記録映像を遺言として残したのと違い、何百年もの間、意思を持った状態で迷宮の奥深くで挑戦者を待ち続けるというのは、ある意味拷問ではないだろうか。
軽薄な態度はブラフで、本当の彼女は凄まじい程の忍耐と意志、そして責任感を持っている人なのかもしれない。
ユエも同じことを思ったのか、先程までとは違う眼差しでミレディ・ゴーレムを見ている。
深い闇の底でたった一人という苦しみはユエもよく知っている。だからこそ、ミレディが意思を残したまま闇の底に留まったという決断に、共感以上の何かを感じたようだ。
京矢はそんなミレディの本質を測りかねているが、内心ではどっちも素なんだろうなとも思っている。
ハジメは、ミレディ・ゴーレムの眼光を真っ直ぐに見返しながら嘘偽りない言葉を返した。
「俺の目的は故郷に帰ることだ。お前等のいう狂った神とやらに無理やりこの世界に連れてこられたんでな。世界を超えて転移できる神代魔法を探している……お前等の代わりに神の討伐を目的としているわけじゃない。この世界のために命を賭けるつもりは毛頭ない」
「オレはその悪霊擬きが帰る上での邪魔になりそうだし、上手く切り抜けてもオレ達の世界に関わられても困るから始末しておきたい。なにより」
「……」
ハジメに続いて口を開いた京矢がそこで言葉を切るとミレディは無言で続きを促す。
「あの悪霊擬きは三つの理由で始末しなきゃ気が済まなくなった。それだけだ」
ミレディ・ゴーレムはしばらく、ジッとハジメを見つめた後、何かに納得したのか小さく頷いた。
そして、ただ一言「そっか」とだけ呟いた。と、次の瞬間には、真剣な雰囲気が幻のように霧散し、軽薄な雰囲気が戻る。
「ん~、そっかそっか。なるほどねぇ~、別の世界からねぇ~。うんうん。それは大変だよねぇ~よし、ならば戦争だ! 見事、この私を打ち破って、神代魔法を手にするがいい!」
「上等だ! 相手になってやるぜ!」
「脈絡なさすぎて意味不明なんだが……何が『ならば』何だよ。っていうか、鳳凰寺、お前もノリが良すぎないか?」
「いや、寧ろこれからラストバトルって場面でお前の方こそ、ノリが悪く無いか?」
「そうそう、ノリが悪いよ〜」
自分が悪いのか? と言う疑問を飲み込みながら、妙にミレディのノリに付き合っている友人に対して何を考えているのかと言う視線を向けるハジメ。
「いや、折角今までの悪質な罠の恨みを晴らすチャンスなんだ。乗ってやらなきゃ損だろ?」
取り敢えず、京矢が罠を仕掛けてくれた張本人の顔を殴れるチャンスを活かしたいと言うのは分かった。
「エンタープライズ!」
「了解した!」
この時のためにと大体3日目辺りで京矢から渡されていた小型ガトリング銃に似た武器モサチェンジャーを取り出すエンタープライズ。
「出番だぜ、ピーたん!」
そう言ってポケットの中から取り出すのは青い卵の様な何かだった。
ってなわけで、次回は巨大戦です。
赤城(アズールレーン)はどちらのヒロインに
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京矢
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ハジメ